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【社説】

日産とルノー お互いの信頼取り戻せ

 日産自動車とルノー、三菱自動車の三社連合が意思決定を合議で行うと発表した。だがこれはゴーン後の主導権争いが続く中、一時的な措置にすぎない。三社は統治体制の再構築を急ぐ必要がある。

 三社連合は、オランダ・アムステルダムにある統括会社が運営する形を取っている。ただ、これまでゴーン容疑者に権限が過度に集中していた。

 現在、日産の経営は好調で、連合全体への貢献度は最も大きい。しかし、ルノーが議決権付きの日産株を約43%所有している上、連合の運営トップもルノー出身者が務める仕組みだ。

 つまり日産は稼ぎ頭だが、名目上、ルノー傘下にあるという構図だ。こうした、ねじれ状況にあった中、最大権力者が突然、失脚したため主導権争いが表面化してしまった。

 かつて日産は約二兆円の負債を抱え経営危機に陥った。一九九九年ルノーが派遣したゴーン容疑者率いるチームが瀕死(ひんし)の日産を救った。そのルノーは今、日産との提携を失えば大きな雇用問題に発展しかねない状況にある。

 立場は逆転した。だが、ルノーは四五年、後に大統領になるドゴール将軍が国営化を指示したフランスの象徴ともいえる企業。マクロン政権にとってもルノーの危機は権力基盤を揺るがす重大な課題だ。経営形態や歴史、政治的背景を考えると、対立を続ければ激しい株の争奪合戦は必至。共倒れさえ招きかねず、最も重要な雇用に深刻な影響が出る。

 自動車業界は百年に一度の変革期といわれる。大気汚染を意識した電気自動車(EV)化の流れは、欧州連合(EU)、中国、インドなど世界規模で加速する。

 人工知能(AI)を使った自動運転技術の開発競争も激しい。百度(バイドゥ)など中国のIT企業は国の指導の下、開発に拍車をかけている。カーシェアリングも世界各地で進む。トヨタ自動車は本格参入を発表したばかりだ。

 生産から販売、乗り方に至るまで、自動車の世界は激変の渦中にある。提携相手との主導権争いは事業変革の妨げになるだけだ。

 最大権力者を失っても、三社には長年培った提携のノウハウがあるはずだ。技術や部品の調達ルートを共有し、お互いの生産性を高めてきた。すでに自動車メーカーのライバルは同業者だけにとどまらない。信頼を取り戻すことが、生き残りへの唯一の道にみえる。

 

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