インターネットによって、消費者の選択肢は増えた。だが、巨大IT企業の独占が進み、不公正な競争やデータの不適切な利用などの問題も出てきている。利用者は守られねばならない。
新語・流行語大賞の候補にもなったGAFA。米国のIT大手四社グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コムの頭文字を並べた言葉だ。インターネットを通じて、検索やショッピング、会員制交流サイト(SNS)などのサービスを提供する。利用者に場を提供するのでプラットフォーマーとも呼ばれる。
事業内容は異なるが、大量のデータを強みに、ユーザーごとの広告を出したり、商品を薦めたりといったビジネスが成功した。
世界中で何億人もが使うが、ほとんどの人は自らのデータがどう使われているのかを知らない。
例えば、フェイスブックの利用者が賛意を示す「いいね!ボタン」の分析から、支持政党から人格まで分かるという研究がある。米大統領選挙でトランプ陣営に雇われたコンサルタント会社は、この研究データを利用して共和党支持者に投票を、民主党支持者に棄権を勧める効果的な広告を出したのではないかと疑われた。
プライバシーを重視する欧州は規制に動いている。欧州連合(EU)は今年五月から企業に個人データ保護を求める一般データ保護規則の運用を始めた。大企業はEU域内の個人情報を域外に持ち出すことが原則、禁止された。
中国にも巨大IT企業があり、中国政府は治安に利用している。米中は規制や課税に消極的だ。
政府は七月に検討会を設置した。検討会の議論では、プラットフォーマーを社会的なインフラと評価する一方、独占を背景にした取引先への圧力などは問題だとしている。
データの収集や利用に対する規制も考えるべきだろう。利用者がどのような情報が集められているのかを知り、修正を求められる仕組みが望まれる。
インターネットには国境はない。しかも、データは人が発信するものだけではない。車の自動運転技術や産業用IoT(モノのインターネット)、ロボットは、関係者がデータを共有することで改善される。日本の産業界が強い分野でもある。プライバシーを守りながら、新技術を育てる。幅広い視点で報告案をまとめてほしい。
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