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【サッカー】

川口能活、43歳 現役ラスト試合に最多1万2612人フィーバー

2018年12月3日 紙面から

引退セレモニーであいさつする川口能活=相模原ギオンスタジアムで(斉藤直己撮影)

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◇J3第34節 相模原1-0鹿児島

 サッカーのW杯に4大会出場した元日本代表で、J3相模原GK川口能活(43)が2日、今季最終節の鹿児島戦で先発フル出場。好セーブを連発し、“炎の守護神”にふさわしいプレーぶりで、25年にわたる現役生活を締めくくった。試合後に行われた引退セレモニーでは、チーム史上最多を更新した1万2612人のファンの前で別れを告げた。

    ◇

 5分を超える長いロスタイムのあと、現役生活を締めくくる笛が鳴る。背番号1が両手を突き上げると、チームメートが駆け寄ってきた。その姿が涙でぼやける。「チームメートが来てくれて思わず感極まった」。万雷の拍手が降り注ぐ中、川口はしっかりと仲間たちと抱き合った。

 劣勢が続いた文字通りの最終戦。試合中に左太もも裏に痛みを覚えながらも「もう練習、試合がないので、筋肉が離れてもやる覚悟でいた」とプレーを続け、絶対的な自信を持つ相手との1対1で、観衆を魅了した。前半20分、至近距離のシュートを体で止めると、後半9分にも相手の連続シュートを2度にわたってセーブした。「キック(が不調)で試合を難しくしてしまったが、(1対1という)ここまでプレーしてきたストロングポイントを、最後の試合で出せたことはうれしかった」。自らのプレースタイルを貫き通した。

 引退セレモニーが始まると、「僕の話をする前に」と切り出し、来季J2に昇格する鹿児島に「おめでとうございます」と語る気遣いを見せた。あいさつでは「43歳までプレーできる体を授けてくれたお父ちゃん、お母ちゃん、サッカーに出会わせてくれた兄ちゃん、ありがとう」と伝えた。両親、兄が花束を持って登場すると、再び感極まった。

 今季出場6試合目で自身初の完封勝利だった。前回出場は7失点。「4~5点取られたらどうしようと、半分恐怖しかなかったが、1-0と理想のスコアで終われた。キャリア最後の試合、こういう終わり方ができ、たくさんの人が足を運んでくれて、僕は本当に幸せ者だと思う」。日本のサッカー史に名を刻んだ男は、さわやかな笑顔でピッチを去った。 (関陽一郎)

サプライズで登場した名古屋の楢崎正剛(左)に花束を贈られる川口

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◆楢崎&「キャプテン翼」作者・高橋さんがねぎらい

 セレモニーには、日本代表時代のライバル、GK楢崎正剛(42)=名古屋=がサプライズで登場し、花束を手渡した。川口を隣にして「かっこよかったです。(川口との時間は)財産になった」などとあいさつ。セレモニー後は「自分の持っている以上のものを出す力はすごい。自分はまねしたくてもできない。“持っている”とかそんな簡単な話ではない。憧れますね」と話した。

 また、人気漫画「キャプテン翼」の作者・高橋陽一さんは直筆イラストを贈呈。川口の清水商(現清水桜が丘)時代の監督、大滝雅良さんも観戦に訪れた。

◆能活★一問一答

 -試合を終え

 川口「まだ実感がわかない」

 -後半25分に1-0と先制してから試合終了までどう感じた?

 「長かった。ロスタイム5分。もう少し短くしてほしかったが(苦笑)、それだけ長い間プレーしている姿を見せられすっきりした新しい気持ちで(次に)挑戦できると思った」

 -能活コールがすごかった

 「一生忘れないと思う。引退試合でなく、公式戦の最終戦で、お互いに勝利を目指して戦った。真剣勝負で勝つことができ、こういう形で締めくくれてよかった」

 -試合前に家族から言葉は?

 「(夫人から)楽しんで臨んでほしいと言われ、気持ちが楽になった。(前日は)しんみりするかと思ったが、子どもたちと一緒に風呂に入ったり、遊んだりして、そう思うことがなかった。パパに対しての要求があったから(笑)。そういう意味で、子どもたちに感謝したい」

 -次のステージは?

 「まだ決めていないが、選手として、GKとして、やってきたことを若い選手たちにフィードバックしたいという思いはある」

 -若手GKへ

 「(現代表クラスは)Jリーグで素晴らしいパフォーマンスを出しているので、代表レベルで出してほしい。代表は名誉なことであるが、それだけに固執するのではなく、楽しむくらいのメンタリティーを持ってほしい」

 -J1参入戦に回る磐田へエールを

 「きのう(1日)テレビで見ていて『ジュビロ残留』と思って、その後に散髪へいく予定だったが、(驚きで)忘れてしまい、きょうはボサボサの頭になってしまった。ジュビロには歴史、勝者のメンタリティーがある。名波さんを中心にチームがまとまって、必ずくぐり抜けると信じている。絶対に勝ちます」

◆岡ちゃん、ジーコ元監督、長友、カズは映像メッセージ

セレモニーの冒頭、関係者から川口へのメッセージ映像が場内に流れた。1998年と2010年のW杯で日本代表を率いた岡田武史元監督、06年W杯日本代表のジーコ元監督、長友佑都(ガラタサライ)、三浦知良(横浜FC)の4人。「ストイックさ、優しさを尊敬している」とは長友。カズは「危機を乗り越えて勝利をする、勝ち癖があると思った。身体は大きくないが、PK戦の時は大きく見えた」と思い出を交えてねぎらった。

<川口能活(かわぐち・よしかつ)> 1975(昭和50)年8月15日生まれ、静岡県富士市出身の43歳。180センチ、77キロ。GK。東海大一(現東海大翔洋)中→清水市立清水商(現静岡市立清水桜が丘)を経て1994年に横浜M入り。01年にポーツマス(イングランド)に移籍するなど欧州で5季過ごし、05年に日本に復帰(磐田入り)。 日本代表では出場116試合(歴代3位タイ)。

 

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