今日はかれこれ10年ぶりくらいに、どうしても行きたかった朝比奈御大のお墓に参る。
厳粛な気持ちに包まれた。
でもお墓、だいぶくたびれたなぁ・・・。
近くの神社で、『薄暮』の完成と今後のご加護をお願いしておいた。
その後引いたおみくじがリアルすぎて・・・(笑)。
朝比奈御大の「ブル8」を、僕は4回聴いている。
一回目は初めて御大を実演で聴いた、92年。
二回目は、興奮し涙した94年。
三回目は、おそらく96年。
四回目は、フィナーレで変な事故があった98年。
しかし、綺麗に二年ごとに演奏されている。
どれだけ御大が思い入れのある曲だったか解るだろう。
どれが良かったかと言えば、圧倒的に94年だ。
やはりシンフォニーホールが一番いい響きになるのだ。
しかし録音含めてのベストと言えば、どれになるだろう?
悩ましいところだ。
甲乙つけがたい、と言えば聞こえはいいが、どれも実演の感動を再現できていないというのが本音だ。
傷がないということならばN響との伝説的な公演だ。
実に優れた演奏だが、しかし実演を知っている者からすれば、少し響きが硬い。
ホールの影響もあるのだろうが。
そうなると新日フィルとの録音となるのだろうが、これもやっぱり少し硬い。
ブルックナー演奏の難しさを感じさせる。
そうなるとどうしても、大フィルとの優雅でたおやかな音を欲してしまうのだ。
だから御大の「ブル8」ベストは、やっぱり2001年の演奏を挙げるべきだろう。
この正真正銘の「最後」の演奏で、御大は何度もにこやかな表情を浮かべた。
ああ、このオケもここまで仕上がったか。俺の表現もここまで極まったか、という、安堵と満足の表情だ。
この名演があって、俺にはもうやり残したことはない、と気が抜けて、即刻御大が天国へ召された、という想像までしてしまう。
御大がいなくなってもう17年。
彼の抜けた穴の大きさを改めて感じる。
僕らは本当の表現をしているのだろうか?彼の遺した音を聴く度に、なんとも残念な思いに打ちひしがれる。