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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ 作者:笹桔梗

第1章 チュートリアル編

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第1話 農民、ゲームをはじめる

 閉じていた眼をゆっくりと開くと、そこは見慣れない草原のど真ん中だった。


 現実世界で言うところのアフリカのサバンナのような、だけれども、周りを見渡しても大きな木の一本も生えておらず、動物や鳥などの姿のひとつも見当たらない光景。

 色々と気になることはあるが、まずは何よりも優先すべきことからテストするとしよう。

 問題があった時は、それに関しても報告しないといけないからだ。

 それがテスターとしての仕事だ、と考えて。


 ゆっくりと顔を動かしながら、一緒に両手両足の動きなどを確認する。

 体操するようにして、全身をほぐしつつも、身体の動作について色々と調べていく。

 飛び跳ねたり、遠くに向かって大声で叫んだり、あとは、勢いをつけて、側転やバク転などの激しい動きも試してみる。


 ――――よし。

 さっきまで動かしていた身体とまったく変わらない。

 自分の身体としてまったく違和感のないものとして、今の身体アバターも問題なく動いているようだ。


 今、俺がいるのはゲームの中の世界だ。


 新しく開発されたばかりの新作VRMMO『Parallel Universe Online』。

 通称『PUO』というのが、このゲームの名前だ。

 その名前が示す通り、仮想現実の中に作られた『異世界』を体験するというのが、このゲームの売りで、そのためにありとあらゆる技術がつぎ込まれているらしい。


 らしい、というのは、このゲームがまだ発売されていないからだ。

 今の自分がこのゲームをプレイできているのも、ただの偶然に過ぎない。

 運よく、『PUO』のクローズドβテスターのアルバイトに当選した。

 もちろん、嬉しくないわけがない。

 今だって、うきうきして、小躍りしたい気持ちを抑えるのに必死なくらいだし。


 ――――だって、本物のVRMMOだぜ!?


 今までのなんちゃってなヴァーチャルリアリティのゲームとは一線を画す、そういう謳い文句は聞いていたし、さわりだけテストプレイで触れた人の談でも『遂に仮想現実の世界が実現した!』『これはゲーマーの夢だ!』なんて風に語られていた。

 それに燃えないゲーム好きがいるだろうか?


「いや、いない!」

「あら? 何がいないのかしら?」

「うわわっ!?」


 ちょっとだけ、口から飛び出してしまった本音へと、いきなり言葉を返された俺は、慌てて声のした方向へと振り返る。

 すると、先程までは誰もいなかったはずの空間にひとりの女性が立っていた。

 全身をドレスのような衣装で身を包んだ綺麗な女性。

 ただ、ちょっと気になったのは、頭の上に生えている黄色の耳と、ドレスのスカートの後ろからはみ出している、もこもこふわふわとした黄色い尻尾だ。

 これは、獣人というものなのか? そんな風に俺が考えていると、その女性がくくく、と楽しそうに笑みを浮かべて。


「あらあら、驚かせてしまったかしら? ごめんなさいね。本当はもう少し早く声をかけるつもりだったんだけど、飛び跳ねたり叫んだり、何だか面白そうだったから、少し離れたところで見ていたの」

「そうでしたか……ところで、あなたは?」

「ええ、私はハイネックって言うの。ハイネって呼んでくれていいわ。あなたに、この世界について説明するために、ここへとやってきたの」

「説明……ということは、チュートリアルの担当の(NPC)ですか?」

「ふふ、そうね。それが私に与えられたお仕事ね」


 それが、俺とハイネとの最初の出会いだった。

新作はじめました。

今回は、VRMMOものです。

第2話は8時頃投稿予定。

それ以降は、1日1話ペースを目標に頑張っていきたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

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