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【社会】

平和憲法萌芽期、国民の共鳴再演 劇団民芸20年ぶり、日本橋で7日から

「グレイクリスマス」の立ち稽古。手前から、中地美佐子さん演じる華子、塩田泰久さん演じるジョージ・イトウ

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 第二次世界大戦後の日本が歩んだ激動の五年間を描いた群像劇「グレイクリスマス」を、劇団民芸が七日から都内で約二十年ぶりに再演する。平和憲法が生まれた国は、朝鮮戦争を機に、自衛隊の前身となる警察予備隊創設に向かっていく。憲法が揺らぐ今、戦後日本の原点を描く作品が問い掛けるものは何か。 (山本哲正)

 「デモクラシーって何なんですの?」

 元伯爵家当主の妻華子が、連合国軍総司令部(GHQ)民政局の日系二世将校ジョージ・イトウが説く理想に目を輝かせた。

 川崎市麻生区の民芸稽古場で先月中旬、約二十年ぶりの再演に向けて熱のこもった稽古が行われていた。

「今に響くせりふがあります」と語る演出の丹野郁弓さん=いずれも川崎市麻生区で

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 グレイクリスマスは、「上海バンスキング」で知られる劇作家・故斎藤憐(れん)さん(一九四〇~二〇一一年)が手掛け、一九九二年から九九年まで民芸では全国で約三百四十回上演された作品だ。GHQに屋敷を接収された元華族の華子は、ジョージの語る「デモクラシー」に共鳴していく。初演の九二年は、国連平和維持活動(PKO)協力法が成立し、自衛隊のあり方が議論になった時期だった。

 今回、新たに演出する丹野郁弓(いくみ)さん(61)は、初演のときは演出助手。「当時もタイムリーな作品と高く評価されたが、再び政治や社会が追いかけてきた」と話す。

 GHQが女性の解放を進め、国民主権の憲法も促したと感謝する華子に、ジョージが「憲法を支えていくのはピープルなのです。ピープルの心が変わったとき、憲法は変わるのです」と警告する場面がある。丹野さんは「今の時代にこそ心に響くせりふがある」と訴える。

 華子役の女優中地美佐子さん(50)が憲法条文を暗唱する場面も印象的だ。丹野さんは「憲法って美しい。美しく読んでほしい」と助言した。中地さんの叔父は南方で戦死している。「兄を亡くした父から『戦争放棄はありがたかった。これを守ることが大事』と聞かされてきた。この作品で若い世代にも何か感じていただきたい」と意気込む。

 上演は十九日まで、東京・日本橋の三越劇場で。全席指定で一般六千五百円(税込み)ほか。問い合わせは劇団民芸=電044(987)7711=へ

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