挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ 作者:笹桔梗

第1章 チュートリアル編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
7/398

第7話 農民、装備を選ぶ

「武器はそれで良かったのか?」

「一応、こっちの方がしっくり来たからな。まずは、これを使ってみてダメだったら、他のを考えるよ」


 冒険者ギルドにいくつか用意されていたうちの武器から、俺が選んだのは刃渡りがそれほど長くない、一振りのショートソードだった。

 他にも、戦士職とかが似合いそうな、普通のロングソードとか、槍とか、弓矢とかもあったが、試しに振るってみた結果、このショートソードが一番手に馴染んだので、それじゃあ、これを使ってみよう、って感じで決めた。


【武器アイテム:小剣】初心者のショートソード STR:??? 耐久値:???

 初心者向けのショートソード。扱いはそれほど難しくないため、武器をあまり使ったことがない者も安心。


「それはいいが、武器のステータスが何で『???』になってるんだ?」

「ああ。それはセージュ、あんたが数値化を選ばなかったからだろ。その場合は、不確定な数値データは全部、『よくわからない』ってことになるのさ。状況によって異なる、って言い換えてもいいがな」

「えっ!? そうなのか?」

「そうだぞ。まあ、その辺の設定は後からも変えられるからな。それに、固定の切れ味とかにしたって、使っていくうちに悪くなってくだろうし、耐久値とかが高くても、それ以上の攻撃を受けたりとか、変な使い方をすれば壊れるから、その辺は数字で認識しておかない方がいいぞ? 武器なんて、使って試してなんぼのもんだ」


 装備アイテムの数値に関して、カミュが教えてくれた。

 言ってることは、さっきチュートリアルでハイネに聞いた話とおんなじだな。

 一見すると、同じ名前のアイテムでも、ひとつひとつで強度とかが違ったりもするらしいけど、それらの数値を知りたければ、設定を『数値化』の方に戻す必要があるのだそうだ。

 ただし、それも過信するのは禁物、と。

 あくまでも、平均値の数値なので、物によっては、質の悪い武器でも、攻撃力が高く出てしまったり、耐久値が不自然だったりもするので、色々と使っていくうちに、それらの見極めへの感覚をつかんだ方がいいそうだ。


 まあ、言いたいことはわからなくもないが、このゲーム随分と変なところでリアルだな、とは思った。

 ゲームとして成立させるためには、かなり面倒くさい作りになってないか? それって。

 この辺も、テスターとしての報告に加えておいた方が良さそうだ。

 リアルよりもリアリティの方が大事、ってのは面白いゲームの基本だったと思うし。


「ということは、スキルの『鑑定眼』って意味あるのか? それとも、元からそういう細かい数値まではわからないのか?」

「うん? 『鑑定眼』はアイテムの種類とか、その状態とかを調べるスキルだぞ。良質か、劣化しているかとかな。普通はそれで十分じゃないか?」


 カミュによれば、装備品や所持品以外のアイテムを目利きするのが『鑑定眼』と呼ばれるスキルとのこと。

 後は、手に持っていても、何だかよくわからない謎アイテムとかを見破る時に、その『鑑定眼』が役に立つのだそうだ。

 今、俺が手にしているショートソードのように、勝手に詳細が開示されるアイテムばかりではないので、それらの情報を知るために必要になってくるのだとか。

 なるほどな。


「てか、セージュ。あんた、『鑑定眼』のスキルを持ってるのか?」

「ああ。『鑑定眼(植物)』『鑑定眼(モンスター)』ってのだけだから、アイテムには使えなさそうだけどな」

「おっ、『鑑定眼(モンスター)』も持ってるのか。そいつはいいや。だったら、あたしにもそれかけてみな。ちょうどいいから、試しに使ってみろよ。『鑑定する』って意識して、あたしを見る感じだな」

「え? カミュって、モンスターなのか?」


 だから、見た目幼いのに、そんなに偉そうなのか?

 俺がそんなことを思っていると、カミュが少し呆れたように肩をすくめる。


「あー、そこからか。一応言っとくがな。セージュ、あんたもモンスターに数えられるからな? こっちの世界だと、生きとし生ける者、その中でも意志がある存在はすべて、『モンスター』として分類されるんだ」

「そうだったのか?」


 へえ、知らなかった。

 ということは、実はこの『鑑定眼(モンスター)』って、かなり便利なスキルじゃないのか? 対人間とかでも使用できるってことだものな。

 ちなみに、植物とか、意志のないものはまた別枠になるのだそうだ。

 そっちも、俺は持ってるけどな。


「ただ、鑑定されたことは相手に見破られることもあるからな。許可のない相手に勝手に『鑑定眼』を使うのはマナー違反だってことは覚えておくといい。ま、相手が明確に敵対してるとかなら、その限りじゃないがな」


 要するに、変な恨みを買いたくなければ、勝手に鑑定するなってことか。

 とりあえずは、外のモンスターとかを相手に使う程度に留めた方がいいらしい。


「ちなみに、お互いが鑑定しあうのは別にマナー違反にはならないな。だから、そういう形であたしを鑑定しても構わないよ。こっちもあんたに鑑定を使わせてもらうから。それとも、どうしても隠したいスキルとかあるか? だったらやめておくが」

「いや、別にそういうのはない……かな?」


 カミュとしては、監督者としてついて行く以上は、スキル構成とか、能力を知っておけば、アドバイスとかもできるから見せてくれた方が都合がいい、のだそうだ。

 まあ、無理強いはしない、とも言ってるし。

 別に、まだゲームも始まったばかりだし、俺としても隠す要素もないしなあ。

 それにこれはあくまでもβテストだ。

 色々試す機会があるなら、そうした方がいいだろう、と考えて。


「わかった。俺は別に構わないぞ」

「よし、それならお互いを鑑定しよう。セージュ、さっきも言ったが、あたしのことを見ながら、『鑑定する』って意識してみな。うまくできないなら、声に出してもいい」

「わかった……『鑑定』」


 俺がそう言うのと同時に、ふわん、という効果音と共に、カミュの横に鑑定した内容が表示されるのが見えた。



名前:カミュ・ハルヴ・エンフィールド

性別:女性

年齢:◆◆

種族:人間種(◆◆◆◆)

職業:巡礼シスター(◆◆)

レベル:◆◆◆

スキル:《鑑定不能》



「えっ!?」

「お? 見えたか?」

「いや、見えたには見えたが……何だこれ? ちゃんとわかるのって名前と性別くらいだぞ?」

「ああ。それは、あんたの『鑑定眼』のレベルが低いからだろ。相手とのレベル差が大きい場合は、もし仮に『鑑定眼』のスキルを持っていたとしても、詳細に関しては読み取ることができないんだよ。てか、あたしの場合、スキルに関しては、一応、隠蔽もしてるから、それ破れないと、そもそも鑑定できないぞ」

「それで、《鑑定不能》って出てるのか」

「ま、そういうことだな」


 なるほど。

 この『鑑定眼』のスキルも別に万能ってわけじゃないってことか。

 相手の方がレベルが高かったりすると、今のカミュみたいに読み取れないんだな。

 というか、スキルとかレベルが隠れているのはわからないでもないが、年齢も隠される対象なんだな?

 カミュ自身が知られたくないから、そうなっているのか?

 その辺は少し気になったけど、あんまり触れてはいけない話題の気がするので、あえて触れないが。


「まあ、乙女の秘密は探るなってこった。これ、あたしだけじゃなくて、女性全般に言えることだから、気を付けるんだな」

「肝に銘じておくよ。それで、カミュの方は俺の鑑定は終わったのか?」

「ああ。ま、あたしのは『鑑定眼』じゃないんだが、一通り見せてもらったぜ? 種族が『土の民』で職業が『農民』か。スキルの方も、それっぽいのが並んでるな」


 あんた面白いな、とカミュが微笑して。


「ただ、その武器を使うんだったら、短剣系統か、剣術系統のスキルがあった方が良かったとは思うがな。どっちかって言うと『農具』か。さすがに、冒険者ギルドの貸し出し武器には農具はなかっただろうから、このクエストが終わったら、そっちも試してみた方がいいかもな」

「え!? 『農具』って武器スキルなのか?」

「ふふ、こっちの世界だと、畑を耕すのにも、土の中にモンスターがいたりするんだよ。農民っていうのなら、そいつらを退治するための能力は必要ってことさ。別に、その辺の木の枝だって武器になるんだから、何だって、使えるぞ?」


 農具って、意外と武器に向いているものが多いんだ、とカミュ。

 ふむふむ、なるほどな。

 それは良いことを聞いたぞ。

 というか、こっちの世界の農家って大変なんだな。

 実はそれなりに強くないと農民にすらなれないって世界なのかもしれない。


 そんなことを話しながら、防具の方も自分のサイズに合うものを選んで装備する。


【装備アイテム:鎧】ホルスンの革鎧 

 神聖教会で育てているホルスンの革を使って作られた鎧。軽くて丈夫。あまり体力のないものでも装備できる。基本は教会からの貸与のみで、非売品。


「へえ、意外と様になってるじゃないか」


 今なら冒険者っぽく見えるぞ、とカミュが笑う。

 そう言われるとちょっと照れくさいが、やっぱり、武器と防具を装備するといよいよって感じでテンションがあがるな、うん。


「ちなみに、ホルスンってのは何だ?」

「教会で飼ってる牛型モンスターだ。年を取ったり、不慮の事故で亡くなったホルスンに関しては供養した後で、こうやって、素材として使わせてもらってるんだ。だから、あんたもホルスンの思し召しに感謝するんだぞ」

「へえ、牛型モンスターか。というか、モンスターって飼えるのか?」

「いや、だから、さっきも言ったが、生きとし生けるものは、凶悪なのも温厚なのも全てモンスターなんだよ。もちろん、あたしらにとっても友好的なモンスターも少なくないぞ。あー、そうそう、そういう友好的なモンスターに関しては、むやみやたらに狩ったりすると、犯罪行為になるからな。十分注意しろよ?」


 どうやら、狩っていいモンスターと狩ってはいけないモンスターがいるらしい。

 町の外でこっちに襲い掛かってくるモンスターは、基本はオーケーとのこと。


「ま、そういう見極めとかも、このクエストで教えてやるよ。それじゃあ、簡単に準備は済ませたな? 後は受付でクエストを受け取って、町の外に行くぞ」

「わかった」


 戦うための準備を整えて。

 前を歩いていくカミュの後に続いて、俺は冒険者ギルドの倉庫を後にした。

金髪少女シスターが『迷い人支援』担当で登場。

ハイネとは違って、口は悪いけど、親身になってくれる人、です。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。