東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は、大会ボランティアの応募者が目標の8万人を達成したと発表した。締め切りは来月だというので遅ればせながら応募サイトを見てみた。教え子たちが貴重な経験ができると考えたからだ。
だが、「活動期間中における滞在先までの交通費や宿泊は、自己負担・自己手配となります。居住地を問わず全員一律に、滞在先から会場までの交通費相当として1000円/日をお渡しします」とあるのを見て諦めた。
ゼミの食事会は少しでも安い店を探し、就職活動で東京に行く際には夜行バスの中でも運賃が安い便を選びカプセルホテルに泊まる学生にはまかなえないからだ。千円では3食も満足に食べられない。東京に住む人は自宅から通えばいいが、宿を見つけねばならない人も相当いるはずだ。仮におカネはあっても宿泊施設は十分にあるのか。
ところで、2025年国際博覧会(万博)の大阪開催が決まった。歓迎する声もあれば、経費が拡大する危険性や万博の好影響が一時的にとどまる可能性を危惧する意見もある。
私は教員なので学生への影響が気になる。そこで思い浮かんだのが、万博もボランティアを活用するのかということだ。私は1970年の大阪万博開催時には幼かった上に遠くに住んでいたため来られなかったが、周囲には万博を見た興奮を今も語る人たちがいる。それを聞くと、観客としてでなくボランティアとしてより深く万博に関われば、若者には貴重な糧となるだろうと感じた。
だが、五輪ボランティアへの“ケチ”な対応を見ると、仮に万博のボランティアが募集されても、そのあたりが気になる。ボランティアは善意で自発的に活動するもので、営利を追求するのではないことは百も承知だ。でも、単なる人手不足解消のために善意を“搾取”するのならば「何か違う」だろう。
大阪府の松井一郎知事は万博に関する関係省庁連絡会議に出席し、「世界各国で(の誘致活動で)風呂敷を広げすぎるぐらい広げてきたので、日本の総力を挙げていただかなければ実現不可能だ」と述べ、風呂敷を「たたむ」には各界の協力が不可欠だと強調したという。「風呂敷」には、おそらくおカネの問題も含まれているだろう。風呂敷をたためることも見越した上で立候補したと思っていた私は驚いたが、驚いてばかりもいられない。
万博招致に賛同する人々を「会員」として募集していたサイトには、2025年万博を「(1970年の大阪万博)の伝統を継承し、大阪・関西、さらには日本の発展の新たな起爆剤」「我が国の魅力やポテンシャルを世界に発信する絶好の機会」と位置づけている。大阪に住む人にとっても、それ以外の人にとっても、その理念に外れることがない万博とするためには、まず関わる人を大切にすることから始めるべきだろう。 (近畿大学総合社会学部教授)
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