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現在の「技能実習生」の扱い方を見れば、かつての「徴用工」や「慰安婦」の実態も容易に想像できる

日本で働く外国人技能実習生の悲惨な実態が次々に明らかになっている。

ある寺院には、2012年以降に死亡したベトナム人の若者たちの位牌だけで81柱が並んでいる。

www.asahi.com

 東京都港区にある寺院「日新窟」。棚の上に、ベトナム語で書かれた真新しい位牌がぎっしりと並ぶ。2012年から今年7月末分までのもので81柱。この寺の尼僧ティック・タム・チーさん(40)によると、その多くが、20、30代の技能実習生や留学生のものだ。今年7月には4人の若者が死亡。3人が実習生、1人は留学生で、突然死や自殺などだった。

 7月15日に自殺した25歳の技能実習生の男性は、会社や日本に住む弟、ベトナムの家族に遺書を残していた。塗装関係の仕事をしていたが、「暴力やいじめがあってつらい」とつづられていた。「寂しい。1人でビールを飲んでいる」と弟に電話があった翌日、川辺で首をつっているのが見つかった。

もちろんこれは氷山の一角に過ぎない。ベトナムでは、現地の日本大使館書記官が、技能実習生制度は「ベトナムの若者の人生をメチャクチャにしている」と警鐘を鳴らすほどの事態に至っている。

www.nikkan-gendai.com

さらに、今年前半の半年だけで4,279名の技能実習生が失踪。

失踪の背景には、最低賃金以下の異常かつ違法な低賃金、職場での差別やいじめ、暴力(性暴力含む)の横行がある。

しかも、在留資格の制約で技能実習生には転職の自由がなく、過酷な職場から逃げようとするとそれ自体が違法行為となり、入管収容→強制送還となってしまう。

「外国人技能実習制度」の実態は、「我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力する」(by厚労省)などというご立派な建前とはまるで違う。これは、弱い立場の外国人を、搾取されても逃げることのできない安価な労働力として企業や農家に供給する現代の奴隷制度にほかならない。

その背景には、自分たちより「遅れている」と見なすアジア諸国の人々への、日本人の根深い差別意識がある。

そういえば、安田浩一氏の著書『差別と貧困の外国人労働者』の中に、次のような印象的な一節があった。[1]

 本文へ入る前に、結論めいたことをひとつだけ述べたい。
 外国人労働者の姿、置かれた環境は、その国(受け入れ国)の民度を測る重要なモノサシになるのではないか、ということだ。少なくとも私は、外国人労働者が漏らすため息と憤りの言葉から、あらためて「日本」を思った。

敗戦による「民主化」から70年以上が経っても、なおこのザマなのだ。「人権」など問題にもされなかった戦時中における「徴用工」や「従軍慰安婦」(日本軍性奴隷)たちへの扱いがどのようなものだったかは、容易に想像できる。


[1] 安田浩一 『差別と貧困の外国人労働者』 光文社新書 2010年 P.7

 

ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)

ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)

 
従軍慰安婦 (岩波新書)

従軍慰安婦 (岩波新書)

 
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  • あああ

    >声をあげ始めた外国人労働者を日本人がバッシング

    わかるんです。労働環境は糞です。変えないといけません。封建秩序は敵です。
    ところで、被害を訴える実数が多くなれば労働者側に嘘をつく存在が出て来るでしょう。あるいは堕落してもっと金が欲しいという風な存在です。数を恃んだ暴力行為もそうでしょう。
    権力側はそれを待っている。その嘘や堕落の甚だしい例をメディア・スクラムさせてバッシングに持っていこうとするでしょう。おそらく

  • 通りすがりの元ネトウヨ

    日本人流の交渉術の結果なのかなぁと思いました。

    1. 「ホントは俺たちはお前たち外国人を入れたくないのだ。」
    2. 「だが、寛大な我々は新天地を欲しがるお前たちを受け入れてやった。」
    3. 「であるのだから、お前たちは過酷な環境にも耐えるのが筋である。」

    3が問題になりそうなとき or なったとき、1と2を悟れ!と相手に迫るのが日本人流の交渉術で、かつ、空気を読めという非言語的コミュニケーションなのではないかと。
    大抵は、契約を無視するために用いられ、おそらく最初から守る気もないのではないかと。

    実習生のの方々に「嫌なら出て行け」というのは酷い話ですが、このロジックだと一種の交渉術であり、こちらに正義がある、という義憤ですら表明してみせられる倒錯が説明できるようにも思えます。

    今回の例に限らず、似たような例が社会に浸透しすぎて、我々自身が意識することも出来ず、なかなか改善が難しいものなのかもしれません。
    我々が学び改善の契機とするよりも、郷に入っては郷に従えの名の下「移民」に学ばせる流れになっているようにも感じます。。。

  • 猫星人 (id:nekoseijin)

    声をあげ始めた外国人労働者を日本人が
    バッシングする状況が拡大しなければいいですが。日本人の多くは戦後やっと手に入れた労働者の権利をすっかり忘れて、同国人の奴隷となっていますから。
    最近の日本では物事の是非よりも、とにかく弱い者にストレスをぶつけようとする人達が多いし。

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