政府は新たな防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱」(防衛大綱)を今月中に策定する。

 陸・海・空という従来の領域にとどまらず、「宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域を横断的に活用した防衛力」を優先的に整備するのだという。

 10年先を見通して策定された今の大綱を5年間早めて改定するのはなぜなのか。

 安全保障環境の急激な変化に対応するためだと政府は説明するが、その場しのぎのつじつま合わせ、という印象はぬぐえない。

 ブエノスアイレスで開かれた日米首脳会談でトランプ米大統領は冒頭、「米国の戦闘機F35などを数多く購入することに感謝している」とあけすけに語った。

 政府はF35Aの追加購入のほか、最新鋭ステルス戦闘機F35Bの新規導入も検討している。

 対日貿易赤字の解消を求めるトランプ政権の要求に応え、すでに地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の導入も決めている。

 2019年度概算要求ではイージス・アショア2基の取得経費として2343億円が計上された。極めて高額な輸入兵器だ。

 費用対効果や必要性の検証も不十分なまま、米国の貿易不均衡解消のためにトップセールスで高額兵器を購入するのは、本来の装備調達のあり方から逸脱している。

 高額兵器の取得を優先したため、2019年度防衛予算の概算要求は過去最大の約5兆3千億円に膨らんだ。

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 もっと懸念されるのは、海上自衛隊の護衛艦「いずも」を改修し空母機能を持たせる案が検討されていることだ。

 想定しているのは、「いずも」の広い甲板を利用し、垂直着艦のできるF35Bを運用することである。

 政府は憲法9条のもとで「専守防衛」を安全保障の基本方針としている。歴代内閣は、攻撃型空母は保有できない、との立場を堅持してきた。

 「いずも」について岩屋毅防衛相は「できるだけ多用途に使っていけることが望ましい」と言う。

 だが、憲法が禁じる空母と「多用途護衛艦」の線引きはあいまいだ。

 「いずも」の空母化が進めば、米軍伊江島補助飛行場内にある強襲揚陸艦の甲板を摸した着陸帯を日米が共同利用するはずだ。

 「専守防衛」の方針変更は、地域の軍拡に拍車をかけ、一段と緊張を高める。安倍政権が憲法9条改正に意欲的なだけになおさらである。

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 石垣島が侵攻された場合を想定し、島しょ奪回のための作戦を分析した「機動展開構想概案」の存在が最近、明らかになった。

 赤嶺政賢衆院議員(共産)が入手し、11月29日の衆院安全保障委員会で取り上げた。

 島しょ奪回作戦は、軍事上の兵力配置を分析しているが、そこに住む住民への影響には触れていない。

 大事なのは緊張緩和であり、日中の関係改善の気運を後戻りさせるようなことがあってはならない。