エニアグラムの囚われからの解放の道筋
皆さんは、エニアグラムの、健全~通常~不健全という段階に対して、どのように捉えていますか?
また、エニアグラムにおける、各タイプが自身の「囚われ」から解放されるための方法として、どのようなことが大事だと思っていますか?
囚われからの解放について、とても重要な考え方があり、本家のリソの本では詳しく紹介されているものの、日本のエニアグラム関連の本では全く触れられていません。ですので、今回きちんと紹介しようと思います。
まず、前提として、各タイプは、各センターをうまく使えていません。それが囚われです。
例えば、タイプ8,9,1を考えてみましょう。
タイプ8は本能センターに位置していて、思考センターの隣です。
つまり、一番目のセンターが本能で、二番目のセンターが思考です。だから、普通に考えると「ふむふむ。ということは、本能と、思考をある程度うまく使えるのだな」と。
それは全く違います。
逆で、自分がいる場所のセンターの近辺は、うまく使えないセンターなのです。
いったん、3,6,9の主要タイプをのぞいて、1,2,4,5,7,8の副次タイプに限って話を進めることにします。
副次タイプでは、一番目のセンターの欲求を達成するための「二番目のセンターを歪んで」使います。
どういうことでしょうか?
タイプ8の一番目のセンターは「本能」で、自分自身を守り、自己主張し、世界の中で自立して存在するのが目的です。
そして、タイプ8の二番目のセンターは「思考」です。その場合、「思考」を本能が目指す目的のために歪んで使います。具体的には、タイプ8は、自身を脅かす敵を押さえつけたり感じ取るのに常に「思考」を使います。「思考」によって、策略をねったり、誰かに恐れを抱いたり、支配しようとします。つまり、それが二番目のセンターを「歪んで」使っているということです。しかも、一番目のセンターも上手く使えないため、過敏に反応し、自身の敵となりそうなものが居たらすぐに戦おうとしてしまいます。タイプ8はこのように、一番目と二番目のセンターを上手く使えないのです。ちなみに、タイプ8の三番目のセンターは「感情」です。
同じように、二番目のセンターが「思考」であるタイプ4をみてみましょう。タイプ4の一番目のセンターは「感情(フィーリング)」です。「感情」センターの課題は、アイデンティティ、自分らしさ、名誉を手に入れることです。そしてタイプ4は、二番目のセンターである「思考」を、アイデンティティを保つために使います。つまり、自分自身にアイデンティティや名誉をもたらすような、空想的なストーリーを「思考」を使って考えます。また、ちなみに、タイプ4の三番目のセンターは「本能」です。
そして、ここでよく言われる各タイプへのアドバイスをみてみましょう。例えばタイプ4をみてみると、次のような感じです。
・自分についての、現実とかけ離れたストーリーを夢想することをやめて、現実的になるように努力しましょう
・体を使う活動をするようにしましょう。ストレッチやウォーキング程度でいいので。
・気まぐれになることに注意しましょう
ここで、これらのアドバイスに対して、注目してほしいポイントがあります。
それは、各アドバイスが、「三番目のセンター」についてなのか、「二番目のセンター」についてなのか、ということです。
一つ一つみていきましょう。
・自分についての、現実とかけ離れたストーリーを夢想することをやめて、現実的になるように努力しましょう
→これは、「思考」センターを妄想的に使うのをやめましょう、という「二番目のセンター」に対するものです
・体を使う活動をするようにしましょう。ストレッチやウォーキング程度でいいので。
→これは、「本能」センターを少しは使いましょう、という「三番目のセンター」に対するものです
・気まぐれになることに注意しましょう
→これは、「思考」センターの過活動により散漫になるのを注意しましょう、という「二番目のセンター」に対するものです
つまり、どういうことが言えるでしょうか?
それは、各タイプへのアドバイスは基本的に、
「二番目のセンター」についてのアドバイスと、「三番目のセンター」についてのアドバイスの2種類がある、ということです。
なぜでしょうか?
それは、(副次タイプは)元々のセンターへの「囚われ」を直接解放できないからです。1,2,4,5,7,8のタイプは、「二番目のセンター」と「三番目のセンター」を正しく整えることで、囚われからの解放に至るからです。普通、二番目のセンターは「手段」として歪んで使われていますが、三番目のセンターは、ほとんど使われていません。つまり、単純に未発達なのです。だから、各タイプのセンターのバランスを整えるためには、二番目のセンターと三番目のセンターを整えることが必要なのです。
それを、リソがどのように言っているかみてみましょう。リソは次のように言っています(understanding the enneagram: revised editionから)。少し長いですが読んでみましょう。
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広い意味での精神の安定には、三番目のセンターを適切に発達させることがとても必要です。三番目のセンターを働かせることは、私たちに安定感をもたらし、それがさらに私たちを深い段階の成長に誘うのです。(略)
通常の範囲で機能しているほとんどの人にとって、三番目のセンターを働かせることは、その人のパーソナリティにとって、客観性とバランスを急速にもたらすことになるでしょう。しかし、ずっと続くようなブレークスルーは、自身の二番目のセンターに目を向けなければなりません。もし人々が他の乱れた二つのセンターに目を向けず、三番目のセンターを働かせることにのみ関心を払えば、確かに彼らは安定しますが、しかし本質的な認識の発達は望めないでしょう。
ですが毎日のバックグラウンド的な修行は、三番目のセンターに基づくべきです、ホーナイのグループで示された、遊離タイプ(タイプ4、5、9) なら体に関わる(体を使う)べきですし、追従タイプ(タイプ1、2、6)なら静かなマインドを保つことをするべきですし、自己主張タイプ(タイプ3、7、8)なら心を開くことをするべきです。
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と、このように、まず「バッググラウンド」としての三番目のセンターを多少発達させるようにすることと、それから二番目のセンターの歪みを直すことについて触れています。
例えば、他の副次タイプ、タイプ7とタイプ2について考えてみましょう。
タイプ7は、「思考」センターのタイプですが、二番目のセンターは「本能」です。同様にタイプ2は、「感情」センターのタイプですが、二番目のセンターは「本能」です。
すると、この二つのタイプ、タイプ7とタイプ2に共通していることは何でしょうか?
それは「本能」を手段として使っていることです。
タイプ7から考えてみましょう。タイプ7の「思考センター」の根本的に求めるものは「安全」と「安心」です。つまり、恐怖から解放されることです。それを達成するための手段として「本能」センターを使います。つまり、活動的になることで、恐怖や不安から目をそらし、偽りの「安全」と「安心」を達成しようとするのです。
タイプ2はどうでしょうか?
タイプ2の求めるものは「アイデンティティ」です。アイデンティティとは、自分らしさや、人間関係の中での存在意義ということです。タイプ2は、それを達成する手段として「本能」を使います。つまり、活動的になることで、人間関係の中で「意義ある自分=アイデンティティがある状態」でいようとするのです。
つまり、本能センターが二番目にあるタイプは、本能を手段として使ってしまうため、歪みが起きてしまうのです。
そして、先ほどと同様に、ここでよく言われる各タイプへのアドバイスをみてみましょう。例えばタイプ7をみてみると、次のような感じです。
・活動を少し抑えて、冷静に考えてみましょう
・自分の感情に気づくようにしましょう。とくに、抑圧された悲しみや後悔を。
どのセンターに対するアドバイスか考えてみましょう。
・活動を少し抑えて、冷静に考えてみましょう
→これは、「本能」センターの過活動を少しは控えましょう、という「二番目のセンター」に対するものです
・自分の感情に気づくようにしましょう。とくに、抑圧された悲しみや後悔を。
→これは、「感情」センターを少しは使いましょう、という「三番目のセンター」に対するものです。
このように、世の中には色々なエニアグラムの本がありますが、アドバイスは基本的に「二番目のセンター」に対するものか、「三番目のセンターに対するものか」に対するものか、で、整理できます。
なので、もしネットや本でエニアグラムのアドバイスを目にした時は、そこに注意してください。そうすると、アドバイスを受け取りやすいです。
そして、これから、3,6,9の主要タイプの囚われについて考えてみましょう。リソ曰く、主要タイプは、単純です。単に、
「自分の元々のセンター」からもっともかけ離れている、ということです。つまり、タイプ3なら、もともと「感情」センターに位置していますが、もっとも「使っていないで歪んでいる」のが「感情」センターの機能なのです。逆に「本能センター」と「思考センター」はある程度使っています。
そしてタイプ3なら、この「本能センター」モードと「思考センター」モードを切り替えながら活動するのです。
だから、3,6,9が囚われから解放されるには、自分のもともとのセンターを使うようにしていくしかありません。それしかないのです。副次タイプのように、「二番目のセンターと三番目のセンターをそれぞれ整えて」、という感じではありません。自分のもともとのセンターとのつながりを回復するしかないのです。
だからある意味で、とても難しいです。主要タイプは、直接もっともバランスの崩しているセンターに向かい合わなければいけないからです。しかし逆に考えると、主要タイプは、自身とのつながりが失われたセンターが統合し始めると、その進歩は急速です。
そのような理由から、リソは、各タイプの「囚われ」からの解放を、副次タイプと主要タイプでは全然違うプロセスをたどる、と言っています。
次のような表現をしています。
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主要タイプの成長の道は革命的(revolutionary)と言える。一方副次タイプの成長は徐々である(evolutionary)。(補足:主要タイプは直接もっともバランスの崩しているセンターに向かい合わなければいけないので難しいが、統合のプロセスは急速である。それに対して)副次タイプにおける統合のプロセスは、過程を経るのが易しいかもしれないが、成長はゆっくりとした小さなステップの積み重ねであり、各センターのバランスは徐々に戻ってくる。
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では、主要タイプはどのように、もともとのセンターとのつながりを回復すれば良いのでしょうか?
それを、リソは「経験を積むしかない」と言っています。
次の引用をご覧ください(再び『understanding the enneagram: revised edition』からの引用です)
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主要タイプは長い時間をかけて自身の一番大事なセンターをネグレクトしており、発達させていない。ある意味、主要タイプは、経験によって学ぶことを必要している、とも言える。経験が生じれば、根元タイプは、自身にとって、その機能を使っても安全だと徐々に学び始めるのだ(納得し始める)。例として、タイプ3は他人の拒絶なしに自身の思いを感じることを学ばなければいけないし、タイプ6は外部からの支えを失うことなしに自身を信じることを学ばなければいけないし、タイプ9は他人とのつながりを失うことなしに自己主張できることを学ばなければいけない。
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つまり、ニュアンスとして、「安全に使えることを知る」経験を重ねるということです。
例えば私の友人のあるタイプ9は『「自己主張することは攻撃性を発動させることであり、人間関係の調和を破壊することだ」と信じていた』と語っていました。だから、その誤った信念を打ち崩すためには「自己主張しても、周りとの調和は破壊されない」という経験と積まなければならないのです。
同様にタイプ6なら、「自分の判断を信じると、周囲から手助けを得れなくなり、恐怖(安全の破壊)を招く」という誤った信念があるでしょう。だから、「自分の判断を信じて」も、周囲からの助けを失わず、かつ、結果的に安全に繋がるような良い判断であることが必要なのです。つまり、そのような経験を積む必要があるのです。(タイプ3については省略します)
以上、これは、私が個人的に訳した原書の整理ですが、もともと、リソはこのように「各タイプが囚われから解放される」にはどのような道筋を辿れば良いか、合理的に、わかりやすく説いています。
しかし冒頭でも言ったように、日本のエニアグラム関連の本で、この話について触れている本はありません。
ですので、誰かの助けになればと思い、この記事を公開します。
また、詳しい話は 個人的に訳した原書からの抜粋にも書いてあるので(今回のようにわかりやすく整理してはいませんが)、そちらを読んでみてください。
今回、記事が長くなってしまい、健全~通常~不健全という段階と、囚われについて触れることができませんでしたが、それについても、訳した原書からの抜粋 にも書いてあるので、そちらを読んでみてください。
追記:記事の感想:ようやく肩の荷が一つ降りた感じがしました。。。。二年くらい前から「書こう書こう」と思って書いてなかった記事なので。。。