衆院は27日夜の本会議で外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案を自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、参院に送付した。これに先立ち、立憲民主党など野党6党派は山下貴司法相の不信任決議案を提出。自民、公明などの反対多数で否決した。政府・与党は28日に参院で審議入りし、12月10日までの国会会期内に成立する日程を描く。
立民の辻元清美国会対策委員長は27日午前、衆院法務委員会での採決に先立ち、自民党の森山裕国対委員長と会談した。議論が不十分として衆院法務委での審議を継続するよう申し入れた。森山氏は「審議を重ねてきた」と応じず、野党6党派は法相不信任案を衆院に提出した。与党は不信任案の否決後、衆院法務委を再開し、可決した。
改正案は2つの在留資格を新設し、外国人労働者の受け入れを拡大する内容。一定の日本語力や技能があれば得られ、通算5年滞在できる「特定技能1号」と、熟練した技能が必要で在留資格の更新と家族帯同が可能な「特定技能2号」だ。
1号の対象は農業や介護、建設など国内で人手不足が深刻な14業種。開始から5年後の累計で技能実習生からの移行が45%と見込む。政府は法案の成立後、詳細な分野別の受け入れ人数や必要な日本語能力などといった「運用方針」を定める。
自民、公明両党は26日、維新と法案修正で合意。付則に盛り込んだ法施行後の見直しの時期を「3年後」から「2年後」に短縮するなどした。衆院法務委では技能実習生の適切な保護や2号の厳格な運用を求めるなど10項目の付帯決議も可決した。
立民など野党は与党の国会運営に反発し、大島理森衆院議長に27日夜の衆院本会議での採決をやめるよう申し入れた。大島氏は採決見送りには応じなかったものの、与党に改正案の施行前に運用方針や関連政省令を国会に報告するよう求めた。
法案が成立すれば、深刻な人手不足に直面する経済界の要望に応じ、外国人の単純労働の受け入れにかじを切ることになる。日本の入国管理政策の転換となる。一方、政府は外国人の受け入れで国家を維持する移民政策とは一線を画す。
公明党の山口那津男代表は27日、入管法改正案の衆院通過に先立ち、安倍晋三首相と首相官邸で会談した。「国会でいろいろな課題や論点が議論されている。実施までに課題を整理し、しっかりした準備が必要だ」と伝えた。首相は「国会の議論を踏まえてしっかりやる」と応じた。