2018年12月6日19時47分
休憩となっていた参院法務委員会は理事会に移り、与党側が採決を提案。野党は激しく反発し、横山信一委員長(公明)の解任決議案を参院に提出した。委員会は再開されないまま散会になった。
これで解任決議案が参院本会議で否決されるまで、法務委員会での採決はできなくなった。参院本会議は7日午前に予定されており、入管法改正案の委員会採決はそれ以降にずれ込みそうだ。野党はさらに山下貴司法相の問責決議案も提出して抵抗することを検討している。
午後5時9分、最後の質問者の山口和之氏(無所属)の持ち時間が終了。横山信一法務委員長が「安倍内閣総理大臣はご退席いただいて結構です」と告げ、首相は一礼して委員会室を後にした。委員会はそのまま休憩になった。
最後に質問に立ったのは無所属の山口和之氏。理学療法士としての顔も持ち合わせる山口氏は、「入管法改正によって外国人労働者とその家族が不幸になることがあってはいけない」と述べ、共生施策の拡充を求めた。
政府は、日本語教育や外国人が受診できる医療態勢の確保などからなる「総合的対応策」を年内にも取りまとめる方針だ。答弁に立った安倍晋三首相は、手元のペーパーに目を落として早口で読み上げながら、この総合的対応策の概要を説明。「外国人を迎え入れて、互いに尊重できる共生社会の実現をめざす」と語った。
「安倍政権の強権的な手法で、三権分立が形骸化している」。参院会派「沖縄の風」の糸数慶子氏は、質問をこう切り出した。地元の沖縄県で、米軍普天間飛行場の移設工事にともない、一時中断していた辺野古沿岸部の埋め立て用土砂の搬出作業が5日に再開されたことを挙げ、怒りをあらわにした。
糸数氏の怒りは、いまの技能実習制度をめぐる政府の対応にも及んだ。失踪した実習生への法務省の聞き取り調査について、野党が元資料の「聴取票」を独自に分析した結果は「7割が最低賃金以下」だった、と指摘。「不都合な真実を隠して衆院では強行採決した。いったん廃案にすべきだ」と訴えた。
山下貴司法相は、失踪した実習生の調査内容は「法務省内のプロジェクトチームで徹底調査している」と答えた。ただ、調査は法案審議とは切り離して行い、政権は7日に法案を成立させる構えを崩していない。
4日の参院法務委では、野党の分析結果に対して「重く受け止める」と神妙に語った山下法相だったが、この日は一切言及しなかった。
維新の石井苗子氏は、「在留管理に在留カードが使われているが、マイナンバーカードを活用すべきだ」と指摘。石井氏は11月28日の参院本会議でも同様の質問をしており、こだわりのあるテーマのようだ。
石井氏は首相が本会議では「在留カードで就労可能か否かを容易に確認でき、有効だ」と答弁したことについて、「在留カードで容易に判断できるなら不法就労はなくなるはずだ」と指摘。首相は「不法滞在は複合的な対策を取ることが必要だ」と述べるだけで、議論はかみ合わなかった。
さらに石井氏が「簡単に」説明を求めた内閣官房のマイナンバー担当者が、2分近くにわたってマイナンバーに関する制度を詳細に説明。首相出席の委員会だが、低調な論戦と言わざるを得ない内容だった。
共産党の仁比聡平氏がただしたのは、低賃金や長時間労働などが横行している、いまの「技能実習制度」についての安倍晋三首相の認識だ。「総理は『9割の方がうまく行っている』と答弁した。撤回すべきだ」と迫った。
しかし、やはりここでも横山信一法務委員長は「山下法務大臣」。「どうして。どうして大臣が答弁するんですか。委員長おかしいでしょ!」。仁比氏の怒声も馬耳東風の様子で、山下貴司法相は「失踪した実習生は全体の数%だ」と説明した。失踪者の統計は「氷山の一角だ」と、なおも食い下がる仁比氏に、首相は「失踪は重く受け止めている」と答えつつも「失踪者は全体の数%。多くは実習をまっとうしている」と突き放した。
国民民主党の桜井充氏からは、こんな質問も出た。「卓球の張本(智和)選手、テニスの大坂(なおみ)選手とかは、どう評価しているのか」。親が外国籍でありながら、両選手が日本代表としてプレーしていることを念頭に置いた質問だ。
これに対し、安倍晋三首相は「素晴らしい活躍をしていただいて、同じ日本人として誇りに思います」と評価。その上で、「お父様、お母様が日本で生まれていないとはいえ、『自分の将来を日本でずっと頑張るんだ』という決意をして日本に来られた。海外で活躍され、日本を代表して頑張ってくれるのは、本当にうれしいことだと思っている」と語った。ただ、地方での外国人の定住について問われると、「たくさん外国人が入ってくると、いままでの習慣や生活の伝統が崩されてしまうのではないかと心配している方もいる」とし、「難しい課題だ」とかわした。
野党から3番手で質問に立ったのは、国民民主党の桜井充氏。横山信一法務委員長から「桜井としお君」と名前を間違われても、まったく表情を変えずに厳しい口調で質問を始めた。
尋ねたのは、入管法改正案の大きな焦点である「移民政策」について。「総理は、今回の法案と離れて、移民政策そのものには賛成か、反対か」。直球の質問をぶつけた。
かねて「移民政策はとらない」と強調してきた安倍晋三首相。「移民、あるいは移民政策は多義的で、一様にお答えしようがない。さまざまな文脈で用いられている」と論点を広げたうえで、「安倍政権としては、国民の人口に比して一定程度の規模の外国人、および家族を期限を設けることなく受け入れることによって、国家を維持しようとする、いわゆる移民政策をとる考えはないと申し上げている」。今国会で幾度も繰り返してきた政府の公式見解を、そのままなぞるだけだった。
続いて立憲民主党の小川敏夫氏が質問に立った。安倍晋三首相に質問しても、やはり山下貴司法相が答弁に立つ場面が続いた。
裁判官や検事など法曹界での経験が豊富で、いつもは冷静に質問する小川氏が顔を赤らめて激高。外国人との共生施策について、「総理に聞いてるんですよ」「総理、ひと言で答えて」とたたみかける。しかし、横山信一法務委員長による答弁者の指名は「山下法務大臣」。山下法相が露払いするかのように答えたあと、安倍首相が登壇したが、答弁に新味はなかった。小川氏は「非常に熱意のない答弁に失望した」と言い残して質問を終えた。
技能実習生の中には、低賃金や長時間労働などの過酷な労働環境を強いられた末に、実習先から姿を消す人もいます。法務省は、のちに居場所が確認できた実習生から失踪した動機などを聞き取り調査しており、昨年は2870人を調べました。この集計結果として、法務省は当初、約87%が「より高い賃金を求めて」失踪した、と国会で説明しました。
ところが、実は67%だったと集計の誤りが判明。野党の求めに応じて、調査の元資料である「聴取票」を開示しました。野党はすべての元資料を書き写して独自に分析。法律違反である最低賃金割れが全体の67%を占めるなど、「法務省の集計と大きく食い違う」と主張し、反発を強めています。
立憲民主党の有田芳生氏は追及を続け、「ややこしい質問ですが……」と質問を切り出した。これは、5日に安倍晋三首相がエコノミストの懇親会の場で「明日は(参院)法務委員会、2時間出てややこしい質問を受ける」と述べたことへの当てつけだ。有田氏は「凍死や溺死(できし)した実習生がいるのに、法務省はなぜ調べないのか」とただした。
だが、答弁に立ったのは、またも山下貴司法相。「なんでよ」「総理だよ」とごうごうのヤジが飛ぶなか、山下法相は「人の死亡というプライバシーにかかわる問題なので、すべてつまびらかにできていないというのが前提だ」と、そっけない答弁でかわした。
その後、答弁に立った首相も事実関係について「存じ上げませんので、お答えのしようがない」とゼロ回答だった。
新しい在留資格「特定技能」のうち、熟練した技能の持ち主に与えられる2号では、家族を呼び寄せることができます。在留期間の上限がなく、定期的な審査をパスすれば、長期間の滞在ができるのです。永住権を得るために必要な「就労資格」にもあてはまるため、「事実上の移民政策だ」と指摘する専門家もいます。
では、安倍晋三首相はどう考えているのでしょうか。これまでの審議で、首相は今回の外国人労働者の受け入れ拡大はあくまで「人手不足への対応」であり、「移民政策ではない」と強調し、2号の資格は「ハードルはかなり高い」とも答弁してきました。2号が事実上の永住資格だと警戒する与党内や自身を支持する保守層の「空気」に配慮しての答弁と受け止めました。
結局、2号を設けるのは、受け入れ候補の14業種のうち、建設業と造船・舶用工業の2業種だけ。しかも両業種とも当面は設置を見送る方向で検討しています。「移民」にあたるのかどうか、その見きわめにはまだ時間がかかりそうです。
野党の質問のトップバッターは、立憲民主党の有田芳生氏。かつてはジャーナリストとしてテレビ番組にも出演していたが、2010年に参院議員に初当選して、現在は2期目。有田氏は、受け入れ先で亡くなった技能実習生が多数いる点について安倍晋三首相にただした。
しかし、答弁に立ったのは山下貴司法相。有田氏は「総理に聞いている」「総理に聞いている」と繰り返し声を張り上げたが、山下法相は“弁慶”よろしく答弁を強行した。
山下法相を引き継ぐ形で安倍首相が答弁に立ったが、議場はヤジで騒然としたまま。「静かな環境で議論すべきだ。いかがなものか」と首相が不満を漏らしたうえで、「(受け入れ先で亡くなった技能実習生については)初めておうかがいする。答えようがない」と答えた。
公明党の質問が終わり、ここからは野党の質問です。野党は、法務省による失踪した外国人技能実習生への調査を独自に分析した結果をもとに政府を追及しています。午前中の審議では、立憲民主党の有田芳生氏が、新たに、国内で亡くなった技能実習生に関するデータを突きつけて、技能実習制度の実態を検証するように法相らに求めました。この点についても、安倍晋三首相の認識をただすものとみられます。
首相は5日に都内で開かれたエコノミストらの懇親会で、「明日は(参院)法務委員会、2時間出てややこしい質問を受ける」と述べました。こうした発言も野党の批判材料になりそうです。
自民党の長谷川岳氏は、5つめの質問でようやく安倍晋三首相を指名しました。「大島理森衆院議長が、政省令で定めたら全体像を国会に示すようにと指摘した。どう受け止めるか」と尋ねました。安倍晋三首相は「(議長の)指摘は重く受け止める」と答えました。
長谷川氏の質問は約10分。法案の核心部分にはまったく触れずじまいでした。長谷川氏が部会長として党内議論をリードした自民党法務部会では改正案について、「事実上の移民政策だ」との批判が噴出。日程を延長し、最後は山下貴司法相が部会に出席し、法案について理解を求めることでやっと決着したという経緯があります。
法務部会長の長谷川氏だからこそ、これまで浮かび上がった論点について議論を深めてほしかったのですが、わずか10分。物足りなさを禁じ得ません。
入管法改正案は、新しい在留資格「特定技能」の創設や、いまの法務省入国管理局を「出入国在留管理庁」に格上げする内容が盛り込まれています。
この特定技能の資格には、「相当程度の知識や経験」を必要とする1号と、「熟練した技能」の持ち主に与えられる2号の2種類があります。それぞれ試験などで技能水準を測ることにしていますが、どんな試験を課すのかは改正法が成立後に決める方針です。
政府は受け入れ対象の候補に建設や介護など14業種を挙げ、最大で初年度は約4万7千人、5年間の合計で約34万5千人を受け入れると試算しています。受け入れた外国人労働者の在留管理のほか、日本語教育や生活面の支援など、共生施策を出入国在留管理庁が担うとしています。
入管法改正案を巡る国会審議では、実際にどれぐらいの外国人労働者を受け入れるのかが大きな焦点となっています。もし、想定よりも多く受け入れた場合は、日本人の職が奪われたり賃金が下がったりするとの懸念があるからです。
政府は初年度から5年間で最大34万5千人を受け入れると試算しています。しかし、その積算根拠は、業界をまたいで似たデータを引用した例が目立ったり、数的根拠がなかったりと精度が疑問視され、野党の批判にさらされています。
では、この受け入れ数の上限が何万人になるのか。それは今回の法案に書かれてはいません。政府は、改正法の成立後に決める「分野別運用方針」に盛り込む、と答弁しています。つまり、明日にも成立すると見込まれる入管法改正案は、その詳細を決めないままの「白紙委任法案」だと批判されているのです。先日の国会審議で野党議員がこう批判しました。「弁当箱だけ国会でつくり、中身は法務省が勝手に決める」。そんな弁当が売れるでしょうか。中身がわからない弁当なんて。私は怖くて買えません。
参院法務委員会で安倍晋三首相が出席しての審議が始まった。質問者のトップバッターは、自民党の長谷川岳氏。北海道の「YOSAKOIソーラン祭り」の仕掛け人として知られる長谷川氏だが、自民党の法務部会長として改正法案の党内論議をまとめ、国会提出に道筋を付けた人物でもある。
ただ、質問の冒頭では安倍首相を指名せず、まず山下貴司法相に対して技能実習制度について「適正化が問題になっている」と質問。山下法相はこれまでの答弁を繰り返すかたちで、「しっかり対応するために省内にプロジェクトチームを設置し、制度を検討している」と答えた。
外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法(入管法)改正案を審議する参院法務委員会に、安倍晋三首相が出席している。入管法改正案の審議に首相が応じるのは、衆参あわせて3回目。野党側は午後3時半ごろから、立憲民主党の有田芳生氏や国民民主党の桜井充氏らが質問に立つ。
改正案について、与党は6日中に参院法務委で採決し、あす7日には参院本会議で成立させたい考えだが、野党側は「審議が不十分」だとして反発しており、流動的だ。改正案は、外国人労働者の受け入れ見込み数や対象業種など重要な内容を、成立後に定めるとしている。「中身がスカスカだ」と批判する野党がどのような切り口で攻めるのかが注目される。
国民民主党の舟山康江・参院国対委員長は国会内で記者会見し、外遊から帰国したばかりの安倍晋三首相が、入管法の審議をめぐる野党の質問を「ややこしい」と発言したことについて、「たしかに外交日程でお疲れかもしれないが、面倒くさいと思っているのだったら急がなくてもいい。しっかりお疲れがとれてから(国会)審議に臨んでいただければ」と述べた。
そのうえで、舟山氏は「ややこしいととられるのは、まだ法案のなかで様々な解釈の余地があったりとか、今後の課題として積み残っているとか、そういったことの表れだ。問題発言でないか」と批判。「いいですよ、今日慌ててやらなくても」とあきれ顔だった。
共産党の志位和夫委員長は国会内で記者会見し、安倍晋三首相が5日に入管法をめぐる野党の質問を指して「委員会に2時間出て、ややこしい質問を受ける」と述べたことについて、「ややこしい質問というよりも、非常に単純明快なところで法案の土台が崩壊している」と述べた。
技能実習生への聞き取り調査の「聴取票」を野党が独自に分析し、法律違反である最低賃金割れが全体の67%を占めることがわかったことを挙げ、志位氏は「政府は最初は0・8%、22人と言っていた。これは改ざん・捏造だと白日の下になった。山下法相は『調査をする』と言ったが、だったら調査結果を待たずに先に進めないではないか」と述べ、廃案を求めた。
いま日本では、約128万人の外国人が働いています。その2割にあたる約26万人は、「外国人技能実習制度」によって来日した実習生です。
1993年に始まったこの制度は、実習生が日本で専門的な技術を学んで母国に持ち帰るという、技術移転を目的とした「国際貢献」がうたい文句です。ところが、実際には渡航前に仲介業者への手数料や保証金として多額の借金を背負い、さらに実習の受け入れ先では、低賃金や長時間労働、パワハラ、セクハラなどの人権侵害にさらされるケースが相次いで報告されています。
新たな在留資格の「特定技能」の1号には、技能実習を3年経験した外国人は無試験で移行できます。政府は、「特定技能」のうち、1号は半数程度を技能実習からの移行が占めると試算しています。
【衆院】 【参院】
◇特定秘密保護法(2013年)
40時間55分 21時間15分
◇安全保障関連法(15年)
108時間20分 91時間23分
◇「共謀罪」法(17年)
33時間45分 21時間20分
◇働き方改革関連法(18年)
32時間30分 35時間50分
◇カジノ実施法案(18年)
18時間10分 21時間45分
◇出入国管理法改正案(※18年)
17時間15分 14時間45分
〈各会派に割り当てられた政府や参考人らとの質疑時間。※は5日まで。衆参事務局調べ〉
外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法(入管法)改正案について、与党は6日午前の参院法務委員会理事会で同日中の委員会採決を野党側に提案した。立憲民主党や共産党は反対し、山下貴司法相の問責決議案の提出などを検討。採決は7日にずれこむ可能性がある。
同委は6日、6時間の審議を行い、午後には安倍晋三首相が2時間出席する。6日の審議終了時には審議時間は20時間45分となり、衆院の審議時間の17時間15分を上回る。与党側は「十分な審議時間を確保した」とみなし、首相出席の質疑終了後、採決する考えだ。
主要野党は、外国人労働者の受け入れ態勢が固まっていないなどとして、採決を急ぐ政府与党を批判。来年の通常国会で審議をやり直すべきだと訴え、今国会での成立に反対している。法務省による失踪した外国人技能実習生への聞き取り調査が実態と異なるなどとし、山下氏の問責決議案の提出を検討。委員会採決に先立ち、横山信一法務委員長(公明党)の解任決議案提出も検討している。
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