WEDGE REPORT

2018年5月10日

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崔 碩栄 (チェ・ソギョン)

ジャーナリスト

1972年韓国ソウル生まれ。韓国の大学で日本学を専攻し、1999年渡日。関東地方の国立大学で教育学修士号を取得。日本のミュージカル劇団、IT会社などで日韓の橋渡しをする業務に従事する。現在、フリーライターとして活動、日本に関する紹介記事を中心に雑誌などに寄稿。著書に『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』(彩図社刊)、『「反日モンスター」はこうして作られた-狂暴化する韓国人の心の中の怪物〈ケムル〉』(講談社刊)がある。

 日本でも、韓国でも、国会で与党と野党は頻繁に対立する。それは、同じ民族でも価値観と目標が違うからだ。逆に民族が違っても価値観と志向する目的が一致すれば同盟、協力、共存できるのが一般的だ。今の時代「民族」を強調するのは時代錯誤とであり、危険な発想だ。

 では、果たして韓国は北朝鮮と価値観と目標を共有、共感できるだろうか。「統一」という漠然とした幻想以外に、腹を割って話し合うことは可能だろうか。残念ながら韓国政府と韓国メディアはそれについては見て見ぬふりをしている。なぜなら、言論の自由、居住移転や旅行の自由、三権分立など民主主義的な価値観を話題に挙げたとたん、対話は破綻するしかないことを知っているからだ。現代において「自由」より「民族」を優先し成功した例があるだろうか。

三、目の前の利益だけを追う韓国 北朝鮮観光と平壌冷麺の話に夢中の韓国人たち

 南北首脳会談で南北交流の拡大、鉄道の連結に関する内容が発表されると、週明けの30日韓国証券取引所では建設業、鉄道、送電事業の関連株が一斉に急騰した。そして、多くの韓国人たちは、まるで北朝鮮との交流がすぐにでも実現するかのように、北朝鮮の観光と平壌で味わう本場の冷麺の話で盛り上がっている。

 北朝鮮が言う非核化はどのレベルなのか、交流と事業に必要な財源はどのように調達するか、米日中の支持と協力をどう引き出せるかなど根本的な問題には触れず、ただ目の先の金儲けと食べて、飲んで、遊ぶ話で盛り上がっている。

 今韓国で深刻な社会問題になっているのは青年層の失業問題だ。今年3月の青年(15~29歳)失業率は11.6%だったが、臨時パート職の就職浪人などを含めた「拡張失業率」は24%に達した。仕事がない青年層は悲鳴を上げているのだ。一方で、韓国政府は北朝鮮にある開城工業団地の稼働再開を進めているが、それは韓国企業の事業移転、つまり韓国内の仕事減少になりかねない。だが、そのような懸念より韓国人が今夢中になっているのは北朝鮮観光と冷麺の話だ。そういう人たちにとっては、金正恩は単なる旅とグルメのメッセンジャーに見えたかもしれない。

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