ミャンマーの少数民族ロヒンギャが迫害されている問題で、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議が「懸念」を表明した。早期の救済行動こそが求められる。日本も積極的に関われないか。
イスラム系のロヒンギャは仏教国ミャンマーの西部に暮らしていたが、昨年八月に治安部隊と武力衝突。国軍に家を焼かれ、殺人や性暴力も受け、約七十万人が隣国バングラデシュに逃走、難民化した。難民キャンプの衛生状況は劣悪。子どもたちは学校に行けず、大人は現地の人と仕事の取り合いになっているという。
「加盟国同士が争わず、結束を重視する」という趣旨で「内政不干渉」を不文律にしてきたASEANだが、このロヒンギャ問題では今回、活発な議論を展開した。
イスラム教国マレーシアの首相に今年復帰した九十三歳のマハティール氏は、ミャンマーの最高指導者アウン・サン・スー・チー国家顧問を「失望した。憤りを覚える」と非難。イスラム教徒の国民が二億人余で世界最多のインドネシア・ジョコ大統領らも、スー・チー氏の無策ぶりを非難した。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、二〇一二年にスー・チー氏に与えた「良心の大使賞」の剥奪を発表し、かつては軍政に軟禁されながらも民主化を訴えていた同氏を非難。欧州では、同氏が一九九一年に受けたノーベル平和賞の剥奪を求める声も上がっているという。
ロヒンギャはバングラからの不法移民とも見なされ、ミャンマー国籍を与えられていない。仏教界や国軍だけでなく、民主化勢力もロヒンギャを蔑視しており、スー・チー氏は、この国内世論とロヒンギャ救済の国際世論の板挟みになっているとみられる。同氏は先日、米国のペンス副大統領に「私は自国のことは他国の誰よりも理解している」と述べている。
ミャンマーとバングラの両政府は今月中旬から、ロヒンギャを少しずつミャンマーに帰し始める計画だった。しかし、受け入れの環境整備が行われておらず希望者はゼロ。開始は延期された。
こんなデッドロックの時こそ、ASEANは「懸念」の表明だけでなく、行動を起こすべきだ。そこに日本も加われないか。ミャンマーでは第二次大戦中、旧日本軍がバックの仏教徒と、英国軍が味方したロヒンギャなどイスラム教徒とが武力衝突し、両教徒の憎悪が高まってしまった。今度は救済に動く側になってほしい。
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