現在、大学初年度レベルの微分積分学の教科書を読んでいます。
微分法に関する項目では、どの教科書でも必ず曲線における接線の方程式の求め方が出てきます。
高校数学でもこれは出てきます。
「曲線 の における接線の傾きは で表される」ことを使って、接線の方程式 を求めるアレです。
ここで気になったことが出てきました。
中学~高校の数学の中で接線の定義は一貫しているのか?ということです。
手元にある資料を見たところ、中学~高校の数学で接線について学ぶ場面は5つあることがわかりました。
(1) 中学で出てくるのは円の接線
「接線」という用語は、中学数学で初めて登場します。
具体的には、円の接線という形で、以下のように説明されます。
直線が円と1点で交わるとき、この直線は円に接するという。
また、この直線を接線という。
合わせて、円の接線が接点を通る半径に垂直であることなども学びます。
中学で接線の概念が出てくるのは、円に関するものに限られるようです*1。
(2) 高校数学では、まず放物線(2次関数)の接線から
数学Ⅰの2次関数では、放物線の接線が出てきます。
手元の参考書*2によると、次のように説明されています。
2次関数 の判別式 を考える。
のとき、2次関数のグラフと 軸は1点で接するといい、その共有点を接点という。
これを利用して、放物線と直線の接線の関係が次のように説明されます。
放物線 と直線 の共有点の個数を調べる。
そのために、2本の式から を消去して得られる2次方程式の判別式 を考える。
のとき共有点は1個となり、直線 を放物線 上の点*3における接線という。
(3) 数学Ⅱでは円の接線を方程式で書く
数学Ⅱの図形と方程式では、円とその接線の方程式を記述します。
ここでは、中学で学習した円の接線の定義を思い出して、次の2つの方式を使って、円の接線の方程式を求めます。
- 円の方程式と直線の方程式を連立させて得られる2次方程式の判別式が0であることを使う。
- 円 上の点 における接線の方程式 が得られる。
- 円の中心と直線の距離が半径になるときが接線となることを使う。
- 円 上の点 を通る直線 と中心の間の距離 が となる。
これにより、この単元では(1)と(2)の考え方を総合していることがわかります。
(4) 次は微分を使って接線の方程式を書く
再び数学Ⅱ、次いで数学Ⅲでは、微分を使って接線の方程式を書くことになります。
まず、平均変化率から微分係数を定義します。
そして、微分係数の図形的な意味を考えて、「 における関数 の微分係数 は、曲線 上の点 における接線の傾きを表す」ことを導きます。
これにより、接線の方程式 が求められます。
(1)~(3)の接線の定義から乖離があるようにも見えます。
まとめると…
中学~高校数学で接線について触れる5つの場面を振り返りました。
まとめてみると、
- (4) 微分法
- (4)以外(円や放物線などの2次曲線、判別式がポイント)
の2つの間に接線の定義に乖離があるように見えます。
注意深い中高生は2つの乖離に気付くかもしれませんね。*4
ちなみに、計算することでこの2つは同じであることがわかります。
*1:中学数学はこちらを参考にしました。
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*2:高校数学は青チャートを参考にしています。
*3:ここでは具体的な点の座標表示は省略しました。
*4:自分はあまり気にならなかったですけど…