こんばんは。batoです。


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現在、うちのエストレヤにはCBR1100XX用のフロントキャリパーを装着しているのですが、パッドの当たり面が少しずれていたり、製作したキャリパーサポートがサビてきたり、強度的に不安がある事が分かったり。
そしてトドメにディスクローターが使用限度まで薄くなってきた事で、これを機会にキャリパーサポートを作り直す事にしました。

また同じキャリパーを使おうかとも思いましたが、このキャリパーはブレーキホースが2系統必要でちょっとめんどくさいので、FIエストレヤに使われているTOKICO製2POTキャリパーを新たに仕入れる事にしました。
エストレヤの他には兄弟車である250TR、Ninja400の一部年式などに使われています。
今回は250TR用を入手。


キャブ車エストレヤとFIエストレヤではフロントまわりの互換性が殆ど無く、キャリパーの取り付けピッチも前者が40mmに対し後者が45mmです。
それを取付可能にするべくキャリパーサポートを作っていきます。
まず手に入れたキャリパーをディスクにどうにかこうにか固定して、それぞれの寸法を計測します。



DSC_0923

得られた寸法を元に図面を作りました。
と、ここで一つの疑問が浮かびます。
それは、強度は大丈夫なのか? という点。
どうやってそれを調べようかと考えあぐねていましたが、Autodesk社のFusion360という3DCADソフトがあり、個人利用または年商1000万までのベンチャー企業であれば無料で利用できるとの事。
これを使って解析する事にしました。




・安全率という考え方
設計の世界には「安全率」という考え方があります。
例えば、想定される最大の荷重が1000N(ニュートン)だとした場合、5000Nまで耐えられるように部品を設計すると、安全率は5となります。
5倍まで耐えられるという事ですね。
一般的には最低でも3倍以上は耐えられるようにするのがセオリーのようです。


キャリパーを停める2本の純正ボルト、おそらく安全率を3以上取ってあるはずなので、これと同等あるいはそれ以上の強度を持っていれば、必然的に安全率を3以上取った事になるはずです。
そこでまずはボルトが破断する応力を求めていきます。

ボルトひとつとっても様々な種類があり、キャリパーなどの強度が必要な部分には一般的にクロムモリブデン鋼(クロモリ)で作られたボルトが使われています。
資料によると引張強さは1000(N/mm2)。サイズがM8なので、この数字と断面積とで掛け算します。

1000N×7.188(有効径)=7188N

d60848ba


しかしこれは引っ張り強度の値で、キャリパーのボルトが受ける力はせん断方向です。
せん断強度は引っ張り強度の60~80%と言われています。
間を取って70%で計算します。

7188N×0.7=5032.6N
ボルトは2本あるので2倍の数字である10063.2Nが、このキャリパー用ボルト2本が受け止める事が可能な大凡最大の力となります。



01

ボルトの最大強度が分かったところで、2度手間ですが先程作った図面を3Dで作り直しました。
解析モードにて破断しないかどうかを調べます。
先程求めた数字「10063.2N」の力を加えて安全率が1以上となれば、純正ボルトと同等の強度という事になります。

1.5
02

安全率は1.19。おおよそ同等の強度のようです。




DSC_0927
問題ない事を確認したのでいよいよ製作です。
前回はDIYで鉄板から切り出して製作しましたが、今回は金属加工屋さんにお願いする事にしました。
餅は餅屋って言いますからね。



DSC01313
すんなり完成したように見えますが、図面の穴位置がズレていて失敗してしまったので、合計で2度製作依頼をしています。
けっこうな金額がかかりました……。
でも、以前のDIYキャリパーサポートよりも軽量で強靭、さらに見栄えも良いので大満足です。
いやぁしかし、無料でこれだけの3DCADソフトが利用できるなんて、本当にありがたいです。



キャブ車エストレヤに乗ってる人で、フロントブレーキを強化したいと思ってる人がちらほら居るようなのですが、どうにか販売出来ないかなぁと思ったり。
費用がかさむので、実現せず終わりそうです(笑)
ともあれ、キャリパーサポート製作はこれにて終了です。