G20首脳会合は「反保護主義」を首脳宣言に盛り込めずに終わった。それでも世界二十カ国・地域の首脳が顔を合わせ、議論する場であった。G20の重要性と意義を改めて思い出してほしい。
一日に閉幕した二十カ国・地域(G20)首脳会合は、米国の反対で昨年の宣言に盛り込まれた「保護主義と闘う」の文言が削除され、保護主義への対抗姿勢を明確にできなかった。
G20は二〇〇八年、リーマン・ショック後の金融危機への対応で初めて開かれ、成果をあげた。ただその後は参加国・地域の数の多さ、先進国と新興国との立場の違いから議論が停滞し、最近では存在意義を疑問視する「無用論」が聞かれ、今回もそうだった。
G20は世界の国内総生産(GDP)の九割、貿易総額の八割、加盟国の総人口は世界の約三分の二を占めている。
保護主義の台頭やグローバリズムへの批判、各国に広がる分断やポピュリズムへの危機感の中、反保護主義を明確にできず、「無用論」に拍車をかけかねない首脳宣言は、極めて残念といえる。
ただその一方で、日米欧、中国、ロシアからサウジアラビアまで、世界の経済、政治に影響力を持つ先進国、新興国の首脳たちが繰り広げた、目まぐるしいほど数々の会談や会場での立ち話に注目したい。
トランプ大統領と習近平主席の米中はもちろん、安倍晋三首相との日中、日ロ、そして中国とロシアとインド、日本と米国とインド、米ロ両大統領の立ち話。
経済、貿易、安全保障など今後の行方に大きくかかわる数々の会談、接触はG20が果たすもう一つの役割を示したといえるのではないか。
ドイツのメルケル首相は飛行機のトラブルで遅れたが、各国の物理的距離は確実に縮まり、首脳たちはすみやかに頻繁に顔を合わせ、直面する課題で意見交換できる時代になっている。
「無用論」にもかかわらず、今回のG20は国際協調体制の崩壊の歯止めとして、最低限の役割を果たしたともいえるだろう。
議長国の日本は、先進七カ国(G7)首脳会議以上の広がりを持つG20を米中の緊張緩和、保護主義の抑制、多国間主義の維持につなげる大切な役割を担う。周到な準備が必要だ。
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