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【社説】

韓国徴用工判決 今こそ政治が動く番だ

 三菱重工業に対し、戦時中の強制労働への賠償を求める韓国最高裁の確定判決が相次いだ。このまま放置していては関係が悪化するばかりだ。司法判断とは別に、政治は溝を埋めなければならない。

 徴用工関連では、十月末に新日鉄住金に賠償を命じる大法院(最高裁)判決が出されたばかり。

 日本政府は一連の判決について「一九六五年の日韓請求権協定で解決済み」「日韓関係の法的基盤を根本から覆す」と批判し、国際裁判などによる対抗措置も示唆している。

 一方、韓国の司法は、六五年の合意は強制動員被害者の慰謝料請求権を含まないとの判断に立っており、完全に平行線だ。

 元徴用工訴訟は、地裁や高裁で十件以上が係争中で、来月以降も判決が続く。日本企業が敗訴する流れは止まらないとみられる。

 さらに、韓国政府は、慰安婦を巡る日韓合意に基づき設立した「和解・癒やし財団」の解散を発表している。

 さっそく、関係の冷え込みを予兆させる出来事が起きた。

 埼玉県秩父市が十二月から予定していた韓国・江陵(カンヌン)市との職員相互派遣を、外部からの抗議を受けて中止したのだ。

 日韓関係は年間一千万人が往来するまで発展している。政治的対立が、交流事業にまで波及するのは大変残念だ。両国の経済界を中心に、影響を心配する声が出ているのも当然だろう。

 六五年の協定は、元徴用工に関する外交的な合意である。しかし問題の本質は、意にそわない労働に駆り出された人たちの人権を、どう考えるかでもある。

 韓国政府は、判決を尊重しつつ、対応策を取りまとめているところだという。今こそ政治が知恵を絞る時だろう。

 これに関連して、康京和(カンギョンファ)・韓国外相が訪日して、日本側と協議する考えを示した。

 日韓は北朝鮮の核問題でも協力する必要がある。外交当局が対話を重ねることは欠かせない。

 これに対し、河野太郎外相は、「(康外相は)ただ来てもらっても困る」との趣旨の発言をしたと報じられた。これに韓国外務省が「事実なら、非外交的で不適切」と反発した。

 感情的な発言で亀裂を深めることは、もちろん賢明ではない。

 米国務省も、事態打開のため日韓間での対話を促している。これ以上の摩擦の激化は、両国民とも望んではいないはずだ。

 

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