おはようございます!広報のヒロです。
今回は「ケーブル巻き」をご紹介したいと思います!
この業界の方達には、『え?そんなこと?』と思われそうな題材ですが・・・。
音響や映像システムの接続には、何種類ものケーブルが使われます。
そのケーブルの「巻き方」にも、いくつかの種類があるのです。
私は音響の世界に足を踏み入れるまで、ケーブルの巻き方に種類があって、それぞれに「○○巻き」と名前があるなんて全く知りませんでした。たぶん「○○巻き」と聞いても「お寿司ですか?卵焼きですか?」って感じでしたね。あはは・・・(恥)。
そんな私ですが「ケーブル巻き」を知ったときは、けっこう面白く感じたものです。
初心に返ってブログでケーブル巻きを紹介しようと決めましたが、ケーブル巻きの「手順」や「呼称」は、業界ごと会社ごとにも異なる場合があり、一概に言うことができません。特に「呼び名」は個人差が大きそうです。
「これが正式です!」なんて、絶対的な物はきっと存在しなくて・・・。
正解は決して一つじゃないけれど、恐らく一般的かなと思う「呼び名」と「手順」で、ケーブル巻きの一例を3つご紹介したいと思います。
1.順巻き
じゅんまき。同じ方向に繰り返し巻き続ける方法。普通の巻き方です。
巻いた状態で売られているケーブルは、ほぼ100%「順巻き」になっているはず。あえて紹介しなくても良さそうですが、手で持って巻く場合の手順をご紹介。
① 左手でケーブルの端を持ちます。
② 右手でケーブルを手繰って輪を作ります。(普通に巻きます。)
③ 「②」と同じ方法を繰り返し、巻き続けます。
④ 完成。
手で輪をつくる方法に限らず、ドラムに巻きつけて巻く場合も順巻きです。
- 巻き方は簡単。それゆえにスピーディー。
- 普通にほどくとケーブルがよじれるので、ヨレを介錯しながら這わせる。
【補足画像1】
巻いたケーブルをずらしてみました。一巻き目も二巻き目もその後も同じです。
【補足画像2】
巻いたケーブルを真っ直ぐ引いてほどいてみました。普通にほどくと、ケーブルによれが生じるので、介錯しながらほどく必要があります。
2.8の字巻き/逆相巻き
「はちのじまき」と「ぎゃくそうまき」です。
実は当社内でも呼び方が分かれたので、呼称を二つ書きました。
順・順・順・順・順・順と同じ向きに巻き続ける「順巻き」に対して、順・逆・順・逆・順・逆と交互に繰り返して巻く方法がこれです。手で持って巻く場合の手順をご紹介します。
① 左手でケーブルの端を持ちます。
② 右手でケーブルを手繰って輪をつくります。(普通に巻きます。)
(「①」と「②」は、順巻きと同じ手順です。)
③ 2巻き目は、右手で逆巻きの輪をつくります。
※逆巻きの輪を作る際は、右手の手首を反す方法や、ケーブルを右手の指で少しよじる方法もあります。上手にケーブルを導いてやることで、スムーズに逆巻きが作れます。
④ 「②(順)」と「③(逆)」を交互に繰り返して巻き続ければ完成。
巻き終わった形は順巻きとそっくりですが、真っ直ぐ引いてほどいてもケーブルはよれません。
「順」と「逆」は反対方向の「ねじれ」を持っているので、互いに打ち消しあってねじれが解消され、結果、真っ直ぐになります。
- 巻き方は特徴的。(慣れれば簡単)
- ほどいた時にケーブルがよじれないので、這わせる作業はスムーズ。
【補足画像1】
巻いたケーブルをずらしてみました。
「順」と「逆」を交互に繰り返すので、一巻き目と二巻き目は異なっています。
3.8の字巻き(地8)
はちのじまき。2で紹介したものと呼称が一緒ですが、異なる巻き方です。
ケーブルを地面や専用ケースなどに置いて、数字の「8」の字状に巻く方法です。地面に置いて巻くので「地8(じはち)」と呼ぶ場合もあります。
この8の字巻きは、手で持って巻くことが困難な、太さと長さと重量のあるケーブル(数十メートルのマルチケーブル等)に用いることが多いです。
数字の「8」を書き続ける要領で巻きます。
巻き終わったら、中央のケーブルが交差している部分と輪の外側2ヵ所の計3ヵ所を紐やバンドで止め、「8」の形を維持したまま置いた状態で保管します。
写真のケーブルは、私の手元にあった細いマイクケーブルですが、実際に8の字巻きにするケーブルは、直径が数センチあったり、総重量が100kg以上だったりします。
ちなみに1の「順巻き」や、2の「8の字巻き/逆相巻き」も地面に置いて巻く場合がありますが、その場合も太くて重いケーブルに用いられることが多いです。
- 巻き方は特徴的。
- ほどいた時によじれないので、這わせる際によれを介錯する必要がない。
- 保管に場所をとる。
以上、ケーブル巻き3種類です。
どれも代表的なケーブル巻きと言えるのではないでしょうか?
2の「8の字巻き/逆相巻き」と3の「8の字巻き(地8)」の共通点は、ケーブルが右回りと左回りを交互に繰り返している状態だということです。
これによって、“ケーブルのよれ”だけでなく“同相成分のノイズ”も打ち消しあうのだそう。
「巻き方」や「巻いた形状」は全く異なりますが、同じ「8の字巻き」という名称で呼んだり、両者は実は同じことなのだと表現する場合があるのは、そういう理由からだと思います。
続きまして・・・
私の疑問と余談
を少し。
私の疑問(1) 「ケーブルにとって一番良い巻き方はどれ?」
どの巻き方が一番ケーブルに負担をかけないのかな?という単純な疑問です。当社の映像オペレーターに私の疑問をぶつけてみました。
その答えは、「巻き方のみ」に着目した場合、どの巻き方でもケーブルにかかる負担は、ほぼイコールとのこと。
ただし!無理にねじるなど、ケーブルにストレスをかけること無く、ケーブルが素直に巻かれるように介錯しながら巻いた場合に・・・という条件が大前提。たとえ何巻きにしても、無理に扱えば、ケーブルのストレスになるわけですね(…当たり前か)。
なお、ケーブル巻きの説明中にも「よじる」や「ねじる」といった表現を使用していますが、この記事で言う「ねじる」とは、無理にねじる事ではなく、ケーブルが嫌がらずに素直に巻かれるように導いてやることです。
私の疑問(2) 「ケーブルを痛めない、巻き方のコツは?」
疑問(1)の解答にあるように、無理やり巻いたりせず、ヨレやクセを介錯してやることが1つ。
あとは、巻くときに、ケーブルを引っ張って手繰り寄せるのではなく、自分が動いて、ケーブルを迎えに行きながら巻くこともポイントの一つだそうです。
コンサートやイベント等で使われるケーブルは100mなど長いものも多いです。また、現場の床に自社ケーブル以外の物が一切ない・・・なんて事は、まずあり得ません。
断線等のケーブルトラブルは、線とコネクターの「接合部分」で起こりやすいので、引っ掛けたりしないように、注意することが常識なのだと知りました。
余談 「エンジニアは、ケーブル巻きが苦手?!」
ヒビノで長年に渡りPAエンジニアを務めてきた大先輩が口にした、
「ケーブル巻くの、あんまり得意じゃないんだよね」
という一言が、あまりに衝撃的で「えぇ!!!なぜですか!?」と追求してしまいました。
エンジニアはあまりケーブルを巻かない・・・と言うと、大変に語弊がありますが、エンジニアになると、セットアップの際にシステム側での作業が多くなり、アシスタント時代と比べて、ケーブルを巻く機会が減るのだそうです。
長いケーブルを這わせたり巻いたりする作業は、若手が担当することが多いので、「ケーブル巻き」に関しては、エンジニアよりアシスタントの方がスピーディーな場合も?!
聞けば納得ですが、ちょっと目からうろこの心境でした。
ま、これは、こぼれ話ってことで。
この他に、
綺麗に巻くちょっとしたコツ
として『ケーブルを手繰る右手のストロークをそろえると、輪の大きさが均一になる』とか『多くのケーブルはメートル単位で作られているので、右手のストロークを1メートルにすると、ケーブルの両端(巻き始めと巻き終わり)が同じ位置で揃う』といったコツも教わりました。
業界人であれば、誰もが知っているケーブル巻き。
これを「スキル」と表現するのは、あまりに大げさかもしれません。
ここでご紹介した巻き方や呼称は、私個人の理解で書いたものですが、コンサートやイベント、放送など、一瞬のミスも許されないLIVEの現場において音響や映像の「伝送ケーブル」がもつ役割とその重要性は世界共通です。
プロにとって『ケーブルの適切な取り扱い』や『ケーブル捌き』などは、改めて言うまでもなく、誰もが無意識の中で当たり前にやっている事。
でも、それって実は、自らの仕事に対する姿勢や責任感、果てにはプロ意識・・・なんて事とも通じているのではないかなーと考えたとき、この『当たり前の感覚』の中に、プロ魂の片鱗を垣間見られるような気がしました。
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