あなたの心です……名シーンのオンパレードである『ルパン三世 カリオストロの城』。中でも、私(中澤)が地味に好きなのが、湖で次元がルパンからカリオストロとの過去を聞き出すシーンだ。いつもと違う次元の空気を察するルパンと関節技で語る次元。
描写はコミカルだが、にじみ出る「相棒感」に痺れる憧れる。あんな関節技かけたい! というわけで、プロレスマニアに、次元の関節技は一体なんて技なのか聞いてみたところ、思いがけず衝撃の事実が発覚してしまった!!
・重度のプロレスマニアである2人
この度、私が素朴な疑問を投げかけたのは、ロケットニュース24編集部屈指のプロレス好き・GO羽鳥とP.K.サンジュン。2人とも、何かあるごとに相手の理解を無視してプロレスで例える重度のプロレスマニアである。おかげで、私もカール・ゴッチという名前だけは覚えた。
・登場する立ち関節は2つ
それはともかく、次元がルパンにかけている関節技は2つ。1つは、ルパンの左脇から右手で首をロックしつつ、ルパンの左足を股に通して背中越しに左手でロックしている「立ち関節A」。
もう1つは、ルパンに背を向け右手で首を左手で右足を締め上げ又裂きをする「立ち関節B」の2種類だ。
・問題のシーンをプロレスマニアが分析
次元の流れるような動きからも相当慣れていることがうかがえる。私には、プロレスの技っぽく見えるのだが、2人はどう見るのか。そのシーンを見せてみたところ……
GO羽鳥「立ち関節Aは、上半身がドラゴンスリーパーで下半身がストレッチプラムっぽいか? ……いや、違うな。ドラゴンスリーパーとストレッチプラムのDNAは入ってる感じがするけど別物だな」
P.K.サンジュン「ジャべっぽくないですか?」
GO羽鳥「あー! メキシコ系だね!!」
──ジャべって何ですか?
P.K.サンジュン「メキシコのプロレスを『ルチャ・リブレ』って言うんですが、そこで使う関節技のことをジャべって呼びます。ちなみに立ち関節Bは、形としては『裏STF』に近い気がするけど立ってるしな……」
GO羽鳥「これもジャべだ。次元大介と名乗る男がジャべの使い手なのは間違いない。ジャべは派手なのが特徴なんだけど、こんな時代に通だねぇ」
──意味不明なポイントで感動し始める2人。
GO羽鳥「日本のプロレス界で『ジャベ』という概念が浸透したのは……2001年くらいかな」
──結構最近なんですね。
GO羽鳥「もちろん、たとえば『吊り天井(ロメロ・スペシャル)』とか、そういうわかりやすいメキシコ式の関節技は古くから入ってきてるけど、次元大介と名乗る男が繰り出した関節技は、どう見ても複雑難解な『ジャベ』なんだよね。
そして、ここで問題になるのが、カリオストロの公開が1979年ということ。こんな時代に、わかりにくいジャベを入れてくるレスラーは皆無といって過言ではないよ。
1979年となると……マスカラスの時代でしょ。タイガーマスク(初代)のデビューが1981年だから、どれだけ次元大介と名乗る男の関節技が最先端だったのかってこと。それをこの時代に見せちゃうとは……次元は確実にメキシコ人だね。というか、この時代にこれを知ってる宮崎駿監督もあるいは……」
──いや、それはないでしょ。
P.K.サンジュン「次元がメキシコと何らかの関係があったことは間違いないでしょうね。完全にジャベ(メキシコの関節技)の流れを汲んでいます。おそらくですが、次元はメキシコで仕事をしていたんですね。
1979年頃、メキシコでは『麻薬戦争』と呼ばれるカルテル同士の抗争がありました。腕利きの次元が用心棒、もしくはヒットマン的に雇われたことは想像に難くありません。
きっとメキシコ滞在中に、ルチャ・リブレに感銘を受け、様々な技を習得したのでしょう。もしかしたら聖地『アレナ・メヒコ』で、ルチャ・リブレを生観戦していたのかもしれませんよ。しかし、この時代にこの関節技を描写するなんて……ハッ! ひょっとして、宮崎駿監督はメキシコ人?」
──だからないって。
GO羽鳥「ロメロ・スペシャルとか、カバージョ(キャメルクラッチ)とか、わかりやすいジャベで盛り上がっている日本人に対する『これが本当のルチャ(自由への戦い)なんだぞ』というアンチテーゼだったんじゃないのかな」
P.K.サンジュン「余談ですが、ルパンほどではないにせよ、次元の変装技術もなかなかのものです。これはおそらく “千の顔を持つ男” ミル・マスカラスから伝授されたものと推測されます」
──ウゼェェェエエエ! そして次元ヤヴェーーーーーーー!! まさかメキシコ人で、変装をミル・マスカラスから伝授されていたなんて衝撃である。ミル・マスカラス知らんけど。
後半ほとんど何言ってるか分からなかったのだが、この時代にマニアックなジャべを使うことが凄いというのはビンビンに伝わってきた。というか、この関節技を描いた宮崎駿監督がスゴイ。メキシコ人ではないにせよ、実はとんでもないプロレスマニアだったりして。
イラスト・執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼マニアックすぎる関節技
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