洗車やワックスがボディを傷める?
塗装を長持ちさせたいなら「洗車をしない」のがベスト
大切な愛車を洗ってあげるのが楽しみという人は多いでしょう。その洗車が、愛車のボディを傷める原因になると言ったら驚くでしょうか。ボディをスポンジや布でこすることによって擦りキズができてしまうことはよく知られていますが、カーシャンプーやワックスもボディにとっては決して優しいものではないのです。
泥汚れや鳥の糞など、塗装面に悪影響を与える汚れは早急に洗い流すべきですが、水垢やホコリなどの軽い汚れに目くじらを立てる必要はありません。洗車の極意とは、「洗車をしないこと」。洗車やワックスがけの頻度をできるだけ減らすことが、ボディを長持ちさせることにつながります。
愛車のボディを長持ちさせるために、頻繁に洗車やワックスがけをしている人は多いのではないでしょうか。汚れをきれいに洗い流し、ピカピカに保つことは重要ですが、意に反してボディを傷つけてしまっている可能性も。ここでは、洗車やワックスの弊害について紹介します。
洗車やワックスの弊害は大きく分けて3種類
洗車といえば、カーシャンプーでボディを洗い、ワックスで仕上げるのが一般的。そのいずれの工程にも、スポンジや布でボディを拭く作業が必須となります。この、「拭く」「シャンプー」「ワックス」という3要素のすべてに、ボディを傷める弊害があります。
まず、スポンジやタオルなどでボディを拭くこと。これによって塗装面に小さな擦りキズ、スクラッチができます。夜に塗装面にライトを当てると、同心円状の小さな傷が無数に見えることがありませんか。これがスクラッチ。同心円状に見えるのは、光に対して直角の向きのキズだけが見えるからです。つまり、同心円状にキズが見えたとき、実際のキズはその数倍あるということ。スクラッチによって塗装から輝きが奪われ、同時に汚れも付着しやすくなります。
次に、カーシャンプー。これが塗装に害を及ぼすとは意外かもしれませんが、どんなカーシャンプーでも、説明書には必ず「水できれいに洗い流してください」と書いてあるはず。逆に言えば、カーシャンプーがボディに残ってしまうと良くないということです。カーシャンプーに限らず、洗剤の主成分は界面活性剤。これは強力に汚れを落としてくれる効果がある反面、塗装を侵す危険があるのです。
最後はワックス。ワックスの成分としては、カルナバロウなどが知られており、ほかに溶剤も含まれていますが、いずれにしても、突き詰めれば“油”です。塗装にとって油分は大敵なのですが、ワックスがけとは、その油分をわざわざボディに擦りこむ行為とも言えるのです。
洗車の極意は「洗車をしないこと」
このように書いていくと、まるで洗車はボディを傷めつける行為そのものという感じがします。「カーシャンプーやワックスのメーカーに騙されていた」と感じる人もいるかもしれません。しかし、冷静に考えれば、洗車に悪い面があるのは当然のことなのです。
例えば、手を洗うことを考えてみましょう。手はいろいろなものに触れるので汚れやすく、雑菌も付着します。石鹸でよく洗うことで汚れが落ちるだけでなく、病気の予防といった衛生面のメリットもあります。しかし、手を洗うことで手が荒れる、有益な皮膚常在菌まで殺してしまうという悪い面もあります。洗濯も同様。洗濯することで汚れや匂いが落ちて美観や衛生面のメリットがありますが、衣類が擦り切れて古びていくのは、洗濯がおもな原因であるのも事実です。
洗車も同じで、良い面と悪い面があるということ。カーシャンプーが有害だからスチーム洗浄にしましょうとか、ワックスがダメだからコーティングにしましょうということではありません。ボディに何らかの作業をすれば、必ず良い影響とセットで悪い影響もあるのです。
ただし、手洗いや洗濯と比較して、洗車にはひとつ違いがあります。それは、手洗いや洗濯が絶対にしなければならないことであるのに対して、洗車は必ずしも必要ではないということ。実際、何年も洗車をしない人も珍しくありません。それなら、ボディを長持ちさせるためには、洗車をしないほうがいいということでしょうか。極論ではありますが、それは間違いではありません。洗車の極意とは「洗車をしないことである」というのは、一面の真実ではあるのです。
一方で、「洗車にはボディを長持ちさせる効果があるはずだ」という人もいるかもしれません。実際のところはどうなのでしょうか。例えば、ボディに泥が付いている場合、その泥が水分を含み、水分によりサビが発生します。そのため、洗車で泥を落としておくことは重要です。また、鳥の糞は塗装面にかなり有害なので、これもできるだけ早く洗い流したほうがいいでしょう。
しかし、水垢やホコリなどは、放置しても悪影響はありません。普通の乗用車であれば大量の泥がボディに付着することはほとんどないでしょう。よって、洗車をすることで明確に効果があるのは、鳥の糞くらい、ということになります。
ただし、丁寧に洗車をすることが、結果的に愛車の点検につながるとも言えます。洗車をしていて故障を発見するのはよくあることで、オイル漏れやパンクなどメカニカルトラブルを早期発見しやすくなるのです。この効果は意外に大きいと言えますが、こまめに洗車し、丁寧にワックスをかけることでボディが長持ちするかというと、実はそうでもない、ということなのです。
きれいにしたいのは今日?それとも10年後?
そうは言っても、愛車が汚れていれば洗ってあげたくなるもの。そこで気をつけたいのが、「洗車による弊害をできるだけ減らす」ということです。ボディにホコリや泥が付着しているときはまず水で洗い流し、絶対にこすらないこと。カーシャンプーは説明書通りに薄めて使い、これでもかというほど丁寧に流水で洗い流しましょう。
さらに踏み込んでいえば、愛車をきれいにしたいのは、今日なのか、それとも10年後、20年後なのかということを一度考えてみるといいかもしれません。
先のことを心配するよりも、今、楽しいカーライフを送りたいというのなら、毎日のように洗車して、いつでも愛車をピカピカにしておくのは、もちろんいいことです。洗車でボディがダメージを受けるといっても、正しい洗車をしていれば数年で目に見えて劣化することはありません。
一方、大好きな愛車を10年後も20年後も最高のコンディションに保ちたいと思うなら、ちょっとくらい汚れても、頻繁に洗車をするのは我慢したほうがいいでしょう。青空駐車ではなく屋根付きの車庫に停めておくなど、できるだけ洗車しなくて済むように工夫するのが正解です。
2015年8月7日掲載
自動車雑誌、バイク雑誌の編集を経て、フリーランスとして独立。Webに活躍の場を移し、多数のサイトで執筆活動を展開中。カーナビやデジタルガジェットのインプレッション記事も得意とする。最近はYouTubeで車やバイクのレストア・整備・修理などを公開中(まーさんガレージ:https://www.youtube.com/user/yamada911/)。
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