松原央
2018年11月24日11時22分
関西電力が立山黒部アルペンルートの関電トンネル(富山県立山町~長野県大町市)で1964年から運行してきたトロリーバスが、30日の今季の営業終了と共に引退する。別れを惜しむバス愛好家らが、車体の撮影や乗車体験のツアーを行うと聞き、記者も同行した。
「トロバス」の愛称で親しまれたトロリーバスは、トンネルの天井に張られた架線から屋根の上の「トロリーポール」で電気を受けて走る。黒部ダム駅(立山町)―扇沢駅(大町市)の約6・1キロを16分で結ぶ。
ただ、来年4月からは、大型バッテリーを搭載した電気バスが運行される。トロバスよりも車体価格が抑えられ、架線の保守点検が不要になるなど運行コストも削減できるという。
今月10日、富山や東京、大阪などから19~67歳のバス愛好家32人が富山市からバスで扇沢駅へ。停車場では関電の許可を得て、引退間近のトロバスと、デビューを控えた電気バスの「ツーショット」を撮影した。
トロバスは一見すると普通のバスのようだが、法的にはバスではなく「無軌条電車」。愛好家たちが「電車だからナンバープレートがない」「ウィンカーも必要ない」と教えてくれた。
トロバスに乗り、扇沢駅を出発。車内は普通のバスのようなエンジン音はなく静か。急坂もぐんぐん登る。トンネル内は暗いが、愛好家たちは車窓からトンネル内をビデオカメラで撮影し、ICレコーダーで車両のモーター音を録音している。トンネル工事の際、大量の水を含んだ軟弱な地層で難工事となった「破砕帯」を過ぎ、あっという間に黒部ダム駅に着いた。
唯一の女性の参加者で大阪府豊中市の会社員、津田了(のり)さん(44)は、中学の修学旅行以来30年ぶりに乗車。「バスとも電車とも違う、どこか懐かしい乗り心地に親しみを感じた」という。参加者で最高齢の兵庫県尼崎市の会社員、畠山重信さん(67)は「子どもの頃は大阪でたくさん走っていたトロバスが、また一つ見られなくなるのは寂しい」。
国土交通省によると、関電トンネルのトロバスの引退で、全国でトロバスが残るのは、立山黒部アルペンルートの立山トンネル(大観峰―室堂)で立山黒部貫光(富山市)が運行するトロバスだけになる。かつて立山トンネルのトロバスを運転し、現在は高速バスの運転士という富山県立山町の脇田猛志さん(45)もツアーに参加。「トロバスはブレーキ操作が難しく、熟練の運転技術が求められる乗り物」という。この日、トロバスに乗って「引退の日が迫っていることを実感した」という脇田さん。「立山トンネルだけになっても、いつまでも残してもらえればうれしい」(松原央)
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