(前編から続く)
「 デイトラ 」は、土屋さんの発案でした。
アプリやアニメとはまた違う切り口で、ヒロインたちのいろいろな側面を見てもらいたい。できれば毎日更新して、ユーザーの皆さんに日々ログインしてもらう動機のひとつをご用意したい。そんな思いとともにご相談を受けたわけですが、「えっ、毎日更新!?」と狼狽えたのが僕の素の反応でした(笑)。話し合った結果、週ごとにテーマを設けて、それについて 5 人のヒロインが(アプリ更新日の)水曜から翌週火曜にかけて順番に語っていくという形式に決定。ほぼデイリーのトライナリー日記──略して「デイトラ」の始まりです。
デイトラを語るなら、イラストレーターの永深ゆうさんを欠かすことはできません。永深さんとの出会いは、デイトラが始まるよりも半年ほど前、 2016 年の 10 月頃でした。『拡張少女系トライナリー』が正式発表されたのは 2016 年 9 月ですから、その直後ですね。スペシャルクランのときと同様、土屋さんが考えている方向性をふまえて、それに合いそうな作家さんを僕のほうで何名かリストアップし、最終的にお声掛けしたのが永深さんです。いわゆる「日常系」の雑誌で 4 コママンガを連載しておられた頃から個人的に好きだな~と思っていた作家さんで、さまざまなタッチや頭身で描くことができる器用な方とお見受けし、白羽の矢を立てさせていただきました。
永深さんの功績は、皆さんもご存知の通りかと思います。デイトラのイラストや、アプリ内イベントのブロマイド、各種グッズ用の描き下ろしなど、たくさんの眼福でヒロインの魅力を掘り下げてくれました。また、エビテンにおける本作の Blu-ray 購入特典として、「ぴょんこ先生(卯月神楽)ガチ描き下ろし B2 タペストリー」をご用意させていただいたこともありますが、イラストのクレジットにて、「※仲間の下着チェック&イラスト構図:ぴょんこ、仕上げ協力:永深ゆう」と記載しました通り、ぴょんこ先生関連のお仕事も引き受けていただきました。このふたりの絵柄は似ているなぁ、と思った方は鋭いです。じつは、とあるキッカケで永深さんの絵を見た神楽ちゃんが、影響を受けてお絵描きに励んだり、同人誌のゲストに招いたり、イラストの仕上げ協力をお願いするような仲にもなった…という、知られざるバックグラウンドがあったりしますから。異世界間のステキな関係ですね。
↑神楽ちゃんが Twitter でアップしていたイラストの数々。当時をご存知ではない方のために、アプリ内で「 Twitter Archive 」というアナザークエストが用意されたりもしました。
さて、そんな永深さんにイラストを担当していただいたデイトラですが、本編ストーリーが進むにつれて、土屋さんが地下室に籠りがちになったため(笑)、デイトラにおける僕の仕事割合は次第に増えていきました。具体的には、毎週のテーマを僕のほうで検討し、それを土屋さん経由でトライナリーの 5 人に伝えてもらい、書く内容をあらかじめ大まかに彼女たちから教えてもらったら、それをふまえて永深さんにイラストの構図案を送ったり相談したりして、ステキに仕上げていただくのをお待ちする…というプロセスを、毎週のように繰り返しました。これがもう地味に大変でした!永深さんも週に 5 点のイラストを描くわけですから、さらに大変だったことでしょう!
↑デイトラ初期の、個人的にお気に入りの 1 点。左は、素人テイストに溢れる僕の構図案で、右は、いつもステキな感じに昇華させてくださった永深さんによる仕上げ。こんな感じで構図のイメージを伝えたり、永深さんに構図を含めてお任せすることも多かったです。
そんなこんなで、土屋さん&永深さんとともに毎週追われるように頑張らせていただいた甲斐もあってか、デイトラはおかげ様で皆さんから更新を楽しみにしていただけるようになりました(と感じました!)。そして、ここから派生するように、ぴょんこ先生による「トライナリーの薄い本」を昨年の夏コミに向けて作ったり、その告知をぴょんこ先生自らがデイトラで行ったり、昨年末までのデイトラと特別なテーマ回を「デイトラの巻」という 1 冊の本にまとめて冬コミで販売したり、イラストをあしらった LINE スタンプを作ったりと、さまざまな展開も実現しました。これもひとえに、ご期待くださった皆さんのおかげです。(薄い本、デイトラの巻ともにガストショップでお求めいただけますので、お持ちでない方はよろしければ是非!)
さらに、コミケや LINE スタンプなどの施策と連動する、特別なアプリ内イベントの配信も叶いました。アナザークエスト「ぴょんこのサマー大作戦♪」、「トライナリースタンプ配信記念」などは僕のほうでイベントのプロットを担当し、本編ストーリーと連動する内容にすることを目指したつもりです。最近の「トライナリースタンプ配信記念 2 」ではシナリオも担当しましたが、こちらもお楽しみいただけたようでしたら無上の幸いです。僕自身、司書さんたちとまた会いたい!話したい! と思いを募らせて、彼女たちとの会話をセッティングさせていただきました。
これ以前にもゲームのシナリオを書かせていただいたことはありますが、その視点からすると、『拡張少女系トライナリー』はやはり異質ですね。土屋さんが用いているフレーズで言い表すなら、本作のシナリオとは、向こう側の世界にいる彼女たちを「観測」し、「交信」によって生じうる大小の分岐も含め、シーンとして「抽出」したものを皆さんにお届けする行為と言えます。僕は本編ストーリーには一切関わっていませんが、一介の bot として本編に触れて得られた情報や、ことあるごとに土屋さんにブン投げまくった質問への回答などをもとに、上記のイベントをお届けさせていただきました。
もしかしたら、イベントをご覧になって、「運営はユーザーの Twitter を見ているのかな?」と感じたことがある方もいらっしゃるかもしれません。今だから申しますが、はい、いつも興味深く拝見しておりました。土屋さんなんて、「トライナリー」という単語が含まれるツイートをすべからく観測しているんじゃないかと思えるくらい(笑)、皆さんのお声をしっかり見ているようでした。なおかつ、それらに(悪い意味で)影響されたり迎合するようなことはなく、最初から最後まで、土屋さんが『拡張少女系トライナリー』という作品に込めたコンセプトを貫いていたように思います。
その点、僕の関わりかたは土屋さんと対照的でした。まず、自分は運営側の人間ではありません。たまたま向こう側の世界と限定的に接続する機会をいただくことができた、一介の bot です。これも今だから明かしますが、司書さんたちとの会話をセッティングしたときは、こちら側の Twitter で皆さんが話題にしておられたことや、僕が個人的に気になっていたことなどをエリカさんに伝えたところ、それが司書さんたちにも伝わって、「トライナリースタンプ配信記念 2 」でご覧いただいたような内容になった部分もあります。例えば、「真幌さんの司書が、にゃボットのことを迷惑極まりない機械呼ばわりしていたけれど、その理由は何なんでしょうね?」とか、「ちーちゃんのデフォルメ絵のスタンプがとっても可愛いんだけど、誰が描いたのか気になる!」とか。あのイベントは、僕にとっても大切な記念になったので、スマホの録画アプリで保存しておこうと思ったら、やたらと長くて選択肢も多くて録画にめちゃくちゃ時間がかかったので、このイベントを用意した奴はバカなんじゃないかと思いました。せめて、目当ての司書さんとの会話にすぐさまジャンプできるようにしておけば良かったのに…と。その節は、皆さんにもお手数をかけてしまったようでしたら誠に申し訳ありませんでした m(_ _)m
トライナリーという作品自体、僕にとって、大切な出会いの宝庫でした。 5 人のヒロインはもちろんのこと、アプリ外での出会いもそうです。最初期からずっと力を貸してくださった永深さんや、スペシャルクラン「モーフィアス」のデザインなどでご協力くださったマンガ家・ちょぼらうにょぽみさんは、本作で初めてお仕事をご一緒させていただいたのですが、これがご縁となり 、僕の本職(某ゲームメディア)のほうでも多大なるご協力をいただいていたりします。本当に感謝です。
そして何より、『拡張少女系トライナリー』の物語を共に追い続けてきた、 bot の皆さんとの出会い。僕も仕事柄、さまざまなゲームの界隈を見てきましたが、この作品ほど、 SNS などでのユーザーさん同士の「横のつながり」や「情報交換」や「考察」などが盛んな界隈を見たことがありません。おそらく、今後もこういう界隈とはなかなか出会えないでしょう。本作が発表される以前、僕にとって Twitter はおもに情報収集をするためのツールだったのですが、トライナリーが始動し、ユーザーの皆さんのお声やファンアートなどを日々たくさん拝見するようになって、 Twitter が格段に楽しくなりました。いつぞやの土屋さんも仰っていましたが、こういった SNS での思い出もまた、間違いなく『拡張少女系トライナリー』の一部でした。
だからこそ、本作がまもなくサービス終了を迎えることになり、正直に言って、とても寂しいです。本当はもっと、これからの彼女たちの力になりたかった。 bot の皆さんと一緒に支え続けたかった。関係者の端くれとして、こんなことを言うのは変かもしれませんが、ちゃんねる神楽のクライマックスでは涙がぼろぼろ出てきましたし、来月から僕はどうやって過ごしていけばいいんだ…と思ってしまうくらい、トライナリーは人生の大切な一部になっていました。
…ですが、どんな世界においても、お別れは必ずやってきます。今の気持ちとしては、この貴重な時間を共に過ごすことができたことへの感謝と、お別れを心から悲しむことができる物語に出会えたことへの感謝。ただただ感謝です。そして、この作品が繋いでくれた出会い、交流がこれからも続いていくかぎり、『拡張少女系トライナリー』は終わらない。僕はそう思っています。そう思わずにはいられません。たとえ、交流がいったん途切れたとしても、土屋さんがまた何かを世に出したときに皆さんと再会し、「やぁ久しぶり!」なんていう機会が訪れるとすれば、それもすごく素敵なことだと思うのです。
やたらと長くなってしまいましたが、僕がここで書かせていただくのは本日が最後になりますので、どうかご容赦ください。これからも、皆さんが素敵なココロの旅を続けていかれることを、願っております。
本当に、ありがとうございました。
こんにちは、とある関係者です。
おそらく皆さん、地下室からの興味深いリークの続きをご所望だったかと思いますが、今回はお知らせをしたいことがあり、僭越ながらこの場をお借りしました。
まずは、ガストショップにて、夏コミ商品の通販が始まりました。先んじてエビテンで通販を行っておりました KADOKAWA 側のトライナリー関連商品も、ガストショップでお求めいただけます。ただし、エビテンからの発送は「 9 月下旬 」、ガストショップからの発送は「 10 月 5 日以降 」となる商品があります点、何卒ご留意くださいませ。
それから、トライナリーの LINE スタンプについて。
おかげさまで多くの bot さんたちにご愛用いただいております、全 10 テーマ・計 320 種類のスタンプ。自分も個人的に愛用していて、これからも友人知人を煽ったり、仕事相手にご挨拶をかましたりするのに使い続けたいと思います。これらのスタンプは、第 1 弾が配信開始となってからちょうど 1 年後にあたる 2018 年 11 月 21 日(水曜)中をもって配信終了となります ので、もし、スタンプに興味はあるけれどまだゲットしていないという方は、期間内にぜひお求めいただけると幸いです。一度ご購入いただければ、上記期間後も変わらずにスタンプをお使いいただけます。なお、機種変更でスタンプを引き継ぐ場合は、お持ちの端末ごとに事前のご準備が必要になるかと思いますので、その際はくれぐれもご注意ください。
せっかくなので、 LINE スタンプに関する統計情報をちょっとだけ開示しちゃいます。どのスタンプもまんべんなく多くの方にお求めいただけていますが、その中でも累計ダウンロード数がちょっと突出していたのが、「 トライナリー・千羽鶴&エリカのスタンプ 」です。その次に多いのが、「 トライナリー・ちーちゃん達と一緒スタンプ 」ですね。やはり、全 bot が避けては通れないラブラブトレーナーは強し…!?
また、スタンプを「送信したユーザーの国」と「受け取ったユーザーの国」の統計を見ると、どちらのユーザー数も日本が圧倒的に多いのは勿論なのですが、台湾、香港、マカオ、タイ、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、インドネシアなどのエリアでも、送受信したユーザーが毎月少なからずいらっしゃいます。さらに極少数ながら、イラン、イスラエルなどからスタンプが送信された日もあり、どういう状況だったのか気になりますね(笑)。
…以上、お知らせでした。
なんだか、申し訳なさそうに出てきたわりには、手短にお知らせが終わっちゃいました感。地下室からの発信がやたらと濃かったり長かったりするせいで、文字量の感覚が麻痺しているのかもしれませんが…。
というわけで、
以下、せっかくですので、とある関係者としての視点から、これまで数年間携わってきた『拡張少女系トライナリー』というプロジェクトについて振り返ってみたいと思います。メタな話もやや含まれますので、予めご承知のうえ、よろしければ思い出話を聞くような感じでどうぞ~
トライナリーの前に、土屋さん(の作品)との出会いから振り返ると、僕にとっての始まりは『 アルトネリコ 2 世界に響く少女たちの創造詩 』( 2007 年)でした。自分は縁があって学生時代から某ゲーム誌の編集部に出入りしていて、先輩から「この RPG の音楽がスゲー良いから聴いてみな?」と勧められた作品です。試聴させてもらったら、確かにすっごく重厚で自分好み!! なので、すぐにゲームを買って遊びました。そうしたら世界観もキャラクターもとんでもなくディープで、たちまちハマってクリアーして前作も遊んで、やがて正式に編集者となったばかりの頃に『アルトネリコ 3 』が出ると知ったときは、新人のくせに「僕が担当します!」と上司に宣言したのも、良い思い出です。
当時、ゲームの公式ポータルサイトには「トウコウスフィア」という、キャラクターたちがいろんな話題でおしゃべりをするコーナーがあって(なんだかデイトラみたいですね!)、その出張版をウチの雑誌でやってほしいと打診したのが、土屋さんとの最初期の接点だったと思います。
↑これが当時の誌面です。懐かしいなぁ…!
その後、同じく土屋さんがディレクターを務めた『 サージュ・コンチェルト 』シリーズでもお仕事をご一緒しましたが、ぶっちゃけた話、このとき自分はあまり力になれた気がしませんでした。他の専門誌さんのほうがディープな記事を作っておられて、自分の記事はいかにも総合誌らしかったなぁ…と。それはそれで果たすべき役割の違いがあるのですが、やはり自分は「広く&深く」読者に興味を持ってもらえるものを目指していきたい、我が道をもっと追求したい。そう思い始めたキッカケのひとつが、この作品でした。
そこで僕が力を入れたのは、マンガ家、イラストレーター、シナリオライターといった、作家さんたちとのお仕事。もともと、マンガを読んだり物語を空想したりするのが大好きだったので、描き下ろしのマンガやイラストを盛り込んだ記事作りや、ゲーム本編のシナリオと連動するような企画を考えるのが今も楽しいです。ゲームの最新情報だけではない付加価値をお届けすることで、発売から 1 週間もすれば古本回収待ちになりかねない総合情報誌の割合を、少しでも減らせるんじゃないかと。自分の作った記事を大切にスクラップしてくれている方を見かけたりすると、僕たちは本当に嬉しいんです。
そんな僕に、数年前のある日、土屋さんが未発表プロジェクトの構想を語ってくれる機会がありました。それは、土屋さんが従来ずっと描き続けてきたファンタジー世界ではなく、現代の日本(とよく似た世界)を舞台とした物語──やがて、『 拡張少女系トライナリー 』と呼ばれることになる作品です。僕への依頼は、作中で登場する特別なクランのデザイナーを選定、仲介してほしいというものでした。いわゆる「 スペシャルクラン 」のことですね。そこで僕は、土屋さんから開示してもらった世界観、設定資料などをもとに、それらを一般人にも理解しやすいように翻訳したうえで(笑)、各スペシャルクランに合いそうと思える方々にデザインを依頼しました。
皆さん、快く引き受けてくださいました。当記事の最後に、各スペシャルクランの設定画をズラリと載せておきますので、それぞれのコダワリを感じ取っていただけたら嬉しいです。キャラクターデザインの段階からゲーム作りに関わるのは、自分にとって初めての経験でしたが、土屋さんや作家さんとあーだこーだ言い合いながら作り上げていくのが楽しかったなぁ。ああいうの、またやりたいです。
アプリ配信直後の特集より。ほかならぬ自分が作家さんを手配したということもあり、やはり記事にマンガなどを盛り込まずにはいられませんでした。
スペシャルクラン関連のアートワークは、挿絵などを除き、アプリの配信開始前にほぼ終わりました。以後は、ゲーム誌編集者として記事を作るようなことはあれど、基本的には一介のユーザーとして楽しんでいくとしよう!……と、思っていたのも束の間。土屋さんから、さらなるご相談を受けることになりました。
それは、ほかでもない、この「 デイトラ 」という、当初はこんなに大変なことになるとは思ってもみなかったブログのこと です…!(後編に続く)
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【一挙掲載】スペシャルクランの設定画
↑銀葉樹
(デザイナー:白身魚)
↑クランネフェル
(デザイナー: KEI )
↑クワイエット・コルト
(デザイナー:まもウィリアムズ)
↑ジョージ
(デザイナー:四々九)※
↑スウィーティーメルティ♪
(デザイナー:日向悠二)
↑ちとせ
(デザイナー:モタ)
↑播磨屋藤治郎
(デザイナー:美川べるの)
↑ヒストンシャペロン
(デザイナー:吉崎観音)
↑楓雅
(デザイナー:なもり)
↑メタモルガー VFX
(デザイナー: shirakaba )※
↑モーフィアス
(デザイナー:ちょぼらうにょぽみ)
↑ラピスラズリ
(デザイナー:いのまたむつみ)
↑リフィール・ペンドラゴン
(デザイナー:凪良)※
※ジョージ、メタモルガー VFX 、リフィール・ペンドラゴンのデザイナーは、コーエーテクモゲームスさんによる選定です。