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【社説】

慰安婦財団解散 合意損なわない対応を

 元慰安婦らの支援事業を行ってきた財団の解散が正式に発表された。国内事情を優先した結果だろうが、韓国政府は日本との合意を誠実に守り、事業継続のため責任ある対応をとってほしい。

 ソウルにある「和解・癒やし財団」は、二〇一五年十二月に日韓外相が記者発表した、慰安婦問題をめぐる三項目の合意を踏まえて設立された。

 当時、岸田文雄外相は、合意にあたり「軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」と謝罪し、「日本政府の責任」にも言及している。

 財団の解散には今後一年ほどの時間がかかる。しかし日本政府が拠出した十億円のうち、まだ半分程度が残っている。この扱いをどうするのか、事業をどう継続するのか、明確になっていない。

 「まず解散ありき」の決定だったとしか思えず、大変残念だ。

 日本の拠出金をもとにした給付金を、すでに元慰安婦の七割以上が受け入れている。

 財団は一定の成果を上げているのに、韓国側から何の言及がないのも理解し難い。

 韓国内には、元慰安婦の十分な合意なしに財団の事業が進められたという反発が強かったという。

 そうだとしても、日韓の外相が並んで発表した合意を簡単に覆すようでは、日本側も当惑するしかないだろう。

 安倍晋三首相は、財団解散について、「国際約束が守られなければ国と国との関係が成り立たなくなる」と批判した。こういう声が出るのもやむを得まい。

 文在寅(ムンジェイン)大統領は一七年七月にベルリンで行った演説で、「南北の貴重な合意が政権交代のたびに揺らいだり、破られてはならない」と述べたことがある。

 北朝鮮との約束は守るが、歴史的な経緯がある日本との約束なら、破っても構わない。もしも、そう考えているのなら、明らかに矛盾した姿勢である。

 ただ韓国外務省は声明で、財団は解散させるものの、「日韓合意の破棄や再交渉を求めることはない」と表明し、日本政府との合意を守る姿勢を示した。

 日本側も高圧的にならず、まずは韓国側の対応を見守りたい。

 日韓関係は、韓国の大法院(最高裁)が日本企業に賠償を求めた元徴用工判決などが重なり、冷え込んでいる。

 こういうときこそ、双方が対話を重ねて、元慰安婦の救済のため、知恵を集めてほしい。

 

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