巨大IT企業への課税問題は、これまでの税の世界にコペルニクス的転回ともいうべき変革をもたらすものだ。G20首脳会合では利害調整に手間取ったが、公平性の観点から議論を急ぐべきだ。
アルゼンチンでの二十カ国・地域(G20)首脳会合では、国際的なデジタル課税制度について日本が議長国を務める二〇一九年中に議論を進め、二〇年までに最終報告をまとめるべく連携を確認するにとどまった。
しかし、巨大IT企業の課税逃れはもはや看過できないレベルにある。多国籍IT企業は国境を越えて稼いでいるが、多くの国では入るべき税収が入ってこないうえ、まじめに納税している企業との間で競争上の不公平が生じている。
欧州委員会によると、従来型ビジネス企業の法人税負担率が23・2%なのに対し、デジタルビジネスは9%前後(一七年)と、二倍以上の開きがあった。「収益に見合った税金を納めていない」との批判を裏付けるものである。
課税制度の議論が進まないのは、多国籍IT企業の本拠地である米国や、それらの企業の拠点を誘致するアイルランドなど軽課税国の反発が強いためだ。
法人税は企業の事業所や工場などのある場所で課税するのが国際ルールの原則である。しかし、デジタル経済ではモノの取引がデジタル財の取引に変わる。書籍や音楽はネット経由、広告も紙媒体からオンライン広告が主流になる。
つまり事業所や工場など課税の根拠となる恒久的な施設を置かなくても、オンラインで国境を越え、課税されることなく稼げる。
さらにデジタル経済では、著作権や特許権などの無形資産を低税率国やタックスヘイブン(租税回避地)に移すことで利益の圧縮操作が比較的容易にできてしまうのである。
デジタル課税については、欧州諸国が議論をリードしてきた。
欧州委員会は今春に暫定案を示し、英国は十月末に課税方針を決めた。利益に対してではなく、売り上げに対し2~3%の税率をかける。英国は二〇年度から導入する方針だ。
多国籍企業の税逃れを防ぐにはできるだけ多くの国の共通ルールが望ましい。日本企業も影響を受けるため慎重論もあるが、最善を目指して議論を深めるべきだ。
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