文大統領が自らの支持層と衝突するのは今回が初めてではない。文大統領は「革命的接近が必要だ」との理由でネット銀行を巡る「銀産分離(銀行による産業資本の持ち株所有を制限する制度)の緩和」や「遠隔医療の導入」などを進めようとしたが、民主労総などは「大企業の立場を擁護する政策」との理由で強く反発した。大統領府は「重要なことは何らかの原則や主義主張ではなく、国民生活を改善し、雇用を増やすことだ」と説明したが、大統領府の方針には一部与党議員も反対した。そのため遠隔医療に関する法律は今なお成立に至っていない。
■盧武鉉政権でのトラウマ
文大統領は同じような状況を十数年前の盧武鉉政権でも経験した。支持者らが反対する政策を盧武鉉政権が推進した際、いかなる批判を受けまたそれにどう対応するか文大統領は見守っていたのだ。とりわけイラク派兵は盧武鉉政権の支持率を20%台にまで引き下げ、また左派陣営が背を向ける決定的な理由となった。さらに韓米FTA締結の際には民主労総はもちろん民主社会のための弁護士会(民弁)や参与連帯なども「亡国的協約」として強く反対した。文大統領は当時の状況について著書『運命』の中で「進歩(リベラル)陣営による少数派にとどまらないためには、国と国の経営についてより責任ある姿勢を持たねばならない」との考えを示している。しかし韓米FTAは後に当時の与党・ヨルリンウリ党と大統領府との対立につながり、最終的にヨルリンウリ党は盧大統領と決別した。
民主労総などは今回も政府に対する大規模闘争を予告している。民主労総は「政府と国会はキャンドル民意を制度的に後押しできず、むしろ逆行している」「数多くの課題が積弊勢力の妨害で放置されたままだ」などと主張している。