4月27日、朝鮮半島の板門店で南北首脳会談が開かれた。北朝鮮の指導者としては史上初めて板門店の韓国側地域へ歩いて軍事境界線を超えた金正恩委員長は文在寅大統領と会談や晩餐をしながら12時間も行動を共にした。
このニュースは世界のトップニュースになり、会談後の共同宣言文は世界中から注目された。しかし、宣言の中身は冷静に評価すれば物足りない内容だと言わざるを得ない。「非核化への努力」は明記されたが、具体的なプロセスについては全く言及されず、既存の核兵器の「廃棄」に対する言及もなかったからである。
韓国メディアからは「平和への大きな一歩」と高い評価を得ているが、第3者である海外メディアからは疑念、もしくは疑いの目で見られているのが現状である。それも無理からぬ話で、北朝鮮は過去に何度も核放棄の意思を表明した。だが、約束は守られず密かに核実験と核兵器製造が続けられてきたからだ。
韓国メディアの世論調査「金正恩を信頼する」77%の衝撃
南北首脳会談から3日後の4月30日、韓国のTV局MBCが発表した世論調査の結果は韓国社会に衝撃を与えた。全国の成人1023人を対象にした調査によると金正恩に対して「信頼できる」と肯定的な評価した韓国人が77%にも達したからだ(ただ、1023人を対象に応答率12%という極めて少ない標本数ではあった)。
世界からみると「人権弾圧国の支配者」であり、「独裁者」と認識されている金正恩が韓国人の目にこのように好意的なイメージに映っている理由は何だろうか? 確かに今回の会談を通して笑顔を浮かべながら、時には冗談を交える金正恩の姿は、韓国人の目には意外なものだった。そして、それは 「恐ろしい独裁者のイメージ」を「人間味を感じられる一人の男性」に変えたとも言える。
しかし、彼は叔父を処刑し、異母兄を毒ガスで殺害した残忍な人物である。それは韓国人が一番よく知っている。にもかかわらず、金正恩のイメージがここまで急に好転したのはなぜだろうか。それは南北首脳会談でカメラに映った姿、すなわち「表の姿」に韓国人の思考、あるいは心理が一種の「化学反応」を起こしたからである。「好感」を回答を導き出した韓国人の思考、心理はどのようなものか考えてみる。