【大相撲】貴ノ岩が付け人に暴力 日馬事件の被害者が今度は加害者に2018年12月6日 紙面から
日本相撲協会は5日、モンゴル出身の平幕貴ノ岩(28)=千賀ノ浦=が4日夜に巡業先の福岡県内で付け人を務める同部屋の弟弟子に暴力を振るったことを明らかにした。貴ノ岩は昨年の元横綱日馬富士による傷害事件の被害者。貴ノ岩は巡業を離脱し、5日午後に東京・両国国技館で鏡山危機管理部長(元関脇多賀竜)から千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)同席で事情聴取を受け、暴力を認めて謝罪した。 相撲協会によると、付け人が忘れ物について言い訳をしたことが理由で、福岡県行橋市内のホテルで平手と拳で4、5発殴った。付け人に大きな外傷はないが、頬が腫れているという。警察への被害届は出していない。協会は6日に付け人から事情を聴く予定。今後、処分を検討する。 協会は昨年の傷害事件をはじめとする暴行問題などを受け、今年10月下旬に暴力決別宣言をしたばかり。発端となった事件の被害者だった貴ノ岩が加害者となったことに、芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「本人が一番、分かっているはずなんだけど。協会がどういう気持ちを持って対処しているかを自覚していない。さらに厳しく対処していく」と憤りを口にした。 ◆記者の目 被害者の気持ちは誰より分かっていたはず被害者の気持ちは貴ノ岩が誰よりも分かっているはず。元日馬富士から暴行を受け、心に深い傷を負った。そんな人間が、どうやったら暴力を振るえるのか。とてもじゃないが理解できない。 3月の春場所では、同じ貴乃花部屋(当時)の貴公俊が付け人に暴力を振るい処分を受けている。日本相撲協会は10月に「暴力決別宣言」をしたばかり。そんな状況において、いかなる理由があろうとも暴力を振るえばどうなるか。分からなかったでは済まされない。 元日馬富士による暴力事件のさなかにも、過去に貴ノ岩が付け人へ暴力を振るっていたという話は出た。ただ、そのときは被害者という立場に守られ、うやむやになっていた。取り下げはしたが、元日馬富士に慰謝料など約2400万円を求めて提訴した。今回、殴った付け人にどう償うのかを聞いてみたい。 日本相撲協会は人を育てる組織だ。1度や2度の失敗で切り捨てるようなことはしない。だが、一人前と言われる幕内の関取衆であり、何より暴行の被害者だった人間が加害者となる異常事態を引き起こした。これから気をつけますとでも言うのか。元日馬富士は自ら引退を決断している。 (岸本隆) <貴ノ岩義司(たかのいわ・よしもり)> 本名はアディヤ・バーサンドルジ。1990年2月26日生まれ、モンゴル・ウランバートル出身の28歳。182センチ、150キロ。千賀ノ浦部屋。相撲留学した鳥取城北高から貴乃花部屋に入門し、2009年初場所初土俵。12年名古屋場所新十両。14年初場所新入幕。昨秋の元横綱日馬富士による傷害事件の被害者。今年10月に元貴乃花親方(元横綱)の日本相撲協会退職により、部屋を移籍した。殊勲賞1回、敢闘賞1回。
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