3、「・・・いかなる主張もすることができないものとする」 今回の韓国最高裁の判断は、「『完全かつ最終的に解決された』『いかなる主張もすることができないものとする』の中に「反人道的な不法行為をした日本企業に対する慰謝料は含まれていない」としています。 判断の要点は ①協定は財産権と民事請求権に関するものだが、強制動員被害者の慰謝料は入っていない。 ②協定で日本は日本の植民地支配の違法性を認めておらずそれを前提にした慰謝料は協定の範囲に含まれていない。 という事です。 日本では「強制動員被害者の請求権は、協定の適用対象に含まれない」という歪曲した報道がなされていますが、こんな歪曲をしてしまえば対立しか生みません。 (産経新聞:徴用工訴訟、日本企業が敗訴 韓国最高裁が賠償命令 「個人請求権消滅せず」https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E5%85%83%E5%BE%B4%E7%94%A8%E5%B7%A5%E3%81%B8%E3%81%AE%E8%B3%A0%E5%84%9F%E3%82%92%E5%91%BD%E3%81%98%E3%82%8B-%E9%9F%93%E5%9B%BD%E6%9C%80%E9%AB%98%E8%A3%81%E3%81%8C%E6%96%B0%E6%97%A5%E9%89%84%E4%BD%8F%E9%87%91%E3%81%AB/ar-BBP5G6S#page=2) 最高裁判断は「強制動員被害者の慰謝料は、協定の適用対象に含まれない」です。 これを間違えてはいけない。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー (大法院報道資料画像) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー では日本政府が根拠にしているb「・・・一方の締約国及びその国民の財産,権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくものに関しては,いかなる主張もすることができないものとする。」の「いかなる主張もすることができないものとする」は何を対象としているでしょうか? 「締約国及びその国民の財産,権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権」としています。 これは要するに、例えば日本人が帰国する前に持っていた家など(財産)、未払いの給与や土地建物工場などの権利(権利及び利益)などの「すべての請求権についてはいかなる主張もすることができない」と述べているのです。 ゆえに「慰謝料はそこには入らない」と韓国最高裁は判断したのです。 実は、日韓協定締結時の外務省の認識も、今日の韓国最高裁の判断とあまり変わらないのです。 締結の直前である1965年6月18日の外務省の認識。↓ 「完全に解決した」が「財産、権利、利益」の問題であって、「賠償」でないことがよくわかる。 (以上は吉澤文寿論文「日韓請求権協定と慰安婦」から作成) 外務省は、今日では違う意見らしいですが、ここらで正しい解釈に立ち戻っていただきたいものです。 4、国際法の専門家たちはどう判断して来たか? これまで日本政府は戦後補償問題が俎上に上るたびに、「日韓協定により解決済」を主張してきました。しかしその度に、国際法の専門家によって、否認されているのです。 国連人権委員会クマラスワミ報告書(1996年)は次のように法解釈をしています。 「サンフランシスコ講和条約も二国間条約も、人権侵害一般に関するものでないばかりか、とくに軍事的性奴隷制に関するものでもない。当事国の『意図』は『慰安婦』による特定の請求を含んではいなかったし、かつ同条約は日本による戦争行為の期間中の女性の人権侵害に関するものでもなかった。したがって、特別報告者の結論として、同条約は、元軍事的性奴隷だった者によって提起された請求を含まないし、かつ日本政府には未だに国際人道法の引き続く違反による法的責任がある。」 マクドゥーガル報告書(1998年)は 「この条約が当事国間の『財産』請求問題の解決を目指した経済条約であり、人権問題に取り組んだものでないことは明白である。…韓国側代表が日本に示した請求の概要を見れば明らかなとおり、この交渉には、戦争犯罪や、人道に対する罪、奴隷条約の違反、女性売買禁止条約の違反、さらに国際法の慣習的規範の違反に起因する個人の権利侵害に関する部分は全くない…したがって、日韓協定第二条で使用される『請求権』という用語は、このような事実が背景にあるという文脈で解釈しなくてはならない。日韓協定に基づいて日本が提供した資金は、明らかに経済復興を目的としたものであり、日本による残虐行為の個々の被害者に対する損害賠償のためのものではない。1965年の協定はすべてを包含するような文言を使用しているが、このように、二国間の経済請求権と財産請求権のみを消滅させたものであり、個人の請求権は消滅していない。したがって日本は、自己の行為に現在でも責任を追わねばならない。」 (山本弁護士 https://blogs.yahoo.co.jp/kounodanwawomamoru/63926959.htmlより)このように、「経済協力により戦後補償問題が完全に解決した」との日本政府の主張は、国際社会に完全に不信されているのです。 にも関わらず日本政府は、同じ主張を繰り返していて、決して変えようとはしません。 5、悪事を認めない心が産んだ対立 1965年の日韓協定はマクドゥーガル氏が述べたように、「日本による残虐行為の個々の被害者に対する損害賠償のためのものではない」のです。 もし、1965年の時点で日本政府が「日本は、韓国を植民地にし、数々の暴虐をなしたので、それを賠償するためにこのお金を払います」と謝罪・明言して条約にサインしていれば今日起こっているような問題は起こらなかったでしょう。ところが日本側は、一向に植民地支配の悪業を認めず、「経済協力」という名称にこだわりました。それどころか交渉の当事者久保田 貫一郎は「日本側のほうでは総督政治のよかつた面、例えば禿山が緑の山に変つた。鉄道が敷かれた。港湾が築かれた、又米田……米を作る米田が非常に殖えたというふうなことを反対し要求しまして、韓国側の要求と相殺・・」と述べる始末でした。http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/JPKR/19531027.O1J.html 何か、悪い事をしたとは思っていないわけです。 李承晩は対話の前提として、まず日本の謝罪、「過去の過ちに対する悔恨」を日本側が誠実に表明することが必要だ」としましたが、米国に促された朴大統領は歴史認識問題や竹島(独島)の帰属を棚上げにして、合意に至りました。こうして10数年間ももめたのに、結局はお金を渡したというだけになってしまいました。ゆえにいずれは、この問題が再燃することは分かり切った話でした。そして今日、竹島(独島)の帰属問題も含めて、最終的に歴史問題全体を解決して行かなければならない時代になったわけです。 |
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