里親として11人の子を受け入れた女性「愛情と自然体が基本」
虐待や病気、経済的理由などで親と一緒に暮らせない子を育てる里親。制度に関する出張相談会を、京都府は今夏から宇治市役所で定期的に行っている。要保護児童の受け皿について「施設から家庭へ」と国が進める中、府は里親登録者の増加を目指し、周知に力を入れている。
■きっかけは義母のすすめ
京都府里親会の中村満喜子副会長(53)=宇治市=は、これまで11人の里子を迎え入れてきた。「里親と言ってもさまざまな形がある。関心を持ってほしい」と呼び掛ける。
中村さんは実子3人を育てながら、民生委員の義母の勧めもあり「人のために役立ちたい」と、2011年に里親に登録した。これまで受け入れ時点で生後11カ月の乳児から中学3年生まで計11人と生活し、期間も3日間から4年超と幅広い。「里親といえば養子縁組のイメージしかなかったが、いろんな受け入れの形があることを知った」
虐待や親の病気など子どもの背景や状態は多様で、一人一人に応じた配慮が求められる。一方で、「愛情をもって自然体で接することが基本で、特別に難しいことをするわけではない。もちろん叱ることもあります」と話す。
イベントを開いたり悩みを相談し合ったりと、府南部地域での里親同士の交流も盛んになってきたという。つながりを府全体に広げ、一般向けの講演会や勉強会も検討している。
家を離れた後も、進学や家庭状況のことなどで相談を受けたり、産んだ赤ちゃんを見せに来てくれたりと、多くの子どもたちと今も結びつきがある。
「何の落ち度もないのに家庭から離され、養護が必要な子どもが多くいる実態を知ってほしい」と強調し、言葉を続ける。「大変なこともあるけど、子どものおかげで家庭が明るくなったり、人のつながりも増えたりする。子どもが好きなら、ぜひ一歩踏み出してほしい」
■厚労省がビジョン策定
社会的養護が必要な京都府内(京都市を除く)の児童は毎年300人前後で推移。施設養護ではない里親委託率は、2017年度末は15・1%と10年前に比べ10ポイント近く高まったが、全国平均の18・3%(16年度)を下回る。
厚生労働省は昨夏、家庭養育優先の理念から「3歳未満はおおむね5年以内、それ以外の就学前の子どもはおおむね7年以内に里親委託率75%以上を実現」などとするビジョンを策定した。
こうした背景に加え、府南部は北部より里親数が少なく、宇治市では5世帯しかないことなどから、府家庭支援総合センターは8月から月1度、同市役所1階ロビーで出張相談会を始めた。職員2人が相談に応じ、来庁者にちらしを配っている。職員から制度の説明を受けた後、登録に向けて府宇治児童相談所を訪れた人もいるという。センター担当者は「家族全体に関わる大きな決断であり、簡単には登録に結びつかない。広く知ってもらうための土壌を耕しているところ」と話す。
今後の出張相談会は12月12日、来年1月9日、2月6日、3月20日で、午後1時~4時。府は制度説明や里親による体験談の出前講座も始めた。無料。いずれも問い合わせは同センター075(531)9650。
【 2018年11月29日 12時21分 】