【ゴルフ】小平、有終V 4番目の年少記録で3冠 美保夫人は歓喜の涙2018年12月3日 紙面から
◇日本シリーズJT杯<最終日>▽国内男子ツアー最終戦▽2日、東京都稲城市・東京よみうりCC(7023ヤード、パー70)▽曇り、9・9度、北1・3メートル▽賞金総額1億3000万円、優勝4000万円▽30選手▽観衆7807人 4月に米ツアー初勝利を挙げた小平智(29)=アドミラル=が日本タイトル3冠を達成、平成最後の日本シリーズで有終の美を飾った。4打差を追ってスタートし、64をマーク。通算8アンダーで並んだ3人でのプレーオフ(PO)1ホール目でパーをセーブし、勝ち切った。ツアー通算7勝目。今平周吾(26)は8位だったが、獲得賞金額を1億3900万円あまりとし、初の賞金王を決めた。 グリーンの傾斜がきつくて速く、日本で最も難しいパー3ともいわれる18番。POで下り1・5メートルのパーパットを入れた小平は、2018年の最後に復活した姿を見せられたことがうれしかった。グリーンサイドでは女子プロの古閑美保夫人が泣き崩れていた。 4月に米ツアーのRBCヘリテージで優勝し、米国に主戦場を移した。美保夫人は「いつも楽しそうにゴルフをしている」と話すが、実は苦しんでいた。優勝後に出た12試合は予選落ち8回。米ツアーの選手は高い球筋でグリーンを攻め飛距離も出る。いつの間にかそんなゴルフを求め、一日5~6時間かけてスイングの試行錯誤を繰り返し、そして失敗していた。 だが、2018~19年シーズンが始まる10月のある日、大溝雅教キャディーから「もっと適当にやったら」と言われ、気が付いた。そういえばこれは、自分が勝ったときのゴルフではない。以来、優勝以前のシンプルなスイングを心掛け、パターも元に戻した。新シーズンでは出場4試合とも決勝ラウンドに進んだ。 国内ではそれ以降、初の試合だった。初日に2位発進し、2日目はやや乱れたが、3日目終わって首位に4打差と射程圏。首位にいた堀川未来夢は日大の後輩だが、自分が戻ってきたときは若い選手をつぶしてやる、と思っていた。「そうしないと、ツアーのレベルが上がらないから」。4番でグリーン手前20ヤードからチップインバーディー。「米国でいろんな芝を体験し、対応できるようになった」という経験の一打だ。6番パー5では同組の今平に見せつけるようにグリーン右の斜面に当ててピンそば1メートルに乗せ、イーグルも決めた。 日本タイトルは日本ゴルフツアー選手権、日本オープンに続いて3冠目。尾崎将司、丸山茂樹、中嶋常幸に次いで4番目の年少記録だ。自分のゴルフをやる。強さを証明した小平は、目標であるマスターズ優勝を目指し、年明けから米ツアーに戻る。 (大西洋和) <小平智(こだいら・さとし)> 1989(平成元)年9月11日生まれ、東京都三鷹市出身の29歳。172センチ、70キロ。10歳からゴルフを始める。プロを目指して日大を2年で中退し、出場予選会から2011年デビュー。13年日本ゴルフツアー選手権で初優勝。昨年3月に古閑美保さんと結婚。 ◆165センチ・今平“最小身長”賞金王歴代最も背の低い賞金王が誕生した。身長165センチの今平が賞金ランク2位のショーン・ノリス(南アフリカ)に約3500万円差をつけ、キング争いを逃げ切った。日本人では石川遼、松山英樹に次ぐ若い賞金王で、「ゴルフを始めたときから体が小さくて飛距離がハンディだと思っていたが、体格は関係ない」と言い切った。 正確なドライバーショットと平均パット数1位になったグリーン上のうまさが武器。最終日は2つ伸ばすにとどまったが、一緒に回った小平から「あのしぶとさがあればずっと上にいられる。賞金王になるのは当たり前」と評された。だが、本人は目標だった今季2勝がならなかったこと、来年4月のマスターズに出られる年内の世界ランク1位に届かないことが悔しそう。「小平さんは勝負どころで強い。そういうところに近づきたい」 当面の目標は、マスターズ出場が許される開催前週の世界ランク50位以内入り。そして「(資格ができれば)すぐにでも米ツアーに行きたい。東京五輪にも出たい」という。6月には元中部学院大ゴルフ部で、昨年キャディーを任せたこともある若松菜々恵さんと婚約を発表。菜々恵さんは現在運転手などとして今平を支え、今大会もずっとコースでプレーを見守ってくれた。挙式の日取りは未定だが、公私とも順風満帆だ。 <今平周吾(いまひら・しゅうご)> 1992(平成4)年10月2日生まれ、埼玉県入間市出身の26歳。165センチ、63キロ。9歳からゴルフを始め、埼玉栄高1年時に日本ジュニア制覇。翌年から米IMGゴルフアカデミーに留学。東京国際大時代の2011年プロ転向。15年初シード。17年関西オープンでツアー初優勝。
◆遼、最終戦で本領発揮POで敗れたが、石川遼(カシオ)は最終戦で本領を発揮した。1番はダブルボギーだったが、そこから立ち直って2番以降は7バーディー、ノーボギー。7番で3つ目を取ったとき、これで優勝は分からないと思ったという。正規の18番、1メートルほどのバーディーパットは惜しくも外れたが「あの緊張感、あの難しいグリーンで、あそこまでタッチを出せた。入る入らないは関係ない」という。その18番でのPOは15メートルを3パットして敗れたが、手応えをつかんでシーズンを終えた。
◆堀川未来夢、4度目も逃す…4度目の最終日最終組だった堀川は、またも初優勝を逃した。前半で2つ伸ばしたが、17番パー5で1.5メートルのバーディーパットが入らず。18番パー3のパーパットをまたも1.5メートル残し、これを外した段階で優勝の夢が消えた。「17番で優勝を少し意識した。あのパットが入らなかったのがすべて」。2週前のダンロップ・フェニックスで逆転負けしたときは「いいゴルフができた。合格点」と話していたが、今回は「まだ実力不足でした」と、落胆交じりに答えた。 ◆番記者メモ 強さ秘訣 短く握ったグリップ今平のスイングの特徴に、短く握るグリップがある。ドライバーからショートアイアンに至るまで、グリップエンドを3~5センチほど余して握る。これほど徹底しているプロはまずいない。 遠くに飛ばしたい意識があると、どうしても長く握りたくなる。理論上ではドライバーで1インチ(2・54センチ)長くなると8ヤード飛ぶともいわれている。特に小柄な今平は、短く握ると不利になるのではないか。本人に聞いてみた。 「自分で思いつきました。確かに長く持つと飛ぶと言われていますが、自分の場合、長く持っても短く持っても、飛距離は変わらなかった。もちろん、短く持った方が方向性も上がります」 今平の今季ドライビングディスタンスは287・09ヤードで32位だが、トータルドライビング(ドライビングディスタンスとフェアウエーキープ率をポイント換算した数値)は7位と跳ね上がる。この安定した数字が、今季の強さを表している。世のアマチュアのみなさんも、試してみる価値があるかも。 (大西洋和)
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