架空のキャラクター達が生放送やゲーム実況動画の投稿などを行う「バーチャルYouTuber」が大きな話題となっています。
3月1日、ストリーミングライブ配信サービス「SHOWROOM」をプラットフォームとして、バーチャルYouTuberならぬ「バーチャルSHOWROOMer」こと「東雲めぐ(しののめ めぐ)」がデビューしました。
2017年末から続く数ヶ月の間、バーチャルYouTuberは空前のブームを迎えており、新規のバーチャルYouTuberが日に数人はデビューしているといった状況です。
筆者も個人的に新人バーチャルYouTuberの発掘に勤しんでいたのですが、そのめまぐるしい展開を追うにつれ「もう何が出てきても、私は絶対にビックリしないぞ!」という気持ちになっておりました。
その上で、東雲めぐの生放送がとても印象に残ったので、その内容・特徴をご紹介します。
「東雲めぐ」とは
東雲めぐは、2018年にYouTubeにて配信予定の3DCGアニメ『うたっておんぷっコ♪(※)』のメインキャラクターです。
(※株式会社シーエスレポーターズのVRコンテンツチーム、Gugenkaが制作するアニメ)
2017年2月初旬、SHOWROOMのイベントとして東雲めぐの声優オーディションが開催されました。オーディションで見事グランプリに輝いた方が「東雲めぐ」として、アニメ配信に先駆けバーチャルキャラとして生放送を行なっています。
残念ながら生放送のアーカイブは残っていないのですが、YouTubeチャンネルには生放送を5分にまとめた動画がアップロードされているので、そちらを視聴するか、今後の生放送をリアルタイムで視聴してみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=-WyYkcJeMfQ
生放送がまさに「バーチャル」だった
バーチャルYouTuberというと、どちらかといえば「CGアニメ」のような感覚のものが多く、「バーチャル」を強く実感する機会は少ないかもしれません。
事実、私自身も「普通のYouTuberは見ないけど、バーチャルYouTuberは(女の子のキャラクターだから)見る」という理由で楽しんでいた人間の一人です。「バーチャル」という属性ではなく「アニメっぽい女の子」を楽しんでいたんですね。
しかし、東雲めぐの生放送は視聴者に「バーチャル」という感覚を強く印象づけるものになっていました。それは「AniCast(アニキャスト)」という配信システムを利用したことにも理由があります。
AniCastの特徴の一つは、SHOWROOMの投げ銭機能「ギフティング」をさらに拡張した「バーチャルギフティング」です。バーチャルギフティングでは、投げ銭として選択したアイテムを、真っ白なバーチャル世界にいる東雲めぐの元へオブジェクトとして届けることができます。
筆者(じーえふ)も生放送中にさっそく試してみました。スマホアプリからの視聴でしたので、右下のアイテム欄から「ハート」を選択し、連打して100個ほど投げつけてみます。すると、100個のハートが東雲めぐの元へ降り注ぎます。それを見た東雲めぐは、
「わわっ じーえふさん ハートいっぱい……ありがとうございます! ハート〜〜!」
……私は「投げ銭アイテムのハート」を送ったはずなのですが、本当に心まで持っていかれる結果となりました。
贈ったものに反応して、めいっぱい喜んでくれる東雲めぐがひたすらに可愛い。孫になんでも買い与えてしまうおじいちゃんの気持ちがわかりました。
視聴者の「介入感」をより高める仕組み
視聴者が配信者の放送に働きかける仕組みは、YouTubeの配信にも「投げ銭」として「スーパーチャット」という機能があります。こちらは送った金額に応じて視聴者の名前が上部に表示されたり、色がつけられたりして目立つというものです。しかし基本的には「配信者への支援」という印象が強く、また金額がそのまま表示されるので少し生々しい感じがあります。
一方で、バーチャルギフティングでは、お金を「ハート」や「クマのぬいぐるみ」などのオブジェクトに置き換えることにより、支援はもちろんのこと、配信の雰囲気を壊すこともありません。
視聴者から送られたクマのぬいぐるみを自慢する東雲めぐ。毎日が誕生日だ……。
そう、東雲めぐの配信は「可愛い」を享受するだけでなく、目の前にいる女の子にプレゼントをあげて「愛でることができる」という仕様なのです。他の方々も色々なプレゼントを贈る中で、最終的に東京タワーが何本か建ちます。本当です。上に貼った画像の後ろにそれらしきものが見えると思いますが、それは視聴者が建てた東京タワーです。
また、AniCastにおいては視聴者からのコメントもオブジェクトとして東雲めぐの元に流れるので、彼女がコメントを読み上げる際は文字通り「拾う」といった形でつまみ上げられます。投げ銭するお金が無くとも、コメントを拾ってもらえれば、「東雲めぐとまさにコミュニケーションを取っている」と感じられるでしょう。
東雲めぐの「自然な可愛さ」と「実在感」の理由
東雲めぐ本人にも注目していきましょう。黄色いふんわりとした髪の毛、たくあんのような太い眉毛(かわいい)、緑色の瞳、感情に合わせてよく変わる表情。加えて手の動きも自由自在で、パーをして手を振ったり、ピースをしたり……。
贈られたプレゼントにも逐一反応してハシャいでくれます。感情表現が豊かで、その愛らしい姿に、とにかく視聴者みんな「ご両親状態」になってしまうわけです。
東雲めぐは「歌うことが大好き」なのですが、歌おうとして直前で「あっ、でも著作権が……ダメだよね?」と大人の事情を察するところがまたクスっときます。誰か彼女に著作権あげてください。その後、これなら大丈夫だろうと童謡を歌い始めるのも可愛らしいです。
そんな東雲めぐですが、配信中に「お母さんに呼ばれたから、ちょっと行ってくるね!」と席を立つシーンがありました。
野暮な話ですが、私がこれまで見てきた限り、こういった話題は「3Dモデルの描画がバグった」とか「モーションキャプチャーの調子が悪くなった」場合にリセットするための方便、ということがほとんどでした。これだけ綺麗なトラッキングをしている訳ですから、もちろんモーションキャプチャーがバグることもあるでしょう。
と思っていたら、画面に映る東雲めぐ自身にはどこにも変わった様子は見られません。不可解に思っていると画面が「ちょっと待ってね」という表示に代わり、数分後に東雲めぐが戻ってきました。
「お母さんにうるさいって怒られちゃった……ちょっとだけ静かにしてやろっかな?」
それ私が深夜に友達とSkype繋げてゲームしながら笑ってたら親に呼び出された時と全く同じ状況なんですけど……。
てっきりスタジオのモーションキャプチャー用カメラの前で配信してるのかと思っていましたが、ひょっとして本当に自宅から配信しているのでしょうか……? 実際は不明ですが、「自宅から配信している」という雰囲気をうまく作り出していることも、キャラクターの実在感を高めている要因です。
配信には3つの機材を使用
そんな東雲めぐの配信で使われている機材は、下記の配信イメージのようにパソコン、VRヘッドセット「Oculus Rift」、ハンドコントローラー「Oculus Touch」の3つだけとのこと。
https://www.youtube.com/watch?v=vx8xs7ffmVg
オーディションの際に配信イメージとして撮影された動画
実在感のある配信が、これら3つの機材のみを使用することで配信できてしまうのです。コントローラーを使えばカメラも動かすことができ、自撮りのような表現も可能になっています。
AniCastのプレゼント機能によって「物をつかむ」といった動作が自然な形で加わり、バーチャルのキャラクターをより現実に近づけ、東雲めぐ本人のポテンシャルを存分に引き出している。これも東雲めぐを「可愛い」と感じる理由と言えるでしょう。
今後の展開にも期待
さて、今回は注目のバーチャルSHOWROOMerこと「東雲めぐ」を紹介しました。いかがだったでしょうか。
東雲めぐは平日学校に行く前の朝7時半〜8時頃にも生放送を行っています。配信時間については公式Twitterでも告知しているので、そちらをチェックしましょう!
朝の時間に放送されることで、視聴者からは「おかげで生活リズムが直った」「朝起きられるようになった」「元気に一日過ごせるようになった」と、通販番組で紹介される健康グッズのレビューかのような評価(?)も。みなさんも、これからは女子中学生の生活リズムに合わせてみてはいかがでしょうか。
さて、とにかく可愛いらしい東雲めぐなのですが、オーディション時の契約要項によると活動期間は6ヶ月とのこと。あと半年で東雲めぐ見られなくなっちゃうの!? ヤ、ヤダーッ!! 娘を連れて行かないでくれーッ!!!
……とは言っても『うたって おんぷっコ♪』のアニメ配信も予定されている訳ですし、「東雲めぐ」というキャラクターが今後どのような展開を見せていくのかはわかりません。ぜひともSHOWROOMアプリをインストールして彼女の生放送に顔を出してみましょう。一撃で保護者の顔つきになるはずです。
文中に登場した「AniCast」は、Oculus Japanの立ち上げにも関わったVR開発者であるGOROman氏率いる株式会社XVIが開発に携わっています。AniCast自体が詳しくはどういうものなのかはまだ広く公表されていないため、今後のバーチャルエンターテイメントに何か影響を与えるのか、こういった技術がバーチャルYouTuber界にも広く伝わっていくのか、期待は大きくなるばかりです。