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【社説】

EU離脱案合意 ボールは英国の側に

 英国が欧州連合(EU)と離脱協定案で正式合意したが、国内の反発は強く、英議会承認の見通しは立っていない。混乱が大きい合意なき離脱や強硬離脱に至らないよう、かじ取りを進めてほしい。

 英国のEU離脱は来年三月二十九日に迫る。

 今月二十五日のEU首脳会議での合意では、離脱による激変緩和のための移行期間を二〇二〇年末まで設定。紛争の歴史を持つ北アイルランドと地続きのEU加盟国アイルランドの国境問題で、解決策が見いだせない場合、英国全体をEU関税同盟に残す選択肢も盛り込んだ。英国は、未払い分担金など三百九十億ポンド(約五兆六千五百億円)の「手切れ金」も支払うとしている。

 移行期間中も英国はEU単一市場や関税同盟に残る。

 事実上の離脱先送りともいえるが、EUでの議決権を失った上、ルールには一方的に従わなくてはならなくなる。

 与党保守党の強硬離脱派は強く反発し、来月中旬にも見込まれる英議会承認手続きでの可決の見通しは立っていない。

 離脱案が否決された場合、合意なき離脱を避けるためには合意の修正案が必要になる。メイ首相が議会を解散し、総選挙に踏み切る可能性もある。

 合意なき離脱に突入し、英国がEUから抜けることでこうむる打撃は経済、生活全般へと計り知れない。EU単一市場や関税同盟からいきなり脱退する強硬離脱による混乱も大きい。

 一六年六月の英国民投票では、根拠のない反EUキャンペーンも繰り広げられ、離脱派がわずかな差で勝利した。

 しかし、「きょう国民投票があればどちらに投票するか?」と問うた最近の世論調査では、残留が54%で離脱の46%を上回った。

 本来なら、再び国民投票を実施するのが筋だ。

 ただ、いずれの展開でも手続きや法整備などに時間を要し、離脱期限の来年三月までに間に合わない可能性が高い。

 混乱を避けるため、英議会はEUとの間で合意した離脱案で軟着陸を図るよう、結束してほしい。移行期間中に、さらにいい知恵も浮かぶかもしれない。

 EU側は再交渉に応じない考えを明確にしている。しかし、ケース・バイ・ケースで柔軟に対応してほしい。欧州全体、さらには国際社会にも波及する打撃を、最小限にすることが最優先である。

 

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