指定管理業務の引き継ぎ

  指定管理者が交代する場合、業務の引き継ぎが行なわれます。よくあるのは、4月に入ってすぐに施設・設備に不具合が発生した場合や3月に不具合が発生していたのに放置されていた場合など、前の指定管理者の管理運営の怠慢のツケをなぜ負担しなければならないのかというトラブルです。

  落選が決まった指定管理者の管理運営は、言わば消化試合で、いい加減な管理運営がまかり通っており、特に、利用者からは見えにくい保守点検や維持管理に手抜きが行なわれることが多々あります。

  4月に入って手抜きを発見したとしても、自治体は前の指定管理者を指導することが難しく、みなさんに、「指定管理者として引き継ぎをした以上、前の指定管理者の瑕疵や手抜きの結果もすべて引き継いでいる」と理屈で、新しい指定管理者に負担を求めます。このため業務の引き継ぎは慎重かつ十分に行なうことが必要で、主なポイントは以下のとおりです。

 

 

1.自治体担当者を交えた引き継ぎ

 通常、業務引継は、まず、新旧の指定管理担当者が役所に呼び出され、そこで、自治体担当者を交えて引き継ぎを行ない、詳細については、「新旧担当者で随時実施してほしい。」と自治体担当者から指示されます。
  
  引き継ぎに関して、自治体担当者が間に入るのはこの1回長くて2時間くらいなので、ここで、後に現場でできる話をするのは非常にもったいない話です。自治体担当者も3月末までは旧指定管理者にきちんと管理運営してほしいと考えていますので、自治体担当者とタッグを組んで、旧指定管理者が3月31日まで手を抜かないよう牽制を行うことが最大の目的だと考えてください。

2.事前準備と確認

  旧指定管理者に手抜きをされないようにすることが目的ですから、旧指定管理者が何をすべきかをまず知る必要があります。以前の指定管理者公募の際の仕様書があれば一番よいのですが、基本的に仕様書はそんなに変わらないので、なければ、今回の公募の仕様書で、保守点検や維持管理で実施しなければならない項目をあらかじめピックアップしておき、ひとつひとつ、「すでに終了しているのか」、「終了していないものについては、いつ実施するのか」を自治体担当者の前で、確認してください。

   また、すでに終了しているものについては、保守点検や維持管理の報告書を必ず後日見せてもらうようその場で約束を取りつけてください。保守点検していても、交換が必要な部品や修繕が必要な箇所があるとの報告書に記載されているにもかかわらず、放置されていることが多々あるからです。このような報告書を発見したら、自治体担当者に対し、指定管理者に交換や修繕を行うよう指示してもらってください。

3.引き継ぎ要員の派遣

  自治体を交えての引き継ぎが終わったら、担当者を現場に派遣し、実際の業務を見る必要があります。この場合、業務内容を見学することも大切ですが、どの職員が中心となって管理運営が行われているかをチェックしてください。

   通常、4月1日から、全職員を入れ替えて業務を行うことは非常に難しいことです。このため、できれば、最低1人は、これまでの職員を雇用することが望ましいと思います。ただ、だれを雇用するかは非常に重要な問題で、ここで戦力にもならない職員を雇用しては、あとあとまで多大な苦労をしなければなりません。なんとか、中心となる職員を割り出すことが必要です。社員を何日も現場に派遣することは厳しい場合もあるでしょうが、ここで、手間を惜しむことは避けるべきだと私は思います。

4.3月下旬に行うこと

 3月下旬は、4月に実施するイベントや職員の事前研修、自治体への各種提出書類や新規雇用者の社会保険手続きなどなどやることがたくさんあり、とても忙しくなります。
このような時期に大変だとは思いますが、ぜひ、施設のあらゆる部分の写真を撮るようにしてください。これは、4月以降に、施設・設備に不具合が発生した場合に、前指定管理者の瑕疵や怠慢の証拠となる可能性があるからです。引き継ぎが終了すれば、不具合の処理は引き継いだ側がやらざるを得ませんが、もし、万一、事故が発生した場合に、写真が残っていれば、責任者を明確にできる可能性があります。刑事責任などのリスクを軽減するためにも、多くの写真を残しておくべきです。

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