挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ 作者:笹桔梗

第1章 チュートリアル編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
3/397

第3話 農民、スキルなどについて聞く

「ふふ、わかったわ。まずはあなたが選べる種族からね」


 ハイネがそう言って尻尾を振ると、ステータスウインドウとは別の角度に、同じような画面がいくつも現れた。

 そのうち、一番左側の画面に、種族という項目が浮かんでいる。

 それに早速目を通していく。


「どれどれ……人間種、獣人種、妖精種、小人種……あれ? 意外と少なくないですか?」

「そうね。でも、こんなものじゃないかしら。それに項目は四つに見えるけど、獣人種の場合、更に『獣』『鳥』『虫』などから選べるようになっているわ。本当は『水棲』とか他の種もあるけど、今のあなただと、選ぶ条件を満たしていないようね」

「あれ? それも条件があるんですか?」

「ええ。種族を選ぶと言っても、竜種とか精霊種とかは、それなりに別の条件が必要になるの。たぶん、あなたたち迷い人……プレイヤーさんね。その多くが条件を満たすことはないと思うから、今後、たくさんの迷い人がやってきた場合は、基本はこの四種族と長命種のひとつかふたつから選択できるように固定されると思うわ」


 その辺は、今後の課題ね、とハイネが微笑を浮かべる。


「エルフやドワーフは選べないんですか?」


 確か、事前情報では、そういう種族が存在するとは聞いていたのだが。

 でも、俺の選択肢の中にはそのふたつの種族はないようだ。


「あら、ドワーフはあるわよ? というか、小人種の中で選択できるのはドワーフだけだもの。ただし、あなたの場合、ドワーフを選んだら、性別が変わってしまうけど」

「え!? どうしてですか?」

「どうしても何も、ドワーフは女性限定種族じゃないの。ふふ、ああ、そういえば、あなたの世界だとそうじゃなかったのよね? でも、この世界だとそういうものなのよ。だから仕方ないわね」


 また、なんだそりゃ、と思うけど、ハイネの話だと、そう決まっているらしい。

 随分と変わった設定にしたものだと首を傾げてしまう。

 まあ、元々、そこまでドワーフになりたいわけじゃなかったので、俺としては構わないのだけど、生産職として、ドワーフを目指すプレイヤーとかもいるだろうに、どうして製作者はそんな変な制限を設けたのか。謎だ。

 それに関しては、あとで報告であげておこう。

 そういう部分を指摘してこその、βテスターというものだろうし。


「エルフに関しては、あなたの年齢だと不向きだからかしらね」

「年齢制限があるんですか?」

「別に無理に選ぶっていうのなら、そういう話を伝えて項目を増やしてもいいけど、長命種の場合、あなたの年齢に合わせると子供の身体つきになっちゃうのよね。固有魔素との兼ね合いで、システム上、年齢をいじることはできないの。身体が若くなったり、年を取ったりする分には最初はかなり慣れるまで苦労するでしょうけど、それについては不可能じゃないから。でも、あなたに刻まれた歳月までは操作はできないわ。あなたは16歳なんでしょ? 人間種の16歳とエルフの16歳じゃあ、体格がだいぶ違うもの。あんまり元の身体と違いすぎると、こっちで慣れたとしても、向こうに戻った時苦労するわよ?」

「そういうものなんですか」

「ええ」


 本当は、最後にアバターを調整する時に説明するつもりだったんだけど、とハイネが苦笑する。

 本来の肉体と異なるサイズでアバターを作ると、現実とこの仮想世界を行き来する際に支障が出てしまうのだそうだ。

 多少の差なら微調整できるそうだが、子供と大人くらいに違うとどちらが自分の身体なのか、脳などが混乱をきたすのだとか。

 なので、なるべく、本来の自分の身体に合ったアバターを作ってほしい、と。


「性別を変えることは問題ないんですか?」

「両方の性に目覚めることはあるんじゃないかしら? ふふふ、まあ、そのくらいなら、それほど問題はないわよ? わずかとはいえ、それは誰しも備わっているものだから」


 身体が動かせなくなるのとは違うわ、とハイネが面白そうに尻尾をふりふりする。

 いや、ちょっと待て。

 性別を偽ると、女性に目覚めたりするのか?

 さすがに、それはそれで嫌だ。この年でオネエキャラとして生きていく覚悟は俺にはないし。

 心の中で、ドワーフに関してはバツ印をつける。

 これは、危険な種族だ。


「とりあえず、今のあなたが選べるのは、人間種、獣人種(獣・鳥・虫)、妖精種、小人種ドワーフ、以上よ。人間種はそのまま、今のあなたね。獣人種はこのゲームの中では、半獣の状態が基本で、成長するにつれて、『人化』や『獣化』ができるようになるわ。最初の頃は、人と獣の中間ぐらいの姿になるわね」

「ハイネさんも獣人種なんですか?」


 見た感じでは、ハイネは狐の獣人のように見えるのだ。

 耳と尻尾は狐のそれだし、頭にけもの耳が生えているところなんて、割とあちこちで見かける獣人のイメージにぴったりだし。


「くく、私は獣人種とはちょっと違うの。ここで会ったのもひとつの縁だから、特別に教えてあげるけど、私の種族は妖怪種よ。あなたの選択肢には現れなかったけど、そういう種族もあるってことは覚えておくといいかも知れないわね」

「妖怪種ですか」

「ええ。妖怪種はそれぞれで性質が大きく異なるから、姿見からだけじゃ、判断するのが難しいとは思うけどね。人間に近い容姿の妖怪もいれば、モンスターみたいな妖怪もいるし、アイテムみたいな妖怪もいるの。ふふ、そういうものだと思っていればいいわ」


 ふーん、なるほど。

 さっき、ハイネの口から、竜種とか精霊種という言葉も聞こえたけど、この妖怪種も最初は選択できない種族ってことらしい。

 となると、後から種族を変えたりとかもできるのだろうか?

 ハイネの話だと、他にもたくさんの種族が存在しているそうだ。


「ちなみに、選択肢にない種族の場合でも、適性が合っていれば『ギフト』で選ばれることもあるわ。だから、そっちの方がお得なのよね」

「うん? 適性が合っているのに、選択肢が出ない?」

「ええ、例えば、竜種などは、最初のあなたではリソースがオーバーしているわけだしね。初期のスキルを一切とらないとしても、まったく足りていないの。なので、どれほど相性が良くても、選択肢には現れないわ」


 そういうことか。

 だから、ハイネが言うように『ギフト』を選んだ方がメリットが大きいってことなのか。

 普通では選ぶことができないレアな種族でも『ギフト』を受け取るやりかたなら、選ばれることがあるから、と。

 そうなってくると、やっぱり、『ギフト』を頼んだ方が良さそうだ。


 その後も、『一覧』の方からスキルなどを見せてもらった。

 この世界の魔法は、基本は火、水、風、土、光、闇の六つの属性からなっていることとか、スキルは戦闘から生産に至るまで、様々なものがあるが、初期に得られるスキルというのは、プレイヤースキルでは足りない部分を補助するためのものであることとか、色々と教えてもらった。

 もちろん、詳細については、あまり教えてしまうとゲームとして面白くないだろうから、という理由で伏せられてしまったんだけど。


「職業は取得スキルと能力値の分配などから、後から一番近いものが選ばれるわ」

「つまり、自動的に選ばれるってことですね」


 何でも、職業もおびただしい数の職業が用意されているらしい。

 おまけに、複数の職業にまたがることもあるため、プレイヤーの側から最初は選ぶことはできないのだそうだ。

 後から、努力次第で、自分の好きな職業に就くことも可能ではある、とのこと。


 そして、能力値の分配だ。

 ハイネの話だと、このゲームでは、能力を数値化するかどうかを選ぶことができるらしい。


「あんまり数値化はお勧めはしないわよ? この機能も、あくまで、あなたたち迷い人が明確な数値がないと不安だって話だから、無理やりに数値化してるだけだから。本当に正確な能力を数値にするなら、常にその値が変動していないとおかしいじゃない? 目安となる平均値だけを見えるようにする意味が私にはわからないわね」

「えっ!? もし仮に数値を表示できたとしても、それは当てにならないんですか?」

「当てにならないわよ。例えば、その生命力だけど、もし仮に、生命力が100でも、10000でも、頭を斬られて飛ばされれば、死ぬわよ? それに、攻撃力? 防御力? そんなの状況とか、攻めと受けの仕方でも全然違うじゃない。身体の部位によっても、硬さは違うしね。それを平均値にして、どうするのかしら?」


 さっぱりわからないわ、とハイネが肩をすくめる。

 なまじ数値があることによって、逆に危険な錯覚が生じることがあるから、そんなものはない方がいい、ってのが彼女の持論らしい。

 いや、AIの思考としては、なかなかすごいことを言っているような気がするんだけど。

 ただ、言っていることは確かによくわかるし、このゲームの中では、ハイネが言うようなシステムで動いているというのなら、あまり数値にこだわらない方が良さそうだ。


「目安が欲しいなら、身体全体のレベルとか、各スキルの成熟値のレベルを参考にする方がいいわ。『火の基礎魔法Lv1』とか、『剣術Lv1』とかね」

「わかりました。数値化はやめておきます」


 ハイネの言葉に頷く。

 それに、もうすでに、ここまでの話で、俺の心は『ギフト』の方へと動いていたし。

 ステータスのポイントを能力値にも振り分けるのなら、数値は重要だけど、自動的にすべて決まってしまう『ギフト』の場合は、別にそれがわからなくても、あまり問題はないだろうし。

 最初からマスクデータと考えておけばいい。

 そもそも、当てにできない数値なんて、ハイネが言う通り邪魔なだけだ。


「それじゃあ、改めて、どうするのかしら? 自分で能力を選ぶ? それとも、『ギフト』を受けてみる?」

「『ギフト』でお願いします」

「ふふ、わかったわ。一応、確認しておくけど、一度『ギフト』を受け取ったら、もう能力は選べないわよ? まあ、ほとんどが『ギフト』の方がメリットが大きいでしょうけどね。このゲームを進めて行けば、私の言っていた意味がわかると思うわよ」


 例え、どんな『ギフト』であっても。

 それは、プレイヤーそれぞれにとっての最適解だから、と。

 そんなハイネの言葉にもう一度頷いて。


「はい、お願いします」

「ええ、要望を受諾したわ。迷い人、セージュ・ブルーフォレストに『ギフト』を与えます――――はい、以上よ」


 ハイネが『ギフト』を与える、と言った瞬間に、自分の身体が真っ白い光に包まれた。

 そして、その光は身体の中に吸収されるように消えた。

魔法は基本属性が火、水、風、土、光、闇の六属性。

それ以外の属性はすべて特殊属性になります。

ただし、基本属性が弱いというわけではありません。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。