今回の韓国最高裁判所(大法院)の判決について、日本政府は企業に「支払いをしないように」要請しています。そんなに対立を煽ってどうしようというのでしょう? ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであって,極めて遺憾であり,断じて受け入れることはできません。」とはかなり強い拒否を表しています。 会長である安倍氏を含め、ほとんどが神道政治連盟国会議員懇談会の会員で構成されるこの内閣総体の意志であろうと思います。 拒否する根拠は、「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」(1965年12月18日発効)ーいわいる「日韓協定」の以下の部分です。 第二条 3 2の規定に従うことを条件として,一方の締約国及びその国民の財産,権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくものに関しては,いかなる主張もすることができないものとする。 A「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認」 B「いかなる主張もすることができないものとする。」 これについて述べてみたいと思います。 1、「完全かつ最終的に解決された」の意味について 1991年ころ、敗戦直後からシベリアに抑留されて強制労働に苦しんだ人達が、訴えを起こそうとする動きがありました。そこで「日ソ共同宣言」に関して国会で質疑があり、日本政府は「日ソ共同宣言第六項におきます請求権の放棄という点は、国家自身の請求権及び国家が自動的に持っておると考えられております外交保護権の放棄ということでございます。したがいまして、御指摘のように我が国国民個人からソ連またはその国民に対する請求権までも放棄したものではないというふうに考えております。」(3月26日)と答えました。 請求権は放棄してないという解釈を示したのです。 それから5か月後、今度は日韓請求権協定について聞かれると日本政府(柳井俊二)はやはりこう答えたのです。 「・・・先生御承知のとおり、いわゆる日韓請求権協定におきまして両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決したわけでございます。その意味するところでございますが、日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます。」(1991年8月27日 参議院予算委員会) つまり「完全かつ最終的に解決された」と書いてあっても、それは「外交保護権を相互に放棄」を意味しており、「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させてはいない」というのです。 これが「完全かつ最終的に解決された」の意味であります。 2、外交保護権とは? では「外交保護権」とは何でしょうか?これについて、『デジタル大辞泉』の解説では 「外国にいる自国民が受けた損害について、本国がその国に対し外交手続きによって適切な救済を与えるよう要求すること」 また先ほどの3月26日の答弁でも、政府は 「(高島有終君) 今先生御指摘の個々の国民個人の要求を受け付ける窓口というその窓口の意味合いでございますけれども、これが、先ほども御説明申し上げましたように、政府が我が国国民の利害を対外的に代表するような形で、すなわち外交的保護権を行使するというような意味合いでいわばソ連側と折衝する上での窓口という趣旨でございますと、既に何度も御説明申し上げておりますように、そのような意味での請求権は放棄しているわけでございますので、そのような意味合いにおける窓口を外務省に設けるということは、私どもはこの日ソ共同宣言の趣旨からしまして適当ではないんではなかろうかというふうに考えているところでございます。- 」(参 - 内閣委員会 - 3号 平成03年03月26日) と答えました。 ここで政府は「外交的保護権を消滅しているのでソ連側と折衝する事はできない」という意味のことを述べています。要するに「外交保護権」とは、政府の外交手段により請求すること、です。 より厳密な定義では、 「外交保護権とは、自国民に対して加えられた侵害を通じて、国自体が権利侵害を蒙ったという形で、国が相手国に対して国際法レベルにおいて有する請求権」(『平和条約における国民の財産及び請求権放棄の法律的意味 条規』1965-4-6付外務省文書) 私人の代理人ではなく 「国は自己の裁量により、この種の請求を提起するか否かを決定出来、また相手国の請求の十足に関してもどのような形、程度で満足されたものとするかそれを被害者にどう分配するか等につき、完全に自由に決定することができる。」(同上) としている。(以上は『「慰安婦」バッシングを越えて』所収・吉澤文寿論文「日韓請求権協定と慰安婦」より抜粋) そこでこういう答弁になるわけです。 「外交保護権」とは何か?非常によくわかる答弁です。 それを消滅させたと述べているのです。 では、政府の外交手段によらない解決はどうでしょうか?それは当然OKであり、「個人の請求権は消滅していない」と1991年8月27日に政府が述べたのはそういう事です。 Aの「完全かつ最終的に解決された」の意味と「外交保護権」の意味について、今我々は理解しました。 ではBの「・・・いかなる主張もすることができないものとする」はどういう事でしょう? (つづく) |
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