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【社説】

入管法が通過 国会は責任放棄するな

 出入国管理法改正案が衆院を通過した。首相の出張で与党が審議を急いだためだ。重要法案ならば国会延長の選択もあろう。受け入れ外国人の人権がかかる問題に真剣さが足りない。

 野党が批判し、反対する法案には、議論を尽くさねばならない。民主主義の基本的なルールであり、立法府の責任だ。

 だが、入管法改正案については、二十六日までにわずか十五時間十五分しか審議時間を使わなかった。

 自民党の石破茂元幹事長は二十六日、「成立させるだけなら圧倒的多数でできる。だが、それでは国会の意味がない」との趣旨の発言をしている。

 法案審議や委員会の運営が強引にならないようにくぎを刺す意図だろう。

 驚くべきは、与党が急いだ理由である。安倍晋三首相は二十九日に日本を出発し、アルゼンチンで開かれる二十カ国・地域(G20)首脳会議に出席する。この日程に合わせたというが、これはおかしい。国会は首相の下請け機関ではないのだから。

 そもそも法案の出発点は今年二月、経済財政諮問会議に首相が検討を指示したことだ。六月には新たな在留資格の創設を盛り込んだ骨太方針を閣議決定した。法案の閣議決定は今月二日。衆院での審議入りは十三日である。あまりの急ぎ足ぶりがわかる。

 外国人の受け入れ態勢など重要な事柄を考えれば、じっくり腰を据えた議論が必要なのに、たった十五時間余で打ち切り、採決に運ぶ手法は乱暴すぎる。首相の出張予定があったら、帰国してから審議を再開すればよい。国会延長も可能なはずだ。

 「制度見直しは二年後に前倒し」「外国人労働者の大都市圏集中を防ぐ」「マイナンバー(社会保障と税の共通番号)などを活用した在留管理」などの修正もされた。自民、公明の与党と日本維新の会の合意だが、強行イメージを弱めるためではないか。

 特定秘密保護法(二〇一三年)では四十一時間五十分、安全保障関連法(一五年)では百八時間五十八分、「共謀罪」法(一七年)では三十四時間十分を衆院審議に要した。時間で計れば、その半分の意識しかないのか。

 高度な専門人材に限った従来の政策から転換する法案だ。一九年度から五年間に計三十四万人の外国人労働者の受け入れを見込む。日本の未来図にも影響する。参院では充実した議論を望みたい。

 

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