この大陸に平和を成すのは、ただ一本の蔓――。
悪徳貴族の息子として生まれたカズラは、最弱に分類されるGランクスキル『蔓』を有していた。その効果は指先を蔓植物に変えるだけという真の意味での最弱だった。
加えて、父親は金の力で成り上がった勇者の心の欠片も無いクズであり、その息子、カズラも同様に扱われていた。
カズラは口調は傲慢、態度は不遜、実力は伴わないとあって誰の尊敬も受けていなかった。だが、カズラこそが誰よりも領民のために行動していたのだった。
そして、突如として最強の魔王がカズラの領地に現れた時、全てが始まる。
領民を守らんと持てる全ての力を以て戦ったカズラは、ついに、奇跡的に魔王の体ごと魔力を吸い尽くすことに成功する。大陸最強の魔力を手にしたカズラは、次期魔王候補の座を狙う魔族達と、真の勇者を目指し競い合う人間との戦い、『人魔戦争』に身を投じることになる。
「俺が魔王の使っていた魔法で全て焼き払えばいいのではないか?」
「カズラ様、その魔法理論はご存じですか? 人間の身で発現されるなら、数万の呪文からなる高度な術式が必要となりますが」
「……」
最強の魔力を持っていても、その持ち主はろくに魔法も使えなければ、魔力の出力方法も分からない最弱。学べ、未来の勇者よ。人類に真の平和が訪れるその時のために。