~ もう大人なんだから・・・・  ~


 


    
 

 頂いた反論の中で、最も多いのが、案の定というべきか、「もう大人なんだから、自分のことは自分で解決すべき」というものでした。要するに、義務教育などの期間におこる「いじめ」の延長のようにお考えなのでしょう。だから、子供だから大人が面倒見よう、大人なら自分で解決しろよという感じなんでしょう。
 

 いじめというのは、年齢に関係なくあります。むしろ、大人が助けてくれる可能性がある青少年のいじめの方が解決が容易である面もあるのです。特に、大学の場合は、何度も繰り返しましたように、解決するためのシステムをもっていないので、そのしわ寄せを弱い立場の者が受けるという構造になっています。
 

 先日、ある国立大学の理学部系の4年生が登校拒否になったという件について、最近の若い人たちは挫折を知らないのではないかという意見がありました。おそらく、この方は、実情をご存知ないのだと思います。
 

 この件について、最も注目すべきは、登校拒否が4年生になってからという点です。4年生といえば、もう卒業まであと僅かです。ここで、卒業を逃したら、これまでの3年(以上?)の間の努力が水の泡です。それでも、もう出てこれないというのは、学業についていけなくなかったとかいう挫折でないことはお判りかと思います。
 

 つまり、大学4年になると、卒業研究のために研究室に配属されます。この研究室というのは、ドロドロした人間関係の渦巻く場なのです。わりとリーダーがしっかりしていて信頼されていると、健康的な場になることも多いのですが、かなりのリーダーは、人間的に欠けているところを持ち、それほど信頼されていないと思います。私の経験では、研究室のリーダーの8割以上が、下の者から軽蔑されているという風に感じました。もちろん、大学や学部によって差はあるでしょうが。
 

 おそらく、4年になって登校拒否になった方の原因は、特に指導教官との人間関係のトラブルであると見ています。私の経験では、そういう例の9割は人間関係に原因であり、他には、急に別の仕事がやりたくなったとか、家庭の事情とかで中退した人が僅かにあるくらいのもので、突然学力が研究室についていけなくなったというのは殆どないと思います。
 

 ここで、人間関係の問題については、「もう大人なんだから・・・」という安直な解決では済まないことは、繰り返し述べてきたとおりです。子供のように、大人が「仲良くしなさい!」と言えばすむわけではなく、教官の強大な権力やメンバー同士の利害関係とかが複雑に絡んできて、容易には解決しないのです。 
 

 むしろ、こういう世間の誤解が、問題を解決しにくくしている最大の要因なのかもしれません。