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レジリエンス心理学⑧―スキルⅡ.思考のワナを避ける

スキルⅡ.思考のワナを避ける

人類が地球上でもっとも賢い生物であることは事実だが、それでも能力は無限大ではあるわけではなく、有限ものである。私たちの五感は脳が処理できるより莫大な情報を受けている。それを脳が処理可能にするために五感に入る情報を簡素化する必要がある。より優れた知覚処理をするために、思考の過程を端折ったり、近道をしたりするのだ。私たちはこの世界のあらゆるものを直接的には処理してはいない。

スピードを上げるためにヒューリスティックに、あるいは経験則をバイパスのように使ったり、情報の画素数を減らすように変換するのだ。その際バイパスを間違えたり、変換ミスを犯すリスクを背負っている。

そのためにわたしたち思考や信念において間違いを犯しやすい構造を持っている。ということだ。

私たちはこの世界についてきちんと理解しようとすると、かなり予測可能な間違いを犯してしまう。

ここで述べる8つの思考のワナは、そのままレジリエンスを阻害し、日々の生活の中で挫折やストレスに直接的に影響を与える。

 

A.8つのよくありがちな思考のワナ

アーロンベックは7つの思考のワナを明らかにし,このワナが特に抑うつに繋がり易いものとした。PRP(ペンシルべニア大・レジリエンシ―・プログラム)ではこれらは抑うつに加えレジリエンスを妨げるものでもあることを明らかにしたが、さらに「外面化」というワナを追加し8つにするのは妥当としている。

人はすべてのワナに陥るが、人によって特に陥りやすいワナが2個か3個はあるものであるから、それを知ることはレジリエントであるためには重要なことだ。

 

思考のワナ1.早とちりする

客観的なデータもなしに、自動思考的に「決めつけてしまい、仮説を作ってしまう」、つまり「早とちり」をして、何か間違いをした、悪いことが起きた、しかも自分が起こしたと個人化までしてしまう。

そこではティッカーテープ思考「自己効力感の喪失思考」から「悲しみ、落ち込み」の感情になり、さらには「未来への脅威」から不安、恐れを感じるようになる。

習慣的に早とちりをする人は、状況に衝動的に反応してしまう。十分に情報を得ないうちから行動を起こしてしまうからだ。直観は悪いものではないが、殆どは緊急行動を必要としないもので、いわば仮説のようなもので、より多くの情報を集めることで生きてくる。

直観は早とちりと同じようなもので、事実ではなく、仮説であり、検証されるべき理論として扱ってみることだ。仮説の検証には過去の経験を考慮するのが良い。思考のワナというのは、思考のワナは、結論を支持する証拠が殆ど無い時と自分の仮説が100%正しいと反応してしまう場合にはまってしまう。対策は思考のワナに反論することで、ちょっとの時間立止まって自省し、理論立てて考え、自分の感情をコントロールすれば、衝動も抑えられる。それでレジリエントに反応できるようになる。

 

思考のワナ2.トンネル視(視野狭窄)

人は誰でも自分の周りで起きるすべての物事を処理することは出来ない。すべての情景に注意を払うことは出来ないから脳は自動的に近道をして厳選した光景や周囲の状況を抽出したものだけを認識するようになっている。機会均等的に抽出しておればよいが、自分のおかれた状況の否定的な部分に意識を集中してしまうと、物事のマイナス面しか見なくなり視野狭窄に陥り、レジリエンスを弱めることになる。

また逆に自分に都合の良い情報だけをとりいれ、一致しないデータは無意識に無視すれば、同じく視野狭窄になリ判断を間違えレジリエンスを弱めてしまう。

:ネガティブなことは目に入りやすく、ポジティブなことは目に入りにくくなる。

逆に都合の悪い情報は極小化し、都合の良い情報は極大化する場合もある。

思考のワナ3.拡大化と極小化

ネガティブな部分に支配されるとポジティブな部分を無視してしまうようになる。逆にポジティブな姿勢だと、都合の悪い情報は極小化し、都合の良い情報は極大化する場合もある。

多くの人は自分が思考のワナにはまっていることに気付いていない。物事を拡大化、極小化する人はトンネル視・視野狭窄の人とは違い、殆どのことを認識し記憶しているが、出来事に自分の中で重要度をつけて過大評価したり過小評価する傾向がある。ネガティブを拡大しすぎるため、ABC分析でもネガティブになってしまい人生から意気込みを奪ってしまい、レジリエンスが減って行く。ネガティブな人は人から疎んじられる。

又ポジティブの拡大化とネガティブの極小化は人間関係を傷つけるのと同じように健康にも悪影響を及ぼす。レジリエンスは現実を正しく認識する能力に基づいて成り立っているため、極度の悲観主義者も楽観主義者も同じように苦しむことになる。

思考のワナ4.個人化

問題が起きると自分のせいであると反射的に反応する傾向を個人化という。B-Cつながりでみると個人化は自尊心を失う思考スタイルで哀しい気持ちにさせる。個人化は、友人や愛する人と対立した時に、他人の権利を侵害していると思い込み、罪悪感にも繋がる。個人化の問題は、問題点をすべて個人化することで、本当は自分のせいではない部分を見落としてしまうことである。そして自己効力感というレジリエンスは、その問題点に内在する原因を自分で変えられると信じるかどうかによって左右される。

個人化の傾向のある人は自分の思考を注意深くたどってみて問題の原因について自分でコントロールできて変えられる行動だと考えがちか、あるいは変わらない、深く根差した人格的な側面によるものだと考えるか見極めるのが良い。問題の原因が自分に関することで、かつ変えられないものだと考える組み合わせは二重苦でレジリエンスを蝕むものとなる。この段階で自分のティッカーテープ思考に注意を向ける必要がある。

思考のワナ5.外面化

外面化は個人化の反対でありレジリエントであるが、かといって何でも他人のせいにすれば良いというものではない。外面化する人は、逆境の要素として純粋に自分の行為によるもので、自分でコントロール出来るものでも認めることが出来ず、見逃してしまう。彼等は原因を常に外的要因に限定しているからだ。

思考のワナ6.過剰一般化

自分自身への説明が「いつも」「すべて」になり、客観性を欠く思考スタイルになレジリエンスを低下させる

:何でも「顔が醜い」せいにしてしまう。

思考のワナ7.マインドリーディング(思考察知)

私たちは周りの人びとが考えていることを知っていると思い込み、それに応じて行動するし、また自分が何を考えているかを他人が分かってくれていると期待して行動する。これらは「個人化」と「過剰に一般化」することと共時的に起こりやすくレジリエンスを大きく損なう。

思考のワナ8.感情の理屈づけ

自分の感情に対して誤った理屈をつけがちで、それに予て間違った結論を導き出してしまうことがある。

:プレゼンが終わりホッとしただけなのに、プロジェクトが成功したかのよな理屈をつけてしまう。スカイダイビングに挑戦するとき、直前になると死ぬ確立が高くなったように感じる。不安感情が500万分の一であった確立が2分の1にまで高まってしまう。

 

B.思考のワナを避けるスキルを実生活で使う

逆境にある感情が収まってからスキルの学習をし適応した方が簡単だ。

Aは客観的に具体的に書く。Bは本当に思ったことを書き検閲しないようにする、Cは感情と行動を冷静に書く。その時の感情がうまく思出せない時はB-Cつながりを参考にしても良い。思考のワナリストを手元においてティカーテープ思考がワナに落ちていないか検証する。殆どの人が数週間で陥り易いワナに気が付くものだ。

 

C.思考のワナを回避する簡単な質問

思考のワナに陥る時は、多くの場合に切羽つまった逆境にある時で、影響を受けやすいストレッサ―に直面した時に自分の思考に良く耳を傾けることだ。

思考のパターンを見つけることと同時に、自分の感情と行動に対して思考のワナがどう影響しているか気づくことが必要だ。自分で思考のワナを感知できるようになったら、思考のエラーを捉えるように練習をし、ワナを見極めたら、すぐに自分自身にワナを回避できる質問を問いかけてみよう。これでワナを回避できるようになればレジリエンスに打撃を与える間違った思い込みは抑えやすくなるだろう。

自分にいくつかの簡単な質問をすることで自分の思考のワナから抜け出すことが出来る。

  • 1) 早とちり:あなたが早とちりしがちなら、目標はスローダウンすることだ。そして<いったい何を根拠にその結論を出したのか?>自分自身に問うてみるとよい。

その結論は確かなものだろうか、それとも憶測なのだろうか?

 

2)トンネル化・視野狭窄:自分がトンネル視になりやすい瞬間を振り返るときには、全体像を見ることに注意を向け直す必要がある。<全体的に状況をみて公平な判断とはなんだろうか?全体像はどのようなものだろうか?>これらの質問は、自分の視野を広げ、トンネルの向こう側へ抜けるのに役に立つことだろう

3)過剰に一般化:自分が過剰に一般化することにきづいたら、関連するその他の行動についてもっと注意深く見てみることが必要だ。

<今自分が正しいと信じていることよりもっと範囲を狭めた説明が出来るだろうか?この状況を説明する具体的な行動は何かあるだろうか?自分の(もしくは他の誰かの)人格そして/または価値を非難することは理に適っているだろうか?〉と問うてみよう。

4)拡大化、極小化:悪いことを拡大化し、良いことを過小化することがあるだろうか?そうであればバランスをとるように努力する必要がある。<何か良いことが起きたことはないだろうか?自分が上手くやったことはないだろうか?>逆に、ネガティブなことを簡単にやり過ごしてしまう癖があるなら、<問題を見過ごしていないだろうか?ネガティブな要素で、その重要性を見落としていることはないだろうか?〉と問うてみるがよい。

5)個人化:あなたが個人化する人であれば、ものごとを外向きに見ることを学ぶ必要がある。自分に問うてみよう、<自分以外の誰か、あるいは何かがこの状況に加担したということはないだろうか?問題のどれくらいの部分が自分によるもので、どれくらいの部分が他人によってもたらされただろうか?>

6〉外面化:逆にあなたが外面化する人であれば、自分自身に責任を持ち始める必要がある。自分に問うてみよう。<自分はどれくらいこの状況に加担しただろうか?問題のどれくらいの部分が他人によるもので、どれくらいの部分が自分によってもたらされただろうか?>

7)マインドリーダー(考想察知):あなたがマインドリーダーであるなら、自分から意思表示して他人に質問することを学ぶ必要がある。しかしまず、自分に問うてみよう。<自分はこの思考または感情を直接、明確に相手に知らせただろうか?関連するすべての情報を伝えただろうか?自分の必要性や、目標を他人が必死になって分かってくれると期待しているのではないだろうか?>

8〉感情の理由づけ:感情の理由づけに陥るひとであるならば、事実から感情を切り離して考える練習をする必要がある。自分に問うてみよう.<今までに、自分の感情が状況における事実を正確に反映していなかったことはあっただろうか?事実を知るためにはどのような質問を自分にするべきだろうか?>

まとめ

*8つの思考のワナは、レジリエンスを妨げる危険性を持つ。

*思考のワナの特徴を知り、自分のティッカーテープ思考にどの思考のワナが存在するかを見極める子たが大切である。

*思考のワナは、簡単な問いを自分に投げかけることで回避できる。