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トロリーバス、無事故貫きラストラン 54年間で6162万人乗せ

職員が横断幕を手に見送る中、出発する最終のトロリーバス=富山県立山町の黒部ダム駅で

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 長野と富山をつなぐ立山黒部アルペンルートのうち、大町市の扇沢と富山県立山町の黒部ダムを結ぶ関電トンネルで30日、54年にわたる運行を終えたトロリーバス。黒部ダム駅では最終便の発車時に「ラストラン出発式」があり、ダムの難工事の歴史に彩られた旅情を運んだ車両をねぎらった。

 式は黒部ダム駅の改札前であり、関西電力黒四管理事務所(大町市)の村田直樹所長が「本日でトロリーバスが終わり、寂しい」とあいさつ。花束を受け取った運転手らが六両の最終便に乗り込み、発車した。駅員らはトンネルの先に消えて行く車両を手を振って見送った。乗客らは扇沢駅に到着後も、車両を撮影するなどして名残惜しそうだった。

 トロバスは一九六四(昭和三十九)年八月一日に開業。映画「黒部の太陽」(一九六八年)でダム工事の難所として描かれた破砕帯を経て、自然豊かな黒部峡谷に築かれた巨大ダムを観光する交通手段となった。見た目はバスのようだが、上部の電線から電力を取り入れて動き、鉄道の一種。

 初年に約二十九万人だった年間の乗客数は、六九年から三年間で黒部ケーブルカー(黒部湖-黒部平)、立山ロープウェイ(黒部平-大観峰)、立山トンネルトロリーバス(大観峰-室堂)が相次いで運行を始め、アルペンルートが全線で開通したことも受けて百万人台に。九一年には最多の約百七十万人に達した。

 東日本大震災が起きた二〇一一年は約八十六万人に落ち込み、百万人を切る年が目立つように。が、近年は台湾や韓国、香港などの観光客が急増。今年はトロバスの運行が最後になるため、現役の姿を目に留めたいファンも駆けつけ、三年ぶりに百万人台に戻した。

 五十四年間の累計乗客数は約六千百六十二万人。国の鉄道事故等報告規則に定める事故の記録はなく、「無事故」を貫いた。

 全十五両は来季から電気バスに切り替えるために退役する。電気料や維持管理の費用を抑える狙いで、今後は立山トンネルが国内でトロバスが運行するただ一つの区間となる。

 七六年に黒四管理事務所に入り、二年前に退職するまで四十年間運転手などで運行に携わった伊藤元紀さん(61)は「安全に運行してこれたのは先輩方の指導やトロバスファンの支援のたまもの。電気バスも応援してほしい」と話した。

 (林啓太、野村和宏)

 

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