□環境指標生物



 私が小学校三年生の時のことです。夏休みの宿題で、あなたの身近に暮らしている生きものを観察してみましょう、という課題が出されました。動物でも昆虫でもかまわない、自分の好きな生きものを調べてみてくださいと言われて、ぱっと頭に思い浮かんだのは蛇と蛙のふたつ。だけれど蛇は咬みつかれると危ないから近づくなとお母さんに注意されていたので、今回は蛙のことをターゲットにしようと思いました。しかしやつはすばしっこい。どんくさい私が一人で捕まえられるかどうかはすこし不安なところです。そう考えた私は、心強い味方に協力を求めることにしました。
「というわけなのです、八坂さま。お手伝いしていただけませんか」
「……どうして蛇にしなかったんだい」
「咬みつかれて毒をくらったあげくもだえくるしんで死ぬからやめろ、とお母さんに言いつけられています」
「蛇は本来おとなしい生きものなのに……あぁわかったよ、蛙を調べるんだね、ちくしょう」
 なにやら不満そうな様子でしたが、八坂さまは二つ返事で力を貸してくれました。よいしょ、と呟いて腰を上げると、草履を突っかけて真っ青な空の下に繰り出します。私よりずいぶん背の高い八坂さまの背中は、見ているだけで頼もしくて勇気が溢れてくるようでした。
「畦に行こうか、早苗。少し歩くことになるけれど」
「わかりました」
 先陣を切って歩き出した八坂さまの後姿を追いかけるようにして、私たちは近くの田んぼへと向かいました。歩幅の広い八坂さまに置いていかれないよう付いていくのはなかなかに大変です。気を抜くと、あっという間に距離が空いてしまいそうになる。八坂さまも何度か振り返って、のろのろと虫かごと網を引きずって歩く私を心配そうに見つめていました。やがて見ていられなくなったのか、八坂さまがすっ、とその手を差し出してきました。
「ほら、手を」
「よろしいのですか?」
「今は周りに人がいないから、変には思われないだろう」
「……?」
 八坂さまの言うことには今ひとつ理解を得ませんでしたが、差し出された手は素直に嬉しいと思えます。手を取って、今度はさっきよりずいぶんちんたらとした足取りで再び歩き出しました。
「八坂さま」
「どうした」
「お暑くはありませんか」
 天上からは灼けるような日差しがさんさんと降り注いで、大地をじっくりと焦がしています。私はお母さんに渡された麦藁帽を被っていましたが、八坂さまはそうではありません。じかに照りつける光に、肌などは薄ぼんやりと歪んでさえ見えるようでした。いつもの朱い召しものも、今はなんだか炎をまとっているようで、ひどく暑苦しい格好をしているように思えます。
「このぐらいは平気さ、なんてことない」
「帽子、お貸ししましょうか?」
「早苗は優しいね。けど、それは早苗が被っていなさい」
「八坂さま」
「私には似合わないよ」
 強情な人です。見栄っ張りなのかもしれません。私が隣にいるからなのでしょうか、家ではもう少しだらしのないところも見られた気がするのですが。
「ほら、見えてきたよ、早苗」
 しばらくの間そうやって帽子を渡す、渡さないの問答をしているうちに、いつの間にか私たちは目的の場所のすぐ近くにまで足を運んでいました。広々とした敷地の一面を、まだ若い稲の頭が埋め尽くしています。そんな碧の海を撫でるように、遠く山のほうから吹き降ろしてくる風は、さっきまでの暑さを忘れさせるほどに涼やかでした。
「ここにやつがいるのですね、八坂さま」
「どうだろう、そう上手く見つけられるかね」
「早苗、頑張ります。とう」
 意気込んで、網を片手に畦道へと踏み出します。転げ落ちないよう気をつけながら、青い稲の隙間にじっと目を凝らしました。ゆらめく水面の向こうに、蛙の平べったい体が浮かんでいないかを探します。一周。二周。そうやって畦道を何度か周ってみたものの、思うようにやつらの影を捉えることはできません。そんな私の姿を、八坂さまはすこし離れたところから見守ってくれていました。
「うぅん」
「見つからないのかい、早苗」
「なかなかどうして、手ごわいようです」
「そうかい。いっそ田んぼの中に入って行けたら良かったんだが、ここは他所さまの土地だから、荒らすような真似はしちゃいけないよ」
「わかりました。では代わりに、八坂さまも一緒に探していただけませんか?」
「そうだね。じゃあ早苗の後ろを付いて、見落としがないか一緒に探すことにしよう」
 再び畦道に躍り出た私の背中を、今度は八坂さまが追ってくれます。なんて頼もしい。これで私の目がどんなにか節穴だったとしても、連中が姿を現すのは時間の問題でしょう。勇んで、もう一度水田の周りを巡りはじめます。今度は水面ばかりでなく、足元の草むらや、農道のアスフアルトの上にだって目を向けてみました。
 その視線が、ふと蛙以外のものを注目します。見知った顔が向こうの道を歩いているのを見て、私は思わず声をあげてしまいました。
「あ、れいちゃん」
「れいちゃん?」
「クラスの子です。向こうの道を歩いている、あの子」
 見れば、日ごろ仲良くしている同級生が田んぼを挟んだ向こう側でこちらに手を振っています。背負っている水泳バッグを見るに、どうやらこれから学校のプールに向かうようでした。挨拶もそこそこに済ませると、急いでいたのか彼女は駆け足に去って行ってしまいました。
「――あの子と一緒に宿題をしようとは思わなかったのかい、早苗」
「蛙を調べようといったら、嫌がられました」
「そう……」
 そう呟いた八坂さまの口ぶりは、わずかに寂しげな様子でした。なにか彼女に対して思うところがあったのでしょうか。不思議に思っていると、「続けよう」という声が背中を押しました。
 それからも八坂さまと一緒に畦道を周りましたが、どうしてか蛙の姿は一向に見つけられませんでした。他の水田も当たってみましたが、はずればかりが続きます。日もずるずると暮れはじめて、気がつけば空はほんのりと赤みを帯びはじめていました。
「……見つかりませんね」
「そうだね。きっと今日は運がなかったんだよ」
「いいえ、今朝のテレビの占いはいっとうでしたから、そんなはずは。……この辺りには、蛙が住んでいないのかなぁ」
「もしかしたら環境が悪いのかもしれない。ここらの土地も開発が進んできたし、小さな汚染が積もりはじめているのかも――」
 ふ、と八坂さまが向けた視線の先には、造られたばかりの真新しい家がいくつも立ち並んでいました。しんこうじゅうたくち、というやつでしょうか。クラスの友だちの中にも、近々新しい家に引っ越すのだと嬉しそうに話している子がいたことを思い出しました。
「かんきょう? おせん?」
 八坂さまの言葉は今ひとつ難しい、蛙が見つからないその理由を話しているのだということはなんとなくわかっても、そこにいたるまでの道筋が立てられない。私が頭を悩ませていると、八坂さまはそんな私の頭をそっと撫でてみせました。見上げると、八坂さまはなんだか困ったような笑顔を浮かべて、じっと私の目を覗きこんでいました。
 そうやって視線を重ねあわせたまま、お互いになにも言えない時間が続きました。きっと一分か二分ぐらいのことです。そのわずかの間に、八坂さまはなにか様々なことを思案しているふうに見えました。私には及びもつかない、ほんとうに多くの――たぶん、あまり楽しくないことを。
 やがて八坂さまがゆっくりと息を吐いて、止まっていた時間は再び動きはじめました。なにかたいせつなお話がはじまるのだろう、そう予感した私は居住まいを正して、改めて八坂さまのお顔と向きあいました。
「早苗は、指標生物、というものを知っているかい」
 聞きなれない言葉でした。「わかりません」と正直に答えると、八坂さまは「早苗にはまだ難しい言葉だったかな」と言って穏やかな微笑みを返してくれました。
「その、しひょうせいぶつ、とはいったいなんのことでしょう?」
「そうだね、簡単に言うと、周りの環境がどれだけ綺麗かを教えてくれる生きもののことだ」
 八坂さまの視線が私の顔をはずれ、あたりをぐるりと見渡してみせます。私もその目線に続くことにしました。広々とした稲田に、遠くに連なる山々の稜線。どんどんと赤焼けてやがては西の端に沈んでいく太陽の眩さは、まるで八坂さまのお姿を見ているようにも感じました。
 それらが綺麗なものかどうかと聞かれれば、間違いなく、美しい景色なのだと答えることができます。
 だけれども……八坂さまのいう綺麗さとは、そんな風景のことを指しているのではないかもしれない。
 だって蛙は、景色が綺麗だから、ここに住み着いているわけではないと思うから。
「たとえば、かたつむり」
 八坂さまの両手が不思議なシルエットを形作ります。大きな殻と、突き出した二本の角。蛙とおなじ、雨の日にはよく見かける、かたつむり。
「あの、足ののろまなやつですね」
「そうだ。かたつむりはとても足が遅い。遠くへ行こうと思っても、彼らのスピードじゃいつまで経っても辿りつくことができやしない。かたつむりは、自分が生まれた場所から一生離れることができない生きものなんだ」
「散歩に行けないのですか」
「散歩に行けないだけなら、まだ良かっただろう。でも、たとえばかたつむりの住んでいる場所に危険が迫ったらどうなる。彼らの食べ物である草や木がなくなって、地面が灼けたアスファルトばかりになってしまったら。そんなことになったら、かたつむりはもう生きていけない。どこかへ逃げ延びようにも、彼らの足の遅さでは、環境の変化から逃げ切ることはできないんだ」
 雨雲の去った翌日、久しぶりの快晴に私たちが喜んでいるそのすぐ隣で、道路の上には干乾びたかたつむりの殻だけが取り残されている。八坂さまの言葉は、ふと私にそんな光景を思い起こさせました。憶えはある、だけれども特別意識したことは、きっと今日がはじめてのこと。ふと胸の中に湧いてきたもやもやとしたものに、私はなんだか自分が今まで申しわけないことをしていたような気分になりました。私が直接なにかをしたわけではない、なのにどうしてか、自分が今までたくさんのものを見殺しにしてきた、そんな気持ちになってしまって。
「かたつむりがかわいそう……」
「確かに、かわいそうだ。だけど、仕方のないことでもある。だって彼らの暮らす住処を、環境を変えなければ、今度は人間が住む場所がなくなってしまうのだからね」
 しかし八坂さまの口調は、そんな私を責めるふうではありませんでした。むしろ、仕方がないと、確かな声でそう言ったのです。
 仕方がない。どうしようもない。
 それはきっと、どんな理不尽にも納得をつけてしまう、魔法の言葉でした。
「かたつむりのいなくなってしまうのは、仕方のないこと……」
「かたつむりだけじゃない。環境が変わって生きていけなくなったり、数を減らしてしまう生きものは他にもたくさんいる。早苗が調べている蛙だってそうだ。澄んだ空気がなければ、綺麗な水がなければ蛙は暮らしていけない。早苗がいくら探してもなかなか蛙を見つけられないのは、蛙が生きていくのに必要な環境が、どんどんなくなってしまっているからなんだ」
 視線を、もう一度水田のほうへ。今日一日中探しても見つからなかった蛙は、きっと元からここには暮らしていなかったのかもしれない。それは、もうこの辺りが蛙が住まうには厳しい場所になってしまったから。環境が変わってしまったから。だけどもそれは誰にも責められないことだし、誰が悪いというわけでもなくて。
 遠く、田んぼの向こうに立ち並ぶ家々を見て思います。
 誰かが住めば、なにかが追われる。
 蛙はもう――ここで生きることはできない。
「環境が変わると、いなくなってしまうのですか」
「そうだ」
「誰にも見つけられなくなる」
「難しくなるだろうね」
「生きる力も、よわくなってしまう」
「変わりすぎた環境は、毒のようなものだ」
 八坂さまの声は透明でした。どんなものに阻まれることなく、私の体さえするりと通り抜けて、いちばん奥深いところに直接伝わってくるのです。そうやって伝えられたものを、私は何度も咀嚼して理解しようとしました。自分にとっていちばんわかりやすく、そしてもっとも納得のできる形で。

「では、神さまも“しひょうせいぶつ”なのですね」

 そして――導き出された答えが、“それ”でした。
 かたつむりも、蛙も、神さまも、おなじもの。
 環境が変われば生きてはいけない。新たにやって来るなにかのために、住処を追われなければならない。そんな境遇に抗うこともできず、ただただじっと黙したまま、私たちの前からひっそりと姿を消していく。
 それは私が小さいころから、見て、聞いて、触れて、感じてきた神さまの在り方そのものでした。
「環境が変わってしまったから、神さまも、いなくなったり、弱くなったり、誰にも見つけられなくなってしまったのですね」
 八坂さまは物知りで、私にいろんな知識を授けてくれました。特に神さまというものについては、特別熱心に私に語って聞かせてくれたものです。神事のこと、信仰のこと、奇跡のこと。かつては当たり前に存在していて、けれども今では見る影もなく失われてしまったものとかたち。
 どうして神さまが昔のような身近な存在でなくなってしまったのか――その真実が今、はっきりとしました。
 環境が変わったから。
 人が変わったから。
 だから神さまは、もうすぐ死ぬのだ。
「……そうだよ。早苗は賢い子だね。早苗の言うとおり、神さまも指標生物だ。人間が、自分たちが生きていくために環境を変えた結果、消えざるをえなくなってしまった存在だ。人間が受け入れた新しい思想や常識に、神さまはもう、付いていけなくなってしまったんだよ」
 その声に込められた感情がどんなものであるか、私には読み取ることがかないませんでした。八坂さまのお顔は今まで見たこともない表情に歪んで、笑顔とも泣き顔ともつかない皺を寄せていたものですから、私にはもう八坂さまの胸の内というものがさっぱり見当もつかないで、ただただ途方に暮れてしまうほかありませんでした。自分の呟いた言葉のどれかが、八坂さまを傷つけたのかもしれない。そう思うと、胸がきりきりと痛んで、たまらない気持ちになって――
 その痛みに弾き出されたように、私は目の前にあった胸の中に飛びつきました。
 ぎゅう、とその体を抱きしめてみる。お日様の匂いがいっぱいに広がって、頭がふわふわとした心地になって、
 だけど、
 もうすぐ、死ぬ。
「神さまは、つらくないのでしょうか」
「どうしてそう思うんだい」
 ぽつりと呟いた声に、八坂さまはやさしい声で答えました。
 お母さんよりも、お母さんらしい、そんな慈しみを孕んで。
「誰にも見つけてもらえないなんて、さみしいと思います」
「そんなこと、ないとも。まだ神さまを見つけてくれる人はちゃんといる。そういう人たちがいてくれるだけで、神さまは存分に満足しているよ」
「でも、いつかは、生きていけなくなるって」
「……そうなる前に、どこかへ行けたらいいね。大丈夫さ、心配することなんてないよ。神さまはかたつむりよりずっと足が速いから」
「それなら、安心ですね」
「あぁ、安心だ」
 どこかへ行こう。遠くへ行こう。神さまが神さまでいられるうちに。
 しひょうせいぶつ、と八坂さまは言いました。
 周りがどれだけ綺麗かを示す、そんな生きものだそうです。
 じゃあ、そんな神さまが生きてゆけなくなってしまった、この世界は――

「――あ、蛙」

 俯けた視線の先に、ひょこん、と飛び出した影がありました。
 さんざん私を歩かせてくれた、緑の体のにくいやつ。
 泥だらけの靴の上にちょこんと居座って、調子良さそうに喉なんか鳴らして。その姿がなんだか癪にさわったものですから、片手でひっ捕まえて虫かごの中に放り込んでやりました。
「今さら、のこのこ出てきやがったね」
「捕まえました。これで好きなだけ調査ができます」
「お手柔らかにしてやってくれ。知りあいに蛙好きがいてね、早苗が蛙をいじめたと知ればショックを受けて寝込んでしまう」
「悪いようにはしません。爆竹とか詰めません」
「ほんとうにやめてくれ」
 籠の中の蛙はおとなしいもので、げろげろと命乞いの声をあげることもありません。なんて度胸の据わった蛙だろう。きっと蛇と睨みあったって、いい勝負をしてくれるに違いないでしょう。
 なんておかしなやつ。
 仲間がいなくて、寂しくないの。
 私に見つけてもらうまで、今まで、どこでなにをしていたの。
 ねぇ……蛙の神さま。
「どうした、早苗?」
 ぼんやりとしていた私の耳へ、八坂さまの声が届きます。日はすっかり暮れていました。茜色の空もそろそろ焦げはじめ、空には薄い宵の色が広がりはじめていました。なんでもありませんと返事をして、私はまた八坂さまの手を取って帰りはじめます。反対の手には、新しく見つけた小さな神さまを抱きかかえて。

 こんなにちっぽけな神さまでも、どうにか息づいている。
 そんな世界はまだ、ほんの少しだけ綺麗なのかもしれない。

 

 

「東風谷さんの提出物はとても素晴らしい出来ですね。まさか指標生物のことまで調べてくるなんて、先生驚きました」
 夏休み明けに提出した宿題を一目見て、先生は大そう素晴らしいと言って私を誉めてくれました。あの日持ち帰った蛙の観察日記と、八坂さまの言っていたしひょうせいぶつについてのまとめ。それがどうやら先生の求めていた内容に合致したらしいのですが、みんなの前で百点だ満点だと連呼する先生の様子には、嬉しさよりも先に申しわけないという気持ちを覚えてしまいました。
「私ひとりで仕上げたのではないです、八坂さまが手伝ってくれました」
 手放しで誉めてもらえる出来栄えだったのは、きっと当たり前のことなのです。だって他でもない八坂さまが、私にたくさんの力添えをしてくれたのですから。しひょうせいぶつのことだってそう、蛙を見つけられたことだってそう。すべて八坂さまの助言あってのことなのです。八坂さまの神徳があったから、私は――
「まーた、早苗ちゃんはそんなこと言っちゃって!」
 けれども、おかしなことに。
 私がどれだけ八坂さまの協力を説明しても、誰も信じてはくれなくて。
 誰も、
 神さまが、見えなくて。
「私、早苗ちゃんが調べているところを見かけたけど、ずっとひとりで畦道で頑張ってたでしょ。手伝ってもらったなんて、遠慮しなくっていいよ。すごいよ、早苗ちゃん!」
 どうして見えないんだろう。伝わらないんだろう。違う、私が頑張ったわけじゃないんだ。八坂さまが手伝ってくれたの。八坂さまの神徳で、奇跡で、魔法で、私は宿題を終えることができたの。ほんとうだよ、信じてよ。私なんにもしてないよ。なにもできなかったもの。八坂さまの寂しそうな顔や、悲しげな声を聞いたって、どうすることもできなかった。私ひとりが頑張ったところで意味がないんだ。だって環境だよ。世界だよ。そう簡単に変わるわけがないじゃないか。私ひとりが努力したところで意味なんてないよ。みんなが信じてくれなきゃだめなんだ。八坂さまはいるって。神さまは私たちのすぐ側にいて、困った時にはちゃんと手を貸してくれる存在なんだって!

 私、一人じゃなかったのに。
 どうして……

 ねぇ、八坂さま。
 神さま。
 こんなの、ちっとも嬉しくないよ。



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