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[16699] [習作]なのは世界のだれかに憑依・・・てちょっと待て?!(A's後日談~空白期更新中)
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/07/18 13:28
 ※この作品は、劇場版リリカルなのはのネタばれ要素を含みます。あらかじめ、ご了承ください。

















20歳の春、俺は死んだ。うん。突然言われても何がなんだか分からないと思う。しかし、俺は死んだんだ。

なんせ、自分の首を掻っ切ったからな!

いや~、見事なまでに血が噴出しましたよ、ええ。もう今更止血しても駄目だろうってくらい。

そんな状況で気を失ったんだから、確実に死んでるはずなんだ。

え、自殺の理由? そんなもん、聞きたくは無いだろう? 聞かないでくれ、くだらない理由だから。


今問題なのは、死んだはずの俺の目の前にいる、背中に天使のような翼をつけていて、黒いフードつきのローブを着た天使なんだか死神なんだか良く分からないやつだ。

だってさ、


「あなたは大罪を犯しました。よって、このままあなたの魂を輪廻の輪に戻すことができません」


とか言ってくるんだぜ?

もう阿呆かと。厨二かと。そんなものはよそでやってくれよ。こっちはもう死ぬんだからさ、と思っていると、


「それは出来ません。よってあなたにはもう一度現世に戻って生きてもらいます」


とかさらに言ってくるし。人の思考を読むなよって思うけど、それ言っても意味がなさそうだし、面倒だから話を合わせるとするか。


「で、今から首を掻っ切った場面へ戻れとでも言うのか? もう死んでると思うんだけど?」


「いえ、本来ならば、あなたにはある程度の記憶を持ったままもう一度人生をやり直してもらうところなのですが・・・」


おいおい、それじゃあ多分また同じ結果になるぞ、と思っていると


「結局前回よりも自殺したのが5年ほど遅くなっただけだったので、今回は別の方法にします」


とか言ってきた。てか、目の前のやつの話を信じると、俺はすでに一度やり直した後の「俺」で、「前回の俺」は高校生になったあたりで人生を終えることにしたらしいんだが。何回死ねば俺は気が済むんだ。・・・まあ、確かに中学までの勉強がやけにできるな、とは思ってはいたけどな。思い当たる節があるのがなんか悲しいZE☆


「というわけで、あなたには記憶を完全にもったまま、別の世界に転生してもらうことになります」


なるほど、転生か。二次創作の定番だ。だが、それがいい!
しかし、いったいどのような世界に送られるのだろうか?


「転生先はあなたの記憶にある創作物のなかで、実際に存在するものになります」

おぉ! どこの世界かは教えてくれる気はないようだけど、どうやらどっかの原作キャラに会える可能性があるらしい。


みwなwぎwっwてwきwたぁあああああ!!!!


あんた、良くわかってるねぇ! 確かにそれなら生きる気力がわいてきましたよ。自殺なんてするものか! 絶対に第2の人生を楽しんでやる!


「では、転生を開始します。御武運を」


なんか最後におかしな台詞があったような気がするけど、新たな人生に期待してた俺は大して気にせずに、気を失った。

















さて、今の自分が置かれている状況を冷静に振り返ってみようか。

どうやら、自分は緑色の液体に満たされたポッドの中にいるらしい。

うん。 どう考えてもすでに色々とおかしいが、もう少し周りを観察して見よう。

目の前には、紫色の長い髪でやや露出度の高いローブっぽいものを着た妙齢の女の人が、ポッドに寄りかかって立っている。

んでもって、少しはなれたところに金髪ツインテールで紅い眼をした9~10歳くらいの女の子と、赤毛で犬耳っぽいものが出てる高校生くらいの女の子がいる。

で、今どうやら女の子がポッドに寄りかかっている女の人に話しかけているようだ。なんか手を女の人に差し出しているし、


「・・・これが私の、フェイト・テスタロッサの本当の気持ちです」


とかいってるし。


うん。そろそろいいだろう。もういい加減自分がどんな状況にあるのかわかったし。どう考えてもリリカルなのはの世界だよね。でもって、無印の最後の方のシーンだよね、これって。台詞からすると劇場版のほうかな?





で、どうかんがえても俺はアリシアの中にいるよな。





いや、わかってはいたさ。眼を開けたら目の前が緑色だし、自分の体を見たらどうみても幼女のものになってるし。

ていうか、原作をStSまでみて、しかも劇場版も見に行ったやつをなめるな!
たとえ3次元となっていても、どれが誰だか見ただけでわかるわ! 目の前にいるのがプレシアだってこととかなぁ!


そんな俺だから、というよりも、原作を知る者なら誰でも分かるであろうことに俺は今猛烈に悩まされている。


あと  もう少しで  俺  死ぬよね?



いやいやいや!  やばいって!!

確かにアリシアは原作ではすでに死んでるんだけど、その中に宿ってしまった俺は生きているんだよ。とにかく今をどうにかしないと、憑依そうそう死亡だよ! ていうか、転生とかいってたのに、これは憑依じゃねぇか! 間違ってんぞ、責任者!

大体、人生はままならないとかよく言うけど、これは理不尽すぎるだろ!
第二の人生スタートがいきなり死の淵とか!

これじゃあ自殺するまでも無く死亡するよ!!



・・・落ち着こう。とりあえずこのまま行くと、またあの死神もどきとご対面だ。
これはどう考えてもあちらのミスだから、文句のひとつも言っても問題ないだろう。

しかし、俺は少し頑張ってみようと思う。何故かって?

今なら、少しでも原作よりもやさしい結末にできそうだからな。
劇場版だと、プレシアは今のフェイトの言葉に気持ちが動いたっぽいし、ここでアリシアがポットから出てきて、フェイトを見て、それからプレシアを見て、

『ママ、妹、つくってくれたんだね!』

とか満面の笑みでいってみろ。確実にプレシアを落とせる!!

もっとも、俺がアリシアの真似ができればの話だがな!

ベストなのは、俺がアリシアに憑依したことでアリシアも一緒に蘇ってることなんだけどな。つまり、2重人格みたいな状態になっていることね。

でも、そんなに都合のいい話が・・・


「さっきからずっと話してるけど、お兄ちゃんは誰?」


・・・なんか聞こえたぞ。






あとがき

ネタを思いついたので、脊椎反射で書いてしまいました。拙い文章ですみませんm(_ _)m

一応、ある程度はストーリーを練ってはいますが、キャラの把握が甘いのががががが・・・

アリシアってどんな子だっけ・・・

追伸:アリシアの台詞間違えた。「お母さん」じゃなくて「ママ」だった・・・



[16699] なのは世界の誰かに憑依・・・ってちょっと待て?!
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/05 18:42
さて、ついさっき何か幻聴が聞こえたけど、今は早くプレシアさんに「アリシア」が生き返ったことに気づいてもらわなくてはならない。

だってさ、もうプレシアさんは


「言ったでしょう? 私はあなたのことが大嫌いだって・・・」


ていう台詞まで言ってるんだよ!

もう時間がありません! 早くしないとまた死んでしまう! 何か、何か武器は無いのか?!


「ねぇ、さっきからずっと一人でしゃべってるけど、お兄ちゃんは誰なの?」


あぁ、また無垢な声の幻聴が・・・

ん? この声ってもしかしてアリシア?


「うん。わたしはアリシアだよ?」


・・・きた! メインアリシアきた! これで勝つる!

なんでアリシアの意識が復活しているのかはこの際は置いておこう。どうせ、俺が生き返る際に、母体となったアリシアの体を死神もどきのパワーで生き返らせた結果だろう。次にやつに会うことになったら、その辺は感謝の意でも表しておくか。

もっとも、今俺が死んでしまうようなら、遺憾の意を表明するけどな!

とりあえず、体の支配権はアリシアに渡そう。どうやるかは分からないけど、気合で何とかなるはずだ!


「アリシア、今から君に体を動かしてもらうから。頑張ってプレシアさんに話しかけてくれ。」

「えっ、どうするの? わたし、わからないよ?」

「気合で何とかなる! 考えるんじゃない、感じるんだ!!」


もはやアドバイスですらないことを俺は言いながら、アリシアに交代する方法を試してみた。

意識を手放す感じというか、水の中に沈んでいく感じをイメージするというものだけど。定番だよね? そんなものに定番とかお約束とかあるのかは知らないけど。


「あれ? 手が動くよ! でも、なんでわたしは水のなかなの?」

「後で全部説明するから、今はプレシアさんに話しかけてくれ!」

「うん、わかったよ」


とりあえず、なんとかなったようだ。後はアリシアに任せよう。


















で、今俺はとある問題に頭を抱えている。いや、わかってはいたんだけどあえて考えないようにしていたというか・・・

とりあえず、あれから今の時点までの経緯を説明しようか。




アリシアがプレシアさんに近づくと、プレシアさん、というより周りにいた原作キャラ全員が驚いていたんだが、とにかく、アリシアはポッドから出された。そして、プレシアさんに抱きつかれること・・・にはならなかった。

アリシアは、ポッドから出ると、フェイトの方を見て、それからプレシアさんの方を向いて、


「ママ、妹をつくってくれたんだね!」


って満面の笑みで言ったんだ。

いや、俺が教えるまでも無くフェイトを妹だと認識したり、プレシアさんに俺が言ってほしかった言葉を言ってくれたりしたのは嬉しいんだけど・・・


やっぱり、アリシアは天然さんなんだね。


まあ、あのフェイトの元だから、それくらいは予想してたさ。しかし、いくら後で教えてやるからと言われたからって、普通今の自分の状況に疑問を感じるだろ! だいたい全裸だし! おいクロノ、こっちみんな! あとユーノ、お前もなのはの服に隠れてこっち見てんじゃねぇ!


で、そのアリシアの台詞の後どうなったかというと、プレシアさんはその場に崩れ落ちました。


「私はいつもそう・・・いつも気づくのが遅すぎる・・・」


とか言ってたけど。

アリシアはぽかんとしてたし、フェイトはというと、

「まだ遅くはないよ、もう一度やり直そう、母さん」

とか言ってたよ。

でもね、プレシアさんが言ったことってそういう意味じゃないんだよね。

たしか、プレシアさんって無印の時点でもう生きていられる時間がほとんどなかったはずだ。

もしかしたら、フェイトを創った時点でプレシアさんが自分の体を治療することに専念していたら、もっと長く生きることができたのかもしれない。

でも、プレシアさんはそれをしなかった。フェイトを創ったのはあくまでアリシアとしてであって、アリシアの妹としてではなかったからだ。

もし、プレシアさんがフェイトを創ったときに、アリシアとの誕生日での約束の「妹がほしい」を憶えていたのなら、また別の未来があっただろう。

でも、それを今言ってもしょうがないんだ。全部終わってしまったことなんだから。

だから、


「今までごめんなさい、フェイト。でも、私はアルハザードへ向かうわ。こんなはずじゃなかった世界のために。さようなら、私の娘たち・・・」


って言ってプレシアさんは身投げしました。

俺はプレシアさんの行動には予想がついていたけど、やっぱりやるせなかった。今の時点からでは救えないと分かっていても、なんとかしたいと思っていたからだ。

俺ですらそんな気持ちなんだから、プレシアさんの娘たちは当然のようにプレシアさんを追いかけて助けようとしました。


「母さん!!」

「ママ!!」


フェイトは原作通りにアルフに止められ、アリシアはなのはに止められていました。うん。なのはが突入済みでよかった。俺が無駄話してたおかげかな。

なのはがいなかったら、アリシアの裸をクロノに抱えられることになるしな! 

でも、それだけじゃあ終わらなかった。なんか、ジュエルシードがひとつ光りだしたんだ。

原因? アリシアだよ。だってさ、アリシアは


『なんでもいい、ママを助ける力がほしい!!』


とか願っていたんだよ。「ママ!!」って叫んでるときに大音量で。こっちは鼓膜が破れるかと・・・俺に体はないけどなorz

とにかく、ジュエルシードがその願いを聞いてしまったらしい。こいつはやべぇ。

このままだと、劇場版なこの世界ではアリシアがモンスター化してしまう!

いたいけな美少女がモンスター化なんて許せるだろうか? いや、許せない!!(反語)

よって、このような紳士的思考により、俺も願うことにした。


『どうか、アリシアの姿だけはこのままで!!』


その結果、










アリシアがフェイトくらいまで成長しました。










俺は思わずジュエルシードGJと言いたくなったね。正直、アリシアが事故当時の姿、つまり少女というか幼女だったのが気になっていたんだよ。だって、仮にも自分も使う体だし。

結局、なのはに抱えられたままだし、そのあとエイミィさんによってアースラにまで転移されたんで、大事には至りませんでした。


それで、アースラに戻ったところで、俺は頭を抱えることになったのだ。




ア リ シ ア は は だ か で は な い か !




とりあえず、どうしよう・・・






あとがき

書いてる途中で間違って投稿してしまいました。ご迷惑をおかけして済みませんでしたm(_ _)m

とりあえず、次で無印は終了します。予定では、A's終了まで書きたいんですが、そこまで気力が持つかどうか・・・

でも、こんな作品にも感想を書いてくれる人がいるので、頑張って最後まで書いていこうと思います。



[16699] なのは世界の誰かに憑依・・・ってちょっと待てぃ?!(さらに修正しました)
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/05 18:43
さて、アースラに転送されたのはいいんだけど、誠に残念なことに、アリシアはいまだに服を着ていないのだ。

ポットの中にいたときはまだ幼女だったんでそれほど倫理的には問題なかったと思う。・・・てか何も問題が無かったことにしたい。



しかし、今はほぼフェイトと同じ見た目、少女のものなのだ。もちろん美少女だ。



さすがに、これは色々と問題があるだろう。さっきからクロノとユーノが顔を赤らめてそっぽを向いているが、こちらをちらちらと見ているし。


少年たちよ、さすがにそれは犯罪だぜ? 訴えれば確実に君たちが負けるぜ?


しかも、アリシアの格好について、アリシア本人はおろかフェイトとなのはも気づいてない様子。

お前ら、羞恥心とかないのか・・・

とりあえず、アリシアに何か着るように促して見るか。


『おい、アリシア。とりあえず、何か羽織るものを借りようか』

『えっ、何で?』

『・・・今の格好を自分でよく見るんだな』

「『え?・・・あ!』 あうぅ(///)」


ようやく気づいてくれたようだ。

自分の体を抱いて赤面しながら縮こまるアリシアを見て、なのはとフェイトも気づいてくれたらしい。


「ごっ、ごめんアリシア! とりあえずこれを着て!」


フェイトがバリアジャケットのマントを貸してくれた。とりあえずはだかではなくなったけど・・・

なんていうかさ、裸にマントっていうのもなぁ・・・

どっかの吸血鬼にもそんなスタイルのやつがいたなぁというか・・・

まぁ、マントを羽織ったくらいじゃ充分とはいえないよね。

このあと、クロノが


「すまない。アースラの医務室に病人用のだが服があるから、それを着るといい」


て言ってきたので、なのはとユーノと別れてフェイトやアルフと一緒にクロノに医務室まで連れて行かれた。


しかしクロノ、いくら真面目な顔をしていても、赤くなった顔はごまかせてないぞ。


あぁ、そういえば、この後フェイトたちは重要参考人だから独房っぽいところに入れられるんだったな。ということは、アリシアも一緒に連れて行かれることになるのか。

それならちょうどいいか。独房に着いたら、フェイトたちに挨拶でもしておくか。












結局、フェイトたちに俺が挨拶したのは、リンディさんが独房に入ってきてからだった。

なんていうか、空気が重かったんだよ。まぁ当然なんだけどね。

目の前で母親が死んだら、普通はふさぎこむよな。

それに、そんな空気の中アリシアが、


「あなたの名前はフェイトっていうんだよね?」
 

てフェイトに話しかけた。


「うん。わたしはフェイトだよ。あなたがアリシアなんだよね?」

「そうだよ。わたしがアリシア。フェイトのお姉ちゃんなんだよ!」

「おねぇ・・・ちゃん?」

「うん。お姉ちゃん。それで、あなたは?」

「あたしかい? あたしはアルフ。フェイトの使い魔さ」

「アルフっていうお名前なんだ。いつもフェイトと一緒にいてくれたの?」

「そりゃあそうさ。あたしはフェイトの使い魔なんだから!」

「そうなんだ。いつもフェイトと一緒にいてくれてありがとう」

「えっ、なんでだい?」

「だって、わたしがいないときにフェイトと一緒にいてくれたんでしょ? ママはいつも忙しいし、アルフがいなかったらフェイトは寂しい思いをしたんじゃないかなって。だから、ありがとう」

「い、いやぁ、あたしはあたりまえのことをしただけさっ!」

「あっ・・・」

てな感じでアリシアとフェイトたちが話しているうちに、リンディさんが独房に入ってきた、というわけだ。


つまり、俺が挨拶する隙がなかったんだZE☆


ちなみに、フェイトの事情については、俺がアリシアに独房まで案内される間に説明しておいた。原作知識って便利だね! 

もちろん、フェイトがプレシアさんに虐待を受けていたことは言わないでおいた。アリシアが気を使うことではないからな、これは。知らないほうがいいことだってあるさ。

とにかく、アリシアとフェイトたちが打ち解けてきたようでよかった。

アリシアとフェイトとアルフは良い家族になるんじゃないかなって思える。



その後、リンディさんは、フェイト達が今回の事件の容疑者として裁判にかけられること、その裁判が最低でも半年はかかること、情状酌量の余地があるため無罪は確定的だということを説明してきた。

また、アリシアは執務官の目の前でジュエルシードを使ってしまったので現行犯で拘留されるが、不起訴処分になるだろうとのことだった。

それで、拘留中及び裁判中の保護監察官は原作通り、リンディさんがするんだそうだ。

うん。やっぱりリンディさんは良い人だ。原作では、ジュエルシード事件になのは達を管理局に協力させるために一芝居打っていたけど、この人は基本的に良い人なんだと思えた。


あと、リンディさんは美人だね! てか何歳だよこの人! 14の子供がいるような歳には見えないって!


リンディさんの説明が一段落したところで、俺はその場にいる人たちに挨拶することにした。

以下が、そのときの会話だ。


「リンディさん。実は、わたしの中のお兄ちゃんがみんなとお話したいって言ってるんですけど、いいですか?」

「? ええ、いいですよ」

『じゃあ、代わるからね、お兄ちゃん』

「『おーけー、ありがとう』 どうも、始めまして! アリシアの中にいる人です! 別にアリシアが2重人格というわけではないのであしからず。それと、今までの会話は全部聞いていたんで、自己紹介は結構ですよ」

「?! えっ、あの、その・・・」

「うわっ、いったいあんたは何なんだ?!」

「始めまして。それで、不躾な質問ですが、あなたは何者なんですか?」

「まぁ、いきなり中の人だとか言われても困りますよね。一応僕は20歳の青年です。名前は御堂時雨といいます。僕は多分、変則的な次元漂流者、ということになると思います」

「と、いいますと?」

「僕自身は、元々住んでいた世界で死んだはずなんですよ。でも、気づいたら意識だけがアリシアの体の中にあるんです。自分でもいったいどうなっているのかが分からないんですよ」

「そうですか・・・。とりあえず、アリシアさんには艦内で精密検査を受けてもらうことにしましょう」

「ありがとうございます。『アリシアもそれでいいか?』」

『うん、いいよ』

『じゃあ、アリシアに代わるぞ』

『うん、わかった。』

「では、アリシアさんは私についてきてください」

「はい!」




というかんじで、アリシアは精密検査を受けることになった。

いくら死神もどきの力で蘇ったからって、なにか体に不具合があるかもしれないので、リンディさんの行動は俺としてもありがたかった。

え? 俺がしゃべってるときの一人称が何かおかしいって?

うん。基本的に俺は友人と話すとき以外は「僕」って言うんだ。TPOって大切だろ? 異論は認めない!

しかし、リンディさんがすんなり俺の話を聞いてくれたなぁ。

まぁ、検査の結果を見てから考えるつもりなんだろうけどな。

死神もどきの力やジュエルシードの力が思いっきり影響しているアリシアの体の検査の結果がどうなるか、楽しみだ。




ぶっちゃけると、戦々恐々の方が正しいけどなorz






あとがき

感想にもありましたが、ネタばれ要素があるにも関わらず何も説明をしていませんでした。ネタばれになってしまった人、すみませんでしたm(_ _)m

あと、前回予告したように、今回で無印を終えるはずだったんですが、次回に持ち越しになってしまいました。次こそ無印のエピソードを終わらせます!

しかし、なのはってやっぱり凄いですね。こんな拙い二次創作なのにPVが一万を超えてしまいました・・・
おそるべし、リリカルなのは!

作者は小心者なので、気力以前にプレッシャーで参ってしまいそうですが、頑張ろうと思います。

追伸:感想掲示板にて、アリシアが捕まる理由がわからない、という指摘がありましたので、そのあたりについて加筆修正しました。書き落としが多くてすみませんm(_ _)m





[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・ってちょっと待ってよ?!(少し修正)
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/05 18:44
俺、というよりアリシアは、紆余曲折を経てアースラ内で精密検査を受けることになった。

検査は特に問題なく終了し、あとは検査の結果が出るのを待つばかりとなった。

ちなみに、今アリシアは、フェイトたちと一緒に艦内の普通の部屋をあてがわれている。

なんでも、保護観察が正式に始まったのでもう独房に入れておく必要が無くなった、とリンディさんが気を利かしてくれたようだ。

いやぁ、自由の身はいいね! 実際はまだ無罪放免となったわけではないんだけど、やっぱり独房よりは普通の部屋の方が気分がいいよ。

食事もアースラの食堂が使えるようになったしね。もっとも、建前上保護監察官のハラオウン一家と一緒に食事を取るんだけど、俺らに対する対応は原作通り、まるで家族に対して接するような感じだ。

また、意外にも堅物だと思ってたクロノがやさしかった。確かに、劇場版だとアニメ版よりもやさしい雰囲気があったから、そちらが適応されているのかも。まぁ、真面目なところは変わらないけどな。

とりあえず、アースラでの日常は特に何の問題も無く過ぎていった。多分、原作の流れから考えると数日中にフェイトがなのはと会うイベントが発生するはずだ。無印のラストのあの名シーンを生で見られるんだ! いまから楽しみだぜ!





・・・って、現実逃避をするのもそろそろやめよう。

実は、俺は今とある問題に頭を抱える事態となっている。なんていうか、こっちに来てから俺が悩むことが多いような気がするけど気のせいだな。気のせいだということにしよう。

それで、その問題というのがな・・・







                           お     風     呂




なんだ。

紳士諸君は「お前それは役得だろう!!」とか言いたくなるだろう。


その気持ちは分かる! 分かるんだ!! 実際、以前の俺もそう思うから!!!


しかし、今の俺のような状態になるとその気持ちは複雑になるんだ。現在のアリシアの裏に引っ込んでいる状態でも視覚や聴覚がはっきりしてるんだよね。

ちなみに味覚と嗅覚は以前俺が生きてたときの感覚と比べるとマイルドになった感じだ。触覚に至ってはさらにマイルドに、当社比で半分くらいかな。

つまり、何が問題かというと、俺にもアリシアの感覚がかなりの割合で伝わってしまうんだなこれが。

これが普段の生活においてもなかなかにこそばゆい感覚を送ってくるわけだ。お風呂なんかに入ったらどんな感覚がやってくるやら・・・

何よりも、俺的に一番問題なのが、



美少女の<検閲されました>がなんのリスクも無く見れる



ことなんだ。

何を言ってるんだこの虫野郎!!! とか言いたくなるかもしれないが、これは切実な問題だ。具体的には俺の精神が罪悪感でマッハだ。

女子風呂はある意味男の夢の結晶、全て遠き理想郷である!

それゆえに、そこにたどり着く、もしくはその聖域を垣間見るために数多くの英霊達がその命を散らしてきた!

その英霊達の生き様こそにその意味がある! というのが俺の持論である。

簡潔に言えば、俺にとって、この聖域にたどり着くことは、最後にそこにいた女子たちによって制裁が下されるまでがワンセットなのだよ!

これがないと、いつまでたっても罪悪感が消えなくて困るんだよ!!

だったらお前が見ないようにすればいいじゃねぇか、という意見がでるだろう。

だけどね、裏に引っ込んでるとさ、目を閉じることが出来ないんだよ。つまり、視覚は完全にアリシア依存なんだ。

故に、どうやっても回避不能なんだよ!

ここは俺が賢者になるしかないな。でも、フェイトってなんか二次成長が微妙に始まってる感じなんだよなぁ・・・

頑張れ俺の理性! ということになるのかな。


「フェイト、一緒にお風呂に入ろ!」

「うん。いいよ、アリシア」

「それじゃあ、あたしも一緒に入ろうかな。いいかい、アリシア?」

「うん。アルフも一緒に入ろ!」


そもそも、今更俺が何をいってもどうにもできない状況だったんだけどね。

HA HA HA! ・・・・・・はぁ。





















さて、今は夜だ。うん。さっきなんか色々とあった気がするけど、キノセイダヨ。ナニモナカッタデスヨ?

いま、アリシアの寝ている大き目のベッドの隣には、フェイトが寝ている。アルフは狼形態で床のカーペットが敷いてある部分で寝ている。

なんで俺が周りの状況が分かるかというと、アリシアがまだ起きているからだ。

・・・これは俺がなんとかした方がいいんだろうな。アリシアの中にいる者として。

幸い、アリシアはベッドの通路側にいるし、フェイトたちを起こさずに部屋の外に出ることは出来るだろう。


『アリシア、聞こえるか?』

『うん、聞こえるよ』

『ちょっとのどが渇いたから、飲み物を飲みに外に出たいんだ。身体を代わってくれるか?』

『うん、いいよ』


もちろん、のどが渇いたとかは嘘だ。なにせ、俺のほぼ全ての感覚がアリシア依存だからな。アリシアは今のどが渇いているわけでもないし。これはただ、人気の無いところまでアリシアを移動させる為の方便だ。

そんなわけで、今アリシアはアースラの休憩室にいる。もう深夜といってもいい時間だから誰もここにいない。それに、ここにはタダで飲み物が出る自販機があるし、一応建前が通るからな。それにしても、管理局の設備は良いものだな。こちらの管轄が「海」だから、というのもあるんだろうけど。

とりあえず、俺はオレンジジュースを自販機から取り出して、一口飲んで一息ついた。

・・・そろそろ切り出すか。


『なぁ、アリシア』

『ん、なぁに、お兄ちゃん?』

『おまえさぁ、無理、してるよね』

『えっ?』

『無理してるよな』

『そ、そんなことないよ』

『嘘言ったって無駄だぞ。アリシアの気持ち、結構俺にも伝わってくるんだからさ』

『あ・・・。でも・・・』

『別に責めているわけじゃあないさ。フェイトのために、明るく振舞ってたんだろう?』

『うん・・・。だってわたしはフェイトのお姉ちゃんだから』

『うん。わかってる。それはいいんだ。けどな、アリシアだってつらいんだろ?』

『・・・・・・。』

『大好きな母親が目の前で死んでしまったら誰だってつらいさ。そんなの当たり前だ。だからな・・・アリシアは泣いてもいいんだよ。むしろ、悲しいときは泣かなきゃだめだ』

『っ!』

『そうしないと、いつかきっと後悔すると思うからさ』


まだアリシアは子供なんだし、泣きたいときは我慢せずに泣いた方がいいと思う。変に我慢すると、あとできっと後悔する。自分の感情を上手く表せなくなって。・・・俺みたいにな。

しかし、こんなに想える親がいるってのも羨ましいな。これも結局、俺は理解できても、自分で感じることは出来なかったし。

・・・だいぶシリアスに引きずられてるな。もっとしっかりしないと。


『っ、うっ・・・』


そろそろアリシアが泣きそうだな。・・・うん。ちょうどいいな。この辺でアリシアに身体を代わるとしますか。


「うっ、っく、 うわあああああああん!!」


よしよし、アリシアはよく頑張った。さて、そろそろ後ろで様子を見てたリンディさんが出てくるだろう。

おっ、今アリシアが抱きしめられましたな。

実は、部屋から外に出るとき、リンディさんがこっちに向かってくるのが見えたんだよね。あえて視界にいれないようにしたけど。後ろ手で付いてくるように合図したけど。

やっぱり、リンディさんも気づいていたんだね、アリシアが無理をしてるってこと。それで、その辺を何とかしようと思っていたわけだ。

うん。リンディさんは良い人ですなぁ。さすが、後にフェイトにお母さんと呼ばせた人だ。

これで、アリシアは大丈夫だろう。胸の内にあるものを全部吐き出してしまうといいさ。それで、アリシアは歩き出せるだろう。

俺としても、肩の荷が下りたようにすがすがしい気持ちだ。なんせ、今までずっとアリシアの悲しみを共有してたんだからな。

うすうす感づいてはいたけど、片方の強い感情は、もう片方にも影響するようだな。これからは俺も気をつけることにしよう。アリシアにつらい思いをさせない為にも。なに、生前にやってきたことと似たようなものだし、なんの問題もないさ。


翌日の朝、リンディさんからフェイトに、なのはと会える機会があることが告げられた。いよいよあの名シーンが見られるぞ! 楽しみだ!






あとがき

感想掲示板の皆さんの書き込みが、私の力となっております。様々な意見有難うございます。これからも精進していきますので、よろしくお願いしますm(_ _)m

さて、今回は後半に若干シリアスが入りました。感想掲示板にて、主人公が廃テンションだと指摘がありましたが、その理由の片鱗を出して見ました。前半とのギャップが出てしまいましたがどうだったでしょうか?

次回は、散々引っ張ってきましたが、ようやく出だしがあの名シーンになります。といっても、アリシアはクロノたちと一緒に遠くで見てるだけなのでなのはとフェイトの台詞はほとんど無いです。すみません。



[16699] なのは世界の誰かに憑依・・・無印編完結!
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/05 18:45
俺、というかアリシアは今、海鳴市の某公園にいる。隣には、クロノやアルフ、フェレット形態のユーノもいる。

そして、少し離れたところから風に乗って、


「・・・君の手は暖かいね、なのは」

「・・・っ! ・・・フェイトちゃん!」


とか聞こえきた。

俺は今、あのシーンを生で見れて猛烈に感動している! 隣にいるアルフとか感極まって泣いてるし。

いやぁ、美少女二人が抱き合ってるのって絵になりますなぁ。眼福ですよ。

でも、このときの二人の台詞とかを考えると、どう見ても恋人同士の会話にしか聞こえないのは俺だけだろうか?

本人たちに自覚は無いんだろうけど、そこはかとなく百合百合しい雰囲気があるんだが。

しかし、隣のアルフやアリシアは目の前の光景について特に違和感を感じてない様子だ。おかしいのは俺のほうなのか?




まぁ、その、なんだ。実際に目の前で見ると、そんな考えなんか吹っ飛ぶんだけどな。まさか俺が本気で感極まるとかありえねぇぜ。アルフのことを言えないな、俺も。今だけは、俺の身体が無くてよかったと思うよ。



ふと気づくと、隣に座っていたクロノが抱き合っている二人に向かって歩き出していた。そういえば、もうそんな時間か。

アニメ版を見ているときは、ずいぶん空気を読まないやつだと思っていたけど、劇場版を見てクロノのイメージが変わったんだよな。


だって、今のクロノの表情がさ、やさしそうな穏やかな表情なんだよ。


その後、原作の流れの通りに、なのはといつかの再会を誓って別れを告げて、俺達はアースラに帰ることになった。もっとも、少しイレギュラーがあったけど。

挨拶を終え、いよいよ転送を開始する、というときに、


「あの、アリシアちゃん! アリシアちゃんも友達に・・・なれないかな?」

「あっ・・・。 うん、友達になろっ! なのは!」


っていうやり取りがあった。

そのあと、アリシアはフェイトと一緒になのはが見えなくなるまで手を振っていた。

そういえば、アリシアも幼少期は山猫のリニス以外に友達がいなかったんだっけ。

ということは、なのはが初めての友達になるのか。

まぁ、今後の原作の流れを考えると、アリサやすずか、八神家のみなさんとも知り合うわけだから、友達はさらに増えるんだけどな。

なんにせよ、これはアリシアにとっていいことだな。うん。













アースラに戻ったら、精密検査の結果がでていました。Oh・・・

正直、結果が怖いです。どれくらいかというと、ごらんの通り地の文が丁寧語になってしまうくらい。

だが、いまさら何を言っても仕方が無いな。腹をくくって結果を聞きにいくか。

ま、アリシアが聞きにいくわけだから、俺の意思とかは全く意味がないんだけどな!


精密検査の結果は、クロノが説明してくれた。

まず、いきなり成長してしまった身体のこと。ジュエルシードの影響で成長したんで俺としてはかなり不安だった部分だが、俺は安堵することになった。

なんでも、急激に成長したので身体の各部位、主に間接部分とかがもろくなっているが、これらは激しい運動をしなければ大きな問題はないらしい。もっとも、今後はリハビリをして身体を慣らさないといけないようだが。

ちなみに、アリシアは自分の身体が数年分成長したことを聞いたときに驚いていた。普通は何か気づくだろうとは思うが、彼女自身、プレシアさんの死で相当に参っていたので、これは仕方が無いと思う。・・・アリシアが天然だということも理由のひとつだとは思うが。

次に、魔力関連についての説明があった。なんでも、アリシアの元々持っていたリンカーコアは魔導師ランクでいうとEランク相当のものだったらしい。クロノが調べてきた資料に載っていたそうだ。

そのアリシアのリンカーコアが、現在は、なのはやフェイトに若干劣る程度、魔導師ランクでいうとAAAランク相当になっているらしい。

ジュエルシードGJと言いたいところだが、ここまでくるとさすがに心配になってくるな。なにか副作用があるかもしれないし。

しかし、意外なことにクロノからの説明では俺が危惧したような副作用はないようだった。

外部からの要因によってリンカーコアが強化された為、アリシアの身体が中からあふれ出る魔力にまだ適応していないので、このままでは危険だ、とは言われた。

だが、これについては、身体の魔力を制御する練習、つまり魔法を使う練習をしていけば改善される問題なんだそうだ。

はっきりいって俺は拍子抜けしてしまった。もっとやばい事態を覚悟していただけに肩透かしを食らった気分だ。

アリシアはというと、自分が魔法を使えるようになったことを無邪気に喜んでいたが。なんでも、Eランクじゃあ一般人とあまり変わらなかったんだとか。

うん。喜ぶのはいいけどあまり無茶はしないでくれよ、アリシア。

で、最後に俺について、つまりアリシアに別の誰かがいるかどうかについてを説明してきた。

これに関しては、俺が存在することを俺自身で立証しないといけないんだろうなとか思っていたんだが、どうやら検査で俺、というかアリシア以外の人物がいるだろう、という結果がでたのだそうだ。

その、俺の存在を証明するものは、魔力パターンだった。、魔力のパターンは個人ごとに特定のパターンを持っており、それは魔力光として現れる。そして、これは指紋と同じように、個人ごとに違うのだそうだ。つまり、一人の人間からはひとつの魔力パターンしか検出されない、ということだ。

しかし、アリシアからは二つの魔力パターンが検出されたらしい。つまり、これはアリシアの中にもう一人いると仮定したほうが理解しやすい現象なんだとか。

さらに、リンディさんに俺は「俺」がアリシアの中にいることを話している。

この二つの事から考えて、アリシアの中に俺がいることを認めることになった、とクロノは説明していた。

クロノがこのように言っているということは、リンディさんも同意見なんだろう。

多分、リンディさんは昨日の夜の件でアリシアの中に俺がいることをなんとなく理解してくれたのではないだろうか。

たとえ、検査の結果で俺がいることが立証されなくても、「俺」がいることを認めてくれるような気がした。・・・今となっては分からないがな。

とにかく、俺の存在はようやく認められたわけだ。では、少し彼らに頼みたいことがあるんで、アリシアに少しの間だけ代わってもらうとするか。


『アリシア、少しクロノと話したいから、代わってくれないか?』

『うん、分かったよ。』

「そういうわけで、クロノ、さっそく頼みたいことがあるんだが、いいかな?」

「?! あぁ、君が「もう一人」なわけか。どういうわけなのかはまったく分からないが、頼みたいこととは一体何なんだ?」

「頼みというのは、僕がアリシアの中にいるときでも、外部と話が出来るようになるものを作って欲しいんだ」

「? なぜそんなものが必要なんだ?」

「いや、僕が話をしたいときに、いちいちアリシアに代わってもらうのも悪いなと思って。かなり身勝手な頼みだとわかってはいるんだけど、どうにかできないかな?」

「今、僕が独断で許可するわけにもいかないから、艦長に確認をとってみるよ。だが、おそらく君の要望は通るだろうな」

「? それが本当なら嬉しいんだけど、どういうことなんだい?」

「時空管理局本局のメンテナンススタッフにつてがあるんだ」

「なるほど、そんなに無理をしなくても発注できるのか」

「もっとも、そのときに君の検査の結果をその人に渡すけど、いいかい?」

「僕は構わないけど・・・『アリシアはそれで良いか?』『うん。わたしもかまわないよ』 アリシアもOKだそうだ」

「わかった。艦長に確認を取り次第、データを送っておくよ。期待して待っておくといい」

「うん。わざわざすなまいな。ありがとう」

「いや、お礼はいいさ。こちらがやることに、少し付け加えるだけだからな」

「?」


という感じで、クロノとの交渉は無事に終わった。最後にニヤニヤしてたのが少し引っかかったが。

あとでわかったのだが、このとき、クロノとリンディさんはアリシアに確認を取ってからデータを管理局のメンテナンススタッフの人、マリエルさんに渡して、アリシア用のデバイスを作ってもらう予定だったんだとか。そのときに、俺のほうから話を切り出したんで、俺の要望も簡単に通ったというわけだ。

しかし、いくら位が高いからってデバイスを勝手に発注していいのだろうかと思ったが、アリシアの身体のために魔法を覚えさせる必要性があるから、特に問題もなく通ったらしい。

リンディさんの手腕は時々恐ろしいものがあるな・・・

とにかく、あとは頼んだものが出来上がるのを待つだけだ。A'sまでは半年もあるし、それまでには自由に話せるようになるだろう。

ちなみに、明日から魔法の練習は始まるようだ。デバイスはクロノが使っているのと同型のものを使うらしい。確かS2Uっていう名前だっけ?

明日、魔法が使えるときいて、アリシアは喜んでいた。その話を聞いたフェイトも「頑張って」ってアリシアを応援してたし。

さぁ、明日はどうなるのかな? 最近「明日」が楽しみになってきたなぁ。







あとがき

この作品が初投稿なので、色々とミスが多くてすみませんでしたm(_ _)m

今回書きました精密検査の結果は、今まで感想掲示板にありました質問の回答も含まれております。ただ、これだけではまだ不足している部分がありますので、今日の夜に回答集とオリ主の性格などについて書きたいと思います。

相変わらず拙い文章ですが、これからもよろしくお願いします。






[16699] なのは世界の誰かに憑依・・・中間期その1 (あとがきに補足追加)
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/05 18:46
 
さぁ、やってきましたよ! 魔法の練習のお時間が!

テ ン シ ョ ン あ が っ て き た ぜー!!

魔法を使うのは俺じゃなくてアリシアだけどな。俺はアリシアの中で見てるだけなんだZE☆

というわけで、今日の魔法の練習が始まるのだが、今アリシアの手には、クロノが持っているデバイスと同型のものが握られている。

初めて魔法を使うのなら、デバイスの補助があったほうが安定するのだとか。クロノが教えてくれたんだが、デバイスって魔法を使うときの補助が主な機能なんだと。

そして、別にデバイスが無くても魔法は使えるんだけど、そうなると魔法の構築や魔力の収束などの処理を魔導師本人が全て行わなければならなくなるんで、大規模な魔法は使えないし、基本的な魔法も性能が何段階か落ちてしまうんだとか。

こういう基本的な知識を聞けるのは結構うれしいな。なにせ、こちらの知っている原作知識って、普通から遥かに逸脱してる人たちが基準になってるからな。なのはとかなのはとかフェイトとかはやてとか。


なのはは大事なことなので2回いいました。


実際、クロノが言ってたんだが、なのはは明らかに異常なんだと。魔法に触れてあんなに短期間であそこまで強くなるとか普通はありえないらしい。まぁ、この際ぶっ飛んでる人達のことは置いておこう。

アリシアに魔法を教えてくれるのは、クロノだった。執務官じきじきに教えてくれるとか好待遇だなぁ。クロノは魔導師ランクはAAA+と高ランクだが、その実力は、なのはやフェイトのような天才型ではなく、努力によって勝ち取ったものだから、魔法についての理解は現時点の原作キャラの中ではトップクラスだろう。

こんなすごい人に教えてもらえるんだ、アリシアもA's開始までにはある程度の魔法が使えるようになるだろう。


「まずは、身体の中にあるリンカーコアを感じてくれ。身体の奥のほうの熱い塊みたいなのがリンカーコアだ」

「うん、わかった。・・・」


おっ、早速魔法の講習が始まったな。あんまり意味はないと思うけど、俺も参加してみるか。リンカーコアを感じるんだな。よし・・・。


「・・・・・・ふわぁ?!」

『・・・・・・おぉう?!』

「! どうしたんだ?!」

「あのっ、ちょっとびっくりしちゃって・・・」

「あぁ、まだ強化されたリンカーコアと魔力に身体が慣れていないんだろう。今日は身体の中の魔力に慣れることを重点的にやることにしようか」

「はい!」


いやぁ、びっくりしたね。リンカーコアを感じたのがアリシアとほぼ同時だったのがいけなかったのかな。熱いというか、もはや火傷しそうな感覚だったんだが。

ま、いきなり魔法が使えるようになるわけが無いよな。まずは、このもてあましている魔力に慣れることが課題だな。






結局、この日の魔法の練習は、アリシアの身体の中にある魔力に慣れることだけで終わった。デバイスを起動させることはなかった。

俺は、クロノが立てていた魔法の習得までの予定に遅れが出たんじゃないかとも思っていたが、どうやらクロノの想定の範囲内だったようだ。


「今日のうちに大分魔力を把握できるようになったな。これなら、明日からデバイスを使って魔法の練習に入れそうだな。」


って言ってたんで、明日から魔法を実際に使えるらしい。

ちなみに、クロノにそう言われたとき、アリシアは喜んでいた。喜ぶのはいいけどアリシア、まだ魔法が使えるようになったわけではないからな。

このあと、クロノはフェイトとの模擬戦を行っていた。

アリシアがその模擬戦を見たいと言うんで、エイミィさんに見せてもらうことになった。・・・あれっ、そういえばエイミィさんって俺より年下か。さん付けで呼ぶのもおかしいな。

それで、エイミィと一緒にクロノとフェイトの模擬戦を見ていたんだが、俺は、もはや恒例になりつつあるが、頭を抱えることになった。



や ば い !  戦 闘 マ ジ や ば い !



生で見ると本当にやばい! 迫力が半端ないぜ! 

なんで忘れていたんだろう、A'sまでに出てくる原作のメインキャラが全員チート級の強さを持っていることに。いや、忘れたかっただけか。

だってさ、アリシアが魔導師ランクAAA相当っていう時点で、アリシアが魔法を使ってある程度戦えるようになったら、目の前で繰り広げられているような 激 し い 戦闘に参加しなくちゃならないんだよな。確か管理局は万年人材不足だから。

もし、このままアリシアが順調に魔法を使えるようになっていったら、おそらく管理局の嘱託魔導師認定試験を受けることになるだろう。てか、アリシアは要請を受けたら断らないだろうしな。

なんか魔法の練習をサボりたくなってきたなぁ。でも、アリシアが目を輝かせてる気配が伝わってくるし、アリシアがやる気満々になっているのは確定的に明らかだ!

これはもう、A'sに武力介入は避けられないフラグが立っているね。

あの死神もどきが「ご武運を」とか言ってた意味がようやくわかったぜ。正直勘弁して欲しいよ、まったく。

でも、いまさら何を言っても仕方がないし、全部アリシアにまかせっきりというわけにもいかないだろう。俺も頑張るしかないか。

魔法が使えるとかっこいいよね! という部分だけ見ることにしようそうしよう。でないと気後れしちゃうからな。

そんなことを考えているうちに、目の前で繰り広げられていた模擬戦は終了したようだ。結果はクロノの勝ちだった。

魔力量とかはフェイトの方が上なんだけど、やっぱり実戦経験や技術はクロノの方が上だからな。妥当な結果か。

クロノに負けて、フェイトは少し落ち込んでいるようだけど。現時点ではクロノの方が格上なのは分かっているはずなのに、フェイトってそんな事を気にするような娘だったっけ? 

あっ、そういえばフェイトってバトルマニアな気質があるんだったな。単純に勝負に負けて悔しいだけか。

「今回は負けちゃったけど、次は勝てるように頑張って、フェイト!」

「うん。わたし、頑張るよ、アリシア」

なんかアリシアがフェイトを励ましてるし、フェイトも握り拳つくってやる気を出してるようだけど、漫画版とかを考えるとフェイトがクロノに勝てるようになるのってずっと先のような気がしたんだが・・・。 クロノも少し離れたところで苦笑いしてるし。


頑張れ少女よ。いつかクロノを越えることは出来るはずだから。




そんなこんなで、アースラでの日々は過ぎていった。

今はA'sが始まるまであと3ヶ月といったところだが、アリシアは身体にある自分の魔力に完全に慣れたようだった。

もう一度受けた精密検査の結果でも、特に異常は見られないとのことで、アリシアは変化した身体に馴染んだようだ。

今は、アリシアはフライの魔法や、簡単な射撃魔法も使えるようになった。クロノによると、アリシアはなかなかに知識の吸収が早いし、マルチタスクも優れているとのこと。

優秀な科学者だったプレシアさんの娘なわけだし、頭はいいんだな、アリシアって。天然だけど。

この調子なら、あと一ヶ月で嘱託魔導師認定試験を受けさせられるってクロノが言っていたから、アリシアは魔力さえあれば優秀な魔導師になれる資質を持っていたんだろう。その「魔力を持ったアリシア」がフェイトだったわけだしな。

なんにせよ、着々とA'sに武力介入するための準備は整ってきているわけだ。悲しいけど、これ、現実なのよね・・・。

あ、それと、一応報告しておくと、アリシアは無事に不起訴処分となった。ハラオウン母子が奔走してくれたようだけど、ありがたいことだ。

あとは、フェイトが嘱託魔導師認定試験に合格したことくらいか。これで、フェイトは正式にAAAランクの魔導師と認定された。

それ以外は特になにもなく、平和な時間が過ぎていった。

相変わらずフェイトは模擬戦でクロノに負けてるし、リンディさんは緑茶にミルクと角砂糖を入れているし、クロノはエイミィの世話を焼いているし、エイミィはクロノをいじっていたし。

とにかく、この3ヶ月は平和だった。管理局の方の仕事でアースラが現場に向かって、クロノが出動することが何回かあったけど、クロノは毎回無事に帰ってきたから、平和だったと言っていいだろう。




そして一ヵ月後、アリシアの嘱託魔導師認定試験が始まった。



あ、そうそう。もうひとつ報告があった。マリエルさんから、俺が喋る為のデバイスが届いたんだぜ!


「いやっっっっほおぉう! 岡崎最高!」

「・・・何を言ってるの? お兄ちゃん」


テンションが上がりすぎて思わず叫んでしまったことについて反省はしている。しかし、後悔はしていない!





あとがき

次回は、アリシアの嘱託魔導師認定試験からスタートします。戦闘の描写をしなくてはなりません。早速不安になっている作者ですorz

無印とA'sの中間期を知る為に、リリカルなのはA'sの漫画を買いました。見事になのはが大鑑巨砲主義になっていますね。こうして、なのはは魔王への道へ進んでいったというわけですね。

この作品内では、なのはを魔王にしたり、フェイトを必要以上にボケさせたり、はやてを大阪の方の関西人にする予定はありません。ほぼ原作通りの性格で書いていきたいと思います。

次話にて、ようやくアリシア(とオリ主)の戦闘能力が判明いたします。周りにいるキャラがみんなチート級に強いので、それに見合う程度にはアリシアとオリ主も強くすることにします。ただ、原作キャラ達とは違う「強さ」にしたいと考えております。

また、次話からいよいよオリ主が積極的に喋り始めます。それに伴い、アリシアの台詞も増えると思います。

補足:オリ主が喋るためのデバイスは、ペンダント型となっております。いつもはアリシアの首にかかっています。そもそも、デバイスというよりはスピーカーといったほうが正しい品物なんですが・・・



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・閑話<フェイト> (少し修正)
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/05 18:47

-side フェイト-

時空管理局ではP・T事件と呼ばれるようになった、わたしにとって様々な出来事があった日々から、もう4ヶ月が経った。

母さんが死んだのはとても悲しかった。せっかく、最後にようやく「家族」として向き合えただけに、こんな結果になってしまったことがすごく悲しかった。

でも、わたしには新しい家族ができた。

アリシア。わたしのお姉ちゃん。

わたしはアリシアの代わりとして母さんに創られた。だから、アリシアが生き返ったとき、わたしは「本当の自分を始める」と自分に誓ったばかりなのに、少し、生きていく意志が揺らいでしまった。

そんなときに、アリシアは言った。


「そうだよ。わたしがアリシア。フェイトのお姉ちゃんなんだよ!」


アリシアがそう言ってくれたとき、わたしは心の中にあった暗い気持ち少し消えた。アリシアがわたしを認めてくれた、わたしが生きていくことを認めてくれたと頭ではなく、心で感じられた。

でも、まだわたしの中には暗い気持ちが残っていた。本当にわたしは生きていてもいいのかという思いがあった。

そんな思いを消してくれたのは、アリシアの中にいる「お兄ちゃん」だった。

最初、「お兄ちゃん」がアリシアの身体を借りて話し始めたときは驚いた。いきなり、目の前のアリシアの雰囲気が変わって、口調まで変わってしまったから。

そのときに「お兄ちゃん」が話していることの意味はわからなかった。何故アリシアの中にいるのか、「お兄ちゃん」はアリシアの何なのか、そして、「お兄ちゃん」は何者なのか。そんな疑問ばかり頭に浮かんで、目の前のアリシアがリンディさんに連れられて部屋から出て行ったのに気づいたのは、しばらくたってからのことだった。

その日の夜、少し肌寒さを感じて隣を見たら、アリシアがいなかった。まだアリシアがいた場所に温もりが残っていたから、多分、少し前に部屋から出て行ったのだと思う。

しばらくして、アリシアがリンディさんに抱っこされて戻ってきた。そのときのアリシアは寝ていたけど、その雰囲気は「アリシア」だった。リンディさんは、アリシアをわたしの隣に寝かせると、部屋から出て行った。

隣で寝ているアリシアの顔を見ると、涙の痕があった。それを見て気づいてしまった。アリシアが、わたしが落ち込まないようにするために明るく振舞っていたのだと。

わたしはアリシアの気遣いをうれしく思うと同時に、申し訳なく思った。わたしがいるせいで、アリシアに気を遣わせてしまったことが心苦しかった。

そんなとき、寝ていたはずのアリシアの声が聞こえた。


「ここにも・・・どうにかしないと・・・いけない娘が・・・いたか」

「! あなたは?」

「アリシアの・・・中の人だ。 今日・・・挨拶した・・・はずだけど」


眠そうな声で、隣のアリシアから「お兄ちゃん」が話しかけてきた。


「あなたが、お兄ちゃん?」

「あぁ・・・そうだよ」

「いま、アリシアは・・・」

「寝てるよ。・・・身体の方も寝ようとしているから・・・僕が喋りにくい・・・んだよね」

「そうなんだ・・・」


喋りにくいのに、どうしてわたしに話しかけてきたんだろうと、わたしはこのとき不思議に思った。

その理由を聞こうとしたら、


「フェイトも・・・悩んでるだろ」


と「お兄ちゃん」は言ってきた。


「まったく・・・どこの娘も・・・悩みすぎだ」

「えっ?」

「フェイトの場合だと・・・自分はここにいていいのか・・・かな」

「!?」

「やっぱりか・・・」


「お兄ちゃん」は、今わたしが引きずっていることを指摘してきた。そのことに、わたしが驚いていると、眠そうな口調から急にはっきりとした口調に変わって、


「フェイト、君がプレシアさんから「大嫌いだった」と言われて自分を失った後、どうやって再び立ち上がった? どうして立ち上がれた?」

「っ!・・・それは、まだ母さんに伝えなきゃならないことがあったから・・・」

「それだけじゃあないだろう?」

「・・・うん、そうだね。わたしは一人じゃない、アルフがいるし、それに何度も話しかけてきてくれて、友達になろうって言ってくれた子が、なのはがいる。なのにここで立ち止まっているわけにはいかない、そもそもわたしは「わたし」を始めてすらいなかった。だから、本当の自分を始める為に、わたしは・・・」

「ならば、それを貫けばいいじゃないか」

「えっ」

「アリシアが生き返ったことでフェイトは自分の居場所が無くなると思ったんだろうけど、それは違うよ。アルフにとってはフェイトはただひとりのご主人様なんだし、なのはにとってもフェイトは「フェイト」なんだよ。アリシアの代わりじゃなくってね」

「あ・・・」

「フェイトには、ちゃんと君自身を見てくれる人がいて、大事にしてくれる人がいるんだ。それに、君が君であり続けることでアリシアの居場所を奪うことはないよ。みんな、アリシアのことも「アリシア」として見ているからね。

                              だから、君はここにいていいんだ」


その台詞を聞いたとき、心の中に残っていた暗い気持ちが消えた。

わたしは「お兄ちゃん」のことなんて何もしらないし、この「お兄ちゃん」はいきなり現れた赤の他人だ。

でも、アリシアの声を使って語られた「お兄ちゃん」の言葉には、わたしをいたわる優しさが確かに感じられた。


この出来事があってから、わたしは知り合ってからまだそんなに時間が経っていないのに、アリシアの中にいるという「お兄ちゃん」を警戒しないようになった。

この人は根は優しい人だとわたしは思う。だから、自分でも不思議な感覚だけど、この「お兄ちゃん」を信じていいと思った。


「フェイト、マリエルさんからお兄ちゃん用の物が届いたんだよ」

「やっほー、フェイト。いや~、ようやくこうやって話せるようになったよ。もうお兄さんは感激だよ。ようし、お兄さん張り切っちゃうぞ~!」


・・・・・・たぶん。





あとがき

今回は番外編ということで、フェイト視点で書いて見ました。うまくフェイトっぽくなっているでしょうか? 作者はあまり自身がないのですが。

オリ主の主観ではないときは、こんな感じでギャグが少なめ、というかオリ主が絡んでこない限りギャグがなくなります。

あと、今回4話で書くべきだと思われる部分がありますが、これについて説明しますと、このフェイトの話も盛り込んでしまいますと、4話のシリアスの比重が、作者の予定よりも多くなってしまうので、省かせていただきました。

この話は、いつか出す予定だったのですが、感想掲示板の方で、原作キャラからオリ主を見た外伝を書いてもいいんじゃないか、という意見があったので、思い切って今書くことにしました。 今後も、このような文を書くかもしれません。

ちなみに、作者はオリ主による「にこぽ」「なでぽ」などは行いません。そのような要素は一切入りません。原作キャラに懐かれることはありますが。

本編の更新は前回の予告では、今日のお昼ごろを予定しておりましたが、夕方ごろとさせてくださいm(_ _)m



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・中間期その2
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/05 18:48
ついに、ついにこの時が来たぞ! これから待ち受ける未来を打ち破るための戦いが今始まる・・・!


「いよっっしゃああぁ! やってやるぜえぇ!!」

「試験を受けるのは君じゃなくてアリシアだけどな」

「あはは・・・」

「・・・Oh」


というわけで、アリシアの嘱託魔導師認定試験が始まったのさ。俺は見学だけどな!

っと、その前にまたひとつ報告がある。ついに、アリシア用のデバイスが届いたんだぜ! しかもインテリジェントデバイス。これって、ストレージ型とかよりも高いんじゃなかったっけ・・・。

その辺のことをクロノに問いただすと、


「僕は使いやすさも考えてストレージ型にしようと思っていたんだ。だけど、母さ・・・艦長とエイミィがマリエルさんと既に相談していて、気が付いたらインテリジェント型で製作することになっていたんだ。・・・かかった費用については僕も考えたくないんだ」


とか言ってた。どうやら、クロノはポルナレフ状態だったようだ。この件に関してクロノも頭が痛いらしいんで、あまり触れないでおこう。彼の寿命がストレスでマッハにならないようにな。

それで、このデバイスはミッドチルダ式、ということで、当然


「Nice to meet you, my master.」


英語で喋るんだよね。俺、英語得意じゃないから、いくら俺が使うことが無いだろうとはいえ、出来るなら日本語でお願いしたかった。なので、


「僕は標準語でお願いしたいんだが、アリシアはどう?」

「うん。わたしもそれでいいよ」

「All right. ・・・これでよろしいですか?」

ということで、このデバイスには標準語で喋ってもらうことにした。魔法を使うときは英語で喋るんだけど、まぁそれくらいなら俺でも憶えられるから大丈夫だ。

ちなみに、このデバイスの名前は「シグザール」とした。命名したのは俺だ。アリシアも、「かっこいい名前だね」って賛成してくれたんで、この名前で決まった。この言葉の意味は、確か「運命」だったはず。うろ覚えなんで適当なんだけどな。

さてと。そろそろ試験が始まるな。アリシアは無事に合格できるのだろうか。








アリシアは、筆記試験、儀式魔法の実践と難なくこなしていった。特に、筆記試験については、クロノによる魔法の訓練の時間に教わっていただけなのに、なかなかの成績を修めていた。頭の出来が良すぎるぜ・・・。その代わりに、儀式魔法はそんなに得意ではないようだったが、及第点は取れたようだ。

そして、いよいよ最終試験の実戦訓練の時間がやってきた。

正直、俺は怖いです。実際に戦うのが俺じゃなくてアリシアでも怖い。当のアリシアとはいうと、


「これで最後だ。頑張らなきゃ!」

「その意気です、マスター」


とか気合充分だったけど。若いっていいねぇ。恐れを知らなくて。まぁ、いざとなったらシグザールがアリシアの身を守ってくれるだろう。自動で魔法を発動できるのがインテリジェント型の強みだしな。


「それじゃあ、これから最後の試験を始めるぞ。準備はいいか、アリシア?」

「うん、いいよ!」


というわけで、最終試験が始まった。ちなみに、試験官はクロノだった。


「スティンガー!」

「っ! シグザール!」

「Blitz accel」


おぉ、クロノが早速攻撃してきましたな。アリシアはそれを受け止めるんじゃなくて回避することにしたと。

・・・でもなぁ、


「Defensor」

「っ、くぅっ」


うん。クロノって誘導弾が得意だった気がするんだよね。確かスティンガースナイプっていう魔法だったはず。さらに厄介なのは、スティンガーレイっていう直射型の魔法も使ってくるし。

単純に「スティンガー!」って言われてもどっちか分からないし、そもそも戦闘中では詠唱が聞こえるとは限らない。そうなると、見た目で判断しなきゃならないんだが、これがなかなか難しい。

だってさ、


「はぁ!」

「シグザール! ?! くっ!」

「Defensor」


うん。今のは直射型の方だろうね。弾速がさっきのよりも早かったし、威力も高い感じだし。でも、誘導弾の方と見た目に大きな違いが見られないんだよね。


これをどう見分けろというんだよ!


クロノが強い理由がよくわかったぞ・・・。誘導弾と直射弾を使い分けて相手を翻弄して、そして、


「っ! んぅ、これは!」

「ディレイバインド、設置型のバインドです、マスター」

「・・・蒼穹を駆ける白銀の翼、疾れ風の剣・・・」


バインドで拘束して、とどめの砲撃、というわけか。この戦法が分かってたとしても、そもそもけん制で放ってくる魔法に当たっても威力がまずいんで避けるか防ぐかしなきゃならないし、対策が取りづらいというわけだ。

さて、これで終わりだとクロノは思っているんだろうけど、そうはいかないんだよなぁ。


「ブレイズキャノン!」


アリシアに向かって砲撃魔法が飛んでくる。しかし、


「いくよ、シグザール!」

「All right, マスター!」 


うん。漫画版の知識で試験官がクロノになるだろうと予測した俺は、あらかじめアリシアとシグザールにバインド対策をするようにと伝えておいたんだ。

このタイミングで動ければ、確実にクロノの虚を突けるはずだ。

ブレイズキャノンが当たる直前にアリシアはバインドを解くと、


「Blitz accel」

「はああぁ!」


クロノの方へ高速で突進していった。


「! なかなかやるな。だけど、まだまだだ。スティンガー!」


クロノもすぐにアリシアに気づいて迎撃をしてきた。だけどね、


「Fake Silhouette」

「っ! 幻術魔法?!」


これがアリシアの切り札、幻術魔法だ。たしか、原作ではStSにてティアナが使っていたから、こういう魔法があることを俺は知っていた。だから、シグザールにこういう魔法ができるかどうか聞いたところ、


「はい、確かにそのような魔法はあります」

「おぉ、そうか。それで、アリシアはその魔法を使えそうか?」

「恐らくは」

「なん・・・だと・・・!」


とのことだったんで、アリシアに覚えさせてみたんだ。結果は上手くいったようだ。本物のアリシアは、既にクロノの後ろに回りこんでいる。


「いくよ、シグザール。・・・カリバーン!」

「All right,master. form change "saber form"」


お、アリシアが近接用の必殺技を出すようだ。今まで杖の形態だったシグザールが剣の柄の形態に変形し、剣の刃となるべき部分に黄金の魔力の刃が形成された。

ちなみに、これも俺の命名だ。だってさ、アリシアの魔力光ってフェイトよりも濃い目の黄色で、黄金色に見えるんだよね。だからさ、こんな風に魔力刃を形成すると黄金の剣が出来上がるわけで。


黄金の剣っていったら、アーサー王のカリバーンでしょう!!


もちろん、このアーサー王はFateにでてくるセイバーことアルトリアさんのことだ。「セイバーフォーム」っていうのも、もちろんここから名づけた。

クロノがこちらを振り向いたがもう遅い。アリシアは既にカリバーンを振りかぶっている。これはもう決まったな、って思うのが普通だろう。でも、クロノに自分から近寄って近接戦闘を仕掛けた時点で「負け」なんだよね。


「・・・ディレイバインド」

「あっ・・・」


見事に、クロノの周りに仕掛けてあったディレイバインドにアリシアは捕まってしまった。勝負ありだな、これは。


「そこまでだ、アリシア」

「うぅ、負けちゃった」

「そんなに気を落とさずに、マスター」


ま、アリシアは頑張ったほうだろう。別に試験官に勝たなくてもいいんだから、これで問題ないはずだ。


「今日のアリシアの試験の結果を考えると、おそらく正式にAAAランクの嘱託魔導師に認定されるだろう」


ほら、クロノもそう言ってくれてるし。


「そういうわけだから、今日はもうゆっくり休んでくれ」

「はい!」

「それと、あしたは君の試験を行うからな、時雨」


・・・あれっ、今なんか聞こえたような。


「・・・それってどういうことなの?」

「明日、君にはアリシアの身体を使って今日と同じ試験を受けてもらう。筆記試験の方は免除するから心配はいらない」


あぁ、いろいろと心配、というか大問題があるんだけどね。気が重いぜ。 はぁ・・・。





あとがき

初の戦闘シーンが今回ありました。上手く書けたかはわかりませんが。
アリシア専用のデバイスも登場したことですし、バリアジャケットとかフォームチェンジについて言及すべきなんでしょうが、それらは次回の出だしのネタとなるので、今回は書きませんでした。また、オリ主が頭を抱えることになります。

前回の閑話にて、どこぞのエヴァっぽい台詞が飛び出しましたが、感想掲示板においてエヴァ最終回のパロディが投稿されておりました。作者も笑わせてもらいました。ありがとうございました。またの投稿をお待ちしております。




[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・中間期その3(修正しました)
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/05 18:49
さてさて、なにやら大変なことになってしまったZE☆

なんと、俺も嘱託魔導師認定試験を受けることになってしまった。どうするんだよ、本当に・・・。

今更俺が拒否できるような状況でもないから、明日の最終試験の実戦訓練の対策を練ることにしますか。多分、明日もクロノが試験官なんだろうし。

っと、そのまえに、まずは今日の反省会からかな。


「お疲れさん、アリシア。無事に試験に合格できてよかったな」

「本当におめでとう、アリシア」

「うん。ありがとうお兄ちゃん、フェイト。でも、クロノには負けちゃったよ」

「それはしょうがないな。クロノの方が何枚も上手だったんだから。次に模擬戦をするときは、クロノの罠にはまらないようにしないとな?」

「うぅ、次は気を付けるよ」

「ところで、シグレは何かクロノへの対策はあるの?」

「うーん、無いことは無いんだけど・・・。まずは、あのディレイバインドをなんとかしないとな」

「クロノの奴は策士だからねぇ。男なら真正面から向かってくるもんじゃないのかい?」

「アルフの言うこともわかるけど、クロノの戦い方が上手なのは本当だから・・・」

「バインドの対策ってなにかあるの、お兄ちゃん?」

「あのディレイバインドって設置型だから、クロノを上手く動かすことが出来ればなんとかなるはずなんだよ」

「でも、クロノを上手く動かす方法ってあるの、シグレ?」

「それを今考えるんだよ」

「なんだい、まだ何も方法はないってことかい?」

「それを言っちゃあおしめぇよ、アルフ」

「・・・はぁ」


反省会というよりもただ単純にアリシアをねぎらった後、対クロノの作戦会議という流れになったけど、なかなか良い案が思いつかないな。

戦闘の作戦についてはフェイトを頼ってみようと思って、アリシアが試験を受ける時にも相談したんだが、結局高速移動の魔法を教わるだけになったしなぁ。

フェイトって、その場その場の対応とかは上手いんだけど、戦いの全体の流れを読んで行動する、ということに関してはあまり考えていないようなんだよね。

戦術は組み立てられても、戦略は組み立てられない感じだ。あぁ、そういえばStSの時点でも、結局力押しじゃない戦略を組み立てられたのってティアナしかいなかったんだよなぁ・・・。

実際、アリシアに対クロノの攻略法を教えたのって俺だったし。魔法の無駄撃ちをしないで防御と回避に専念して、自分がバインドで捕らえられて、クロノが砲撃魔法を撃とうとした時に反撃に出ろってな。

アリシアは、一応クロノから「Stinger Snipe」や「Stinger Ray」を教わっているんで、これらの魔法を使うことは出来る。しかし、射撃魔法の精度はクロノとはレベルが違いすぎる。だから、ロングレンジでの魔法の撃ち合いになったら、確実にアリシアは負けるだろうと俺は考えた。

では、どうしたのか。まず、アリシアにはフェイトから教えてもらった高速移動の魔法、「Blitz Action」があった。これをシグザールに頼んで少し手を加えた魔法が「Blitz accel」だ。魔法の性能としては、「Blitz Action」が中距離での運用ができるように、具体的にはロングレンジぎりぎりのミドルレンジからクロスレンジの間合いまで一気に詰められるようになったものだ。この「Blitz accel」が手札その1だ。

そして、次にアリシアに覚えてもらったのは「バインド破り」だ。結局、これは術式を組むまでにはいたらなかったが、その性能はクロノ戦でも見せた通り、実戦で充分に役に立つ性能に仕上がっている。これが魔法として完成すれば、今後の戦術や戦略に幅を持たせることができるはずだ。これが、手札その2だ。

あとの二つが、今回の切り札だった。

まず、切り札その1は幻術魔法「Fake Silhouette」だ。原作では、ティアナが使っていた魔法で、その名の通り、魔力で幻影を作り出して、相手を惑わせるものだ。これを、高速移動と組み合わせれば、相手に気づかれないように接近したり、逆に距離をとったりすることができる。ただ、常に展開するにはちょっと厳しい魔法なので、使い時が肝心だ。

そして、もうひとつの切り札が斬撃魔法「Calyburn」と「saber form」だ。この二つをもってワンセットとする。まず、「saber form」についてだが、これはクロスレンジでの戦闘に特化した形態だ。通常形態からの変化として、シグザールが杖から剣へと形が変わる。それに伴い、射撃魔法がほとんど使えなくなるが、魔力刃の部分を飛ばす「Saber Edge」というミドルレンジまで有効な射撃魔法が使えるようになる。イメージとしては、フェイトの「Arc Saber」に近い。

また、手と脚に鎧のようなパーツが付き、装甲性能が上がる。その代償として「Blitz accel」の最大移動距離が落ちるんで、距離をロングレンジまで離されると、この形態では相手を追うことが出来なくなる。ただ、スピードそのものは落ちないから、近接戦闘を行うのならば、この形態の方が有利だ。

そして、「Calyburn」だが、これは「saber form」のときのシグザールに展開されている魔力刃を限界まで強化して、相手に切りかかるというものだ。強化された魔力刃にはバインドブレイクはもちろんバリアブレイクの効果もあるので、この斬撃を止めるには、術者本人の動きを止めるしかない。 

以上のアリシアの使える手札を組み合わせた結果が、今日のクロノ戦時のアリシアの動きだ。

本来なら「Calyburn」で伸びた魔力刃で、ミドルレンジぎりぎりのクロスレンジからクロノを斬る予定だったんだが、ちょっとアリシアは踏み込み過ぎたようだった。その結果、クロノのディレイバインドにかかってしまった。

俺が戦うときは、今回「Calyburn」を見せてしまったんで同じような戦法は通じないだろう。クロノの方も警戒してディレイバインドを設置する範囲を広げるだろうしな。

ということは、俺は射撃でなんとかするか、クロノをこっちに近づけさせないといけないわけか。うん。本当にどうしよう。

結局、フェイトたちを交えた作戦会議は結論がでないまま終わり、夜になってしまった。

アリシアとフェイトはもう寝てしまっているが、もはや俺が自分で考えなきゃならないことが分かったんで、特に問題はない。

しかし、射撃でなんとかする・・・か。いや、そうじゃなくて、射撃が攻めの起点となるようにすればいいのか。射撃で相手を動かしてから近接して斬る、とか。

うは、これなんてガンダムだ! そういえば、ガンダムVSガンダムNEXTは生前よくやってたなぁ。なんか、新作は「NEXT」から「EXTREME」になるらしかったけど。

ん、まてよ、これは使えるかもしれんぞ。ちょっとシグザールと相談してみるか。ぶっつけ本番になるが、まぁ何もしないよりはいいだろう。







さぁ、やって参りました対クロノ戦! 儀式魔法は昨日のアリシアがやってたのを思い出しながらなんとかこなしましたよ、ええ。


「いまから実戦訓練の試験を始める。準備はいいか、時雨?」

「あぁ、よろしく頼む」


えっ、なんか真面目じゃないかって? 今はふざけてはいられないからな。だから自分の格好についても疑問を持ってる場合じゃないんだ。


たとえ、今の自分がフェイトばりの危ない格好をしていたとしてもな!


いや、ほんとうにアリシアのバリアジャケットってフェイトと同じような格好なんだよ。違いはあのひらひらしたスカートっぽいものがミニスカートになったぐらいで。

せめてStS時のインパルスフォームくらいにしてくれよ!って思ったね。


「スティンガー!」

ま、今はそんなことを気にしていられる状態じゃない。早速クロノが射撃魔法を撃ってきたし。

・・・さて、これは誘導弾なのか直射なのか。どちらにせよやることは同じだ。ギリギリまで引きつけて、


「シグザール!」

「Blitz accel」


少し横にずれて避けてみる。すると、魔力弾はそのまま真っ直ぐ進んでいった。今のは直射型の「スティンガーレイ」の方だったか。


「はあっ!」

「・・・次はどっちだろうな。シグザール!」

「Blitz accel」


また、さっきと同じくらい横に移動して避けてみる。が、今度は魔力弾はこっちに向かってきた。「スティンガースナイプ」の方だったようだな。・・・これは避けれないか。


「シールド!」

「Round Shield」


避け切れなかった魔力弾を防御魔法で受け止める。


「ふむ。防御魔法の構築はなかなかだな」


とかクロノが言っている気がするが、俺としては失敗したと思った。このラウンドシールド、必要以上に硬く出来上がるんだよな。要するに、必要以上に魔力を消費するんだ。

砲撃魔法はこれでいいかもしれないが、射撃魔法でラウンドシールドを使うのはロスが大きすぎるな。


「スティンガー!」


またクロノから魔力弾が飛んできた。さっきから射撃魔法しか撃っていないように見えるが、その合間にバインドを仕掛けてるんだよなぁ。注意しないと。

さて、今度の魔力弾は若干遅く感じるから、恐らく「スナイプ」の方だろう。・・・ためしに横ではなく上に回避してみようか。


「上だ、シグザール!」

「Blitz accel」


俺の予想通り、この魔力弾は「スナイプ」の方だった。しかし、今度はさっきと移動距離は変わらなかったのに、こちらへ再び誘導するまでの時間が長いようだ。

・・・これくらいでいいだろう。これ以上様子を伺ってると、クロノにこちらの意図を読まれて、誘導弾の方をなかなか撃ってくれなくなるだろう。まだ充分にクロノの攻撃を読みきったとは言えないが、長期戦になれば、素人の俺が不利になる。

とりあえず、もう一度シールドで魔力弾を防いで、クロノの様子を伺う。次にクロノが魔法を撃ってきたときが勝負だ。


「では、これは避けきれるか? はあぁ!」


クロノが、今までよりも大量の魔力弾を撃ち出してきた。・・・なんか弾速がばらばらだ。まずいな。両方同時に撃ってきたのか。



なら、あれを試すのにちょうど良い。どうせ短期で勝負をつける予定だしな。



「いくぞ、シグザール! Blitz Silhouette!」

「All right, master. Blitz Silhouette set up.」


これが、昨日の夜、シグザールと相談してつくってみた新しい魔法その1だ。「Fake Silhouette」を元に、ガンダムF91の「質量のある残像」を再現したものだ。ゲームでは、残像に相手の攻撃の誘導を切る効果があったんで、それが相手の誘導弾にも有効かどうかシグザールに聞いてみたんだ。そしたら「非常に有効です」って返事が返ってきたんで、実装することにした、というわけだ。

なんでも、誘導弾って基本的に目視で誘導させてるんだと。確かに、そんな描写は原作にもあったような気がしてたけど、まさか本当にそうだとは思っていなかっただけに、この情報の収穫は大きかった。


「っ! 昨日とは違う幻術魔法?!」


クロノも驚いているようだし、とりあえずは成功かな。ちなみに、この魔法の欠点は、「Fake Silhouette」とは違って数秒で幻影が消えてしまうのと、幻影が「一番前の自分」の後ろからばら撒かれることと、魔法を維持するためにバリアジャケットの強度を落としていることだ。だから、相手の攻撃魔法に当たってしまうとまずいんだが、


「だが、それでは本体がみえみえだ。スティンガーレイ!」


まぁ、当然俺は対策をしているわけで、「一番前にいる自分」が俺っていうわけじゃあないんだよなぁ。


「・・・! なにっ?!」


この魔法はそもそも「Fake Silhouette」を元にして、「Blitz accel」を同時に発動させたものなんだよね。つまり、本物の俺は、ばら撒かれてはクロノに向かって動いて数秒で消えている「偽者」に紛れているのだ。

さて、では反撃開始だ。


「いくぞ、シグザール。スティンガースナイプ!」

「Stinger Snipe, Stinger Snipe Fake,fire!」

「っくぅ!」


俺と幻影から誘導弾がいっせいに発射される。幻影から撃つ誘導弾はもちろん幻影、つまりフェイクなわけだが、クロノがそれを全部判別するのはさすがに無理だろう。俺自身も瞬間移動を繰り返しながら何度も撃っているんだからな。


「っ!・・・仕方が無い!」


おっ、ようやくクロノが大きく動くな。とりあえず、あの場所から離れてくれればディレイバインドは気にしなくて良いはず。・・・!   右上だ!


「フラッシュスマッシャー!」

「Flash Smasher,fire!」

「くっ! 動きが読まれた?!」


とっさに、右上方向に新作魔法その2を撃ってしまったが、どうやらそっちにクロノが動いていたようだ。・・・直撃したっぽいし俺の勝ち、かな。

「フラッシュスマッシャー」は、無誘導・超弾速・貫通力を重視した魔法だ。威力もかなり高い。この魔法の元ネタは「超電磁砲」つまりレールガンだ。

俺は、本当は「とある魔導師の超電磁砲」にしたかったんだが、これでは長すぎるし、じゃあ、大元の方からとってきて「インデックス」にするのもなんか違う気がしたんで、一晩悩んだ末に、この名前にした。

しかし、いったいさっきのは何だったんだろう? なんか、いきなりクロノの動く先が見えたんだが・・・。


「ストラグルバインド!」

「えっ! ・・・しまった!」


油断した俺の負け・・・か。ま、今の攻撃でまだ相手が動ける時点で俺の負けは決定してたけどな。さすがに「Blitz Silhouette」を発動したまま攻撃魔法を打ち続けるのはまだきついな。その辺は鍛えないとな。

あぁ〜、しかしなんともいえない脱力感がおそってくるなぁ・・・ってこれって魔力を吸い取るバインドじゃあねぇか!

クロノ、お前本気出しすぎだろ!






「これで試験は全て終了だ。それでは、君達の試験の結果を発表する」

「えっ、今言うのか? まだ僕の試験が終わったばかりなんだけど」


それに、まだアリシアの代わってないしな。そういうことならアリシアに代わるか。


「このままでいいよ、お兄ちゃん」

「いや、でも・・・」

「まぁ、アリシアがそういってるんだから、そのままで聞いてくれ」


胸元にあるスピーカーからアリシアが答えたんで、そのまま試験の結果を聞くことになった。このスピーカーって俺もアリシアも使えるんだよね。便利だ。

しかし、このままっていうのも困るんだが。だってバリアジャケットのままだし。あの危ない格好のままだし・・・。


「だが断る。アリシア、チェンジだ!」

「えっ、えっ?! あ・・・」

「・・・もう発表していいか?」


クロノが呆れていたが、それがどうした! 男の沽券の方が大事だ!!




結局、俺達は見事に嘱託魔導師認定試験に合格し、正式にAAAランクの魔導師となった。そんでもって、なんかクロノが、


「それにしても君はすごいな、時雨。まだ魔法に触れて間もないのにあれだけ戦えるなんて。状況判断なんかもいいし、フェイトと良い勝負ができるんじゃないか?」


とかアースラにいるみんなで夕食を食べているときに言ってきた。

やめてよね、そんなことを言ったら、バトルマニアが俺に勝負を挑んでくるじゃない?


「それは本当、クロノ? ねぇ、シグレ、今度一緒に模擬戦しようよ」

「えぇと・・・。アリシアが良いっていったらな」

「うん。いいよ、フェイト。お兄ちゃんもいいよね?」

「・・・マジっすか」


くそっ、クロノ、憶えてろよ! いつかこの恨み晴らしてやるぞ!

てなわけで、俺とフェイトの模擬戦がきまった。マジで勘弁してくださいorz





あとがき

これを書き上げるのに、なぜか4時間かかりました・・・。いまの作者はダウン寸前です。

今回は、アリシアの戦闘能力の説明と、オリ主の戦闘能力のお披露目です。補足として、本文中に駆けなかった設定を書きたいと思います。

まず、オリ主の魔力光ですが、青色です。クロノの魔力光も青だったと思うのですが、クロノのものよりも明るい青となります。

次に、オリ主とクロノの戦いの結果ですが、オリ主は満身創痍、クロノは無傷・・・と見えて、実は最後の一発をとっさのシールドで防ぎ切れなくて喰らっています。なので、オリ主に対する評価が高かったりします。

アリシアとオリ主の戦闘スタイルですが、アリシアは近接よりで、オリ主はフォームによって近接よりか射撃よりかが変わるタイプとなります。なので、アリシアが戦うときはセイバーフォームが多くなると思います。オリ主の時は状況によって変わります。

次回は、オリ主対フェイトとなります。またひとつ、オリ主が新魔法を使う予定です。

追伸:今回、作者はかなり意識が朦朧としてきた中書いたので、オリ主が魔法的な意味でひどいことになっておりました。なので、魔法の名前を変更させていただきました。

ただ、「カリバーン」と「セイバーフォーム」については、原作内の魔法で、そういった英雄の武器の名前の魔法が存在するので、続投させていただきたいと思います。

本当にすみませんでしたm(_ _)m




[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・中間期その4
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/05 18:50
昨日、なぜかフェイトとの模擬戦の約束を取り付けられてしまったんで、俺は今、フェイト対クロノの模擬戦の記録を見ている。


おっ、今フェイトのが 見  え  た !


・・・こんなことをしてる場合じゃないのは分かってるんだよ。フェイトとの模擬戦は明日だし。

でもね、男なら見てしまうだろう! 分かるだろう、紳士の諸君は!

あれはレオタードであってぱんつじゃないとの意見は却下させてもらうよ。気分が大事なのだよ!

ちなみに、アリシアのは、ミニスカートをはいてるんでまさかと思ったが、ぱんつだった。はっはっは! ・・・はぁ。

・・・さて、真面目にフェイトの戦い方を観察するか。今日は、クロノとの魔法の訓練が休みなんで、魔力や体力は万全の状態で模擬戦を迎えられる。だから、今日はフェイト攻略のために弱点を探っているのだ。

うん。クロノと違って、勝機は結構あるな。ま、本格的にチートになるのはStSになってからだしな。俺でもなんとかなる可能性はある、ということか。

さて、もういいかな。なんとなく対策を思いついたし、あとはシグザールと相談することにしよう。


「アリシア、もういいよ」

「わたしはもう少し見ていたいよ」

「・・・しょうがないなぁ」


アリシアの今後にも役立つだろうから、もう少しみてるとするか。

なんかアリシアに甘くないかって? 美少女はジャスティスなんだよ!






あまり乗り気がしないが、フェイトとの模擬戦の日が来てしまった。

あぁ~、ほんとにやる気がでねぇ。美少女をボコるとかそんな趣味はないんだけどなぁ。もちろん美少女にボコられたい願望もないしな。


「・・・はぁ」

「なんか元気ないよ、お兄ちゃん」

「? どうしたの、シグレ?」

「いや、なんかやる気がでないなって」

「それはまた、なんでだい?」

「だって僕にはなんの得もないし」


あるのは精神的な疲労だけだからな。


「せめて、勝ったほうが負けた方に何でも言うことを聞かせられる、とかあればまた別なんだけど・・・」

「うん。わたしはそれでもいいよ?」

「・・・なんですと」


あれっ、俺は今冗談でいっただけなんだが。・・・どうやらフェイトは自分が負けるとは思っていないようだな。アルフもフェイトを止めないっていうことは、アルフもフェイトが勝つと信じてるってことだろうし。

・・・なめられて、そこで引き下がったら、男が廃るじゃない?


「・・・よっっっしゃああぁ! やる気でてきたぁ!!!」

「「あはは・・・」」

「あんたは・・・もういい、言っても無駄だろうからね」


よし、こうなったら勝ちにいきますか。ここいらで俺の本気をみせてやるZE☆

べ、別に勝ってフェイトにあんなことやこんなことをさせるつもりはないんだからな! ホントダヨ?

さぁ、試合開始だ。



「フォトンランサー!」

「Photon Lancer, fire」


早速フェイトが仕掛けてきたな。しかし、いきなり高速機動しながら攻撃してくるとは。・・・こっちの弱点を研究してきたのか。

はっきり言おう。俺はまだ高速機動戦闘が苦手だ。前回のクロノ戦の時は、一見俺が高速機動戦闘をしたように見えるが、あれはクロノが罠を張って待つ戦法を取っていたから、俺はあんな感じで戦えたんだ。

しかし、元々高速機動戦闘が得意なフェイトと同じ戦法で張り合うなんて、俺に出来るわけがない。すると、必然的に、前回使用した「Blitz Silhouette」は使えなくなる。使っても意味が無いからな。

どうしたものかな。とりあえず、「Blitz accel」をシグザールに起動させてフォトンランサーを避けているが、このままでは俺がジリ貧だな。

なんせ、アリシアもフェイトも、バリアジャケットの装甲が薄いから、一撃入るとほぼ勝負が決まっちゃうんだよね。で、攻め込まれたままだと、いつか俺はフェイトの攻撃が当たってしまうだろう。

・・・よし。なら近接戦に持ち込ませるか。ちょっと厳しいけど、まずはフェイトに射撃魔法をかすらせないとな。


「シグザール。スティンガーレイ・マルチショット!」

「All right. Stinger Ray Multi Shot, fire」


高速で移動するフェイトに誘導弾を撃つのは、今の俺では得策ではないんで、直射型の魔力弾をとにかく乱射することにした。普通は効率が悪いんだが、アリシアのリンカーコアは、最大魔力出力に達するまでの時間がフェイトやなのはと比べて短いんだ。その代わり、魔力量や最大威力が二人に劣るんだが、特性の使い方によって有利か不利かは変わるから問題は無い。

だから、今やったように魔法を乱射するのに適しているんだよな。・・・アリシアがトリガーハッピーにならないか心配だな。

さて、今俺は前方に弾幕を張っているわけだが、フェイトはどうするかな?


「っ! バルディッシュ!」

「Blitz Action」


目の前でかろうじて動きが見えていたフェイトが消えた。ということは、「Blitz Action」を使ったんだな。まぁ、あそこで防御しちゃうと、俺に「Flash Smasher」で打ち抜かれることは分かってたんだろうな。どうせ俺対クロノの記録を見たんだろうし。

動きを止めたら、俺は狙い撃つぜ!

もっとも、前回は狙い撃ったというよりもカンで当てた感じだけどな。

・・・・・・! 後ろか!


「ファイア!」

「っ! シグザール!」

「Blitz accel」


・・・わすれてた。フェイトが「Blitz Action」を使ったときは、必ず攻撃してくるんじゃねぇかよ。まだロングレンジだからって油断はできないってのに。

しかし、今のはなんだったんだ? 不意に後ろからフォトンランサーが飛んでくるイメージが見えたんだが。

しかも、クロノ戦の時よりもはっきりと感じたし。

今は、そんなことよりも、また消えたフェイトが問題だ。どうやら、また「Blitz Action」を使ったようだな。さっきはミドルレンジにいたから、次はクロスレンジに飛び込んでくるな。これが今回の俺の狙いなんだが・・・。





不意に  左斜め後ろ  やや上から  俺を斬ろうと  バルディッシュを振りかぶる  フェイトのイメージが  見えた。





「!! そこだ!」

「Close Blast」

「えっ?!」


俺は感じた「イメージ」のままに、フェイトがいるであろう方向に左手を向けて魔法を放った。少し遅れて振り向くと、フェイトが落ちていくのが見えた。


「あっ、やばい! シグザール!」

「Blitz accel」


あわててフェイトをキャッチしたが、どうやらフェイトは一瞬気を失ってただけのようだった。なので、


「あ・・・。ありがとう、シグレ」

「いや、僕のせいだからな。気にしないでくれ」


てな感じで言葉を交わすことになったが。

いや~、しかしフェイトに勝っちゃいましたよ。しかも、フェイトを抱きかかえるという役得つきで。やったね!

しかし、今回の模擬戦では色々と考えることが多いな。特にあの「イメージ」について。

最後の「クロスブラスト」が上手く決まったのも、この、妙な感覚のおかげだからな。ちなみに「Close Blast」は、その名の通り、クロスレンジ専用の砲撃魔法だ。有効範囲をクロスレンジに集約することで砲撃魔法の威力をそのままに、発生までの時間の短縮を実現した魔法だ。

この魔法の使用方法は、相手のクロスレンジでの攻撃に対するカウンターだ。今回のフェイト戦でずっとこれを使う機会を狙っていたんだが、見事に成功したわけだ。

ま、細かいことは後でいいや。今は、勝った俺へのご褒美を考えるとしよう。


「へっへっへ。覚悟しなお嬢さん」

「うぅ、なんかシグレがこわいよ・・・」

「わたしの身体で変な声を出さないでよ、お兄ちゃん・・・」


おっと失礼。つい、自分を抑えきれなくてな。さて、どうしてくれようかな。






さーて、おまちかねの時間がやって参りました!

俺がフェイトに要求したのは、これだ!


「えっ、こんなことでいいの?」

「あぁ。いいんだ」

「でも、お風呂なんていつも一緒に入ってるようなものだと思うんだけど・・・」

「僕がアリシアと代わって入るのは初めてだ」

「でも、それだったらアリシアにお願いすればいいのに」

「いや、要求はここからさ。・・・フェイト、君を洗わせてもらう!」

「えっ・・・」

『? どういうこと、お兄ちゃん?』


さすがにお風呂に入るときはスピーカーは持っていけないからな。アリシアは念話で会話に参加だ。

え? そんなことが問題じゃないって?

えぇ。フェイトがちょっと恥ずかしそうにしてますがなにか?

この変態野郎が!! とでもいいたいのかな? だが、聞こえんなぁ!

さぁ、洗ってやるぞフェイト!



君のそのきれいな髪をなぁ!!



・・・いや、だってさ、さすがに俺はそこまで鬼畜じゃないよ。

紳士たるもの、美少女を愛でることはすれど、手を出すことなど言語道断なのだよ!

てなわけで、フェイトの髪を洗ったあと、俺はアリシアと交代した。

いやぁ、今日はいい日だった。朝はどうなることかと思っていたけどな。

しばらく真面目な場面が続いてたから、その反動が今日という日かもしれんな。

・・・そう考えたら明日が心配になってきたけど、明日は明日の風が吹くって言うし、気楽にいきますか。





あとがき

フェイト戦、そしてオリ主暴走の回でした。とりあえず、新作魔法はこれで打ち止めです。これらと既存の魔法を組み合わせて、オリ主とアリシアはA'sに介入することになります。ちなみに、オリ主が考案した魔法はシグザールに登録されているので、アリシアも使用が可能です。

あと、オリ主がちょっと覚醒しました。オリ主の能力は、ちょっと先の未来が見える、というものです。今後、オリ主は原作知識を生かしてA's編中に動きますが、そのときの「いわゆる原作知識を持っている理由」として、彼はこの能力のことを不完全な「未来視」と言って身内にいる管理局側の人に錯覚させます。

ある意味、この能力は未来視なのですが、この先も「少し先の未来」しか見えません。そんなに都合がいい能力などには成長しません。

次回の更新は、明日の夜になりそうです。


追伸:なのはA'sの漫画を読んで思ったのですが、メイン3人娘って小学4年生の時点で管理局勤めを開始してるんですね。完全に労働基準法を無視してるなんて時空管理局はとんでもない組織ですね。StSでもエリオとかキャロとか明らかに子供な人たちを前線で酷使してますし。・・・A's編後も書くとしたら、オリ主が確実に管理局にキレそうです。



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・中間期その5
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/05 18:52
-side クロノ-

僕は今、フェイトとアリシア、いや、今は時雨だったか、の模擬戦を見ている。

二人の戦いを観察していると、なかなか面白いことになっていた。


「フェイトちゃん、かなり積極的に攻めてるねぇ」

「あぁ。時雨に時間を与えると何を仕掛けてくるかわからないからな。ロングレンジでの撃ち合いをするよりも、フェイトは自分の得意な戦い方で攻めることにしたんだろう。あれなら、時雨は前回使った幻術魔法は使えないだろうしな」

「えっ、それはどういうこと、クロノ君?」

「高速機動戦闘となると、フェイトのほうに分があるからな。あの魔法を使うとなると、時雨は相手の得意な戦法で戦わなきゃならない。でも、わざわざ相手の得意な戦法に合わせようとするか?」

「あ、なるほど。でも、そうしたらフェイトちゃんの方が勝つ可能性が高いってことになるのかな? 時雨君の切り札は封じられてるんだし」

「さぁ、それはどうかな?」


エイミィの言うとおり、現在はフェイトが優勢に見える。だが、一度彼と戦った僕から言わせてもらうと、多分、彼は何か逆転する為の策を用意しているはずだ。・・・それに、少し気になったこともある。

しばらく回避に専念していた彼だったが、フェイトの何回目かの射撃魔法を回避した後に、攻撃を開始した。


「うわっ、時雨君、すごいことやるね」

「・・・彼はなのはとは別の意味でむちゃくちゃだな」


まさか直射型の射撃魔法を乱射するとはね。あんなこと、並みの魔導師がやったらすぐに魔力を切らしてしまう。

自分の身体の特性を生かした攻撃だったが、これが彼の用意した策だとは僕には思えなかった。これは恐らく布石だ。

この後、フェイトは時雨の張った弾幕を回避し、そのまま後ろに回りこんで魔法を撃ち込んだのだが、


「?!」

「おぉ、時雨君、なかなかやるねぇ」


彼は死角からの攻撃を回避した。エイミィは気づいていないようだが、彼のこの反応はおかしい。まるで、こうなることが分かっていたような・・・。

いや、気のせいか。彼は勘がいいだけなのかもしれない。僕と戦ったときのあの攻撃も同じことなのだろう。・・・この時は、そう思っていた。

彼の、フェイトが目の前から消えたのにあわてていない様子から考えると、射撃魔法を乱射して前方に弾幕を張ることで、フェイトが移動魔法で後方から接近戦を仕掛けてくるように誘導する作戦か。確かにフェイトにはそんな傾向があるけど、そこからどうするつもりなんだろうか。



「あっ!」

「?! エイミィ、今の部分の前後のデータを解析してくれ!」

「了解!」


彼は、どうやらカウンターを狙っていたらしい。だが、今はそんなことを考えている場合ではない。彼がフェイトに魔法を放ったのだが、フェイトが彼のすぐ後ろに移動したとき、既に彼はフェイトの方に手を向けていた。これは明らかにおかしい。エイミィも、その異常性に気づいたようだ。

・・・明日、彼に話を聞いてみるか。フェイトの裁判であまり時間は無いが。


-side クロノ,end-





いやぁ、昨日はよかったなぁ。こういうことならお兄さん、何回でも挑戦を受け付けちゃうよ!

・・・いや、馬鹿な真似はよそう。今回はフェイトに勝てたが、今後も勝てるかなんてわからないし。なにせ、チート級に強くなるお方ですからなぁ。

勝ち逃げかっこ悪い? んなことよりも、身の安全の方が大事だ!!

大体、アリシアの身体を使って無理するわけにもいかないし。


「次は、わたしがフェイトと模擬戦したいな」

「・・・さいですか」


あかん。アリシアはやる気だ。こうなったら俺がフェイトの挑戦を回避するのは不可能だろう。・・・ちくしょうorz

ま、今日は特に予定もないし、とりあえず朝食を食って、まったりしてますか。

と思っていたら、


「アリシアと時雨、ちょうどよかった。後でちょっと来てくれないか?」


なんて、クロノに言われた。なんの用だろう。わざわざ俺の名前も一緒に呼ぶって事は、俺に関係することなのか? ・・・思い当たることがひとつしかないんだが。



で、クロノにお呼ばれしたんで、アースラの、あの会議室っぽい部屋に向かったらリンディさんとエイミィもいた。えっ、これ、尋問ですか? やだなぁ、俺は別に悪いことなんてしてないのに、って思ってたら、あの「先読み」のことについて聞かれた。

正直、自分でも良く分からないものだと素直に伝えたら、リンディさんたちは、こちらでも類似する例がないか調べてみる、と言ってすぐに引き下がった。今後、何か自分で気がついたことがあったら伝えて欲しいと言われたが。

まぁ、この時は本当に話しを聞くだけだったんだろう。このあと、フェイトの裁判の公判があったらしいからな。後で、アースラにいたユーノに聞いて知ったんだが。

うん。そうなんだ。もうA's開始まで一ヶ月を切ってるんだ。ユーノが高町家からアースラにやってくるのって、A's開始直前なんだよ。やべぇ。まだ心の準備ができてねぇ。

ちなみに、ユーノと出くわした時、


「あっ、あなたは・・・」

「あっ、久しぶり。君はアリシア、だよね」

「うん。あなたは・・・ユーノ?」

「うん。僕はユーノだよ。・・・あれ、そういえば、アリシアに自己紹介したっけ?」

「説明しよう!!」

「ひゃわ?!」

「うわぁ?! 今の声はどこから・・・」

「主にアリシアのペンダントからだ」

「あぁ、そのデバイスからか」

「残念ながら、僕はデバイスではない」

「そうだよ、これはお兄ちゃん用のスピーカーなんだよ」

「・・・どういうこと?」


てな感じで、会話を交わした。アリシアとユーノ(人間形態)って初対面なんだよね。アリシアが何で名前を覚えていないのか分からなかったから、思わず教えてしまったんだが。

まぁ、そんなこんなで、この後、ユーノと俺達は自己紹介をした。直接話してみてわかったけど、ユーノは性格がいいね。なのはやフェイトやアリシアも性格がいい部類に入るんだが、ちょっと問題があるからな。天然とか天然とか全力全開とか天然とか。一部が特定の人物にしか該当しない気がするけど気にしない。

何がいいたいかというと、ユーノは、やっぱりなのは世界の良心だな。淫獣とか呼ばれる理由がわからないくらい。

・・・あ、淫獣で思い出してしまったことがある。これは聞かないといけないな。


「ところでユーノ」

「なに、シグレ?」

「なのはと一緒のお風呂はどうだった?」

「〜っ?! いきなりなにを・・・!」

「いや〜、フェレット形態で一緒にお風呂に入ってるって聞いてな。・・・ビデオレター経由で」

「うっ・・・。・・・だって、なのはが・・・」

「うん。それはわかっている。断じて君から一緒に入っているわけではないことはな。だがな、今聞いているのはそんなことじゃない!」

「・・・じゃあ、一体なにを」

「なのはのはだかを見た君の感想を聞きたい!」

「〜っ! そんなこと言えるわけないだろう!」

「ほらほら〜、早く言えよ〜、ユ〜ノ〜」

「「どきどき」」

「あ〜! もうやめてよシグレ! あとアリシアも期待を込めた目で見ないで・・・っていつのまにかフェイトもいるし!」

よしっ! ユーノいじりができて俺は満足だ! ていうか、いつのまにフェイトはやってきたんだ? まさか「なのは」って聞いて飛んできましたとか? ははっ、まさかな・・・。


まぁ、A'sが始まる直前もこんな感じで過ごしてたわけだ。

フェイトはもうすぐなのはに会えるって喜んでいたし、アリシアも初めての「友達」であるなのはに会えるのを楽しみにしているようだ。アースラ艦内にはゆるーい空気が漂っていた。

だけど、地球に着いた瞬間、この空気は破られるんだよな。


「海鳴市にて広域結界を確認!」


あぁ、ついにA'sが始まってしまうぜ・・・。





あとがき

今回は、中間期最後の話なので、短めです。もう中間期にはネタがありません。ビデオレターネタを入れようかと思ったのですが、そのあたりはA's編が始まって、アリシアやオリ主がアリサやすずかと出会った時に書くことにします。

次回、ようやくA's編がスタートします。早くA'sをもう一度見ないと・・・。

本編の補足ですが、ユーノがすぐにオリ主に馴染んでいますが、自己紹介のときに、アースラでの精密検査の結果とか、模擬戦の様子とかもユーノに見せてます。なので、すぐにユーノは納得してくれました。

次回の更新ですが、3月1日から5日まで、作者の都合で更新できないかもしれません。すみませんm(_ _)m

携帯で更新することも考えたのですが、それだと文章がさらにとんでもないことになりそうですので、出先にネット環境があれば更新、無ければ5日の夜まで更新なし、ということなります。




[16699] なのは世界の誰かに憑依・・・質問回答+α(3/9 項目追加)
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/09 23:27
*今回は、前回のあとがきでした予告通りに、感想掲示板で質問されたことについての回答集+αとなります。本編ではないので、読み飛ばしてもらっても構いません。


それでは、行きます。




・この作品ってどんな内容なの?

アリシアにオリ主が憑依して、無印終了時以降にアリシアとオリ主が介入した場合のifを書こうと思っています。基本的に軽いノリで話を進めて、たまにシリアスが入る程度です。シリアスな部分も原作をなぞらえた結果なので、原作より暗くなることはありません。また、シリアスとネタ・ギャグが混じっているのは、作者が「シリアスなときでも、馬鹿話をして笑う場面だってあるさ」という考えだからです。


・作者は誰派? なんかフェイト派っぽいんだけど。

作者は、原作キャラはStSのナンバーズ1~4以外全員好きです。逆に言うと、ナンバーズの上位ナンバーは好きにはなれませんでした・・・。スカさんは好きなんですけどね。
3人娘の中で誰が一番好きかといわれますと・・・。誰でしょうね。基本的に全員好きですね。


・アリシアってどんな性格?

作者は、少し明るいフェイトをイメージしております。ソースは劇場版のアリシアと生まれたばかりのフェイトです。作品中ではそのあたりを表す為に、発言がフェイトのものよりも元気な感じになると思います。

あと、アリシアの記憶は幼少期(作者は原作中のアリシアは6~7歳だと推定しています。)までしかないので、フェイトの言葉遣いをベースに若干幼くしています。
今後は成長していくので、A'Sの終盤ではフェイトと精神年齢は遜色ない程度にする予定です。


・なんでアリシアが生き返ってるの?

超展開その1ですね。説明しますと、オリ主は転生(というより憑依ですが)する時に、「自殺せずに、最後まで己の寿命を全うする」という義務を負っております。もう一度人生をやり直すとはそういう意味です。

それで、なぜかアリシアの身体に憑依してしまったオリ主ですが、このままではオリ主は状況的にも死んでしまう可能性が大です。それ以前に、アリシアの身体はきれいに保存されてはいますが、ご指摘があった通り、ほぼ死体です。最低でも脳死は確実でしょう。

そのため、死神もどきの力とか加護の影響で、アリシアの身体は再びオリ主が生きていけるように復元されました。そのときに、アリシアの意識も復活したので、現在のような共存関係にある、という設定です。

つまり、アリシア、というより「アリシアの身体」は、元々オリ主が第2の人生を送る為に復元されたので、身体の主導権はオリ主が握っています。ただ、アリシアがいるので、いつもはオリ主が裏に引っ込んでいるだけです。どうしてオリ主がそんなことをしているかというと、「元々この身体はアリシアのものだから、アリシアがメインで使うべき」と考えているからです。


・プレシアはなんで原作通りに死んでしまったの?

作者の解釈では、プレシアさんは「優しい母親」です。たとえフェイトにひどい仕打ちをしていたとしても、それは狂気に走っていたからであって、もしアリシアとの「妹が欲しい」という約束を思い出せていたなら、フェイトを「アリシア」としてではなく「アリシアの妹」として見れたならば、原作のような事態にはならなかったと考えております。

さらに、この作品内では、2話のあのシーンにおいて、アリシアが生き返ったことによってプレシアさんの狂気がほぼ消えて正気に戻っております。そして、正気に戻ったプレシアさんは、今までのフェイトに対して自分が行ってきたこと、そして自分がもう長くは生きられないことから、原作の通りに身投げすることを決意した、というのが、この作品内での真相です。


・アリシアがなんで捕まっているの?

2話でアリシアはジュエルシードを発動させてしまいました。なので、ロストロギアの不正使用の現行犯でクロノ君に捕まりました。ただ、状況が状況なだけに、アリシアは不起訴処分となる予定です。


・ジュエルシードでプレシアを助けられないの?

これができたら原作でもそのような流れがあったはず、というのが作者の意見です。作者の解釈では、ジュエルシードは力技でしか願いを叶えることが出来ないものだとしています。

Fateにおける聖杯がマイルドになったものをイメージしてもらうと、作者のイメージに近くなります。ジュエルシードにはアンリ・マユのような存在は宿ってはおりませんが。なので、プレシアさんの身体を治すような繊細なことは出来ません。仮にジュエルシードがそれを実行しようとすると、作者の場合、プレシアさんはモンスター化してしまいます。


・アリシアがオリ主と交代したときの変化ってどんな感じなの?

雰囲気と口調以外、変化はありません。唯一のわかりやすい変化は、魔法を使うとき、アリシアとオリ主では魔力光が違う、というものです。


・なんの更新もないのにageられてる時があるんだけど・・・

すみません。作者が文章を書いているときの操作ミスです。今回もやってしまいましたorz
今後は、文章を書くときはsage投稿にチェックをして、万が一操作ミスをしてもageにならないようにします。ご迷惑をおかけしてすみませんでした。


・フェイトのバリアジャケットのマントって外せたっけ?

すみません。作者はその辺を曖昧な認識のまま書いてしまいました。今後、このようなことが出来ないと判明した場合、この部分は修正させていただきます。


・アリシアがオリ主に影響されそうで心配なんだけど。性的な意味で。

オリ主に(変態)紳士的な発言が目立ちますが、これは彼が男としての自分を保つためにやっていることです。どういうことかといいますと、身体がアリシアの、つまり女の子の身体になってしまっているので、その影響をオリ主は思いっきり受けています。

具体的には、男としての性欲がほとんどなくなっています。でも、オリ主の精神は紛れもなく男です。そして、アッー! な趣味は微塵もありません。なので、男としての意識を保つ為にたびたび紳士発言をしますが、本能的な部分の暴走は一切ないので、アリシアの感情に影響することはありません。なので、安心してください。


・オリ主の魔力に対する感覚ってどんな感じなの?

ジュエルシードによって、アリシアが魔導師適正を大きく上げましたが、そのことに関しては「何か変わったな」程度の認識しか持っていませんでした。魔力感知につきましては、まだ素人も同然です。後に、ちょっとした覚醒をしてもらいますが。ヒントは「ガンダム」です。でも、戦闘能力に関しましては「真正面からぶつかると戦闘系のメインメンバーには敵わない」を貫かせてもらいます。


・アリシアの魔導師ランクがなのフェイよりも少し劣るってあるのにAAAってどういうことなの?

これは、なのはやフェイトと比べると魔力の総量や最大出力が二人のものよりも下だけど、AAAランクの範囲内、ということです。紛らわしくてすみませんでした。


・アリシアの魔力光はなんで金色なの?

これについては、原作でのアリシアについてから説明させていただきます。まず、アリシアは、魔力炉の暴走事故で死亡しました。その死因は、原作の設定では大量に浴びた魔力によるショック死でした。ということは、アリシアは魔力炉の魔力の影響を身体に受けているはずです。そして、フェイトはアリシアのクローンですが、フェイトを創るときに、アリシアの遺体がきれいに保存されていたことから考えますと、事故で死亡したアリシアの細胞か何かを使用したと考えられます。なので、フェイトの魔力光が、事故を起こした魔力炉の魔力光と同じ色なのは、アリシアの身体に魔力炉の影響を受けていたからだと私は解釈しました。
よって、アリシアの魔力光も金色にしました。


・オリ主の使うオリジナルの魔法はどんなの?

いまのところは、下記のものだけです。今後も増えるかもしれません。

「Blitz Accel」
 高速移動魔法です。移動距離によって使用する魔力量が異なります。フェイトの使う高速移動魔法達よりも、初速に優れていますが、最高速度は劣ります。なお、セイバーフォームの時は、長距離移動は出来なくなりますが、初速と最高速度が上がります。

「Flash Smasher」
 オリ主がレールガンから思いついた砲撃魔法です。発生速度に優れ、射撃魔法とそんなに変わらない速度で撃てます。ただし、これを乱射すると、さすがに魔力切れをすぐに起こしてしまうので、ご利用は計画的に。漫画版準拠で性能を表すのなら、射程A- ・威力B+~A- ・発生速度S- といったところです。

「Blitz Silhouette」
 一言で表せば、ガンダムF91の「質量のある残像」を魔法で再現したものです。幻影をばら撒きながら、高速で移動する魔法です。その性質上、相手の誘導弾を実質無効化する効果があります。ただし、使用する魔力量が半端ないので、長時間の使用は不可能です。また、発動中はバリアジャケットの装甲が薄くなる、という欠点もあります。

「Saber Edge」
 フェイトの使う「Arc Saber」とほぼ同じ性質・性能の魔法です。セイバーフォーム時のシグザールに展開されている魔力刃を飛ばして攻撃します。

「Calyburn」
 セイバーフォーム時の必殺技です。限界まで強化した魔力刃で、相手を切り伏せます。この魔力刃には、バインドブレイクとバリアブレイクの効果があります。

「Close Blast」
 クロスレンジ限定の砲撃魔法です。性能は、射程D(ぎりぎりミドルレンジには届かない)・威力A・発生速度S です。

「Blade Luncher」
 スティンガーブレイド・エクスキュージョンシフトをオリ主が改造した魔法です。展開するブレイドを少なくした変わりに、その威力を上げています。

「Flash Braker」
 「Flash Smasher」の強化版です。性能が、射程A- ・威力A- ~A・発生速度S- と、ランクアップしています。


・オリ主ってどんなやつなの?

感想掲示板のほうで、軽い・廃テンション・意味不明といわれてきたオリ主について説明させていただきます。なお、かなりの作者の妄想が入るので、それが嫌な方は、「オリ主は一見馬鹿だけど、本当は不器用で優しい奴」とだけ覚えておいてください。



















それでは、以下オリ主の説明です。場合によっては鬱注意なので、嫌な方はすぐに引き返してくださいm(_ _)m




















まず、彼が自殺した理由ですが、原因は大まかに言えば「家族との不和」です。別に虐待を受けていたわけではなく、外から見れば「普通の家庭」で彼は暮らしてきました。

ただ、彼は母親から「母親の愛情」を一度も感じることが出来ませんでした。彼の母親は、考え方が一般的な父親と同じかそれよりも厳しいものだった為、家庭内で「母親」の役目をする人物がいなかったことが原因です。

そのことから、オリ主は「自分は親から愛されていない、必要とされていない」と考えるようになり、親の前でも仮面をかぶるような生活をしてきました。そして、そんなことをしているうちに、徐々に人間不信になり、本心を打ち明ける人物が一人もいないまま成長してしまいました。

そんな歪みを抱えたまま生きてきたオリ主は、とうとう20歳の春に今まで溜め込んだ鬱屈した思いを抱えきれなくなり、潰れてしまった、というわけです。

そんな彼なので、なかなか本心を見せようとはしません。基本的に道化を演じ続けます。ついでに、一度 潰れてしまっているのでハイ、というか廃になっています。しかし、自分のような思いをするのは間違っていると考えているので、周りに困っている人をみかけると、自分のことは棚に上げて助けようとします。

オリ主の性格を簡単にまとめますと、「自分の本心を表すのが不器用だけどやさしい人」で、「自分のことが勘定に入らない人」です。今のままのオリ主に彼専用の身体を与えると、確実に自己犠牲な行動にでます。

そんな人なので、シリアスな場面では真面目にして、普段の場面では言動をおかしな感じで作者は書いております。本当は、オリ主のこの厨二な設定は裏設定、ということで表に出す気は無かったのですが、オリ主の性格だけを書くと「どうしてこんな奴になったのか」がわからないままになりそうだったので、書くことにしました。

リリカルなのはに出てくるメインキャラってみんな家庭に何らかの問題があった人ばかりだから、オリ主にもこんな設定を考えていたのですが、いかがだったでしょうか? オリ主の設定が気に入らなかった場合は、彼の設定は作者の妄言として忘れてください。




あとがき

ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。最後のオリ主の説明は自分で読み返しても「こ れ は ひ ど い」といいますか、公開すべきか最後まで迷った部分です。

そもそも、この作品自体が、「最後まで書き上げたときに1万PV行けばいいや」という気持ちで書き始めたものだったのですが、1話を書いた翌日に確認したPV数や、感想掲示板の書き込みを見て、「なのはの名前を用いる以上、一度でも見る人もたくさんいるのだから、細かいところもしっかり創ろう」と、当初の方針を切り替えました。

そういうわけで、オリ主の設定も質問回答に加えて書くことにしました。

作者はこれからも真面目にこの作品を書き上げて参りますので、どうぞよろしくお願いします。m(_ _)m



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編開始
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/05 22:20
さて、今、海鳴市で異常が発生しているようだ。わかっていたことだけどな。

今、俺達は管理局の本局にいるんだが、フェイトの裁判が無事に終了したんでなのはに連絡を取ろうとしたら、連絡がとれなかったんだ。

それで、その異常を管理局の方で調べてもらったら、先ほどのような事態になっていたわけだ。

ということは、既になのははヴィータと戦闘中ってことだな。

・・・意外とやばい状況じゃないのか? 確か、なのははヴィータにぼろ負けするはずだし。


「どうやら、なのはに何かあったみたいだ。君達は先になのはの所へ行ってくれ。僕と艦長も後から行くから。」

「わかった!」

「なのは・・・!」

「早く行こう!」


姉妹とユーノはやる気充分だな。まだ戦闘だと決まったわけではないんだが・・・。まぁ、実際は絶賛戦闘中なわけだから、問題は無いか。

では海鳴市へ行こう、とテレポートしようとしたところで、クロノが


「アリシア、今回は時雨に代わってくれ」


って言ってきた。・・・どういうことなの?


「えっ?!」

「クロノ、それってどういうことだ?」

「今回、あちらの状況がまだわかっていない。もしかしたら、あっちは危険な状況かもしれない。だから、今までの訓練の様子を考えると、アリシアより時雨の方が行くのがいいだろう」

「・・・つまり、よくわからない状況に放り込むにはアリシアでは危険だ、ということか」

「そういうことになる。気持ちは分かるが君達の安全も考えると、この方がいいんだ」

「監督者の責任、か」

「でも・・・!」

「アリシア、今は僕に代わってくれ」

「そんな・・・」

『機会を見てアリシアに代わるから』

『あ・・・』

『後でクロノに怒られるかもしれないが、それは僕が全部負うからさ。だから、今は少し我慢してくれ』

『わかったよ、お兄ちゃん』

「・・・いいな、アリシア」

「・・・うん」


そんなわけで、なんと俺が先に武力介入することになるようだ。どっかでアリシアに代わる予定だけどな。

では、改めて行くとしますか。他のみんなを待たせるわけにはいかないしな。









結界内に着くと、既にそこには満身創痍のなのはと、グラーフアイゼンを構えてるヴィータが対峙していた。

・・・間一髪じゃねぇか。もう少し話しが長引いていたら危ないところだった。

とりあえず間に合ったことに俺が胸をなでおろしていると、なのはを見たフェイトとユーノが、なのはの元へ飛んでいっていた。うん。原作通りの流れになるな。

俺はというと、転移した場所から動かないで、あたりを見回していた。

確か、どっかにシャマルがいるはずなんだよな。とりあえず、シャマルを早く見つけて、できることなら闇の書も奪えればいいんだが。

え、シグナムとは戦わないのかって? 絶対無理! なによりも装甲を打ち破るための火力が足りないからな! あの「パンツァーガイスト」っていう防御魔法、相当硬い設定なんだよ! それこそ砲撃魔法を撃つしかないし!

でもな、俺に砲撃魔法を撃たせてくれるほど甘くないだろ、シグナムは。むしろ、接近戦で押し込まれることが明らかだし。

今のフェイトだって、正面からシグナムと戦って勝てないんだ。俺が勝てるわけがない。




「仲間・・・か・・・!」

「・・・友達だ」


名場面の台詞が風に乗って聞こえてきて、正直俺はかなりテンションが上がってきたが、ここで気を抜くわけにはいかないんだよなぁ。今回はシリアスしかできないのか・・・。はぁ・・・。

さて、そろそろここも危ないな。まだヴィータには気づかれてないし、少し離れた場所に移動しよう。できれば、あちらからは見つからなくて、こっちからは様子が伺えるような場所へ。・・・、あの壁が破壊されたビルがちょうどよさそうだな。しかし、結界内とはいえ、建物を壊しすぎだろ・・・。

おっ、ここからだとフェイトとヴィータの戦闘がよく見えるな。今はフェイトとアルフの2人でヴィータと戦ってるから、フェイトたちの方が若干優勢だな。今は見ているだけでいいな。

しかし、ヴィータもなかなか・・・。さすがは合法ロリ、といったところか。うむ、白だったよ。何がとは言わないが。


「・・・何を見ているの、お兄ちゃん?」

「・・・地の文は読まないでよ」


ぱんつは男の夢なんだよ、しょうがないじゃないか。あんなひらひらした服を着るほうが悪いんだ!


・・・そうだ! シグナムさんの胸もあるじゃないか! こんな激しい戦闘なんだ。きっと、ものすごく揺れるはずだ! いやっほう!! はやくこないかな、シグナム。


そんなことを思っていたら、いつのまにかフェイトたちがヴィータをバインドで捕まえていた。

ということは、原作から考えるとそろそろシグナムが、というかヴォルケンリッターが全員そろいますな。・・・そりゃあ、さっきみたいに現実逃避もしたくなりますよ、えぇ。紳士な思考をしてないとやってられないよ。ぶっちゃけ逃げたいし。目の前の戦闘がマジでやばかったからな。模擬戦とかと気迫が違いすぎる。

でも、引くわけにもいかないんだよね。何より、


『・・・・・・』


さっきの俺の紳士な思考には突っ込みを入れたアリシアなんだけど、それ以外はずっと黙ってる、ていうか、少し怯えているようなんだ。

普通はそうだろうな。あんな気迫にさらされたら、子供だったら誰だって怖くなるって。模擬戦と本当の戦闘の違いを今まさに肌で感じているんだろう。

今更ながら、クロノの判断は正しかったと思えるな。アリシアが表だったら、今頃竦んじゃって動けなくなっているだろうし。攻撃を受ければ戦えるようになるだろうけど、それまで動けないんじゃあ他のみんなの足を引っ張ることになる。みんなが、アリシアをかばおうとするだろうしな。

俺だって怖いものは怖いんだが、ここは「お兄ちゃん」として頑張るしかないでしょう。男には誰にだって引けない戦いがあるってどっかの台詞であった気がするし。



・・・ようやくシグナム登場だな。だが、まだ俺が出て行くわけにはいかない。原作でシグナムたちは、こちらの陣営をフェイト・アルフ・ユーノで3人だとしていた。できれば、この計算を狂わせたい。

ならば、俺が出て行くタイミングは、3人の個人戦が始まったときに参加するのがいいだろう。俺がユーノの代わりにヴィータと戦って、ユーノには後方支援に徹してもらった方がいいか。

うん。シャマルを捜すのは、こちらの戦力的に無理だな。結局、戦える人数はお互い同じ、しかも、その編成まで同じになるんだからな。

結局、話しの大筋を変えることはできないんだな。人一人で変えられるほど簡単なものでもないか。なら、今出来ることに全力をかけますか!


「よし、そろそろいくぞ、アリシア」

「・・・うん!」


アリシアも覚悟を決めたようだし、武力介入を開始するか。


「俺が   ガ ン ダ ム だ !!」

「ガンダムって何?」


アリシアが何か聞いてきたけど、気にしない。

今の状況は、ちょうどそれぞれの個人戦が始まったあたりだ。これから俺はユーノの方へ行って、ヴィータと交戦する予定だ。

で、なんで叫んだかというと、別にテンションに身を任せただけ、というわけではない。俺が叫べば、シグナムたちは一瞬俺に注意を向けるだろう。これが俺の狙いだ。

まさかの4人目の敵が登場、これは多少なりともシグナムたちの動揺を誘うことができるはずだ。たとえそれがごくわずかなものだとしても。

そうすれば、その一瞬のスキをフェイトたちは突くことができるだろう。もっとも、それだけで勝てるような相手ではないが、要は原作通りになのはが「スターライトブレイカー+」を撃てるように時間稼ぎが出来ればいいんだ。できるかぎり、こちらが傷を負わないでな。

では、攻撃開始と行きますか。まずはヴィータに向かって、


「スティンガースナイプ!」


誘導弾を撃ってみた。

ま、これが当たるわけも無く、軽々と回避された後、


「はあぁ!」

「Schwalbefliegen」


攻撃されましたとさ。

こちらの目的はどの道時間稼ぎだ。ここは意地を見せて踏ん張ってやるさ。













今、アリシアやフェイトたちはアースラにいる。あの戦いの結論を言おう。


原作通りになりました。 てへっ☆


まぁ、時間稼ぎが俺でもちゃんとできたし、ユーノが後方支援に徹することができてはいた。

だけど、結局なのははユーノの結界からでて「スターライトブレイカー+」を撃ったし、その直前にシャマルにリンカーコアを菟集されちゃったんで、その後は原作通りの流れになった。

俺とヴィータの戦いの結果? 俺が劣勢だよ。だって、ヴィータも防御が硬いんだもん。「Flash Smasher」をなんとか撃ったんだけど、ヴィータのバリアを貫通できなかったし。この魔法、貫通力は確かなんだけどなぁ。やっぱり火力不足が目立ってきたな。

あと、ヴィータと戦ったせいでシグザールが半壊しちゃった。近接戦闘になってからアリシアに交代したんだけど、やっぱり近接戦闘させるべきじゃなかったかな。えぇ、シグザールはハンマーに壊されましたよ。なんだよ、あのハンマー。いつかピコピコハンマーとすり替えてやる!

そんな感じで、フェイトやなのはたちと同様にデバイスを壊され、終始劣勢のまま終わった俺たちでした。・・・べ、別に悔しくなんか無いんだからなっ!

で、今、クロノとフェイトとアリシアは、本局の医務室に向かっている。もちろん、なのはのお見舞いだ。・・・このままだと、二人の再会を邪魔してしまうな。ちょっと強引に行きますか


「クロノ、フェイト、すまん。ちょっとトイレ!」

「えっ? お兄ちゃん?!」

「あ、あぁ。っていつのまに代わったんだ?!」

「あ、アリシア、じゃなくてシグレ?!」


うん。我ながら強引だ。なにせ、なのはの病室のやや手前でUターンしたからな。だが、これでフェイトとなのはの二人きりでの再会となるだろう。


「さっきはなんで嘘を言ったの?」

「あのままフェイトと一緒に入るのは野暮だからな。もう少ししたらなのはの病室に入るよ」

「? それってどういうこと?」

「そのうち分かるよ。・・・もしかしたら、アリシアも取り込まれるかもしれないが」

「???」


アリシア、君はその辺はまともに育ってくれよ。・・・身近に百合な雰囲気がある時点で無理かもしれないけど。

その後無事(?)にアリシアもなのはのお見舞いをした。うん。なのはとフェイトが抱き合っているところに鉢合わせしなくて本当によかった。

かくして、A's最初エピソードは終了した。さて、せっかく原作知識があるんだ、俺もそろそろ動かないとな。

まずはクロノに話しをするとしますかな。







あとがき

またやらかしました。すみませんでした。m(_ _)m

ようやくA's編に入りましたが、恐らく戦闘シーンは最後の闇の書戦以外はまともに書かないと思います。アリシアとオリ主はまだまだ実戦経験が不足しているので、戦闘には参加できませんので。幸い、戦闘訓練には適任な猫姉妹が登場するので、彼女らに稽古をつけてもらう予定です。

次回は前半が真面目、後半が日常(ネタとかギャグとか)にしたいと思います。



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その2(修正しました。)
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/07 14:03
アリシアもなのはと無事に再会した後、俺達はデバイスが修理されている部屋に向かった。

うん。デバイスはなかなかにひどい状態だな。ユーノが説明してくれたけど、どうやらデバイスの自己修復機能だけでは再生が難しいとのこと。

しかし、ジュエルシードの次元震よりもダメージがひどいってどんだけだよ。ヴォルケンリッター、マジでやばい連中なんだな。StS時代でチートな強さなのもうなずける。

だが、デバイス強化フラグが来ましたぜ、旦那! 旦那って言ってもみんな魔法少女だけどな!

さて、強化されたシグザールの名前は何にしようかと考えていると、


「ねぇ、そういえばさぁ、あの連中の魔法ってなんか変じゃなかった?」


とかアルフが言ってきた。


「あれは多分・・・」

「ベルカ式だな。使ってくる魔法が対人戦に強い感じだし、デバイスにカートリッジシステムが搭載されてるし。なにより、彼女らは自分のことを騎士と言っただろう? ま、彼女らはベルカの魔導騎士だと考えた方がいいかな」

「ベルカ式?」

「その昔・・・」


ついクロノの話しをさえぎってしまったぜ。そのあと、アルフの質問にユーノが答えている間、クロノに睨まれることになってしまったのはしょうがないだろう。だがクロノ、あんまり睨まないでくれ。アリシアが怖がるから。

で、結局


「フェイト、そろそろ面接の時間だ。なのはとアリシアもちょっといいか? あと時雨、君には後で話しがある。」


クロノに呼び出しをくらってしまったよ。ま、これを狙ってたんだがな。とりあえず、この後はグレアムさんと会うことになるのかな。





結論から言おう。グレアムさんはめちゃくちゃダンディだった。やばい、あんな老人に俺はなりたいね。内面的な意味で。

正直、この人がはやてを殺すことを決断した、とは信じられなかった。フェイトに対して、


「約束してほしいことはひとつだけだ。友達や自分を信頼してくれる人のことは決して裏切ってはいけない。それができれば、私は君の行動について何も制限しないことを約束するよ。・・・できるかね?」


とか言う人なんだからな。だけど、その辺は大人の決断とか、そういったものなのだろう。・・・その考えが納得できないのは俺が餓鬼だからかな。

まぁ、これにてフェイトの件は完全に終了したと言っていいだろう。グレアムさんも、


「はい、必ず。」


ていうフェイトの回答に満足してたし。てか、よく考えたらこれがフェイトの面接だったんだな。単に管理局のお偉いさん兼クロノの恩師が来たから挨拶しに行っただけだと思っていたんだが。

だがしかし、俺の方の問題はまだ終わってないんだよな。

グレアムさんに挨拶して、フェイトやなのはと一緒に部屋から出たあと、


「アリシア、ちょっと時雨と話しがあるから、そのペンダントを貸してくれないか?」

「うん。はい、クロノ」

「ありがとう。」


ていうやりとりがあったし。クロノに渡されたのはただのスピーカーで、俺自身はアリシアの中にいるわけだから、別にシカトしようと思えばできる。だけどこのスピーカーには、これ単独で会話ができる機能、つまりアリシアがその場にいなくても、このスピーカーさえあれば俺が会話できるようになってるんだよね。だから、シカトすると余裕でばれるわけなんだ。

ま、俺の方からクロノと話したかったから、逃げる気はないんだけどな。


「おーけー。で、どこにいくんだ?」

「アースラの調整が行われてるドッグに向かう。艦の様子を見なきゃならないし、そこならあまり人も来ないからな」

「りょーかい」


では、クロノとOHANASHIをしますか。






「まず初めにいっておくことがある。僕はこの世界の人間ではない!」

「・・・それは既に聞いている。」


まず軽いジャブから試してみたんだが、言われてみれば、既に俺が次元漂流者みたいなものだってカミングアウトしてたな。じゃあ、次行ってみよう。


「そうだったな。じゃあ、ここからが本題だ。僕にはどうやら未来視っぽい能力があるようなんだ。」

「? どういうことだ?」

「実際は過去視もあるかも。僕はP・T事件のことをだいたい知ってるんだよ。いつごろなのはがレイジングハートとユーノに出会ったとか、時空管理局がいつごろ介入したかとかを夢で見てね。・・・それと、プレシアさんの余命がいくらも無かったこととかも。夢で見たプレシアさんは血を吐いていたから、これは推測になんだけど。」

「・・・なに?!」

「更に、今回起こっている事件についても知っているよ。闇の書っていうロストロギアが関係してるんだよな?」

「・・・まだそれは管理局内部のみの機密事項だ」

「でも知ってしまったんだよ。さっきグレアムさんがいる部屋から出るとき、クロノだけ少し遅れてでてきただろう? そのとき、闇の書事件の担当が君になったことをグレアムさんに伝えているのを夢で見たんだ。」

「・・・時雨、君はどこまで知っているんだ?」

「今はまだ言えない。とりあえず、僕が未来視っぽい能力を持っているってことを理解してくれればいいんだけど」

「未来視は立派なレアスキルだ。それに、機密事項を知っている時点で、管理局としてはそういうわけにもいかないんだが」

「あぁ、それはわかってる。だけど、僕にも全部は話せない事情がある。下手に話せばアリシアの身も危なくなるだろう? それに、僕は管理局が不利になるようなことはしない。約束するよ」

「・・・もうひとつ条件がある」

「なんだい?」

「フェイトやなのはやアリシアを裏切るようなことはしないでくれ」

「あぁ、もちろん。クロノやリンディさんやエイミィやユーノも含めて、約束するよ」

「! ・・・わかった。このことは管理局の方には報告しないでおく。だが、艦長には報告するからな。」

「うん。それはいいよ。どの道リンディさんにも話そうかと思ってたから。」


全部嘘、というわけでもないからこれでいいよな? 戦闘中のアレも未来視って言えそうだし。とりあえず、俺が原作知識を知っていることについて、なんらかの理由がつけばいいんだし。

そんな会話をしていたら、リンディさんとエイミィとフェイトとアリシアがやってきた。ま、だいたい話が終わったところだし、グッドタイミングかな。









「すごーい、すごい近所だ!」

「本当?」

「うん。ほら、あそこがわたしん家!」

「あ! あの家のこと?」

「うん!」


・・・どうしてこうなった。いや、わかってはいたんだけどさ。

あのあと、アースラに乗っていた管理局員が集められて、正式にアースラスタッフが闇の書事件の担当になったことがリンディさんが伝えてきた。

ここまではいいんだ。いいんだけど。



何故になのはの家の近くが本部(笑)なんだろう?



いや、嬉しいよ? フェイトやアリシアやなのはの笑顔が見れるんだ。どこに不満があるというのだ! 文句がある奴はいますぐに手を挙げろ!

だけどね、なんていうか、それでいいのか管理局、ていう感じなんだよね。原作でこうなるってことは知ってたけど、これって明らかに職権乱用だよね? 身内人事だよね? なんでこれがすんなり通るのさ! 嬉しいけど! 嬉しいけど管理局が心配になるよ!

そんな俺の複雑な心境をよそに、本部(笑)への引越しは進み、


「なのは、フェイト、アリシア、友達だよ」

「「「はーい!」」」


ついに彼女らの登場となった。


「こんにちは〜」

「来たよ〜」

「アリサちゃん、すずかちゃん!」

「始めまして・・・って言うのもなんか変かな?」

「ビデオメールでは何度もあってるもんね。」

「うん。でも、会えて嬉しいよ、アリサ、すずか」

「やっぱり、こうやって会って話しがしたいって思ってたから」

「うん!」

「わたしも!」

「おっと、僕のことも忘れてもらっては困るな」

「うん。こんにちは」

「あんたがビデオメールでもしゃべってたAIなのね?」

「あぁ、そうだ。これからよろしくな」


くぎゅううううぅぅぅ! って叫ばなかった俺を誰かほめてほしい。

とりあえず、こうしてビデオメールでは会っていたアリサとすずかにも会うことができた。

うん。この様子だと既にフェイトやアリシアとも友達といった感じだな。よかった。

えっ、俺はどうなんだって? アリサの台詞の通り、機械のAIってことでこの二人には通ってる。ちょっと無理があるかなって思ったけど、特にアリサやすずかが不審に思っている感じもない。

おそらく、月村家の忍さんのおかげなんだろうな、オーバーテクノロジーなものに彼女らが馴染んでるのは。忍さんには感謝しておこう。

それで、この後このメンバーで翠屋に行ったんだが、やべぇ、ケーキまじうめぇ!

ユーノがすずかに頬擦りされてるとか、アルフ(子犬フォーム)がアリサに正体がばれそうになってるとか関係ないぜ!

・・・恭也に会えなかったのが残念だったけどな。緑川ボイスはまた今度か。

そんな感じで翠屋を満喫していたら、アースラスタッフ(確かアレックスっていう名前だったはず)が私立聖祥大付属小学校の制服が2着入った箱を持ってきた。もちろん女の子用。これを用意したとき、彼に変態の烙印が押されていないか激しく不安になってきたぜ。


「えっ、これって・・・」
 
「学校の・・・制服だ」


フェイトとアリシアも中身に気づいたようだ。このあと、リンディさんに、なのは達と同じ学校に編入するっていうことが、フェイトとアリシアに伝えられた。

そのとき、この姉妹はいい反応をしてくれたよ。これだけで、お兄さん、ご飯3杯はいけちゃうよ!

しかし、俺も小学校に通うことになるのか。一応身体は女子として。なにせ、アリシアの中にいるんだからな。

ということは・・・ふっふっふ。これからが楽しみですな。体育とか水泳とか身体測定とか!

これから、日常はここで過ごすんだ。せめて何もない日はまったり楽しんで生きさせてもらうか。

もちろん、紳士としての節度は守るよ? ホントダヨ?





あとがき

とりあえず平和な日常に入りました。オリ主が暴走しそうな予感ですが、多分大丈夫です。

今回、アリシアの台詞、というかどれが誰の台詞かわかりにくい部分がありますが、A'sの3話を見ていただければ、わかるかと思います。アリシアに関わる台詞以外は、アニメからそのまま持ってきたので。

次回、後半にデバイスが強化されて帰ってきます。前半は学校生活になると思います。


あとがきその2

クロノとオリ主の会話の部分を修正させていただきました。これはいくらなんでもひどかったですね。以前のあとがきで書いたプロットからも外れていますし。本当にすみませんでした。





[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その3
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/07 16:14
-sideクロノ-

闇の書、このロストロギアは僕にとって、いや、僕の家族にとって因縁のあるものだ。

闇の書は僕の父さん、クライド・ハラオウンの命を実質奪ったんだ。その闇の書が、今は第97管理外世界「地球」にあるという。そして、その捜索及び確保の任務がアースラにいた管理局員、つまり僕たちに下された。

これは敵討ちになるのだろう。だが、僕はグレアム提督に言ったように、この件には冷静に当たることを決意している。

そんな時、時雨は言ってきた。自分には「未来視」があるかもしれないと。そして、今回の事件についても「未来視」で見ている、と。

彼についてはまだ謎な部分が多くある。なぜアリシアと共存しているのか、とか、戦闘中にみせたあの能力は何なのかとか。もしかしたら、彼の言う「未来視」は、この能力と関係があるのかもしれない。

もちろん、彼の言っていることがでたらめだという可能性もある。だが、彼は僕とグレアム提督しかいなかったはずの部屋での会話の内容を知っていた。それに、結局聞きそびれたが、ベルカの魔導師についてもなぜか知っているようだった。

ならば、「未来視」のことは置いておくとしても、彼が今回の事件について何か知っているのは確実だろう。もっと言ってしまえば、闇の書について何か知っているのかもしれない。いや、これは僕の希望的観測だな。

とにかく、その辺については、おいおい彼に聞いていくことにしよう。それに、彼がでたらめなことを言っていたとしても、僕がやることは変わらない。


闇の書を確保する。絶対に、だ。


-side out-



さぁ、新生活1日目の朝が来たよ! まずは何をするかというと・・・


「ふっ! ふっ!」

「はっ! はっ!」


ビルの屋上で素振りですが何か?

いや、この間のヴォルケンリッター戦で事実上敗北したのが悔しかったらしく、魔法の技術だけじゃなくて、身体の方も鍛えようってことになったんだよ。フェイトとアリシアがな。

で、今、姉妹そろって鉄の棒を素振りしているんだ。・・・近隣の住民に気づかれると、とんでもない噂になりそうなんだが。


「・・・素振りもいいけどさ、基本的な体力づくりもしたほうがいいとお兄さんは思うんだよね。ランニングとかさ。」

「じゃあ、明日からメニューに加えるよ」

「うん。今よりも強くならなきゃいけないしね」


これでよし。これで健全な朝錬が約束されたな。・・・なんか俺の心配の根本的な解決には至ってないような気がするけどな。てか、なんでわざわざビルの屋上で素振りをするんだろう? 公園とかじゃ駄目なのか?

これからは、こんな一コマが日常に入るようだ。・・・やれやれだZE☆








「アリシアちゃんとフェイトちゃんが前行ってた学校ってどんなとこ?」

「前はどんなとこに住んでたの?」

「日本語が上手だけど、どこで習ったの?」

「アリシアちゃんとフェイトちゃんって双子なの?」


・・・・・・うん。こうなるだろうとは思っていたさ。

アリシアとフェイトは、リンディさんが手配した通り、聖祥大付属小学校に転校したんだ。それで、二人ともなのは達と一緒のクラスに編入することになったんだ。

普通、双子とかだとクラスは別にされるものだが、今回は海外からの転校生っていう設定だし、友達がいるクラスに姉妹そろって編入させてくれたんだろう。

そうそう、アリシアとフェイトは双子ってことになっている。遺伝子的にも同じはずなんだし、間違ってはないよな?

で、今の状況だが、いわゆる ハイパー質問タイム☆ だ。転校生が来たときに起きる必須イベントだな。しかも、その転校生が美少女の双子ときたもんだから、周りの勢いがものすごい。

フェイトが雰囲気にのまれてあうあうするのは想定の範囲内だったが、アリシアまで押されてるのはちょっと想定外だった。だけど、まぁ、アリシアもあまり同年代の子供と遊んだことが無かった子だから、こうなるのも当然ではあるのかな。

さて、では俺が助け舟でもだそうかなと思っていると、


「はいはい、転入初日の留学生をそんなにもみくちゃなにしないの!」


ってアリサが先にこの姉妹を助けてくれた。うん。これはいい釘宮ボイスだ。てかアリサは性格が良いツンデレだと思うんだが、どうだろうか?

とにかく、アリサによってアリシアとフェイトは質問攻めから解放された。・・・あとでアリサに礼を言っておくかな。

こうして、転校初日はなんとか無事に終えることができた。









それから、しばらくは平和な日常を送ることができた。デバイスの修理も終わってないし、なのはやフェイトやアリシアにできるのは、日常を過ごすことしかないからな。だけど、こういった「子供らしい」時間を過ごすのは、この頑張りすぎる娘達にとっていいことだと俺は思う。

しかし、体育の時間はすばらしかったなぁ。だって、美少女の生着替えですよ、生着替え! 体操着はさすがにブルマじゃなくて短パンorジャージだったけど、着替えだけでも充分だぜ! 早く夏にならないかなぁ・・・ 水泳の授業が待ち遠しいZE☆

そうそう、この間、俺は無事に恭也に会うことができた。うん、かっこよかったね。緑川ボイスだったし。

いつもの友達メンバーでなのはの家に遊びに行ったら、恭也と忍さんがいたんだよ。もちろん、俺も挨拶したぜ。まぁ、俺が挨拶したら、忍さんがこのスピーカーに大層興味をもったようで、分解させてくれって言われたけどな! 

・・・俺の本体がアリシアの中で本当によかったぜ。あの様子だと、隙をみてスピーカーを分解しそうだったからな。意識があるまま解剖とか俺はごめんだぜ。

こんな感じで二週間ほど過ごしていたある日、いつものようになのはの家で遊んで、アリサとすずかが家に帰った後、なのはの部屋で


「ねぇ、なのはは、あの人たちのこと、どう思う?」


ってフェイトが話を切り出した。

俺はしばらくなのはとフェイトとアリシアの話を聞いていたんだが、どうやらヴォルケンリッターについて話しているようだ。3人とも、ヴォルケンリッターに対して、悪い感情は持っていないようだった。

いきなり襲撃されたというのに、なんともお人よしなことを言うなぁと思ったけど、こいつらは度を越えたお人よしであるのは間違いないんだよなぁ。

まぁ、実際、シグナムたちの目的は、ただはやてと一緒に暮らしたいだけだからな。そこには何の悪意もないわけで、その辺をこの娘たちも感じ取ったんだろうな。

そんな感じで話を聞いていたら、いつのまにかフェイトの身の上話になっていた。なのはとアリシアも黙って聞いている。うん、まぁ、周りの声が届かなくなるときってあるよなぁ、って思いながら俺も話を聞いていたんだが、


「言葉を伝えるのに、戦って勝つことが必要なら、それなら、迷わずに戦える気がするんだ」

「フェイトちゃん・・・」

「なのはが教えてくれたんだよ。そんな、強い心を」

「そんなこと、ないと思うけど・・・」


だんだん雰囲気がおかしくなってきたなぁ・・・じゃなくて、これはひとつ言っておかなきゃならないことがあるな。


「・・・確かに、戦って、相手を倒さなきゃならないことだってあるだろう。だけどな、まず話をすることを忘れちゃ駄目だよ。」

「お兄ちゃん?」

「次にまた守護騎士と会ったとき、まず話をしよう。できることなら、武器を向けることなくな。初めから戦う気だと、話し合う機会も無くなってしまうから。和平の使者は槍を持たないって言うし。」

「うん。でも、それでも話し合いができなかったときは・・・。」

「戦おう。戦って、勝って、話し合いをするために。僕らが強くなるのは、相手を打ち負かす為じゃない、相手とわかりあうために強くなるんだ。」


我ながら偽善だなぁ。だけど、こうやって改めて言っておけば、大丈夫だろう。

なんていうか、StSのときだと、彼女らが力を求めた理由とずれてきてる気がするんだよね。だから、なのはは魔王って呼ばれることになるんだよ・・・

ま、これで、シグナム達との2度目の邂逅で険悪な感じで戦闘に突入することはないだろう。確か、あんなことになった理由は、なのはとフェイトがデバイスを起動した状態で「話し合おう」って言い出したからだし。そりゃあ、そんな相手の話なんて聴く気にはなれないよなぁ・・・

もっとも、なのはとフェイトがデバイスを起動しない状態で話しかけても戦闘にはなるだろうけどな。彼女らだって引けない理由があるんだし。でも、ある程度の話はできるんじゃないだろうか。

なんにせよ、全てはデバイスが戻ってきてからだ。それまで、もう少しだけゆっくりさせてもらうとしよう。・・・そろそろ、ヴォルケンリッターとの二度目の邂逅になるはずだからな。





あとがき

次回、戦闘になります。また戦闘を書くのかと思うと、ちょっと気が重い作者です。

今回はアリシアがほぼ空気ですね。どうやって、日常のなのフェイと絡ませようか悩んでいます。

前回のクロノとオリ主の会話があまりにも強引な感じでしたので、修正しました。感想掲示板にて指摘してくださった方、ありがとうございました。今後も、強引な展開にはならないように注意したいと思います。




[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その4
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/08 11:58
今日は、みんなで本局に来ている。その理由のひとつは、なのはの検査、もうひとつは、修理が終わったデバイスの受け取りだ。

なのはの方は、リンカーコアが完全に修復された、っていう検査結果が出たそうだ。無事に戦線復帰ができる、というわけだ。

で、なのはの検査が終わったあと、修理されたデバイスを取りに行ったんだが、そこで


「今、クロノ君が闇の書の騎士達と交戦しているの! なのはちゃんたちもすぐに向かってくれる?」


なんて通信がエイミィから入った。


「うん!」

「はい!」

「わかりました!」


当然、この娘達はすぐに向かおうとした。・・・この様子だとすぐにデバイスをセットアップしそうだな。釘を刺しておいたほうがいいか。


「みんな分かってるとは思うけど、まずは話し合いからだからな。」

「「「うん。」」」

「だから、すぐにデバイスをセットアップするんじゃないぞ?」

「「「わかった(よ)。」」」


ふぅ、すんなり聞いてくれてよかった。これで少しは話ができるだろう。では、ヴォルケンリッターに会いに行きますか。







現場に着くと、そこにはヴィータとザフィーラがいた。あぁ、ここはこの二人が相手なんだっけ。それで、少し遅れてシグナムが登場すると。

ヴィータだけだと話し合いは難しそうだったけど、ザフィーラもいるのなら、なんとかなるだろう。

さて、まずはあの二人の目の前まで行かないとな。バリアジャケットを展開しないまま、なのはとフェイトとアリシアはヴィータとザフィーラの前まで飛んでいった。うん。ここまでは成功だな。

この時点で攻撃を加えられると、もうどうしようも無かったんだが、どうやらこっちが非武装のまま近づいていったんで、とりあえず様子を見てくれているようだ。


『君達、一体何をやっているんだ?! 危険だ!』


とかクロノが念話で言ってきたけど、


『ごめんなさい、でも、まずお話がしたいの!』

『うん、本当にごめん、クロノ』

『でも、今は見ていて欲しいんだ』


ってこの娘たちは返事をした。クロノはまだ動揺しているようだが、今は気にしないでいよう。


「・・・おまえら、一体何のつもりだ?」

「わたしたちは、お話をするために来たんだ」

「どうしても聞きたいことがあるから」

「うん。何の為に闇の書を完成させようとしているのかなって」

「話し合いに来たっていってるけど、じゃあ、さっきなんであいつは攻撃してきたんだよ?」


おっと、そういえば、すでにクロノが攻撃していたんだっけ。・・・ここは俺が行くしかないか。


「その非礼はわびたいと思う」

「?! そのペンダントからか・・・!」

「だけど、あなた達もそれだけのことをしてきた、というのは理解して欲しい。それと、今あなた達の前にバリアジャケットを着ずに出てきているのが、僕達の誠意だ。十分かどうかはわからないけど」

「それはいい。だが、話をする前に姿を現したらどうだ?」

「すまない。だけど、僕には肉体はないんだ。このペンダントをしている少女の中に魂というか精神が同居している状態でね。でも、確かにこのまま話をするのも無礼だよね。『アリシア、代わってくれ』『うん』・・・これでいいかな?」

「?! なんか雰囲気がかわったな」

「・・・了解した。それで、話とはなんだ」

「あなたたちが、闇の書を完成させてまで望むことは一体何なのか、教えてほしい」

「・・・我らは闇の書の守護騎士だ。闇の書を完成させようとするのは当然だろう」

「・・・つまり、自分達はプログラムに従って動いていると。でも、それにしてはおかしいところがある」

「・・・何?」

「プログラムに従っているだけなら、何故魔導師を殺していない? 殺してリンカーコアを全て奪った方が、効率がいいだろう。」

「・・・・・・」


実は、俺が問いかけたときに、ヴィータがとっさに何か言おうとしたんだけど、ザフィーラがそれをけん制して答えたんだよね。

思ったよりもザフィーラが強敵だったけど。なんか、微妙に論点をそらしてきたし。だが、こっちはお前らの事情を知っているんだ。あともう少しで聞きだせるだろう。

そう思っていたとき、


「えっ?!」

「?!」

「何っ?!」


紫電が落ちてきて、シグナムが登場した。・・・かっこいい登場だよな、本当に。

んで、シグナムは開口一番に


「それは私が答えよう」


って言ってきた。


「シグナム・・・」

「ザフィーラ、我らの望みは教えても構わないだろう。」

「・・・わかった。」

「それじゃあ、闇の書を完成させようとしている理由を教えてくれるのか?」

「あぁ。お前達の様子を見れば、話し合いをしにきたのは本当だろう。ならば、こちらも答えるべきだろうな」

「ありがとう」

「礼には及ばない。・・・我らの望みだが、それは闇の書を完成させることだ」

「・・・・・・」

「そして、我らが主と、・・・平穏な日常を過ごすためだ」

「・・・何だと?!」


なんかクロノが驚いてるけど、気にしない方向で。ていうか、シグナムがすんなりと答えてくれたよ。ここまで簡単に聞きだせるとは思っていなかった。

これで、原作の時よりも早く闇の書について調べるのが早くなるだろう。・・・原作だと、闇の書についての情報が手に入るのがあまりにも遅すぎたんだよね。もう末期だったというか。

少なくとも、これでわけも分からず戦うことにはならないだろう。

なにより、なのはの悪魔化はこれで防げた! だって、目的を知ったんだから、あの「悪魔でいいよ・・・」発言は出ないだろうしな!

だけど、ここはもう少し踏み込むか。


「だけど、どうして主と平穏に暮らしていくのに闇の書を完成させる必要があるんだ?」

「それは、・・・闇の書が我が主の身体を蝕んでいるからだ。このままでは、主は闇の書に殺されてしまう。」

「それで、それを回避するためには・・・」

「闇の書を完成させる必要がある、ということだ。闇の書が完成すれば、主は闇の書による侵食から解放される」

「他に方法はないのか?」

「それは・・・」

「そんなのがあれば、先にそれをやってるよ! 他に方法が無いから、あたし達は闇の書を完成させようとしてるんだ! 早くしないとはやてが・・・!」


おっと、焦れてヴィータが横から話に加わってきたんだが。・・・なんか、はやてって名前を言っちゃってるし。最後の方は小さな声で悲痛な感じで言ってたんで、多分クロノには聞こえていないだろう。聞こえていたら、何らかの行動に出てると思うし。

ちなみに、


「そんな・・・!」

「っ・・・!」


なのはとフェイトは今の話を聞いて、こんな感じの反応をしている。アリシアも似たような感じで中で反応していたが。

ま、ちょっとやりにくいだろうな、これは。誰かを助けようとするのは間違ったことじゃないし、目の前のシグナムたちの様子を見ても、どれだけ主を大切に思っているのかが伝わってくるし。もし戦うことになれば、自分達は彼女らの主を助けるのを妨害することになるんだからな。

だけどね、俺達にも戦う理由はあるんだよ。


「・・・そうか。だけど、闇の書が完成すれば、周囲に甚大な被害が出ることが分かっている。過去、何度も起きていることだ、今回のあなた達の目的がどうであれ、その結果は変わらないだろう。だから、僕達はあなた達を止めなきゃならない」

「あっ・・・!」

「・・・!」


ふぅ。なのはとフェイトも動揺から戻ってきたようだ。そうなんだよ。今のままの闇の書を起動させるのはいろんな意味でまずいんだ。・・・後でなのは達も知ることになるが、主の命も奪ってしまうしね。


「結局、我らと戦うことになるのだな?」

「残念ながらね。他に方法があればよかったんだけれど、どちらにも譲れないものがあるし」

「そうだな。我らも引くわけにはいかないからな」

「・・・ただ、今回は引いて欲しい。僕たちも引き上げるから」

「・・・それはできない」

「・・・・・・」

「目の前に高ランクの魔導師のリンカーコアがある、という好機を逃すわけにはいかないのだ」

「あたしたちには時間が無いんだ。悪くは思うなよ」

「・・・デバイスを構えろ。それくらいは待ってやる」

「せめて正々堂々と勝負をする、というわけか」

「非武装の相手に仕掛けるわけにはいかないからな」

「騎士の誇りってやつか」

「あぁ、そうだ」

「・・・なら、お言葉に甘えさせてもらいますか。いくぞ、なのは、フェイト、アリシア!」

「「「うん!」」」


戦いは避けられないか。だけど、これで少しは意味のある戦いになったかな。

じゃあ、気合を入れて行くか!


『行くぞ、アリシア!』

『うん、お兄ちゃん!』





あとがき

戦闘シーンを書くと言っておきながら、今回は戦闘には入りませんでした。次回が戦闘になります。

今回のヴォルケンとの会話ですが、強引なところがあるかどうか心配です。あと、どれが誰だかわかるかどうかも心配です。結構ザフィーラにしゃべらせてみたのですが。

しかし、今回は原作キャラよりもオリ主が目立っていましたね。しかも、いつの間にかリーダーっぽい感じになっていますし。最初の頃と比べると、オリ主も変わってきているのでしょうか。

・・・次回を書くまでにシグザールの新しい名前を考えなくてはなりません。どうしよう・・・
 


追伸:安西先生、ギャグが・・・書きたいです・・・。



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その5(戦闘シーン少し修正)
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/09 22:17
さて、これがなのはが言うところの本気の勝負、というものかな。では、やりますか。


「レイジングハート・エクセリオン」

「バルディッシュ・アサルト」

「シグザール・フリューゲル」

「「「セット・アップ!!」」」


うん。無事に起動できたな。・・・おっと、シグナムたちと戦う前に言っておかないといけないことがあるな。


『クロノ、ここは僕達が1対1で戦う』

『・・・本気か?』

『あぁ。あとの二人も同じ気持ちだと思うよ』

『うん、ここはわたし達にまかせて欲しいの』

『ごめん、クロノ。でも、これだけは』

『わたしも、お兄ちゃんと一緒だから大丈夫』

『・・・わかった。僕はユーノとアルフと一緒に闇の書の捜索に当たることにする。』

『・・・ありがとう』

『・・・みんな無事に帰ってきてくれよ』

『『『『うん(はい)(了解)!!!』』』』


これで下準備は完了だ。アルフも捜索に回したから、もしかしたら仮面の男からの妨害を防げるかもしれない。・・・もっとも、リーゼロッテがそんなに簡単に抑えられることは無いだろうけどな。まぁ、今は目の前のことだけを考えよう。


「高町なのは」

「フェイト・テスタロッサ」

「御堂時雨」「アリシア・テスタロッサ」

「烈火の将シグナム」

「紅の鉄騎ヴィータ」

「蒼き狼ザフィーラ」

「「「「「「「行きます(参る)!!」」」」」」」


わざわざ名乗りを上げて戦闘開始となった。ま、今回はフェイトとシグナム以外もお互いを認めての戦闘だからな。

で、俺の担当はザフィーラか。正直、ザフィーラに近距離戦闘は仕掛けたくないんだが、正々堂々の勝負をするのにそれはいかんだろう。

まずは中距離を保ちつつ射撃で攻撃して、隙を見てアリシアと交代して近距離戦と行きますか。


「シグザール、カートリッジロード」

「Load Cartridge.」


そうそう、シグザールの見た目がちょっと変わったんだよね。バルディッシュのようなリボルバーが付いたんだけど、そのリボルバーの両側に鋭利な翼っぽい意匠があるんだよね。起動してから言うのもおかいしいが、フリューゲル(ドイツ語で翼)っていうのは合っていたかもしれない。


「うおおぉぉ!」

「! シグザール!」

「Blitz Accel」


おっと、危ない。ちょっとザフィーラと距離があるから油断してたら、一気に距離を詰めて攻撃してきた。・・・あれはPSPであった牙獣走破かな。軽い射撃魔法ははじくんだよなぁ、あれ。

だが、こっちはパワーアップしてるんだ。


「ブレイドランチャー!」

「Blade launcher, fire」


まず一つ目の魔法はこれだ。見た目はほぼスティンガーブレイド・エクスキュージョンシフトのブレイドの展開量が少なくなった感じだ。だが、その分だけ弾速と貫通力を上げている。


「くっ!」


ザフィーラにきちんと命中したようだ。彼は回避型じゃなくて防御型だから、攻撃をすれば、まず受け止めるか受け流すかしようとするだろう。つまり、狙いさえ正確にしていれば、まずザフィーラに攻撃は当たる。あとは、ザフィーラの装甲を撃ち抜ける火力さえあればいい。


「・・・なかなかの威力だ。だが、それでは俺を止められん!」


一応さっきのは効いているようだけど、まだ浅いか。では・・・

?! 今度は左から突進か! なら、


「これでどうだっ!」

「Flash Braker」


今度は「フラッシュスマッシャー」の強化版だ。火力を重点的に上げているが、発生速度と弾速もカートリッジシステムによって上げている。・・・なんていうか、カートリッジシステムって結構便利だな。そのぶんカートリッジを使ってでかいのをぶっ放すと、身体に反動がくるらしいがな。


「っぐぅ!」


お、ザフィーラの動きが止まったか。なら、ここから近距離で攻めますかな。


『アリシア、代わるぞ』

『うん。後はまかせて』


アリシアは、俺と代わるとすぐに


「シグザール」

「All right, master. "saber form" set up.」


セイバーフォームを起動した。すると、シグザールが剣の柄の形に変形したんだが、ここにも変化があった。

まず、剣の鍔の部分が、あの翼の意匠になっていた。デバイスモードの時は鋭角に閉じていた翼が、この形のときは見事に翼を開いたような姿になっていた。その翼の中心にリボルバーが配置されていた。

また、形態の名前こそ変わっていなかったが、アリシアのバリアジャケットにも変化があった。以前は手足に装甲が追加されるだけだったが、今は銀色の鎧を着たような感じになっている。・・・その姿はFateのセイバー、というよりはセイバー・リリィの方が近い。露出度的には。髪型は違うけど。俺としては、鎧と一緒に布地も追加されたんで嬉しい限りだが。

とにかく、新しくなったセイバーフォームのイメージは「姫騎士」だ。鎧を着ていることから、装甲は明らかに前より上がっているし、


「Blitz Accel」

「何っ?!」

「はぁっ!」


ザフィーラは、装甲が追加されたからこっちのスピードが落ちるのだろうと思っていたんだろうが、そんなことはない。むしろ、短距離のスピードならセイバーフォームの方が上だ。長距離の高速移動こそ出来なくなってはいるが、近距離戦において長距離の高速移動は不要だし、大きな弱点とはならないだろう。相手に距離をとられたら、こっちもフォームチェンジすればいいんだからな。

上手く不意を突いて攻撃したアリシアだったが、


「ぐっ」

「くっ」


さすがは盾の守護獣、ぎりぎりでこっちの攻撃をガードしてきた。


「? さっきと雰囲気が違う・・・」

「わたしがアリシア。アリシア・テスタロッサです」

「なるほど、そういうことか。では、ゆくぞ、アリシア!」


ザフィーラはこっちが交代したことに気づいたか。まぁ、いいだろう。ここからが本番だからな。


「ふっ!」

アリシアがシグザールを横薙ぎに振るう。だが、

「っ、甘い! うおぉ!」

ザフィーラはそれを右腕の手甲で受け止めつつ、すぐに左腕からストレートを放つ。

「Blitz Accel」

「はぁ!」

アリシアはそのストレートを回避して、ザフィーラの右斜め後ろへ回り込み、上段から斬撃を放つ。

「ぬぅ!」

その攻撃を、ザフィーラはなんとか受け止めるが、体勢を崩した。

「てぇ!」

その隙を逃さず、アリシアは身体をひねって再びシグザールを横薙ぎに振って追撃を加えるが、

「ふんっ! おおぉ!」

それをザフィーラも身体を回転させ、右腕を振ってはじいた。そして、その回転の勢いに乗って回し蹴りを放つが、

「Reflection」

アリシアはシールドを張ってその蹴りをはじき、

「はあぁ!」

「?! ぐぅっ!」

大きく体勢を崩したザフィーラに、アリシアは上段からの一撃を加えた。さすがにこれにはザフィーラも防御が間に合わなかったようで、アリシアはザフィーラに一太刀を浴びせることができた。

しかし、アリシアも戦い方が上手くなっているというか。さっきの「リフレクション」は相手の攻撃をはじき返す効果のあるシールドなんだけど、それを斜めに張ったんだよね。こうすると、相手の攻撃は滑って外れるし、なによりシールドに掛かる負担が少なくて済むし。

うん、アリシアはこのまま任せていても大丈夫そうなんで、周りを窺ってみたんだが、・・・これはひどい。

まず、なのはが「アクセルシューター」でヴィータを完封中。ヴィータも全方位のバリアを張って耐えてはいるが、そのバリアに罅が入ってきているし、このままだとヴィータはジリ貧だな。

で、フェイトの方だが、シグナムと砲撃級の魔法の撃ち合いをしていた。・・・フェイトの方を見てみたらさ、二人とも砲撃魔法を放ったのが見えたんだよ。

あぁ、あれはシグナムが「飛竜一閃」で、フェイトが「プラズマスマッシャー」だったっけ。・・・バトルマニアの戦いには関わりたくないなぁ。だけど、まだ二度目のフェイトとの模擬戦はやってないし、少なくともフェイトとはもう一度戦わないといけないんだよなぁ。

まぁ、なのはとフェイトも無事らしいし、むしろ微妙に押している感じがある。このまま行けばヴォルケンリッターを捕らえられるかも、とか思ってたら、


なんか、やばい砲撃が見えたんだ。


あっ・・・。・・・・・・忘れてたああぁ!!!

やっぱりクロノは結界内にいたシャマルの捕獲に失敗したのね。リーゼロッテに邪魔されて。

この砲撃によって、見事に管理局員が張っていた結界が破壊され、


「む・・・。悪いが、今回は引かせてもらう」

「あっ!」


ヴォルケンリッターの皆さんは退却してしまった。

ま、無理をして追う必要もないだろう。最悪、さっきみたいに闇の書のページを利用して攻撃されたらこっちがやばい。

なんにせよ、これにて2回目のヴォルケンリッター戦は終了だな。新たな問題も出てきたしな。ま、しばらくは戦闘はないだろう。闇の書についても調べないといけないことが出てきたし、ある程度の傷をヴォルケンリッターには負わせたし。

さて、そろそろ猫姉妹の介入も激しくなってくるだろうが、俺も頑張って見ますかな。・・・まずは、日常のヴォルケンリッターに接触しておこうか。





あとがき

いまさらですが、シグザールについて少し補足をします。シグザールの色は銀色が基本で、コアの色は青です。待機状態はバルディッシュを銀色にした感じです。・・・イメージがわかりづらくてすみません。

それと、新セイバーフォームのときのアリシア(とオリ主)の格好ですが、セイバー・リリィのような鎧(色は銀色)の格好です。ただし、セイバー・リリィとは違い、肘から肩までの部分の布地が無く、肌が露出しております。また、セイバー・リリィのものよりスカート丈も少し短く、グリーブ(金属製のロングブーツみたいなもの)とぱんつの間の領域(とぱんつそのもの)が見えやすくなっていたりします。

オリ主は以前よりも露出が少なくなっていて安心していますが、そんなことはありません。むしろこっちの方がある意味やばいかも。着エロ、とでもいいますか・・・。こちらは、イメージが浮かびやすいでしょうか?

今回は、ヴォルケンリッターが撤退してしまったので、オリ主やアリシアが大技を出すまでには至りませでした。この後は、原作でもなのはとフェイトしかヴォルケンリッターとは戦わないので、最終戦までお披露目は無いと思います。

次回は日常です。でも、オリ主がシグナムさんたちに突撃(戦闘的な意味に非ず)をかけるかもしれません。


追伸:戦闘シーンを少し修正しました。・・・やっぱり、戦闘シーンを書くのは難しいです。



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その6
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/10 22:40

ヴォルケンリッターも退却してしまったんで、とりあえず、今は本部、つまりハラオウン家に帰ってきている。なのはとユーノも一緒だ。

この流れからすると闇の書の話、というかヴォルケンリッターについての話が始まるのかな。

まぁ、俺も詳しくは知らないんで、原作では語られなかった部分の話が聞けるのはいい機会だ。

それで、しばらくは闇の書についての管理局が持っていたデータについての話が続いたんだが、あのヴォルケンリッターが擬似生命体だという説明になったとき、


「あの、使い魔でも人間でもない擬似生命って言うと、わたしみたいな・・・?」


とかフェイトが言い出した。うーん、まだ吹っ切れてはいなかったか。

で、この後フェイトのフルボッコタイムが始まった。もちろん、いい意味でだ。ハラオウン母子は、感情と理性の両方でフェイトは人間だと諭した。

だが、俺はそんなに甘くはないぞ?


『・・・アリシア、代わってくれ』

『・・・? いいけど、何をするの?』

「『見ていればわかるさ』・・・フェイト。」

「え、なに、アリシア・・・じゃなくてシグレ?」


だってさ、そういうことを言う娘にはおしおきが必要だよね? というわけで、


「・・・てい!」

「ひゃわっ!」


俺はくすぐりの刑を実行した。もちろん、容赦はしない。どんなにフェイトが笑い、そして泣いてもその手は止めない。くすぐりの基本である脇やわき腹はもちろん、俺の今の身体が女の子であることを利用して、男が触ったら訴えられるような場所まで手を入れてくすぐってやった。


「君が! 泣くまで! くすぐるのを! 止めない!!」

「ひゃわ! ・・・~っ! もう・・・ふぁっ・・・許して・・・くぅ!」

「もうフェイトちゃんは泣いてるの・・・」

「・・・君はいつまでやってる気だ」

「無論、飽きるまで」

「おい!」


結局、俺はアルフとクロノに羽交い絞めにされてフェイトから引き剥がされるまでくすぐり続けた。いや~、フェイトは感度良好だね! くすぐりがよく効く娘だ。

しかしクロノ、そしてユーノ。お前ら、フェイトをくすぐる俺のことをどこかうらやましそうな目で見ていたな? くすぐられているフェイトのほうにも顔を赤らめながらも見ていたし。

わかっているさ、あぁわかっているとも。俺が明らかにやりすぎな部分にまでくすぐりを敢行してもしばらく俺を止めなかった理由なんてな。あんな美少女の艶姿なんてめったに見れないもんなぁ? 

・・・て、目的はそうじゃなかったな。


「なぁ、フェイト」

「・・・はぁっ・・・ふぅ・・・なに・・・シグレ?」

「もう、あんなことは言わないでくれよ」

「えっ」

「自分は人間じゃない、とかさ。ここにいる人はみんなフェイトのことを一人の人間として見てるし、大切に思っているんだ。フェイトが自分のことを卑下するのは、ここにいるみんなの想いを無下にすることと同じなんだよ」

「あっ・・・うん。」

「じゃあ、僕からは以上だ。あとは、アリシアからも一言あるそうだ。『アリシア、代わるぞ』『うん』・・・フェイト。もし、フェイトにひどいこと言うような人がいたら、わたしがその人をやっつけるから! 妹を守るのはお姉ちゃんの役目だからね!」

「アリシア・・・」


うん。これでフェイトが不用意に自分自身をけなすような発言はしなくなるだろう。だが、ここは念のために釘を刺しておくか。


「ちなみに、もし、また同じような発言をしたら、またくすぐるんでよろしく!」

「えっ!・・・あうぅ。」


よし、これで完封だな! フェイトも顔を赤らめて恥ずかしそうにしてたし、もうこんな発言をしようとは思わないだろう。・・・間違っても、またくすぐってもらいたいなんて考えてないよな? フェイトはどこかMな気質があるから心配になってきたぞ。ま、俺の思い過ごしだよな! うん、きっとそうだ!

このあとは、ヴォルケンリッターにも感情はありそうだ、というか確実に人格がある、ということや、彼らの目的はどうやら周囲に害を与えることじゃなくて、単に主と暮らたいだけらしいということについて話し合った。

で、その結論はというと、


「ユーノ、君に頼みたいことがある」

「いいけど、何?」


無限書庫にて闇の書についてのデータを集める、ということになった。その理由としては、闇の書を完成させれば持ち主の命も喰らってしまうのに、ヴォルケンリッターが闇の書を完成させて主を助ける、と言っていたことだった。

闇の書のプログラムであるヴォルケンリッターが、主を助ける為と言ってページの菟集をするということは、きっとそこには管理局がつかんでいない何かがあるはずだ、とはクロノの弁。

これで少し早く「夜天の書」にたどりつけるといいんだが。・・・また夢でみた、て言って夜天の書の名前を言ってみるかな。グレアムさんたちに目をつけられる危険性はでてくるが、それでもクロノに言う価値はあると思う。

なんにせよ、全部明日になってからか、と考えていたら、


「そうだ、時雨さん。実はマリエルから受け取っていたものがあるの」


て、リンディさんが言ってきた。一体、何なのだろう。


「? なんですか、一体」

「じゃーん! 新しいスピーカーです!」


リンディさんが取り出したものは、今アリシアがつけているペンダント型スピーカーと同じようなものだった。

ただ、リンディさんの説明によると、俺の念話が届く範囲なら、このスピーカーを自由に動かすことができる、とのこと。

つまり、俺がアリシアから離れた場所で自立行動ができる、というわけだ。まぁ、俺の本体はアリシアの中のままだから、アリシアから離れた場所で会話するにはマルチタスクができなきゃならないんだよな。

ま、魔導師となった俺には可能なんだけど。マルチタスクができないと魔導師はやってられないからな。

せっかくこんな素敵なアイテムを手に入れたんだ。なら、やることはひとつだ。

・・・ちなみに、この新スピーカーには録画機能もついている。いや、だからどうした、というわけでもないがな。いやマジで。















自立行動を手に入れた俺は、早速行動を起こすことにした。そう、今日は学校で体育がある! ゆえに、その時に俺は学校を抜け出す!!

アリシアは体育の時にペンダントをはずすからな。そのときがチャンスだ。

なに? 着替えシーンは記録に残さないのかって?

そんなものはなぁ、魂に焼き付けるんだよ!!! 断じて記録に残していいものじゃないんだ!!

というわけで、現在俺は海鳴市上空にいる。その目的は、日常のヴォルケンリッターに会うことだ。

といっても、八神家の場所は知らないんで、まずは剣道場を探すことにした。

何故剣道場なのか気になる人もいるだろう。実は、この町のどこかの剣道場でシグナムが非常勤の講師をやっているのだ。

そう、シグナムはニートではない! だれだ、シグナムをニート侍だとか言い出したのは。彼女はちゃんと働いているぞ。半年も前からな!

さてと。確か家で剣道場を開いているところだったはずだから、大きめの日本家屋を探すかな。

・・・ん? あれは高町家だから違うな。・・・ん? あっちは知らない家だな。少し覗いてみるか。おじゃましまー・・・Oh・・・

いたよ、シグナムが。こんな時間に門下生が来ているわけもないから、剣道場なのか確認して帰る予定だったんだけどな。

まぁいい。むしろ好都合だな。今剣道場にはシグナム以外に人はいない。話をするなら今がいいだろう。では・・・


「何者だ?」


・・・へっ? いや、確かに俺は剣道場の縁側まで降りてきていたんだが、なんでさっきまで目の前で正座をして瞑想してたシグナムが俺(スピーカー)の後ろにいるんだろう?


「ん? この感じ、どこかで・・・」

「あー・・・どうも、御堂時雨です」

「?! お前はあのときの! だが、なぜそのペンダントだけなんだ?」

「そういえば、シグナムには話していなかったか。実は・・・」


まずは、俺について話さなきゃ駄目だな。・・・面倒だが仕方がない。


「・・・というわけなんだ。」

「俄かには信じられんことだ。だが・・・」

「うん。まぁ、実際に僕達と相対したザフィーラに聞けば確証は取れるかと思うよ」

「あぁ。そうだな。だが、今目の前にいるお前があのときに話していた者だということはわかる。それで御堂、私に何用だ?」

「特に用はない・・・かな。ただに日常のあなた達がどんな風に生活してるのかなって気になって」

「そうか。だが、我らが主の居場所は教えんぞ」

「いや、僕としても近づく気はないから」


だって、八神家を監視している猫姉妹に見つかったら厄介だしな。


「ふむ。ならいいが・・・」

「あ、そうだ。ひとつ聞きたいことがあったんだ」

「? なんだ?」


ここで、まずはシグナムに切り出すのがいいだろう。


「夜天の書って言葉に聞き覚えは無い?」

「?! いや、無いが・・・」

「本当に? 闇の書の本当の名前なんだけど」

「なんだと?! 貴様、どこでそれを!」

「管理局の無限書庫に記録があったんだ」


嘘は言ってないぜ? 実際、あそこに資料はあるからな。まだ見つかってはいないけど。


「・・・その情報を我々に伝えてどうする気だ?」

「いや、ただ、このまま闇の書を完成させても、はやてを助けることはできないんだよ」

「主の名をなぜ・・・! あのとき、ヴィータが言っていたか・・・。それより、主を助けられないとはどういう意味だ?」

「過去の事例から考えると、このまま闇の書が完成すると、まず闇の書は持ち主を取り込んでから暴走してしまうんだ」

「そんなばかな・・・」

「だけど、それは事実だよ。闇の書が完成したときの過去の事件は全部そうなっているから。むしろ、こちらが聞きたいくらいなんだ。どうやって闇の書を完成させれば、暴走を起こさせなくて済むのかをね」

「・・・・・・」

「そこでキーワードになってくるのが、闇の書の本当の名前、つまり夜天の書、なんだけど、この辺について何か知っていることは無い?」

「いや、だが・・・その名前には何か引っかかる」

「そう。じゃあ、後で他のみんなにも聞いてみてくれると助かる。多分、これがはやてを助ける鍵になると思うから」


なにせ、闇の書の改変に気付くために必要なことだからな。これについて早い段階で気付ければ、PSP版のように短期間でもリインフォースを残すことができるかもしれない。


「・・・わかった。後で他の騎士たちにも聞いてみるとしよう」

「ありがとう。じゃあ、僕はこの辺で失礼するよ。そろそろ戻らないとアリシアに心配されるし」

「待て御堂。なぜ、お前はこちらのことも気にかける?」

「・・・出来る限りハッピーエンドに近づけたいから、だな」

「それはどういう意味だ?」

「みんなが少しでも幸せになればいいなって思ってるのさ。ただそれだけだよ」

「・・・そうか」

「もう行っていい?」

「あぁ」


・・・なんか、俺はまた奇麗事を吐いた気がするな。こんなことを言えた立場じゃないのにな。ただ、出来る限りみんなに幸せになって欲しいのは本当だ。そのために、こんな俺でも出来ることがあれば、なんだってやるさ。

これで、ヴォルケンリッター側への仕込みは終わった。後は、クロノにも教えるだけだな。

ま、今はアリシアの元へ戻りますか。今から最速で戻れば、生着替えを見ることができるしな!








あとがき

オリ主がまた頑張る回でした。結末を少しでも優しいものに変える為に奔走しております。また、少しずつですが、オリ主が変わってきています。でも相変わらずの紳士ですが。

前回、戦闘描写が駄目駄目だったので、色々と読み漁ってみたのですが、戦闘中は台詞をあまり入れなくていいようですね。そういえば、Fateもそんな感じでしたし、原作でも魔法名を言わずに魔法を放っていることが結構ありましたし。私はもっと精進しなければなりませんね。

しかし、最近は地の文が少ない気がしますね。以前は台詞が少ないかなって思っていたのですが、いつのまにか逆転していますね。どうにかしないとまずいかな・・・。

次回は・・・まだ決めていなかったりします。はやくA'sを見ないと・・・。


追伸:なのはの同人誌をたくさん買い込んだのですが、なのはが魔王化しているのがほとんどだったり・・・。私の作品では魔王化なんてさせませんよ。







[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その7
Name: かに◆c28e9226 ID:7b561a68
Date: 2010/03/12 20:58
さて、ヴォルケンリッターには話をしたことだし、あとはクロノにも夜天の書のことを伝えるだけだな。これで、少しでも早く対策が練れるようになればいいんだが。

で、今は夜だ。今日はヴォルケンリッターの方にも動きは無かったんで、アリシアとフェイトはもう寝ている。というか、もう寝とけと俺が言っておいた。子供の仕事は早寝早起きだ。異論は認める。

そんでもって、絶賛調べ物中のクロノのところへ俺(ペンダント)は向かっている。おっ、今は一息ついているところだったか。ちょうどいい。


「なあクロノ、ちょっと話があるんだが」

「ん、なんだ?」

「闇の書について、夢で見たことがあって」

「なに?! 一体何を見たんだ?」

「今、ユーノが無限書庫で闇の書について調べ物中だろ? それで、ユーノが闇の書についての資料を見つけてくる夢をみたんだ」

「・・・それで?」

「そのなかで、闇の書の本当の名前がわかるんだ。たしか、夜天の書、っていう名前だ」

「・・・どういうことなんだ?」


まぁ、管理局が長年追い続けていたロストロギアの名前が、実は本当の名前じゃなかったとか言われたら、困惑するよな。だが、名前が違う理由もちゃんとある。


「その資料の中だと、夜天の書が悪意のある改造を受けた結果が闇の書だ、ということなんだ。」

「・・・つまり、いままで事件を起してきた闇の書は、それが本性ではなかった、ということか。」

「そういうことだね。夜天の書に主の命を奪うなんて機能もなかったらしいし。でも、それなら・・・」

「あの守護騎士たちの言動も理解できる・・・か。だが、彼らはなぜ改変されたことを知らないんだ?」

「それに関してはわからない。僕が夢で見れればいいんだけど、そう都合よく見れるかどうかもわからないし・・・」

「・・・そうだな。とりあえず、ユーノに夜天の書についての資料も探すように言っておこう」

「助かる。僕の方も、今度守護騎士に会ったら、その辺を聞いてみるよ」

「あぁ、頼んだ」


とりあえず、クロノに伝えることもできた。これで、俺が今できることは全部終わったな。ま、調べ物の結果は焦ってもすぐには出てこないだろうし、蒔いた種が芽を出すまで待つことにしますか。










翌日の学校にて、フェイトとアリシアの携帯を買いに行くことが決まった。で、二人とも、携帯のカタログに目を通してはいたが、種類が多くてなかなか選べないようだ。


「でもやっぱ、色とデザインが大事でしょう」

「操作性も大事だよ〜」

「外部メモリがついてると、いろいろ便利でいいんだけど・・・」


しかも、アリサ・なのは・すずかもいろんなことを言ってくるし。おいお前ら、そんなこと言ってると、さらにアリシアとフェイトは悩むんだが・・・。

ま、結局フェイトとアリシアは携帯を買うことができた。デザイン重視で買ったんかな、あれは。フェイトはバルディッシュっぽいカラーの携帯だし、アリシアもシグザールっぽいカラーの携帯だったからな。

・・・俺には念話があるからいいさ。別に携帯なんか羨ましくはないんだからな。

そんなこんなで、今日も一日平和に過ごせると思っていたんだが、こともあろうにエイミィが、


「ま、そうそう非常事態なんてあるわけが・・・」


なんてフラグを建てるもんだから、非常事態が発生しました。・・・フラグ管理には気をつけようぜぇ、エイミィさんよぉ。

どんな非常事態かだって? ヴォルケンリッターの件以外に何があるっていうんだ。昨日は大人しかったけど、今日は行動に出るのか。ま、いいか。俺も聞きたいことがあるし・・・と思ってからあることに気づいた。

・・・俺はここで待機することにしよう。アリシアは納得しないかもだが、その前に


「エイミィ、わたしが行く」

「私もだ」


って、フェイトとアルフが言い出してくれたから、心配はないだろう。これで、今画面に映し出されているシグナムとザフィーラの相手は彼女らがしてくれる。そして、後で出てくるヴィータも、なのはが対応してくれるだろうしな。

今回は、フェイトとなのはに一騎打ちをさせてあげよう。本人もそれを望んでいるだろうし。・・・何より、原作通りならアレが起こるはずだ。


「フェイト、気をつけてね」

「うん、大丈夫だよ、アリシア」


ま、すべては一騎打ちが始まってからだ。











フェイトがシグナムのいるところに向かってしばらくしたときに、今度は別の世界でヴィータが現れたんで、なのはが現場に向かった。ここまでは原作通りの流れだ。

で、今画面には話し合いをしようとしているなのはと、ソニックフォームになったフェイトが映し出されている。

なのはの方は、原作と違って、ちゃんとヴィータとお話ができているようだ。ヴィータもなのはの名前をちゃんと覚えていたようだし。

なのはが必死に、このまま闇の書を完成させてもはやてが死んでしまうと訴えてはいるが、ヴィータの方も、他に方法がないんだからしょうがない、とほぼ泣き叫びながら反論している。・・・結局、事情がお互いに伝わってもどうしようもないことはあるんだな。それでも、まだあきらめたくはないが。

一方、フェイトの方は、シグナムとの一騎打ちも佳境になっていた。お互いが満身創痍、次の一撃で勝負が決まるだろう、という感じだ。

さて、こちらの勝負はどうなるのかな、と思って俺は画面を見ていた。そう、俺はこの時、この後フェイトがどうなるかを忘れていたんだ。次の瞬間、


いきなり フェイトの後ろに 仮面の男が現れて、 フェイトの胸を その腕が 貫いた

                 



                 その腕には リンカーコアが 握られていた







わかってはいたさ。あぁ、わかっていたとも! こうなるってことぐらいはなぁ!

だけど、これを目の前で行われて、黙って見ているなんて・・・できるわけがないだろ?


『・・・アリシア』

『・・・なに?』

『・・・行くぞ』

『・・・うん』


俺は/わたしは シグザールを起動すると すぐに フェイトの元へ 向かった。

フォームはセイバーフォームで、カートリッジもロード済みだ。いつでも全力で斬りかかれる。

やることなんて ただひとつ。


・・・・・・奴を・・・殺す!


俺/わたしは、奴のすぐ後ろに転移すると、


「はああああぁぁぁ!!!!」


全力で斬りかかった。転移魔法を発動している時から「カリバーン」は発動済み。攻撃動作も転移中から行っている。非殺傷設定も解除している。そして、なにより、


奴の動きが ものすごく 遅く 視える。


必中のタイミングのはずだった。だが、奴は魔力刃が奴の体の半分を通過したあたりで、シグナムの後ろへ転移した。

そして、


「これを持って行け」


と言って、フェイトから菟集したリンカーコアをシグナムに押し付けると、この場から消えた。・・・今追っても意味はないだろう。それに、今はフェイトの方が心配だ。


「! フェイトっ」


崩れ落ちるフェイトを俺/わたしは抱きかかえた。フェイトの体温を感じて俺/わたしは安心するが、急いで治療を受けさせなければならない状況なのは間違いない。


「・・・すまない、テスタロッサ、御堂」


シグナムが声をかけてきた。・・・彼女には何の罪もない。悪いのはあの仮面の男だ。だから、


「シグナム、あなたが悪いわけではありません」

「だから、あまり気に病まないでくれ。フェイトとの一騎打ちはまた今度だ」

「?! ・・・すまない。恩に着る」


俺/わたしがそう言うと、シグナムは最後に一言残して、主の元へと帰っていった。

しかし、なんで最後にシグナムは驚いた顔をしたのだろう? 俺/わたしがシグナムを許したことが意外だったのだろうか?

と、そこまで考えたところで、あることに気付いた。


今、俺/わたし が アリシア/お兄ちゃん と同時に表に出ていることに。


それに気づいた時、激しい頭痛が俺/わたしを襲った。だけど、まだ俺/わたしは、ここで倒れるわけにはいかない…!

なんとかフェイトを抱えたまま家に戻ると、俺/わたしはそのまま気を失った。







あとがき

オリ主大爆発の回でした。アリシアも大爆発しておりますが。それに、何かおかしな事態になっていますが、次回、アリシアの身体に起こったことについての説明が入ります。これが、ゆくゆくはオリ主とアリシアの切り札になります。

昨日は、私の方の諸事情によりパソコンに触れなかったので、更新も感想掲示板への書き込みもできませんでした。すみません。

A's編も、終結に向けて進んでいきます。原作がシリアスになっていくので、私の作品でもシリアスになってしまっています。・・・早く番外編で楽しい日常が書きたいです。






[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その8(少し修正)
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/14 09:47
「・・・しらない天井だ」


いや、ほら、やっぱりお約束って大事だろ?

というわけで、俺、というかアリシアは今本局の病室にいる。となりのベッドではフェイトも寝ている。

どうやら、アリシアより先に俺が意識を取り戻したようだな。・・・ちょっとアリシアに呼びかけてみるかな。


『アリシア、起きてるか?』

『・・・ん・・・んぅ・・・』


よし、まだ寝てるみたいだな。念話なのに寝言というか寝息みたいなのが聞こえてきたがな。こういうものなのか? 

しかし、なんか頭が痛い。ひどい痛みというわけでも無いが、こう、なんていうか頭が重い感じだ。脳を酷使した感じというか、一夜漬けをした朝みたいな・・・


「あら、起きたのね」


そんなことを考えていたら、いつのまにか部屋にリンディさんが入ってきていた。


「今起きているのは僕だけですけどね」

「そう。アリシアさんと・・・フェイトさんはまだ寝ているのね」


しかし、フェイトが倒れるのは当然として、なんでアリシアは倒れることになったんだ? なんか頭痛がしたのは覚えているが。


「そういえば、なんで僕らは気を失ったんですかね? 頭痛がしたのは覚えているんですが・・・」

「それについて、少し説明をしましょうか」


というわけで、リンディさんから事のいきさつを聞いた。

俺とアリシアが倒れたあと、あわてて戻ってきたアルフがアリシアとフェイトを急いでアースラの医務室へと運んでいったらしい。それで、艦内で検査をした後、本局の病室に移って今に至る、とのことだ。

で、なんで俺とアリシアに頭痛が襲ったかというと、脳が負荷に耐え切れなくなったからだそうだ。あの時、アリシアの脳は俺とアリシア二人分の処理を同時におこなっていたんだと。それだけなら、日常とあまり変わらない状態だ。しかし、あの時は俺もアリシアも全力で魔法を構築、つまり二人ともマルチタスクをフルに実行していた状態だ。

二人分のマルチタスクの処理を任されたアリシアの脳には、その多大な負荷がかかったため俺とアリシアは気を失うことになったらしい。頭痛も、そのときの症状だそうだ。

ただ、ひとつ恐ろしいお知らせがリンディさんから伝えられた。

なんでも、今回の負荷の影響で、アリシアの脳のリミッターが一部解除されてしまったんだそうだ。一応、検査の結果では身体が壊れるほどの力が出せるようになったわけではないらしいので、一安心ではあるが。それに、リミッターが外れたことで、脳のキャパシティも増えた、つまり、今回のようにアリシアと俺が同時に魔法を発動させることが可能になったんだ。

もっとも、長時間行うと、また気を失うことになるらしいがな。時間にして3分以上は危険だとか。・・・3分間限定のブーストていうといろんな例がありすぎて、逆に挙げにくいな。

ま、現状がわかってよかった。これから最終戦も控えてるんだし、切り札が増えるのはいいことだ。

そんなことをしているうちに、


「んっ・・・」

『んぅ・・・』

「あら」


アリシアとフェイトが起きたようだ。さて、俺はアリシアと交代しますか。











今、俺(ペンダント)はクロノやエイミィ、リーゼロッテと一緒にいる。目的は、無限書庫での調べ物の結果を聞く為だ。

ここで、ひとつ嬉しいお知らせがある。なんと、この時点で闇の書の暴走した防衛プログラムを除去する方法が固まった。

ユーノに夜天の書についてのデータを探すように言ったのが功を奏したのか、夜天の書の管理者権限の取得方法についての資料が見つかったんだ。

その資料が決め手となって、闇の書のバグを取り除く作戦が練られた。その方法は原作と一緒だが、今回は闇の書が完成する前の時点から準備が出来るのだ。これは大きなアドバンテージだな。

もっとも、闇の書の主が見つからないことには話が進まない。だけど、今のヴォルケンリッターとは話し合いが出来る状態だ。今、俺はペンダントの録画・録音機能を使って、ユーノが調べてきてくれた情報を保存している。これを後でシグナムたちに見せればOKだ。

うん、順調に進んでるな。これならラストバトルは防衛プログラムだけになるかもしれない。

あとの憂いはグレアムさんと猫姉妹なんだが、


「ところでロッテ、どこか怪我をしたのか?」

「うん、ちょっとね~。なに、クロすけ、心配してくれるの?」


・・・どうやらクロノがリーゼロッテの異常に気付いたらしい。ま、リーゼロッテに怪我をさせたのは俺とアリシアなんだけどな。非殺傷設定を切った状態での攻撃だったからか、ミッドチルダの魔法技術をもってしてもまだ完治はしていないらしいな。包帯を巻いてるようではないんだけど。

ま、恨むんなら、俺とアリシアの目の前でフェイトを傷つけた自身のおろかさを恨むんだな。正直、俺までキレるとは思わなかったが。

そういえば、こっちで暮らし始めて、もう半年以上が経つんだな。・・・俺も、もうここの住人なんだな。本当に。

とりあえず、そろそろクロノが今回の事件の黒幕に気付くだろう。そっちに関してはこれ以上俺は絡めないんで、クロノに任せるとするか。頼んだぜ、クロノ。











「学校よ! 私は帰ってきたぁ!!!」

「・・・お兄ちゃん?」

「ちょっと! いきなり叫ばないでよ!」

「「「あはは・・・」」」


当面の方針も決まったんで、しばらくアリシアとフェイトとなのはは待機となった。よって、学校に帰ってきたんで、思わず叫んでみたんだ。教室に入るときに。

いやぁ、アリサはいい突っ込み役だね。基本的にこの友達グループのほとんどが天然で構成されてるからな。すずかは比較的マシだが。

しかし、やっぱり日常はいい! このおだやかな空気が最高だ!


「久しぶりの学校なんだ。ここで叫ばなくていつ叫ぶ!」

「だから、そもそも叫ぶ必要がないでしょう!」

「いや、ある!」

「どこによ!」

「漢のハートがそうさせるのさ!」


え、全然おだやかじゃない? これが俺とアリサの日常会話ですがなにか?

だって、アリサはいい反応をしてくれるんだもん。なら、いじるしかじゃないか!

ちなみに、俺(ペンダント)はクラスに馴染んでいる。喋るペンダント(しかも時々浮く)なんて明らかにオーパーツなのに馴染んでいる。いや、俺としてはそのほうがいいんだけどね? でも、なんか常識が歪んでる気がするぜ。

ちなみに、俺はなぜか男子に「兄貴」と親しまれている。ま、いろいろと吹き込んだからな。そのたびにアリサに突っ込まれたが。その辺の話は、そのうちな。

こんな感じで束の間の日常を楽しんでいたんだが、ここですずかが、はやてのお見舞いに行こうって言い出した。

はやて、という名前になのはとフェイト、そしてアリシアが少し反応した。原作では、はやてと会ってもなのはやフェイトは闇の書の主だとは気付かなかったわけだが、今回はヴィータが言っていた「はやて」と同一人物なのかを知る手がかりはある。

確かシャマルがはやてに、ヴォルケンリッターの面々の名前は出さないで、と伝えているはずだが、こちらから名前を出せば、恐らくはやてはヴォルケンリッターが家にいることを話すだろう。

そうすれば、はやてが闇の書の主だと断定できる。だが、ここではやてが闇の書の主だと「管理局」に伝わるのはまずい。下手をすれば、グレアムさんと猫姉妹が予想外の動きをする可能性がある。そうなると、クロノに彼らを捕らえてもらうことができなくなるかもしれない。

さて、どうしたものか・・・ まぁ、まずは、はやてと会ってからだな。






あとがき

今回は短めですが、オリ主の新しい切り札についての説明が入りました。アリシアとのシンクロによる能力ブーストです。でも、使った後は能力は一時的に下がります。主に軽い頭痛のせいで。

次回、はやてとの邂逅、そしてヴォルケンリッターとの話し合いその2を予定しておりますが、まだ具体的な案が思いつきません。最近、妄想を走らせることが少ないので、ネタも少ないですし。次の更新は、少し時間が空くかもしれません。来週中には更新すると思います。










[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・閑話<いかにして兄となったか>
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/21 14:11
*この話は、A's編その5とその6の間あたりの話です



今日はヴォルケンリッターの動きも無いらしいとのことで、フェイトとアリシアはいつものメンバーで学校に登校することになった。

このところは頑張ってたからなぁ。ヴォルケンリッターと交渉したり戦ったりしたし。

ま、闇の書について何か分かるまでよっぽどのことが無い限り、俺達は待機らしいし、楽しい日常を送らせてもらいますか。


「「「「「「おはよう」」」」」」


5人娘は、教室に入ると必ず挨拶をする。いまどきの子供なのに礼儀正しいなと思うが、この学校がそもそも私立だし、どこぞの御曹司やら令嬢やらが通っている学校だしな。その辺のしつけは行き届いている子供が通ってる場所なんだよな。だから、


「おはよう」

「うん、おはよう」

「おはよう、兄貴!」

「おはよう、しぐれにぃ」


朝は元気な挨拶が交わされることになるんだが・・・なんで俺も含まれることになったんだろうな? だって、今の俺は傍から見れば喋るペンダント(時々浮く)だぜ? 明らかに異常な物体だぜ? なのに、なんで俺はクラスに溶け込んでいるんだろうな? 俺としては気兼ねなく喋れるんで気楽ではあるけど。

しかも、「兄」の称号を得ているし。どうしてこうなった。・・・いや、なんとなく心当たりはあるんだけど。だが、あんなことでこうなるとは・・・

とりあえず、そのときのことを振り返ってみようか。






フェイトとアリシアの転校初日は、クラスメイトによる質問攻めもアリサの機転でなんとかやり過ごせそうだった。だが、あくまで「やり過ごせそう」だったんだ。

みんな順番を守って質問をするようになったのはいいがクラスメイトに囲まれることは変わらないんで、アリシアとフェイトはまたあうあうすることになった。

アリシアとフェイトの困っている姿も可愛いんだが、このまま放っておく訳にもいかないと思ったんで、


「少年達よ、色々と聞きたい気持ちは分かる。だが、そんなことは一緒のクラスで過ごせば分かることだ。ある程度のことにはアリシアもフェイトも答えたんだし、そろそろ解放してくれ」


思わず喋ってしまった。

そのあとのことは、なんとなく想像がつくと思う。質問攻めの対象がアリシア・フェイトから俺に切り替わった。

しかし、なんていうか、まさか俺(ペンダント)が喋ることを「AIだから」で納得するとは思わなかった。人工無能は既にあると思うが、人工知能はまだ開発中だと思うんだが。てか、俺みたいな受け答えができるAIが完成したらニュースになるって。そこに疑問を持てよって思ったけど、まだ子供だからそんなことにまで気が回らないか。

ま、非日常は日常に紛れやすいってどっかで聞いたことがあるし、そんなもんかもしれない。多少の不思議にも適当な理由をつけて日常に溶け込ませてしまうというか。

なんにせよ、これで俺は外でも普通に喋ってよさそうだということが分かったんだし、もっとポジティブに行きますか。



で、次の日が兄貴Xデーとなった。

ことの始まりは、いつものメンバーでの雑談にて


「そういえば、ここの男子って割りとおとなしいよね」


と切り出したことだった。


「そう? 別に普通だと思うけど」

「いや、おとなしい方だよ。いたずらとかしないし」

「うん、確かにそういうことする子はいないの」

「普通はスカートめくりが流行ったりするんだがなぁ」

「そんなもの流行って欲しくないわよ!」

「? スカートめくりってなに?」


なんかフェイトが食いついて来たんで、


「スカートめくりはな、女の子のスカートをまくって、その中にあるぱんつを拝む行為さ」

「え・・・」

「ちょっと! 変なことを教えないでよ!」

「何が変なことか! 僕は質問に答えただけだ!」

「その答えが問題なのよ!」


思わず答えたんだが、アリサに噛み付かれることになった。しかし、アリサはいい反応をするなぁ。


「だいたい、いたずらなんてしない方が良いに決まってるじゃない」

「それはどうかな?」

「・・・どういう意味よ?」

「いたずらは、「悪戯」って書くように、たしかに悪いことだ。だが、いたずらをするのは重要なことだと僕は思う」

「・・・・・・」


何か、いつの間にかアリサやなのは・すずか・フェイト・アリシアだけじゃなくてクラスのみんなが耳を傾けている気がするが、気にせず続けるか。


「たとえば、さっき言ったスカートめくりを例に挙げよう。これを大人になってやったら、確実に警察のお世話になる。だが、子供のうちならばそうはならない」

「・・・だからってやっていいわけではないでしょう?」

「いや、罪に問われないからやれ、というわけじゃないんだ」

「じゃあ、何だって言うのよ?」

「手加減を知れ、ということだよ」

「・・・どういうこと?」

「男子はたいがい、女の子に興味を持つものだ。で、その表し方がわからなかったりするんでいたずらって形で出ることがある。それがスカートめくりだったりするわけだ。で、ここで一つ質問だ、アリサ。アリサは、スカートめくりをされたら、どんな気持ちだ?」

「そりゃあ、嫌に決まってるじゃない」

「でも、泣くほどではないよな」

「まぁ、そうね」

「だけど、スカートめくりよりももっと踏み込んだいたずらの場合、されたら泣いてしまう女の子が出てくるはずだ」

「そんなことを推奨しようっていうの!」

「いや、ここが重要なんだよ。つまり、悪戯の中でも冗談で済むものと、冗談では済まないものがある、ということがわかるようになるんだ。今挙げた例で言うと、スカートめくりは冗談で済むもの、女の子が泣いてしまうようなものは冗談では済まないものだな」


長くなってしまったが、そろそろ締めにしますかな。


「要するに、いたずらをすることで、どこまではやっても良くて、どこからはやってはいけないかを頭じゃなくて感覚で理解できるようになるんだ」

「言いたいことはわかるけど、でも、悪いことなんてしない方がいいじゃない」

「いたずらをすることで学ぶものは、いたずらをすること以外にも重要なものだからな。そもそも僕の言ういたずらは、後で笑って許せるものだ。それ以外は暴力と同じだと思ってるし」

「・・・・・・」

「で、そのいたずらをするためには、まず相手の気持ちを考えなきゃいけなくなる。だって、相手が泣いてしまうようなことをするわけにはいかないんだからな」

「・・・つまり、いたずらから相手を思いやる気持ちが生まれるってこと?」

「そんな感じかな。あとは、人との距離のとり方とかな。どこまで他人の事情に踏み込んでいいかっていうのも、こういうことの延長だと思うし」

「なんか、詭弁のような気がするわ・・・」

「うん。だって、僕が本当に言いたいのは良い子ぶるなってことだし」

「今までの話が台無しよ?!」

「HA HA HA☆ ま、今のうちにいたずらをしておかないと大人になってからが大変だからな」

「どういうことよ!」

「人が抱く感情って正しいものだけじゃないだろう?」

「・・・まぁ、そうね」

「そういう感情を吐き出す行為がいたずらなわけだよ。で、どの辺まではやっていいのかが分かっていれば、子供の時よりも制限がきつくなる大人になってからも正しくない感情をどうにかできるようになるわけだ」

「・・・・・・」

「逆に、子供の頃から良い子として育ってきてしまうと、将来自分の中にある正しくない感情をもてあますことになるだろうな。誰でもありえることなのに、たったそれだけの理由で最悪自己嫌悪で折れてしまう可能性だって出てきてしまう。僕はそれが一番心配だ」


なんせ、なのはとかフェイトとかがそんな感じだからな。ま、フェイトはまだ大丈夫そうだが、なのはが一番危険なんだよな。なのはは未だに「自分は良い子でいなきゃならない」とか思ってるはずだし。P・T事件の時は何度も家の門限を破ったりしてたけど、それはなのは自身の「正義感」がそうさせたわけだしな。

で、それがそのまま成長すると「悪魔じみた正義感」をもつ管理局員が出来上がるわけだ。なのはがあのまま進んだ場合、本当に「魔王」になってしまってもおかしくないと思うし。それだけは避けたいんだよなぁ。もうすこしなのはには頭をやわらかくして欲しい。


「それで、結局なにが言いたいのよ?」


アリサも少しは俺が言いたいことがわかったのかな。なんか態度が軟化してるし。


「あぁ、僕がいいたいのは、いたずらでもして自分の中の感情を正しいものも正しくないものも認めろ、ってことだな」

「なるほどね・・・」


とりあえず、アリサは納得したかな。では、耳を傾けていた少年達に声をかけますか。


「・・・というわけで少年達よ! スカートめくりを実行するのだ!」

「・・・って何をいいだすのよ!」


アーアー、キコエナイー


「諸君は女の子に興味は無いのか?! 服の下に隠された柔肌に興味はないのか?! 女の子の身体を見たくは無いのか?! いや、本当は見たいはずだ! なぜなら男の子であれば誰もが持つ感情のはずだからだ! 恥ずかしがらなくても良い! それは当たり前のことだ! だから諸君! あの長いスカートに隠された領域に挑むが良い! もっと見たいというのなら、別の方法を考えるが良い! 僕がそれを認めよう! 内に滾るその感情のままに、少年よ、今こそ立ち上がれ!!!」


「「「「「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」


うん。見事にクラスの男子には火が灯ったようだ。あとは、紳士としての心得を教えるだけだな。


「ただし!! もし女の子を泣かせた場合は、誠心誠意を込めて謝れ!! 女の子を泣かせるのは男としてやってはいけないことだ!! 諸君、いかなるときでも紳士であれ!! いいな!!!」

「「「「「「「「「「「「「「はいっ!!! 兄貴!!!!!」」」」」」」」」」」」」」

「もう、疲れたわ・・・」

「「「「あはは・・・」」」」


そんな感じで、俺は「兄」となったわけだ。







振り返ってみると、俺もなかなかバカなことを言ってるな。ま、いいか。


「兄貴、今日も一言お願いします!」


慕われるのに悪い気はしないしな。じゃ、俺(ペンダント)が浮遊可能になってから恒例となった朝礼(笑)をしますか。


「いいですか? 泣かせていいのは下衆だけです!!」

「「「「「「「「「「「「「「はいっ!!! 兄貴!!!!!」」」」」」」」」」」」」」

「では諸君! 今日も一日紳士であれ!!!」


さぁ、今日も一日、まったり頑張るか。


「うちの男子が毒されてる気がするわ・・・」

「すごい熱気なの」

「うん、男の子って元気なんだね」

「お兄ちゃんってすごいんだね」

「・・・なのはちゃんたちの将来が心配だね」

「・・・なのは達だけはアイツに毒されないように頑張りましょう、すずか」





あとがき

前回から時間が空いたにも関わらず、まさかの閑話でした。本編は明日更新できればいいなと思っております。

今回の話はどうでしょうか? おかしいところが多々ある気がしますが、日常でのオリ主はこんな感じです。他の閑話ネタとしては、なのはの逆上がり、があったりします。運動音痴には定番のネタですね。

最後に、またしても空UPしてしまってすみませんでした。



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その9
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/21 14:32
さて、はやてと邂逅することになったのはいいんだけど・・・

何も考えていなかったな。どうしよう。

原作だとはやてとなのは・フェイトには「すずかの友達」以外の情報は無かったわけだが、今は違う。既にヴィータから「はやて」という名前を聞いている。

つまり、今回の邂逅ではやてになんらかの魔力を感じた場合、はやてが闇の書の主だとなのはとフェイトが気付いてしまうかもしれない。

まぁ、なのはやフェイト、そしてアリシアが はやて=闇の書の主 ということに気付く分には問題ないように話は進んでいるから、この部分に関しては問題ない。

問題は、なのは達がはやてが主だと気付くと、管理局がはやてを闇の書の主だと断定するのと同じ状況になるということだ。しかも、闇の書がまだ完成されていない状態でだ。

管理局がはやての保護をしようとすれば、恐らくグレアムさんと猫姉妹はなんらかの強行手段に出るだろう。そうなると、クロノがグレアムさん達を拘束するのが間に合わなくなる可能性が出てくる。

ま、なるようにしかならないか。原作では、シグナムも確か「覚醒前の主に魔導師適正は無い」って言ってたし、なのは・フェイトは気付かない可能性が高い。ということは、はやて闇の書の主だと気付くのは2回目のお見舞いのときになるだろう。おそらく、ヴォルケンリッターと鉢合わせするだろうからな。

で、その2回目はクリスマス・イブ前後だったはずだから・・・あと一週間以上はあるか。なら、それまでにはクロノもグレアムさんを拘束する準備は出来ているだろうし、問題はないだろう。

なんて考えていたら、はやての病室の前まで来ていた。


「はやてちゃん、お見舞いにきたよ」

「「「「おじゃましまーす」」」」

「すずかちゃんとお友達やな。みんなおおきにな」


・・・ま、なんとかなるよな?








結局、なのはやフェイトは、はやてが闇の書の主だとは気付かなかった。もちろん、アリシアもだ。

まぁ、これは好都合だろう。これでグレアムさんたちが原作から大きく外れた行動には出ないだろうから、あとは原作より早めに行動を始めたクロノに捕まえてもらいますか。

そうすれば、もしかしたら猫姉妹による闇の書覚醒イベントも回避できるかもしれないし。あれは見ているだけでもかなりクるものがあるからな。


・・・正直、あの場面を見ることになったら、俺が猫姉妹を殺しかねないし。


最近妙に感情的になるんだよなぁ。生前はここまで感情的じゃあなかったんだが。アリシアに引きずられてんのかな。

とにかく、今回のはやてのお見舞いは無事に終わってよかった。はやてとなのは・フェイト・アリシアも仲良くなれたみたいだし。俺もはやてと喋れたし。

しかし、コテコテの大阪風じゃない関西弁は、なんか癒されるよなぁ。はやては大阪じゃなくて京都あたりの出身なんだろうか? それとも、ただ本人の喋り方がおだやかなだけだろうか。

帰り際に言われた


「みんな、今日はありがとう。また来てな?」


とか、かなり癒された。穏やかな関西弁はいいね! ヴォルケンリッターの気持ちも分かるな。

原作通りに事が進むなら、全ての決着がつくのはクリスマス・イヴだ。クリスマス・イヴまでもう少し、俺も気合をいれますかな。









12月22日夜、フェイトとアリシアは高町家の夕食に招待された。なんでも、高町家はイヴの日は忙しいんで、少し早めにクリスマスなディナーを食べるとの事。

翠屋って人気のある喫茶店というかケーキ屋だからな。食事中にもイヴの日は深夜まで営業するっていう話をしてたし。

で、高町家からの帰る途中で、携帯がメールを受信した。その内容はもちろん、明日23日にはやてにプレゼントを持っていく、ということに関しての確認だ。ちなみに、はやて自身には知らせていない。いわゆるサプライズってやつだ。

・・・気付いてる人もいるだろうが、Xデーは明日なんだ。うん、俺も今まで忘れてたんだが、クリスマス・イヴといっても、24日未明のことなんだよね。

まぁいいさ。なるようになるだろう。俺だけ不安になってても仕方が無いしな。それに、あまり俺が不安がってるとアリシアにも伝わっちゃうしな。アリシアには余計な心配はかけたくないし。


「? どうしたの、お兄ちゃん?」

「いや、明日どうやってはやてを驚かそうか考えてるんだ」

「シグレも何かプレゼントを用意してるの?」

「いんや。文字通り驚かそうとしてるだけだ。思いっきりな」

「・・・駄目だよお兄ちゃん」

「そうだよ。はやてに負担をかけるようなことはしちゃ駄目だと思うよ」

「そこで引き下がる僕ではない! ・・・ま、相手が病人なのは分かってるから、その辺は考えてるよ」

「ならいいんだけど・・・」


ま、適当にごまかしてれば大丈夫だな。日ごろの行いが物を言うんだぜ。どんな行いかは言及しないでおくが。こうやってフェイトとアリシアが突っ込みに回るようになれば、少しは天然が治るだろう。・・・無理かもしれないと思うときも多々あるんだが、ここでは割愛させてもらう。

そんなこんなで翌日23日、いつもの5人娘ではやての病室に向かうことになった。もう少し経てば6人娘になるんだよな。はやてが加わるだろうから。

しかし、こんだけ美少女が固まっているのにもかかわらず、この娘達の周りには男っ気が無いんだよな。・・・こんどこの娘達の家族(主に男の方)に事情を聞いてみるか。二次創作では、高町さんの男衆が何かしてたりするんだが、実際はそうじゃないだろう。いや、そうじゃないと信じたい。

そんな益体も無いことを考えていたら、もうはやての病室の目の前だった。・・・前にもこんなことがあった気がするが、気のせいだろう。

それでは、既に病室に来ているヴォルケンリッターの方とご対面と行きますか。


「「「「「おじゃましまー・・・」」」」」

「やっほーシグナムさん、久しぶり!! 他の皆さんも久しぶり! 元気にしてた?」

「「「「・・・・・・」」」」

「「「・・・・・・」」」

「あれ、時雨さんはシグナムたちと知り合いだったん?」

「えっと、わたしはシャマルさんとお会いしたことはあるんだけど・・・」

「・・・アンタは必ず何かやってくれるわねぇ」

「いやぁ、照れるなぁ」

「褒めてないから!」


勢いあまって、場をカオスにしてしまった。原作なら睨み付けてくるはずのヴィータも目が点だし。みんなあっけにとられてる感じだ。


「・・・サプライズは成功だな」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう! どうするのよ、この空気は!」

「テラカオスwww とでも言えばいいかと」

「ふざけたこと言ってないで、アンタがこの場をなんとかしなさいよ!」


うん。このままじゃ話が進まないし、事情説明をしますか。

まず、俺がシグナムと面識があることから説明しないとな。そのためには・・・


「よっ・・・と」

「浮いたああああ?!」


あ・・・ヴィータは、というかシグナム以外の八神家の人々は俺(ペンダント)が浮いて動けるのを知らなかったんだな。叫んだのはヴィータだけだったが、シャマルとはやても顔が驚いてるし。ザフィーラはあまり驚かなかったみたいだけど。


「またつまらぬものを驚かせてしまった・・・」

「アンタねぇ・・・」

「つまらぬものってあたしのことか?!」

「いや、今のは言葉のあやだから気にしないでくれ」


なんか話が本当に進まないんだが・・・。

このあと、なんとか俺がシグナムと知り合った経緯、俺が体育の時間中に学校から抜け出した時に町の剣道場で話をした、ということを説明したんだが、今度は


「時雨君だけシグナムさんとお話しててずるいの!」

「てかシグナム、何でこんな妙な物体と初対面で普通に話ができるんだよ?」

「自分で言うのもなんだけど、まさにUFOだしな、今の状態の僕って」


なのはが食いついてきて、ヴィータがシグナムに突っ込みを入れていた。そんな中、


「えっ、UFOって円盤じゃないの?」

「うん。この前テレビで見たのは円盤だったよ?」


なんてフェイトとアリシアが話に加わってきた。そろそろ収拾がつかない感じがかもし出されてきた。・・・もう、ゴールしてもいいよね? 俺はもう疲れたよ。


「アンタの責任なんだから、はやくなんとかしなさいよ・・・」

「いや、なんか、もはや僕の手から離れていってるから無理だ・・・」

「・・・アンタって意外と突っ込み役だったりする?」

「あぁ、だって周りに天然さんが多いからね。突っ込み不在だと今のような状態になるし」


ちなみに、今はなぜか目の前ではUFO談義が行われている。参加者はシグナム、ヴィータ、なのは、アリシア、フェイト、はやてだ。

UFOに熱くなるのはいいが、俺としてはそろそろ本題に入りたい。ここは、例の話題を使いますか。


「ところでシグナム、前に頼まれていた探し物の件なんだけど」

「探し物?」

『闇の書のこと』


ちなみにこの念話、シグナムだけじゃなくてここにいる全員に対して発してみた。これなら、はやてとアリサとすずか以外に伝わるはずだ。


『! 了解した』

「・・・あぁ、アレのことか。すまない、屋上で話をしようか」

「うん。じゃあ、なのはとアリシアとフェイトも来てくれ」

「すまないが、シャマルたちも来てくれ」


というわけで、少し病室に残る組に怪しまれたけど、無事に病院の屋上に集合できた。


「みんな集まったかな? じゃあ、まずはこれを見てくれ」


せっかく関係者が全員集合したんで、まずは録画してあったものをみんなに見せてみた。内容はもちろん、ユーノが調べてくれた闇の書と夜天の書についての資料だ。


「まぁ、こういうわけなんだが、シグナムたちはなんか心当たりがある?」

「そういえばヴィータが何か大切なことを忘れている気がする、といっていたが」

「うん。今の話は本当だとあたしは思う。何か、引っかかってたことがすっきりした感じだ」


ふむ、となれば、もうここでヴォルケンリッターと戦う理由がなくなったな。なのはとフェイト、アリシアもほっとしている様子だ。

じゃあ、これからはやて救出作戦を伝えるとしますか。


「で、一応はやてを助ける方法も見つかったんだけど、そのためにはヴォルケンリッターの力も借りたいんだ」

「本当か?!」

「まて、ヴィータ。御堂、その方法とは一体どういうものだ?」


どうやら、ヴォルケンリッターのみんなも協力してくれる感じだな。一応シグナムは警戒してるけど、言葉に険はないし。


「・・・何?!」

「・・・うっ・・・なんだ?!」


だけど、俺がはやて救出の方法を話す機会は来なかった。

なぜなら、



                     二人の仮面の男に シグナムとヴィータは 胸を貫かれていたからだ。 


                     仮面の男達の手には もちろん 彼女らのリンカーコアが 握られていた。







あとがき

更新が遅れてすみませんでした。ようやく、A'sのラストバトルとなります。もうA's編が終わるまではギャグが入れられない感じです。また閑話を書いてネタ分を補充したいと思います。

この作品を書き始めてから、一ヶ月が経ちました。時間が流れるのは早いものですね。A's編もあと少しで終わるので、頑張りたいと思います。



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その10
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/03/31 12:55
・・・ちょっとまて、なんで猫姉妹がここにいるんだよ。目の前にいるのは仮面の男だとかいう突っ込みはスルーさせてもらう。てか、そんなことに構っている場合じゃない。


「闇の書の完成まであと60ページだ」

「守護騎士が自ら闇の書の糧となるが良い」


何か猫姉妹が言ってるけど、そんなことにも気にしていられない。

一体どういうことなんだよ。クロノは動いていなかったのか? 俺とアリシアがリーゼロッテにつけた傷に気付いてたようだから、そんなはずはないんだが。

・・・いや、ちょっと上手く事が運びすぎて俺が油断していたせいか。そういえば、原作よりも早い段階で闇の書のデータ収集が完了してたわけだから、猫姉妹は無限書庫でのユーノの手伝いじゃなくて闇の書の主の捜索に回されていて当然だろう。うかつってレベルじゃねーぞ・・・。

となれば、当然二人体勢で八神家とヴォルケンリッターの監視に着くだろうから、当然病院にもヴォルケンリッターの後をつけて来ているよな。そんなときにグレアムさんの計画をつぶすような動きを見せれば、当然妨害をするだろうな。

ははっ・・・、本当にバカだな、俺は。最後の最後で詰めが甘かったようだ。現在の戦力はザフィーラ・シャマル・なのは・フェイト・アリシアの4人だ。だが、こちらはまだ戦闘態勢が整っていない。ということは・・・


「ヴィータちゃん?!」

「っ・・・シグナム!」

「シグナム! ヴィータちゃん!」

「二人を離せ!」

「・・・そこで見ていろ」


まぁ、バインドで全員拘束されるわけで。

ザフィーラがものすごい勢いでバインドを破ろうとしてるんだけど、バインドには罅すら入らない。リーゼアリアの得意分野だったな、そういえば。

さて、そんなことを考えているうちに、シグナムとヴィータはリンカーコアを菟集されて消えてしまった。で、今はバインドで拘束されたシャマルとザフィーラのリンカーコアが奴らの手で菟集されている。

そして、その二人のリンカーコアも菟集されてしまい、病院の屋上には守護騎士4人分の衣服と持ち物が残された。


「これで闇の書は完成した」

「あとは闇の書の主が覚醒するだけだ」


猫姉妹が仮面の男の姿で何か言っている


『お兄ちゃん』


あぁ、そういえば、あの姿ってなんとなくクロノの父親のクライドさんに似ているよなぁ。


『お兄ちゃん!』


あれって、やっぱりグレアムさんの指示であの姿に変身しているのかなぁ。


『お兄ちゃん!!』


・・・・・・

あぁもう、うるさいなぁ、アリシアは。もうしょうがないだろう? 今更俺達に何が出来るって言うんだよ。なのはもフェイトもバインドが破れていない上に、今俺達は空中に移転させられて、さらに周りには結界が張ってある。これじゃあしばらくは身動きがとれない。しかし、ずいぶんとまぁ準備がよろしいことで。

もしかしたら、俺の動きが読まれてたんかな。てか、前にシグナムと接触していたのがばれてたのかもしれんな。


『お兄ちゃん!!!』


・・・・・・・・・


まったく、アリシアはまだあきらめていないのか。てか、隣を見る限りだと、なのはもフェイトもバインドを破ろうと必死だな。

だが、このバインドと結界はリーゼアリアが時間をかけて構築したものだろう。いくらなのはとフェイトが規格外とはいえ、このバインドと結界を破るのに時間がかかるだろう。その間に猫姉妹の目的は達成されてしまうだろうし。

しかし、猫姉妹は誰に変身するんだろうか? 原作では、なのはとフェイトに変身してはやてを焚きつけた。だけど、今こっちは3人だから、一人足りないわけだが。やっぱり、なのはとフェイトになるんかな。


『ねぇ、お兄ちゃん!!!!』


・・・・・・・・・・・・


今から動くのはもう手遅れだし意味がないんだからさ、原作通り、はやてが闇の書を起動してから頑張ろうぜ? だって、こっちの戦力は原作の時よりも多いんだ。少しは楽に戦えるはずだろう?


『お兄ちゃんってば!!!!!』


・・・・・・・・・・・・・・・


まったく、本当にアリシアはしょうがないなぁ。







せっかく  僕は  必死で  冷静になろうとしているのに





『ねぇ!! お兄ちゃ』

『わかってるよ、アリシア』


さて、ではいきますかね。まずバインドを破らないといけない。

だが、こんなバインド、今の俺には簡単に破れる。

まず、魔力を右腕のバインドが掛かっているところに集める。そして、バインドブレイクを構築して、


「はぁっ!」


一気に溜めた魔力を解放する。よし、右手のバインドは解けた。あとは同じ要領で他の部位のバインドを解けばいいだろう。


「・・・時雨君?」

「シグレ・・・?」


隣にいる二人が驚いた表情でこっちを見ていた。あぁ、いきなり俺がアリシアと交代したから驚いているのかな。だが、いまはそんなことはどうでも良い。全部バインドは破ったし、あとは目の前の結界を破壊するだけだ。


「アリシア、頼んだ」

「うん、まかせて。シグザール!」

「All right, master. Set up "saber form".」


ここでアリシアと交代して、「カリバーン」でこの結界を壊す。そうすれば、あの猫姉妹に一発入れられるはずだ。

だが、ここで


「何?!」

「バインドを・・・破っただと?!」

「いくよ、お兄ちゃん、シグザール!」

「おう!」

「Calyburn」


猫姉妹に気付かれてしまった。くそっ、シャマルが持ってた携帯ではやてを呼び出そうとしてたから大丈夫だと思ったんだが。

アリシアは今「カリバーン」のチャージをカートリッジも使用した上で終えて、シグザールを振りかぶろうとしているところだ。

リーゼアリアがアリシアにバインドを掛けるのとアリシアが結界を壊すのと、どちらが早いか・・・!



「っ!」

「くっ!」

「・・・間に合ったか」


くそっ! 駄目だったか。またバインドを破ってやり直し、ともいかない状況になってしまったし。なんせ、仮面の男の片方(リーゼアリアだろう)がこっちの近くに来て見張ってるし。


「悪いが、そこで見ていてもらおう」

「闇の書の主の覚醒をな」


その「覚醒」の方法は、はやてを絶望させる、というものだろう。既にヴォルケンリッターは「死んで」いるし、何より屋上に残っている衣服がそれを雄弁に物語っている。その事実を突きつけるだけでも充分だろう。あとは、守護騎士達が死んだ理由がはやてにあると吹き込めば、完璧・・・か。

しかし、なんで、どうして


「・・・こんなことができるんだよ!」

「・・・何?」


あぁ、まったく、もう・・・


「闇の書への復讐がそんなに大事なのか、アンタたちは!!」


一度吐き出し始めたらとまらない。


「前の闇の書の事件でクライド・ハラオウンが犠牲になったのが悲しいのも、悔しいのもわかるけどなぁ、その息子のクロノはそれでも前を向いて生きているのに、どうしてアンタらは後ろ向きなんだよ! 答えろよ! リーゼロッテ、リーゼアリア!!」

「?! いつから気付いて・・・」

「そんなことはどうでもいい!! これも全部グレアムさんの指示なんだろ? はやてを犠牲にするのも含めてなぁ!! もうはやてを犠牲にしなくても済む方法が見つかったのにもかかわらず、ただ闇の書を抹殺する方法に固執してんだろ、グレアムさんは!!」

「・・・お前に、何がわかる・・・!」

「わからないな! だが、こんなことをしてもハラオウン親子は喜ばないってことは確かだと分かるがな! アンタ達のやっていることはただの自己満足、独りよがりだ! そんなことで人の命を奪おうとするなんて許せるものかぁ!!!」

「・・・・・・だが、今のお前には何もできない。黙って見ていろ・・・」




結局、この後、はやては屋上にやってきた。そして、ヴォルケンリッターが死んだ顛末を仮面の男(リーゼロッテ)から聞かされることになった。そして、はやては闇の書の主として覚醒した。




多分、僕はこのときのことを忘れることはできないだろう。


はやてが闇の書の主として覚醒したときの、絶望に染まったその慟哭を。








あとがき

更新が遅くなっております。すみません。A's編のラストの構想がこの回を書いていくうちにも変わってきているので、どういう風に話を進めるかで悩んでおります。

とりあえず、今回は地の文で初めてオリ主に「僕」と言わせて見ました。多分、今回が初めてだと思います。台詞ではずっと「僕」と言わせてきましたが。もし、これ以前の回にて地の文で「僕」と言っておりましたら、教えて下さい。

今回も、オリ主の怒りが有頂天でした。前半部分のどことなく真剣味の無い彼の思考は、怒りを隠す為のフェイクです。後半で爆発させて見ましたが、これで足りているでしょうか? 

実は、今回、オリ主に爆発してもらう予定ではなかったのですが、書いているうちにこんなことになってしまいました。どうしてこうなった・・・

なので、闇の書戦でのアレの流れを私が当初から考えていたものから変えなくてはならなくなりました。オリ主の覚醒が前倒しになってしまったので。

また次回の更新が遅れるかもしれませんが、遅くても来週中には本編を書きたいと思います。ギャグ成分が不足しているので、本編を書く前に閑話を書くかもしれません。



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その11
Name: かに◆c28e9226 ID:b5f03855
Date: 2010/05/26 23:23
あぁ、結局こうなってしまったか。これは原作知識がありながらも、おろそかにしていた部分があった僕のミスかな・・・。

いや、僕のせいだと思うのは傲慢だな。人一人で変えられるものなんてたかが知れてるんだし。


そんなことを考えてる暇があったら、まず、今の状況をどうするかを考えないとな。

今、目の前にはリインフォースがいる。まだ、目の前の彼女を「リイン」というのはおかしいかもしれないけど、リインだとしておこう。

仮面の男たちというか猫姉妹は、はやてが闇の書の主として覚醒したのを見届けたら、さっさとこの場から退散していた。俺たちにかけていたバインドを解いてな。

おそらく、闇の書が暴走を開始するのを見計らってデュランダルを使って氷結魔法を使う気だろう。今はまだリインフォースの意識があるから、まだ暴走はしていないんで、リインの相手は俺たちに任せよう、という魂胆か。

ま、猫姉妹はこの後クロノに拘束されるだろうから放っておいていいだろう。あいつらやグレアムさんに対しての対応は後で考えよう。

隣を見たら、すでになのはとフェイトもデバイスを起動させていた。俺が呆けている間に準備を整えたようだな。・・・まったく、俺も呆けている場合じゃないよな。


「・・・闇に染まれ」


って、やばっ、リインがすでに魔法を撃とうとしてるし。


「フェイトちゃん、アリシアちゃん、わたしの後ろに!」

「うん!」

「わかった!」


おっと、魔法少女たちは気づいていたのか。うん、本当に俺も気合を入れないとまずいよな。


「アリシア、俺と交代してくれ。シールドを張るのは僕のほうが得意だから」

「うん、わかった」

「えっ、時雨君?」

「僕もシールド張るのを手伝うよ。一人で受け止めるのはきついだろ?」

「うん、ありがとう!」


というわけで、俺となのはでリインの魔法を防いだ。たしか、あの魔法は「デアボリック・エミッション」だったな。魔法ランクはニアSだった気がする。

てか、二人がかりでも結構きつかったのに、本来ならなのははこれを一人で止めたんだよな・・・。かなりのダメージはもらってたっぽいけど、一人でこれを止められるとかどんだけだよ、本当に・・・。

とりあえず、リインは連発して魔法を撃ってくる気配はなかったんで、その場から離脱してビルの後ろに隠れることにした。さて、どうやって攻めるかを考えないとな。でも、リインを倒したところで何にもならないのか・・・。

いや、意味はあるか。こちらの想いをぶつけるという意味が。いわゆるOHANASHIに該当する行為になるが、この場合は仕方がない。

それに、あまり時間をかけてしまうと闇の書の暴走が始ってしまい、そもそも「話し合い」ができない状態になってしまう。とにかく、はやてにも想いを届かせる時間が欲しい今、まずはリインフォースをなんとかしないとな。

そんな感じで俺が考えをまとめていると、


「なのは!」

「フェイト!」


ユーノとアルフがこっちに飛んできた。・・・とりあえず、これで現段階での戦力は全員揃ったのか。それでは、リイン戦開始と行きますか!










俺が考えた作戦は、フェイトとアリシアが近接戦闘をリインに仕掛け、なのははその間に砲撃魔法を準備、ユーノとアルフはリインの隙を見てバインドで拘束する。それで、拘束できたら残りの3人で砲撃魔法を撃つ、というものだ。ま、本来の流れにアリシアを足しただけなんだけどな。

たしか、はやては近接戦闘が苦手だったんで、リインフォースもそんなに近接戦闘が得意ではないだろう、という読みだったんだけど・・・


「はぁ!」

フェイトがリインの正面からバルディッシュ(ハーケンフォーム)で斬りかかる。だが、それを

「・・・っ、ふっ!」

リインは左手で弾き、右ストレートをフェイトに叩きこんで吹き飛ばす。と、今度は

「はっ!」

アリシアがシグザール(セイバーフォーム)でリインの後ろから斬りかかるが、

「・・・無駄だ」

リインはそれに反応して振り向きながらシールドを張って斬撃を防いだ。だが、

「シグザール!」

「Blitz Accel」

アリシアはシールドで防御されたとわかった瞬間に、シグザールの魔力刃を傾けてシールドの上を滑らせ、さらにブリッツアクセルを使って高速でリインの横をすり抜けて、

「やぁっ!」

「Saber Edge」

リインの後ろから魔力刃を飛ばした。さらに、ほぼ同時に

「Haken Saber」

リインがアリシアの相手をしているうちに、リインの後ろに回り込んだフェイトも魔力刃をリインに放ってた。

「・・・っ!」

二つの魔力刃をリインは両方に手をかざしてシールドを張り防ぐが、

「「Saber Explosion」」

アリシアとフェイトはシールドに防がれていた魔力刃を爆発させた。さすがに、爆風にはリインも体勢を崩されたようだった。そこに、アルフとユーノのバインドが決まった。


『お兄ちゃん!』

『任せとけ』


俺はアリシアと交代してシグザールを通常モードに切り替えた。これで砲撃の準備に入れるわけで、ようやく俺も参加することになるんだな、これが。近接戦闘はアリシアに任せていたし。砲撃は俺が担当するんだけどな。

しかし、予想以上にリインフォースが近接戦闘をこなせていていたな。おかげでちょっと焦った。二人で近接戦で攻めればリインを崩せると思っていたから、正直アリシアとの「シンクロ」を使うまで考えたよ。

まぁ、「シンクロ」をやっちゃうと、「シンクロ」後の戦闘でアリシアと俺の戦力は下がっちゃうから、こういう先が見えない戦いでは安易にやるわけにはいかないんだよなぁ。ある意味トランザムだな。はやくダブルオーのごとくノーリスクでトランザムするように「シンクロ」ができるようになりたいぜ。

さて、そんなことを考えているうちに、砲撃魔法のチャージは完了した。マルチタスクって便利だな、本当に。

撃つ魔法は、「ブレイズキャノン」を強化する、をコンセプトに改良した魔法だ。


「いくぞ!」

「Blaze Buster」


ちょうど俺が撃った時とほぼ同時になのはとフェイトからも砲撃魔法が放たれた。3方向からの魔導師ランクAAAクラスによる砲撃魔法だ。2方向からのはリインも防いでいたが、3方向ともなればさすがに効くはず・・・ってシールドを3つ出してきちんと防いでるよ・・・。しかも、カウンターとも言わんばかりに赤い魔力光の何かがこっちに飛んでくるし。


たしか、あれって「ブラッディダガー」だったよな。当たると傷が広がる感じの魔法だったはずだ。これは下手に防御するよりも、避けた方がいいな。


「シグザール、頼んだ!」

「All right, master. Fake Silhouette」


まず、幻影を出して相手の魔法の誘導を切ってから


「Blitz Accel」


高速移動で避けた。よし、うまく避けれたようだ。

しかし、これからどう攻めるかと考えていたら、


「咎人たちに・・・滅びの光りを・・・」


なんてリインフォースから聞こえてきた。うん、どうみてもスターライトブレイカーだな、あれは。

距離をとらないとやばいよなぁと思っていたら、


『アリシア、シグレ、早くこの場から離れよう!』


なんてフェイトから念話が届いた。それじゃ、遠慮なく離脱しますか。

とりあえず、なのはを抱えたフェイトが飛んで行った方向に逃げますかな。確か、あっちの方に行くとアリサやすずかに遭遇することになるんだろうしな。

・・・しかし、この後スターライトブレイカーを受け止める作業があるのか。

・・・でも、やるしかないな。


もう、逃げるわけには、いかない。






あとがき


ほぼ一週間空いてしまいました。更新が遅れ気味ですみません。次の話は今週中に書けると思います。

今回、変わり始めたオリ主を表現するために、「原作」という言葉を少なめにしてみました。A's編終了時には、オリ主はそれなりの決意をします。というかさせます。


しかし、ギャグも書きたくなってきました。どうしよう・・・。



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その12
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/04/07 20:17
リインがスターライトブレイカーのチャージ中なんで、とりあえずフェイトが飛んでいった方向に俺も逃げていたんだが、本来の流れの通りアリサとすずかに遭遇してしまった。

このリインが張った結界の中って、たしか魔力を持つ人しかいないはずだから、アリサとすずかもリンカーコアを持っているのかもしれないな。

まぁ、ヴォルケンリッターの菟集対象にはならなかったんだし、そこまで大きな魔力を持っているわけでは無いんだろうけど。

さて、突然の遭遇になのは・フェイトとアリサ・すずかは固まってしまっているが、今はそんなことしてる暇は無いんだよな。もう、桜色の魔力光の輝きがかなり強くなっている。そろそろチャージ完了といったところか。とりあえず、早いとこ防御を固めてリインのスターライトブレイカーを防がなきゃならない。アリサとすずかを守るためにもね。


「なのは、フェイト、呆けている暇は無いぞ! 今はアリサとすずかを守らないと!」

「あ・・・うん、そうだね!」

「・・・わかった!」

「・・・・・・アリシアちゃん?」

「え・・・その口調・・・?」


俺が声をかけたら、なのはとフェイトはすぐに今の状況を思い出したようで、なのはを先頭にした防御体勢を整えてくれた。ちなみに、俺の方がアリシアよりもシールドを形成するのに適しているんで、アリシアとは交代せずになのはとフェイトの間でシールドを張ることにした。

・・・なにか重大なミスをやらかした気がするが、気のせいだろう。もうリインはスターライトブレイカーを撃ってるし、今は防御に集中しないとな。

しかし、広域型に変化すると爆風で攻撃する感じになるんだな、これって。こっちに届くときにはほぼ全方位からの攻撃になるから、オリジナルよりもある意味防ぎづらいな。攻撃を逸らすことができないし。だが、アリサとすずかを守らないといけない以上、きっちり防がないといけないな。


「腹を括りますかな。シグザール!」

「Spheral Protection」


なのはの張ったワイドプロテクションのすぐ後ろに、俺達全員を包むような球状のシールドを張ってみた。一応、表面には相手の攻撃を弾く性質を持たせている。これなら、まともに受け止めるよりは消耗が少ないからな。

しばらくして、俺達の周りから桜色の光の奔流は収まった。とりあえずリインのターンは終了か。

「もう、大丈夫」

「すぐ安全な場所に運んでもらうから、もう少し、じっとしててね」

「なのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん・・・?」

「ねぇ、ちょっと?!」


アリサとすずかが何か言いたそうだったけど、直ぐに安全な場所に転移してもらった。さすが管理局、仕事が早い。シールド展開中になのはが念話でエイミィに伝えていたからだろうけどな。


「見られちゃったね・・・」

「うん」

「そうだね・・・」


ま、問題は無いだろう。むしろ、二人への隠し事が無くなったんだし、胸の痞えがとれた感じだと思うんだが。

そんなのことを考えつつ、念話でなのはとフェイトが二人の保護をアルフとユーノに頼んでいる間に、アリシアが念話で話しかけてきた。


『ねぇ、お兄ちゃん?』

『ん、なんだ?』

『さっき、アリサとすずかの前でお兄ちゃんがわたしの身体で喋ったよね?』

『・・・・・・あ』

『・・・どう説明しよう』

『・・・魔法のことを教えるときと一緒に伝えるか』

『・・・そうだね』


あぁ、これは確かに重大なミスだな。うっかりしてた。でも緊急事態だったんだ仕方が無いさ。魔法と一緒に伝えてしまおう。



では、ここからが本番だな。当面の憂いも無くなったことだし。

まずは、リインとはやてに話しかけるんだったな。リインからの攻撃が止んだ今しかチャンスは無いし。


『はやてちゃん、それに闇の書さん! 止まって下さい! ヴィータちゃんたちが傷ついたのは、はやてちゃんのせいじゃないの!』

『シグナムたちは・・・』

「我が主は、この世界が、自分の愛するもの達が自分のせいで失われてしまった世界が、悪い夢であって欲しいと願った。我はただ、それをかなえるのみ。主には、穏やかな夢の裡で、永久の眠りを。・・・そして、愛する騎士達を奪った世界には、永久の闇を」

「闇の書さん!!!」

「お前も・・・その名で私を呼ぶのだな・・・」


・・・なんでなのは達がヴォルケンリッターと完全に敵対してなかったのにも関わらず破壊活動をしてたのかと思ってたんだけど、そういう理由だったのか。ある意味対象が広くなってるぶん厄介だな。

だけど、まぁ本気で世界を滅ぼそうなんてリインは思っていないだろうな。そもそも暴走が始まるまで自分の意思で主の願いをかなえようとしているだけだろうし。もっとも、その望みが本当にはやての望みなのかはわからんけどな。


「・・・それでも・・・」

「・・・夜天の魔導書、だろ」

「・・・!」


思わず喋ってしまった。アリシアの身体で。でも、一度喋り始めたらもう止まれない。


「今ここにいるアンタは、おかしな改造をされて破壊しかもたらさなくなった闇の書じゃない、夜天の魔導書だろ?! なら、主のその願いをかなえるのは間違っているって分かるはずだろう!!」

「・・・我は魔導書、ただの道具だ。我はただ、主の願いをかなえるのみ」

「そんなはずは無い! 夜天の魔導書を創った奴は、お前を「道具」として創ったわけではないはずだ! もし、お前が道具として創られたんだとしたら、あの守護騎士達は何なんだ?! なぜ、守護騎士たちは感情を持つように創られている? なぜ、お前に主や仲間のことを大切に思えるような心がある?! お前を創ったやつは、お前たちをただの道具として創ったんじゃない、主と一緒に生きていく者として創ったんだ!!!」


僕の考えでは、おそらく彼女らには家族として、という側面もあると思うんだよね。あの守護騎士達の構成を見るとどうしてもそうとしか思えないし。


「だからこそ分かるはずだ!! その願いをかなえても、はやてが幸せになんてなれないってな!!!」

「・・・我に心など無い」

「・・・・・・じゃあ、どうしてあなたは泣いてるの?」

「そうだよ! 心が無いなら、泣いたりなんてしないよ!」

「・・・これは主の涙だ。我は道具だ。我に悲しみなど無い」


途中で、アリシアが何か言いたそうだったんで交代してみた。なのはもリインに訴えかける。だけど、まだリインは意地を張り続ける。


「悲しみなどない・・・? そんな言葉を、そんな悲しい顔で言ったって、誰が信じるもんか・・・!!」


フェイトも必死にリインに訴えかける。だけど、おそらく、リインはこっちの言葉で止まることはないだろう。

フェイトがリインに対して叫んだ直後、街のあちこちから火柱が上がった。うん、もう暴走が始まっちゃうようだ。

リインも、本当はこんなことしてもどうにもならないことくらい分かっているんだろう。でも、彼女には時間がないんだ。だから、強硬な手段に出るしかなかった。たとえそれが間違っていると分かっていても。それが彼女が自分の意思でできる唯一の事だったから。

故に、リインは感情など無いと言い続けるだろう。彼女はここで止まるわけにはいかないのだから。ここで感情があると認めてしまえば、リインは止まってしまうだろうし。・・・あの涙は、僕はリインのものだと思う。あの涙は、こんな事しか主にしてあげられない悲しみだ。

ふぅ。アリシアやなのは、フェイトがリインと話しているうちに考えがまとまったよ。やっぱり、これはリインを止めなきゃならないな。何が何でも。



じゃあ、やっぱり突撃しかないよね? 闇の書の中に入れれば、何らかのチャンスがあると思うし。



リインは、もう時間が無いということで、再び攻撃を仕掛けてきた。・・・ブラッディーダガー全方位展開とか正直勘弁して欲しいよ。まぁ、アリシアは上手く避けてくれたが。

一方、フェイトの方は、ソニックフォームに切り替えて、なのはを抱えて避けたようだ。で、フェイトはそのまま


「この駄々っ子!」


なのはを離すと、バルディッシュを構えて


「言うことを・・・聞けぇ!」


リインに突撃していった。しかし、その突撃はリインのシールドによって防がれ、そして


「フェイトちゃん?!」

「フェイト?!」


今まさにリインに吸収されそうになっていた。じゃあ、僕も突撃しようかなと思っていたら、


「フェイトを離せえぇ!!」


アリシアは既に突撃を始めていた。・・・ま、目的は同じだから良いんだけどね。では、いざ、闇の書の中へ!!






アリシアとフェイト、そして僕は、闇の書に吸収された。







あとがき

また更新が遅れてしまいました。すみませんm(_ _)m 最近は週1ペースになってしまっていますね。

書き出した頃は、ネタが多めで入ったんで書きやすかったのですが、A's編は本編がとにかくシリアスが多いので、どう書くかで悩みます。

特に、終盤が大変です。最初の頃のようにネタに走れば比較的簡単だったと思うのですが、今回はシリアスに振ってみたので、逆に自分の首を絞めている感じです。真面目に書くと、ちゃんと原作の設定とか考慮しなくてはいけませんし。台詞を考えるのが難しいです・・・。





[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その13
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/04/09 22:53


俺の意識はアリシアがリインに突撃を仕掛けたあと、フェイトと同じように身体が光に包まれたところで途絶えた。

それで、今目が覚めたわけだが・・・



何で、俺の部屋なんだろう?



うん。「俺」の部屋なんだ。海鳴市某所にあるマンションの一室じゃなくて。

おかしい。これは何かがおかしい。俺は確かに自分の首を掻っ切っているはずなんで、生きていたとしてもまず自分の部屋で寝ているわけが無いし、


「あんた大丈夫? いきなり倒れたりして・・・」


そもそも、俺の母親がこんな風に看病してくれるはずも無いからな。













その後の母親の話を聞いた感じでは、どうやら俺は家に帰ってきて台所に向かい、飲み物を冷蔵庫から出そうとしたあたりでいきなり倒れたらしい。

で、母親は俺のことを俺が起きるまでずっと看病してたそうだ。ちなみに、俺が家に帰ってきたのが午後6時くらいで、今時計は夜中の12時を指している。

・・・ははっ、いくらなんでもありえないな。

俺の母親がこんなに献身的なはずが無い。俺が突然倒れたのなら、自分で面倒をみるよりもさっさと救急車を呼ぶはずだ。そっちの方が「正しい」選択だからな。常に論理的に見て効率的で正しい方法をとるはずだ。行動に感情論の入る余地なんか一切無い、そんな人だったからな。

もうこの状況が何なのかは分かっている。これは闇の書の中の夢だ。おそらくフェイトとアリシアは今頃プレシアさんとリニスに会っているんじゃないだろうか。それで、「もしかしたらあったかもしれない日常」を過ごしているはずだ。

でもね、俺はもうこっちでのこんな「日常」は望んでなんかいないんだ。確かに、ここでの母親には、リンディさんとか桃子さんとかから感じた「母」っていうものを感じるよ。


だけどね、もう現実にはこうはならないって分かってしまっているんだ。


フェイトやアリシアの方なら、確かに有り得たかもしれない夢だろう。元々、プレシアさんは優しい人だったわけだし。だが、俺の母親は残念ながら、そんな要素はどこにも無い人だったんだ。もうここに何の未練も無い。

どうやらリインは読みを間違えたようだな。確かに、俺は家族に対して、というよりも家族から向けられる愛情を渇望していた節はあったかもしれない。正直、アリシアの身体の中でハラオウン一家として過ごした時間は俺にとって居心地の良いものだったし。

でも、俺はそれを元の母親には求めてなんかいない。だって、求めても無駄だと分かってしまったからな。あの人はこちらの感情が理解できないし、理解する気も無い、そんなことが分かってしまったから。

本当は自分の親がそんな人だとは信じたくなかった。だから、自分の子が目の前で首を切ろうとすればさすがに慌てて止めようとするだろうと思ったし、論理的ではなく感情的に怒り出すかなんかするだろうと思った。

だけど、そんなことはなかった。だから僕は自ら死ぬことにしたんだ。

まったく、餓鬼の考えもほどほどにしとけよ、て感じだな。餓鬼のうちに正面からぶつかっておかなかったから20になっても僕は中身が餓鬼のままなんだろうな。親に精神的な何かを求められそうにないって早々に見限りをつけて、さっさと別の拠り所をつくっておけばこんなことにはならなかったんだろうが。

・・・まぁ、そんなことはどうでもいいな。早いとこ「夢」から覚めないといけない。どうすればいいのかは分からんけど、確かこの夢を否定するか出て行くような決意を見せれば脱出できたはずだ。どういう仕組みなのかは知らないけど。


それじゃあ、今は夜中だけど、出かけることにしますかな。そうすればこの夢から出られる気がするし。


「もう身体も大丈夫そうだから、出かけてくるよ」

「えっ、こんな時間に? どこに行くのよ?」

「ちょっとね。・・・どうしても会わないといけない人が居てさ」


早くフェイトとアリシアと合流しないといけないからな。それに、おそらく闇の書の中に居るであろうはやてにも会わないといけないし。

ま、実際の俺の親なら、明日にしろ、て事をこちらがどんなに真剣に訴えても言うんだろうから、強行突破をしなきゃならないんだが、


「そう・・・。気をつけていってらっしゃい」


なんて、ここでの母親は言ってきた。やっぱり、この母親は俺の知る母親なんかじゃない。もし、俺の母親が本当はこっちだったら・・・なんて考えてもしょうがないな。さっさと出よう。



・・・・・・・・・


・・・・・・


・・・





でも、現実ではずっとすれ違いっぱなしだったんだ。偽りとはいえ今ならちゃんと「親子」ができそうだし、これが最後になるんだろうから、せめて最後くらいはちゃんとしようか。

うん。最後くらいは、ちゃんと、向き合おう。それで、いい加減前に歩き出さないと。

あの大人びていて、それでいてどこか抜けている妹分たちをこれからも見守ってやらないといけないし、いつまでも僕が下らない過去を引きずっているわけにもいかない。




「うん。いってきます」




そう母親に言って、俺・・・僕はドアを開けて外へ一歩を踏み出した。それと同時に、周りのよく見慣れていた景色がかすんで消え始めた。

あぁ、この夢が終わるんだな、と僕は少し感傷に浸っていたが、やがて僕の意識は途絶えた。そして・・・


























「・・・・・・・・・・・・知らない天井だ」


僕は見知らぬ部屋で目が覚めた。

壁に掛かっているのは聖祥大学付属小学校の制服。

知らないハズなのになぜか知っている家の居間のテーブルには


(ごめん、今日も帰りが遅くなります! 夕飯はつくって冷蔵庫に入れておいたから、それを暖めて食べてね!  母より)


なんて書置き。そして冷蔵庫にはサランラップをかけた大皿。

洗面所に行くと、そこの鏡には僕の面影がある小学生くらいの男の子がこっちを見ていた。



              闇の書は そんなに甘く 無かったぜ   by時雨



え、これはあれですか? もしかして普通に僕がなのは世界に転生した場合、ってやつですか?

これって、どう考えても家から出るだけじゃあこの「夢」から脱出できないよなぁ・・・。

・・・とりあえず、学校に行くか。


しかし、一念発起したところでこれかよ・・・。ま、こういうことの連続がこれからの「僕」の現実だろう。頑張って生きますか。










あとがき

ちょっと短めですが、オリ主完全起動完了の回です。なんだかんだで未練があったオリ主でした。そう簡単に諦めがつくはずが無いんです。でも、今回の闇の書の夢で、オリ主は何か吹っ切れました。

それで、吹っ切れたところで第二弾です。これから1~2話ほど書く話は、オリ主が普通に転生していた場合のifの断片です。オリ主の決意は決まってるんだし意味が無いんじゃないのだろうか、と思われる方も居るとは思いますが、少しだけ書かせてください。ようやく少しギャグ成分が入れられそうなので。

そこと闇の書の中でのアリシアとフェイトとの邂逅で、オリ主の抱えるもう一つの問題点の解消フラグでも建てようかと思っております。一度死んでいる人は、自分の命を軽く見ている節があると思いますので。今のオリ主はアリシアの身体を間借りしているようなものなので、自己犠牲の精神はあまり表には出ておりませんが。

次回は軽めの話になると思います。




[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その14
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/04/14 21:52
闇の書の中で、なぜか小学生をやることになった僕が今何をしているかというと、


「諸君。私は美少女が好きだ。 黒髪ストレートが好きだ。 金髪が好きだ。 ポニーテールが好きだ。 ツインテールが好きだ。 ショートも好きだ。 ボクっ娘などぞくぞくする。  私はワンピースが好きだ。 スク水が好きだ。 ショートパンツから覗く太ももが好きだ。 スカートとニーソックスが創り出す絶対領域が好きだ。 ワイシャツ1枚の姿など心が躍る・・・」


朝のホームルームが始まる前の「朝礼」をしていた。今回のネタは・・・言わなくてもわかるよね。

この闇の書の中の夢で現実と異なる点は、僕に身体がある、ということだけらしい。学校まではバスにのって登校するわけだが、そこでアリサ・すずか・なのはと遭遇した。もちろん本人ではなく夢の住人なわけだけど。

そのときの反応が、まぁ、なんというか、いつもの僕に対する応対だったわけで。ようするに、僕は「友達」として認識されているようだということだ。

で、なんでフェイトとアリシアにはバスで会わなかったかというと・・・なんと住んでる場所が同じマンションという設定だった。そりゃあ、見たこと無い内装でもなんとなく既視感があったわけだよ。

そんなわけでエレベーターでフェイトとアリシアに僕は遭遇したわけだ。そのとき、僕はこの二人が吸収されたほうの彼女らだったら、と期待したんだけどそんなことはなかった。やっぱり、本物の二人は時の庭園(夢)にいるんだろう。


「諸君、私は美少女を、女の子を愛でることを望んでいる。クラスメイトの紳士諸君。君達は何を望んでいる? 美少女を愛でることを望むか? それともその聖域に突撃することを望むか?」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「シグレ!!!!!! シグレ!!!!!!!! シグレ!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「よろしい、ならば・・・」

「あぁ~、もう、うるさいうるさいうるさい! 何をやってるのよ、あんたは!」

「何って・・・朝礼?」

「それのどこが朝礼よ! あんた達はどっか戦場にでも行くわけ?」

「日々生きることが戦争だ!」

「言ってることだけはマシだけど状況が最悪よ!」


とりあえず、こちらでの日常はこんな感じだ。うん、あまり現実と変わらないな。













午前中、特に何事も無く授業は過ぎて、昼休みとなった。この学校って給食がないんだよね。だから弁当をもってこなくちゃならなかったんだけど・・・


「あっ・・・弁当忘れた」

「もう、なにやってんのよ、あんたは!」


アリサに怒られた。

こっちでも、弁当を一緒に食べるメンバーは変わっていない・・・いや、僕を含めるから1名多いのか。ま、僕からしてみれば「いつも」のメンバーですな。

しかし、自分の弁当を忘れるとは・・・。もしかして「家」に置いてあったのを見落としたのかな? 夢の中とはいえ一食抜かすのはきついんだが・・・


「しょうがないわね・・・。ほら!」

「お?」

「しょうがないからわたしのを少し分けてあげるわ」

「ツンデレがデレた!」

「誰がツンデレよ! そんなこと言ってるとあげないわよ!」

「ありがたく頂戴いたします」


アリサが食料を僕に恵んでくれて助かった。この後、アリサと僕のやり取りを笑顔で見守っていたなのは・すずか・アリシア・フェイトからも弁当を少し分けてもらった。なんとか食いつなげたな。みんなの優しさに感謝!

そんな感じで昼飯を女の子達から恵んでもらっていると、


「実はアニキってリア充なんじゃ・・・」


とか聞こえてきた。何故に小学生がリア充とかいう言葉を使うんだ・・・。あぁ、これはある意味僕の夢の中だからな。ある程度は僕の影響を受けるのかな。というか、この発言は夢の中だからだと信じたい。

ここは何か言わないといけないな。


「・・・つまり、諸君は彼女らのお宝ショットを所望するのか?」


とかいいながら携帯(もちろんカメラ付き)を取り出してみた。


「・・・・・・」


すると、先ほどリア充発言をしていた奴以外の男子クラスメイトも何かを期待するような目でこっちを見た。ゴクリ・・・という感じの擬音が今にも聞こえてきそうな感じだ。


「ちょっと! 何でそういう方向になるのよ!」

「あたりまえだろ! 美少女のショットは何よりも価値があるものなのだよ!」

「そうじゃなくて、さっきの男子の発言はそういう意味じゃないでしょう?!」

「僕の思考回路はまずそっちから判断するのだよ!」

「威張って言えることじゃないわよ!」


うん、やっぱりアリサはいじりがいがある。打てば響くという感じだ。周りに居る他のメンバーは僕とアリサのやり取りを微笑ましそうに見ている。・・・若干苦笑いも混じっているけど。主にすずかに。

まぁ、その、なんだ。こんな日常も悪くは無いな、と僕は思った。











午後の授業も終わり、放課後となった。なのは達が一緒に帰ろうって誘ってきたけど、僕はそれを断った。今日はちょっと用事があるって言ってな。

そして、何となく学校の屋上に出て寝転んで、「今日」のことを考えていた。

もしかしたら、こんな日常もあったのかもしれない。というか、僕がまともにこの世界に転生していたらこんな感じだったんだろう。どうやってアリシアを助けるのかはわからないけど。

だけどね。



絶対に叶わない夢ほど虚しいものは無い。



うん。どことなく厨二病な台詞だな。だけど、別にこれはそこまで悲観した考えではないんだ。今の僕の考えは、夢は叶うものじゃなくて叶えるもの、という感じだし。これは夢を諦めろとか妥協しろとかいう意味じゃなくて、自分の身近にある幸せを手に入れろ、っていう意味だ。

だって、アリシアに憑依というか居候してきてから今日まで、僕は確かに楽しかったし、なんとなくだけど幸せだった。普通に生きていた前回と比べて。おまけに、何故か慕ってくれる可愛い妹分たちがいるんだ。


これ以上の、一体何を望むんだ?


こんな叶わない夢を見させられるくらいなら、さっさと「今」の現実に戻りたい。最善ではなくても次善が現実にあるのだから、それでいい。というか、僕は現実で実際に触れられるものが欲しい。・・・紳士的な意味だけじゃないぞ? 

もっとも、現実がつらいものだから夢に逃げ込みたい、という気持ちも分からないわけではない。つらい現実に戻ったとしても、誰の助けも得られないのなら、いっそのことずっと夢の中の方が幸せだろうとも思うし。だから僕も・・・いや、やめておこう。

だけど、はやてには、手を差し伸べてくれる友達がいる。今も必死でリインと戦っているだろうなのはもそうだし、フェイトやアリシア、さらにアリサやすずかがいる。彼女は決して一人ではない。

それに、シグナムたちは死んだわけではないのだ。多分、リインもどうしようも無いと思っているから泣いていたのだろうし諦めているのだろうが、まだ守護騎士達を、そしてリインを救い出す方法は残っているんだ。

あぁ、そうだ。早くはやてに、そしてリインに伝えに行かないといけないんだ。こんなところで寝転んでいる場合じゃない。

でもどうやってはやて達の所へ行こうか? とりあえずデカイ威力の魔法をぶっ放せばこの空間は割れるらしいということは知っているんだが、それだと外に出るだけなんだよな。ということは、壊すというよりも穴を開けて通るイメージかな。

となると、転移魔法っぽいものが必要か。だけど、単に転移魔法を起動するだけじゃだめだな。この空間にほころびを作らなくちゃいけないだろうし。

そうなると定番はブラックホールとかワームホール的な何かかな。こう、空間の一部を捻じ曲げる感じの。そんでもって、そこから転移する感じで。

では、やってみるとしますか。


「・・・シグザール・・・!」

「All right, master」


シグザールを出そうと思って念じてみたら、僕の手には起動した状態のシグザールが握られていた。・・・まったく、良く出来たデバイスだな、本当に。


「今回やるものは難しいけど、出来るか?」

「・・・あなたが望むなら、やってみせます」

「うん、頼んだ!」

「わかりました。 "Gravitational Pitfall"」


なんか久しぶりにシグザールの日本語を聞いた気がするな。そういえば、通常時は日本語で喋るようにお願いしていたんだった。

シグザールは目の前に直径2メートルくらいの重力波を出した。うん、見事に僕の身体が目の前の黒い塊に引き寄せられているな。てか、このままでいいんだろうか?


「シグザール、これで大丈夫なのか?」

「はい。この重力波の中心、闇の書が創りだした世界が綻んでいる所に転移魔法も展開させています。それで闇の書の主の所までいけるかと」

「そうか。なら行こうか」


どうやらこのまま引き寄せられて大丈夫らしい。なら、さっさと行きますか。

というわけで、僕は目の前の黒い塊に飛び込んだ。そして、また僕は意識を失った。










『・・・スター! マスター!』


シグザールの念話で僕は目がさめた。起きて周りを見渡すと、あたり一面黒一色、て感じだった。なのに、自分の姿ははっきりと見えるという不思議な空間だった。ちなみに、今の僕はどうやら生前とほぼ同じ姿のようだ。自分で自分の身体を見る限りでは。

そして、目の前には驚いた様子でこちらを見ているリインとはやての姿があった。・・・はやての目元には涙の痕があった。しかもまだ新しい感じのものが。まだ立ち直ってはいないようだな。やれやれ・・・。


「ようはやて、そして夜天の書。元気して・・・ないよなぁ」

「えっ・・・その声、時雨さん?!」

「お前・・・何故ここに?!」


とりあえず挨拶してみた。うん、いい感じに驚いてるな。まずは質問に答えておくかな。


「うん、僕が時雨だ。色々と思うところはあると思うけど、説明するのが面倒なんで、後でそこにいる夜天の書の化身から詳しいことは聞いてね。多分僕とアリシアのことは分かってるはずだから」

「え・・・あ、はい・・・」

「それと、僕が夢の中から出てこれたのは、僕にとって理想的な夢よりも今ある現実の方が魅力的で価値があるものだったからなんだ」

「・・・・・・」

「・・・何?」


さて、ここから僕がはやてとリインを説得できるかどうか。でも、やるしかない。実際に見た様子では、はやての精神状態は明らかに原作の時よりも悪くなっている。何せ、自分のせいで守護騎士達は消えた、と吹き込まれてるんだからな。自分で立ち上がる可能性は低い。

いろいろと間違えていて、おそらくどこかが狂っているだろう僕だけど、それでもはやての心を動かせると信じて、僕ははやてに話し始めた。









あとがき


また短めのような気がします。でも、次回ははやてサイドから書き始めたいと思っておりますので、ここで区切らせてもらいました。

前回の話にて、オリ主が結構壊れてる、との指摘が出ました。はい、オリ主の感性はどこかおかしいのです。全てにおいて妙に諦めています。ですが、ちょっとずつその精神に炎が燃え上がりそうな感じにはなってきております。暴走したりしましたし。もちろん、紳士的な意味での暴走ではありませんよ?

あと一週間でこの作品を書き始めてから2ヶ月が経つので、それまでにはA's編を終わらせたいのですが、できるかどうかが微妙です。でも、頑張りたいと思います。



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その15
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/04/19 00:32
-side はやて-

わたしが望んどったんは、ただみんなと一緒に生きていくことだけやった。

ただそれだけのことやったのに、現実はわたしの望みを受け入れてはくれんかった。

わたしのその願いが、みんなを、シグナムやシャマル、ヴィータ、ザフィーラを殺すことになったんやと言われた。

このままでは生きていけんわたしのために、みんなが自らを犠牲にしたらしいんや。いや、そうせんとあかん状況になってしまったらしいんや。

全てはわたしが原因。わたしの身体は未完成の闇の書が蝕んどった。なのに、わたしがみんなに闇の書のページは集めんでええと言うたから、わたしの身体のタイムリミットがどうしようもないくらいに短くなってしもうた。

それに気付いたみんなは、わたしとの約束を破ってでも闇の書を完成させて、わたしを救おうとしてくれた。でも、それよりも早く、わたしの身体の限界がきてしもうた。

だから、みんなは自分達を闇の書にささげ、闇の書を完成させたんやと。

これやったら、わたしがみんなを殺したのも同然や。でも、闇の書のページを集めるのは、他人に迷惑をかける行為らしい、ということも聞いとった。

それやったら、わたしが死んでれば、みんなが死ぬようなことにはならんかったんや、と思うた。

それと同時に、この現実が悪い夢やったら、とも思うた。そしたら、闇の書の管制プログラムと名乗る綺麗な女の人が、マスターのその願いを叶えましょうとわたしに言うた。

その後のことはよく覚えてはおらんかった。ただ、優しい夢の中にいた、ということだけはなんとなくやけど覚えとった。

ふと目が覚めたらあたり一面が闇の空間に、闇の書の管制プログラムと名乗る女の人と一緒におった。

そして、目の前には先端に綺麗な蒼い球のある銀色の杖を持った、お兄さんがおった。そのお兄さんは少し痩せてて、背は標準よりは少し高くて、どこにでもおりそうな、だからこそ親しみが持てる顔をしとった。

そのお兄さんは、わたしに少し困ったような顔をして、


「ようはやて、そして夜天の書。元気して・・・ないよなぁ」


と話しかけてきた。

わたしは、その声をどこかで聞いたような気がしたんや。そして、気がついて驚いた。


「えっ・・・その声、時雨さん?」


闇の書さんも、驚いとったみたいやった。それに対して、目の前のお兄さん、時雨さんは、自分が時雨であると、そして、


「それと、僕が夢の中から出てこれたのは、僕にとって理想的な夢よりも今ある現実の方が魅力的で価値があるものだったからなんだ」


と言うた。

わたしには、一瞬その言葉の意味がわからんかった。多分、時雨さんも優しい夢のなかにいたはずやのに、なぜ起きようとしたのかが。

でも、すぐにその理由が思いついた。きっと、時雨さんにとって現実もそれほど悪いものではないのやろう。だから、


「なぁ、はやて。君はどうして・・・」

「時雨さんは現実に帰っても幸せやから、そういうことが言えるんや」


わたしは時雨さんに言うた。暗に、あなたとは違うんやと。

そうしたら、時雨さんは、もっと困ったような、寂しそうな、そしてどこか悲しそうな顔をして、


「じゃあ、君は現実に帰るつもりはない、ってこと?」


と聞いてきた。そんなこと・・・


「当たり前や! もうみんなが、シグナムやシャマルや、ヴィータやザフィーラがいない、いや、わたしが殺したも同然なんや! もう、このままでええ・・・」

「彼女らを殺したのは、はやてじゃない。今ならシグナムたちの記憶も見れるはずだろう?」


わたしが拒絶の言葉をぶつけたら、時雨さんはこんなことを言うてきた。

でも、わたしは既にそれを見とる。シグナムたちがどういう経緯で死んだのかを。


「そんなことはわたしも知っとる! でも、あれなら結局わたしのせいで死んだことに変わりはないんや!」

「・・・だから、もう自分も死のうと?」


時雨さんは、その表情に悲しみをさらに濃くしてそう言うてきた。

わたしがその言葉を肯定するようにうつむいたままでいおると、


「・・・君の事を大切に思ってくれている人のことがいるのに?」


と時雨さんは言うてきた。


「え・・・」

「今、外で必死になのはが戦ってるんだ。はやてを助けるために。それに、フェイトとアリシアも、君を助ける為に戦ってたんだよ。・・・まぁ、あと僕もね」

「でも、なんで・・・」

「はやて、君に死んで欲しくはないからだよ。はやては大事な友達だからね」


その言葉に、わたしは思わず顔を上げた。そして、気付いてしもうた。今のわたしが、自分のことしか見とらんかったことに。でも・・・


「でも、わたしは・・・!」

「はやて、多分、君は自分で自分のことが許せないって思ってるんじゃないかな。シグナムたちが死んだ理由は自分にあるって言ってたし。でもね、君の周りにいる人たちは、はやてに生きていて欲しいって思ってるんだ。今ここにはいないアリサやすずかもね」

「・・・・・・」

「ま、これは周りの身勝手な想いとも言えるけどな。本人の意思に関わらず助けようとしてるんだから。言ってしまえばエゴだよエゴ。親しい人が死んでしまうのは悲しいから、勝手に助けようとしてるんだし。・・・それでも、はやてを助けたいんだ」


時雨さんは、途中でわざと軽い口調で自嘲するかのように話して、それからまた静かな口調でそう言うた。

わたしは、何も言えんかった。だって、気付いてしもうたから。今、わたしがこのまま死んでしもうたら、わたしと友達になってくれたすずかちゃんやなのはちゃん、アリサちゃん、フェイトちゃんやアリシアちゃん、そして目の前にいる時雨さんを傷つけることになるんやって。

でも、それでも・・・。わたしがまたうつむくと、


「・・・あと、シグナムたちも、はやてが死ぬことなんて望んでいないよ。彼女らはずっと、はやてが生きていけるように頑張っていたんだから。それに・・・」

「それに・・・?」

「シグナムさんたちは、厳密に言えば死んだわけではないんだ」


その言葉に、わたしは勢い良く顔を上げた。


「それ、ホンマに?!」

「うん、本当だよ。なぁ、夜天の書」


そう言うて時雨さんは闇の書さんに話しかけると、


「・・・確かに、本来なら騎士達を蘇らせることができる。だが、今の我では・・・」


と闇の書さんは悲しそうにうつむいてそう言うた。すると、


「何にも方法が無かったら、そもそも助けよう、なんて言わないさ。無責任にもほどがあるだろ?」


と、時雨さんは明るくそう言うた。


「何っ・・・?! 一体、それは・・・」

「とりあえず、今フェイトとアリシアがいる夢の中に送ってくれないかな? 合流しないといけないし」

「あぁ・・・。その二人は同じ夢の中にいる。・・・これですぐに会えるだろう。だが・・・」


闇の書さんは、少し不審そうにしながらも、時雨さんのためにフェイトちゃんとアリシアちゃんのいる夢へいけるらしい光の塊を目の前に出した。すると、時雨さんはそれをみると直ぐに飛び込むようにしながら、わたしに向かって、


「そうそう、彼女に新しい名前をつけてあげてくれないかな? 夜天の書っていうのが闇の書の本来の名前なんだけど、これも彼女の名前じゃないんだ。というか、彼女自身には名前がないんだ。だからさ、いい名前を彼女につけてあげてくれ。・・・夜天の主としてね」

「・・・! そういうことか・・・」


と言うて光の中に消えてしもうた。

時雨さんの言葉を聞いとった闇の書さん・・・本当の名前は夜天の書さん、やったかな、は何かに気付いたような反応をしとった。もしかしたら、今の時雨さんの言葉になにかシグナムたちを助けるヒントがあったのかもしれんな。

とりあえず、今は目の前にいる夜天の書さんの名前を考えんとな。

本来なら夜天、つまり星の輝く夜空、っていう名前やったのに、光が一筋もない、まるで夜空に雲がかかってしまったような、闇なんて名前をつけられてたなんてかわいそうや。

それに、闇の書・・・夜天の書は、わたしに家族を、幸せをもたらしてくれた。夜天の書が運んできたものは決して闇なんかやない。



・・・そうや。”リインフォース”っていう名前はどうやろ? 夜空にかかる雲を払い、星の輝きを取り戻す祝福の風、という意味や。



わたしは、その新しい名前を夜天の書さん、いや、「リイン」に伝えることにした


-side はやてend-






僕は、リインが出してくれたフェイトとアリシアのいる夢へと行ける光の中に飛び込んだ。今度は、意識が落ちることは無いようだ。光の中をどんどん進んでいく。

しかし、なんとかはやては立ち上がることができるようだな。一応、汚い手だとは思うけど、原作知識を持ち出してまで説得したからな。シグナムたちを復活させられる、ていう部分な。

だけど、それでもはやてには生きることを選んで欲しかった。

だって、自殺ってつらいからな。自分で自分を全否定する行為だし。間違っても他人にやって欲しい行為じゃないな。本当に止めて欲しい。

さて、暗い顔をしている場合じゃないな。これからフェイトとアリシアに会うんだから。あと、プレシアさんにもね。

では、可愛い妹分たちを迎えにいくとしますか。










あとがき

本編ですが、今回はほとんどはやて視点でした。いかがだったでしょうか? 多分関西弁がおかしなことになってると思います。あと、はやてについての内面の描写が上手くいってないかもしれませんorz

この話では、はやて視点からオリ主との会話をする、という形にして、なんとかSEKKYOUにならないようにしてみたのですが、上手くいっているでしょうか? 駄目なようでしたら、修正したいと思います。

次回は、アリシア視点から話が始まります。というより、今回と同じようにほぼアリシア視点で書くと思います。・・・なんとか4月21日までにA's編を終わらせられるよう、頑張ります。









[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その16
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/04/19 10:02
-side アリシア-

気がついたら、わたしは知らない部屋のベッドで寝ていた。隣を見ると、そこにはフェイトがいた。

わたしには、今の状況がわからなかった。だって、わたしはフェイトを助けようとして闇の書に突撃して、それで・・・

そうだ、お兄ちゃんに聞いてみよう。お兄ちゃんなら、何か知っているかもしれない。突撃する前に「ま、いいか」みたいなことを言っていた気がするし、何か考えがあったと思うから。

そう思って、わたしの中にいるはずのお兄ちゃんに話しかけてみたのに、何の返事も返ってこなかった。いや、返事が無かったんじゃない。

そもそも、今のわたしの中に「お兄ちゃん」はいなかった。

そのことに気付いたとき、わたしは慌てた。お兄ちゃんと一緒に居たのは半年前からだったのに、わたしにとってお兄ちゃんが居るのは当たり前になっていたんだ。

お兄ちゃんが「いない」ことに途方に暮れていると、部屋のドアが開いて、


「おはよう、アリシア、フェイト」


優しい笑みを浮かべたママが部屋に入ってきた。その時に、わたしは気付いてしまった。



あぁ、これは夢なんだ、と。



ママが部屋に入ってきた気配に気付いたのか、目を覚ましたフェイトは、ママの姿を見て驚いていた。それを見たママは、


「どうしたの、フェイト?」


と言った。その言葉に、フェイトは


「な、なんでもないよ、母さん」


と言ってうつむいてしまった。その様子にママは不思議そうにしながらも、もう朝食だから食堂に来て、と言って部屋から出て行った。

ママが部屋から出て行ったあと、わたしとフェイトは今の状況について話し合った。そこで、今目の前にいるお互いは、「わたしたち」だ、ということがわかった。二人とも、闇の書の攻撃を受けた後で意識が落ちた、という記憶があったから。

それと、今いる場所についてもわかった。フェイトが言うには、ここは時の庭園という場所で、わたしが事故で意識不明・・・いや、「死んでいる」時にママとフェイトが住んでいた所だった、と。

フェイトがそのことを話すときに、少し言いづらそうにしてわたしが「意識不明」だった、って言ってくれたけど、実は、わたしは本当のことを知っていた。

わたしが初めてアースラに行ったときも、お兄ちゃんはその部分は同じようにはぐらかして教えてくれたけど、わたしは知ってしまった。

お兄ちゃんは、喋っていない時も、何かを考えている。いつもはお兄ちゃんが「考えている」っていうことは分かるけど、何を考えているのかは分からない。

でも、時々お兄ちゃんの考えていることが分かる時がある。その時にお兄ちゃんから伝わってくる感情も強く感じるから、きっとお兄ちゃんが強く思ったことはわたしにもはっきりと伝わってくるんだと思う。

だから、お兄ちゃんが最初にわたしにフェイトのことを教えてくれたとき、フェイトとママの事についてお兄ちゃんが教えてくれたこと以外の、隠してくれていた部分も知ってしまった。でも、わたしはそのことについてお兄ちゃんには聞けなかった。


フェイトやママのことを教えてくれている時のお兄ちゃんからは、哀しみと、ほんの少しの怒りが感じられたから。


あんまり長く話しをしてママを待たせるわけにもいかないから、とりあえず、わたしとフェイトは食堂へ向かうことにした。












この時の庭園での時間は、わたしとフェイトにとって優しいものだった。

リニスが使い魔になっていたのに最初はびっくりしたけど、ママがいて、リニスがいて、そしてフェイトがいるこの時間は本当に夢のようで、だからこそ、わたしは哀しくなった。


夢は、いつか覚めるものだから。


それに、今のわたしには「現実」にも大切な人たちがいる。いつまでもここで立ち止まっているわけにはいかないんだ。

でも、フェイトはどうなんだろう? お兄ちゃんから「知ってしまった」話から考えると、多分フェイトにとっては初めてのママと家族として過ごしている時間だろう。それを奪ってしまっていいんだろうか?

そんなことを思っていたら、フェイトの方から


「アリシア、ここを出よう」


と持ちかけられた。それを聞いたとき、わたしは驚いた。

この優しい時間が始まったとき、そのことを実感したフェイトが涙を流していたのをわたしは見ていたから。

そんなフェイトが自らここを出ると言い出した。わたしは、フェイトに「本当にいいの?」と聞いた。すると、


「うん。だって、ここがどんなに優しい場所でも、夢だから。わたし達は今を生きてる。だから、ここで立ち止まってるわけにはいかないんだ」


と言った。フェイトは、わたしが思ってる以上に大人で強い子なんだと、わたしは気付いた。ならば、もう迷う必要は無い。

わたしとフェイトは、この「夢」の空間の中心に向かうことにした。この夢は一種の結界だから、この結界の魔力の基点で全力の魔法をぶつければ、この空間を壊して外へ帰れるはずだと、フェイトが話してくれた。

やっぱり、魔法の知識はわたしよりフェイトの方が色々と知っている。その代わり、わたしはフェイトよりも魔法以外の知識は多いと思う。・・・全部お兄ちゃんから伝わってくるものだけどね。

そういえば、お兄ちゃんはどうしたんだろう? わたしの中にいない、ということはお兄ちゃんも「夢」の中なんだろうか? そうだとすると、お兄ちゃんを残したままわたしは「夢」から出ていいのかな、と思った。

でも、なんとなくだけど、お兄ちゃんは大丈夫な気がした。いつもふざけていて、それなのに心の中ではいつも誰かを思いやっていて、でもそのことを素直に認められないでどこか斜めに構えてるお兄ちゃんなら、きっと同じような夢に捕らわれていても自分から脱出できると思う。

今は、この「夢」から脱出するために進もう。








この「夢」の中心がある部屋の扉のまえに、わたしとフェイトはやってきた。隣のフェイトが、少し見を硬くしていたのが気になったけど、


「行こう、アリシア」


と言ってフェイトが扉を開けて部屋の中へ入ってしまったので、わたしもフェイトの後に続いてその部屋に入った。

その部屋は天井が高くて、部屋の中心には水色で半球型のガラスのような材質でできた床があって、部屋の奥には豪華な椅子があった。

そして、ママが、ガラスの上に立っていた。


「ママ・・・」

「母さん・・・」

「・・・やっぱり、行くのね」


ママは、寂しそうな微笑を浮かべてそう言った。


「うん・・・」

「・・・ごめんなさい」

「いいのよ。あなたたちはいつまでもここに居るべきではないわ」


わたしとフェイトは、ママのその言葉におもわず俯いていた顔を上げた。


「アリシア、フェイト、強くなりなさい。その手で、あらゆる望みを叶えられるように。あなた達は、私の娘なんだから、ね」

「ママ・・・!」

「母さん・・・!」


その言葉を言ったときのママは、寂しそうで、だけどどこか嬉しそうで、そして慈愛に満ちた表情で、思わずわたしとフェイトはママに抱きついていた。

しばらくそうしていたとき、不意に後ろから強い光が放たれた。それに気付いてわたしとフェイトが振り返ると、そこには背が高めで、少し痩せていて、平凡なんだけどどこか安心できるような雰囲気の顔のお兄さんがいた。


「やぁ、アリシア、フェイト。迎えに来たよ・・・って言いたいところなんだけど、どうやら既に心は決まってたようだね」

「シグレ・・・?」

「もしかして、お兄ちゃん?」


初めて見る人なのに、声を聞く前からこの人が「お兄ちゃん」なんだ、とわたしはわかった。

だって、こんなタイミングでやってくるなんてお兄ちゃん以外に誰がいるだろう。お兄ちゃんは、いつも、わたしの予想より上(時々斜め上だけど)を行ってくれる人だ。なんだか、わたしは嬉しくなった。


-side アリシアend-









光を抜けた先は、時の庭園の中枢(?)で、そこではアリシアとフェイトがプレシアさんに抱きついているところだった。・・・やれやれ、僕が来る前にもう二人とも決意してたのか。でも、一応声をかけますか。


「やぁ、アリシア、フェイト。迎えに来たよ・・・って言いたいところなんだけど、どうやら既に心は決まってたようだね」

「シグレ・・・?」

「もしかして、お兄ちゃん?」


アリシアとフェイトはプレシアさんに抱きついたままこっちを振り返った。フェイトは驚いた感じの表情で、アリシアはどこか嬉しそうな表情だった。・・・そこまで僕はアリシアに慕われていたんだろうか。ま、嬉しいからいいか。


「おう。僕が時雨だ。この姿は一応僕の元の姿かな」

「本当にシグレはお兄ちゃんだったんだ・・・」

「あ、フェイトは信じてなかったんだ?」

「えっと、そういうわけじゃないんだけど・・・」


なんか僕の元の姿が物議を醸しているな。フェイトとアリシアの間に。

それを何となく微笑ましく思って見守ってると、プレシアさんから、


「あなたがシグレさんなのね?」


と話しかけられた。


「えぇ、そうです」

「娘達から話は聞いています。いつもお世話になっているようで」

「いや、むしろ僕の方が娘さんにお世話になっている状態なんですけどね・・・」


なんかむず痒いなぁ、こういうのは。


「・・・私がいないときに、娘達の支えになってくれてありがとうございます」

「えっ! いや、それは僕じゃなくてリンディさんとかクロノとかなのはとかの方が・・・」

「いえ、確かにあなたもアリシアとフェイトの支えになっていますよ」


心当たりはあるんだけど、そこまで比重は大きくないだろうと思って、もう一度ゆるく否定してみたんだけど、今度は「あなたの話をするときの二人の様子を見れば分かります」とか言われてしまった。挙句の果てに、


「私の娘達を、アリシアとフェイトを、これからもよろしくお願いします」


って言われてしまった。文面だけみると嫁入りさせる感じさえあるな、これだと。

だけど、これはそういう意味じゃないってことぐらいわかる。僕が一番アリシアと、そして多分フェイトに近い位置で見守れる立場にあるんだ。だからプレシアさんは僕に、そして僕を通してアリシアとフェイトを支えてくれた人たちに伝えようとしてるんだ。


「・・・わかりました。まかせてください」


ならば任されようじゃないか。それが、僕の生きる意味の一つなんだしな。


僕とプレシアさんの一通りのやり取りが終わったあと、いよいよ闇の書から脱出することになった。

アリシアとフェイトはデバイスを起動させてバリアジャケットに着替え、僕はシグザールを構えたところで、


「あれ、お兄ちゃんにもシグザールがあるんだ」

「シグレはバリアジャケットを着ないの?」


なんてアリシアとフェイトから同時に質問が飛んできた。


「あぁ。何でか知らないけど、シグザールが二つある状態なんだな。ま、闇の書が解析して作り出したんと思うけど。あと、僕はバリアジャケットを登録いてないから、このまま魔法を使うよ。外に戻ればアリシアの中だろうしな」


しかし、この期に及んでこんな質問をしてくるとは・・・。

それとなしにため息をついていると、今は後ろにいるプレシアさんが笑っているような気配がした。ちょっとジト目で睨んだら、頑張ってね、ていう感じの微笑を返された。・・・余裕があるプレシアさんにはかなわないようだ。

まぁ、いいさ。これからもこんな感じなんだろう。頑張るさ。







そして、僕達は夢の世界から現実へと帰還した。
















-side アリシア-

わたしは嬉しかった。今までお兄ちゃんから感じていた、自分を押し殺すような、自虐するような雰囲気が、今ママと話しているお兄ちゃんからは感じなかったから。きっと、お兄ちゃんはこの「夢」の中で変わった、いや、本当の自分を出せるようになったんだと思う。それが、嬉しかった。

まだ、わたしたちにはやらなきゃならないことが残っているけど、今だけは、この気持ちを抱きしめていてもいいよね?



-side アリシアend-








あとがき

この話は難産でした。一体何度書き直したことでしょう・・・

前回のはやて視点の回でも、とにかく関西弁が大変でした。感想掲示板で指摘があった箇所は随時修正したいと思います。もう、二度とはやて視点オンリーな話なんて書きたくないです・・・orz

今回は、ほぼアリシア視点でしたが、何故かアリシアが明らかに6歳児な思考をしておりません。その理由は、本編でも少し触れていますが、オリ主の思考が結構アリシアに漏れているからです。アリシアは若干オリ主に影響されております。でも、間違っても百合とか紳士にはならないので安心してください。

次回は、いよいよA's編のラストバトルになりますが、また時間がかかるかもしれません。今週中には更新したいと思います。あと、どうやら21日にA's編を終わらせるのは無理そうです。すみません。



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編その17(ラストバトルを少し修正)
Name: かに◆c28e9226 ID:a8c97aab
Date: 2010/07/18 13:06
どうやら、無事に闇の書から外へ出られたようだ。さて、ここからどうするかな。

おそらくリインがいたであろう場所に黒い半球が出現していた。あそこにはやてがいるんだよな。ということは、あそこからはやてが出てきたら、闇の書の防衛プログラムの暴走が始まるんだろうな。管制プログラムが切り離されて、完全に制御を失うわけだし。


「フェイトちゃん、アリシアちゃん、・・・!」


ぼろぼろになったなのはが嬉しそうにしていた。そういえば、リインの相手をなのは一人に任せたような状況だったな。


「なのは、わかりきったことだけど、一応聞いておく。大丈夫だったか?」

「うん、大丈夫だよ」

「そんな姿じゃ説得力が無いな」

「うぅ・・・」


まぁ、大怪我はしてないようだし、なのはのことはとりあえず良しとしよう。後で絶対休息させるけど。もちろん、魔法の鍛錬もしばらくは休ませる。確か、この一連の事件でなのはのリンカーコアにはかなりの負担がかかっているはずだからな。

本来の流れよりも戦闘が少なかったとはいえ、なのはに負担がかかったことには変わりはない。もちろん、フェイトやアリシアも休ませる。絶対に、だ。


「そういえば、シグレはアリシアのなかに戻ったんだね」

「うん、お兄ちゃんは今、わたしの中にいるよ」

「まぁ、さすがに僕を受肉させるのは無理だったんじゃない?」

「え、みんな何の話をしてるの?」

「えっとね、・・・」


・・・いや、確かに僕も闇の書から出るときに受肉しないかなぁって思ったけど、そんなことはなかったんだよな、これが。せっかく自分の元の姿に戻れていたんだけどなぁ。しかし、その「元の姿」が何やら物議を醸し出しているようだ。「やっぱりお兄ちゃんだったんだよ」とか、「ふええぇぇ~、今まで時雨「君」って呼んでたよ~。お兄ちゃんと同じくらいだったら時雨「さん」って呼ばないと」とか聞こえてきてるし。

だけど、そんなことしてる場合じゃないというか、


「あ~、僕のことは後回しにして、今は・・・」

『みんな気をつけて! まだ闇の書の反応は消えてないよ!』


丁度いいタイミングでエイミィから念話が入った。そう、これからが本番なんだ。

目の前の黒い球体から地響きみたいな音が聞こえてきてるしな。ま、あそこからはやてが出てくるまではこちらからは手が出せない。

アースラの方で、はやてが防衛プログラムに手を加えているのが確認されているらしい。その処置を待ってから攻撃を開始する、とエイミィさんから指示が伝わってきた。

なのはとフェイト、そしてアリシアも表情を引き締めて黒い球体を見つめる。アルフとユーノも防衛プログラムの拘束を止めて様子を見ている。・・・最終決戦の前となると緊張するな。まぁ、あっちが行動を開始する前にこっちの全力全開の攻撃を叩き込むだけなんだが。

ふと魔力反応を感じて、その魔力反応があったほうに意識を向けると、そこにはヴォルケンリッターの姿があった。はやては上手く守護騎士たちを復活させたらしい。・・・無事に家族を取り戻せてよかったな、はやて。




「我ら、夜天の主の下に集いし騎士」

「主ある限り、我らの魂尽きること無し」

「この身に命ある限り、我ら御身の下に在り」

「我らが主、夜天の王、八神はやての名の下に」


そして、4人の騎士の中央に、はやての姿が現れる。


「夜天の光よ、我が手に集え。祝福の風、リインフォース、セットアップ!」


夜天の書の主と守護騎士が、今ここに揃った。






・・・思わずみとれてしまったよ。やれやれ。

ここからだとさっきの宣誓と違って彼らの会話がよく聞こえないが、雰囲気からしてシグナムたちは無断で菟集していたことを謝っているようだ。そんなこと、もうはやては知っているんだけどな。

ん、ヴィータがはやてに抱きついたな。それを見て、


「フェイトちゃん、アリシアちゃん、わたしたちも」

「そうだね」

「うん」


こっちの3人娘も頃合かなと思ってはやての下に行くことにしたらしい。やっぱり家族再会の場面は家族水入らずじゃないとな。ひと段落したところで会いに行くべきだろう。


はやては顔を合わせたところで、


「なのはちゃんとフェイトちゃんとアリシアちゃんもごめんなぁ。うちの子たちがいろいろと迷惑をかけてもうて」


て言ってきた。結局、お互いの意思のすれ違いこそ無かったけど、何度かの戦闘は避けられなかったわけだしな。それに対して、


「ううん」

「平気」

「大丈夫だよ」

「気にすんな」


とそれぞれ言ったところで、


「済まないな、水を差してしまうんだが、時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。時間が無いので簡潔に説明をする」


とクロノがやってきて言った。

あぁ、いよいよだな。クロノの説明を聞きながら、僕はこれからの作戦に向けて気合を入れ直した。







気合を入れなおしたのは良かったんだけど、今僕の目の前では防衛プログラムの処理についてちょっとした論争が起こっている。

なんでも、氷結魔法による封印では防衛プログラムの再生機能で無効化されるだろうし、アルカンシェルで消滅させると、周辺地域が全部吹っ飛ぶとのこと。

・・・あれっ、一応闇の書の防衛プログラム対策ってできてたんじゃなかったっけ? そう思ってクロノに質問してみたら、


「本来なら、はやてにはアースラまで来てもらって、アルカンシェルを撃っても問題ない場所であの防衛プログラムを出してもらう予定だったんだ」


と返答された。どこに防衛プログラムを展開させるつもりだったんだと聞いたら、次元空間内か生物のいない管理外世界のどちらかだった、とのこと。

なるほど、つまり現在の状況は想定外、と。でも、ということは


「じゃあ、防衛プログラムをアースラのいる次元空間まで転移させればいいんじゃないの?」

「・・・それができればいいんだが」

「いや、アルカンシェルで消滅させる、っていう選択肢があるんだから、今アースラは地球の上あたりにいるんじゃないのか? それならなんとかなると思うんだけど」

「確かに、今アースラは地球の軌道上にいる。だが、それでもこの距離を転移させるような転移魔法を使えるわけが・・・」

「今ここに規格外の魔導士が揃ってると思うんだが、それでも無理なのか?」

「あぁ。それでも、あの大きさのものを転移させるのは無理だ」

「じゃあ、小さくしてからなら大丈夫なのか?」

「・・・なるほど。ちょっとみんないいか?」


クロノが思いついてくれたようだ。おそらく、あのフルボッコ作戦になるんだろうけど、あれって、結構ギャンブル性の高い作戦だった気がするんだが。

案の定、クロノから語られた作戦はそのフルボッコ作戦だった。正直、いくら僕がヒントを出したとはいえこんな作戦をクロノ自身が発案するとは思っていなかったから、思わず


「なんかクロノらしくない作戦だな」


って言ったら、


「これは君が考えていた作戦なんだろう? なら、上手くいくんじゃないか?」


と返された。まぁ、確かに原作の知識から「知っていた」方法だったわけだし、僕も既に頭に浮かんでいた作戦だったけど、もしかしてクロノは僕が「未来視」で助言した、と思ったんだろうか? 信頼されるのは嬉しいんだが・・・。

作戦を伝え終わったあと、クロノは虚空に向かって何か話していた。あぁ、あれはグレアムさんと話しているのかな。


「・・・・・・なくしてしまった過去は、変えることはできない。・・・だから、今を戦って、未来を変えます!」


クロノがデュランダルを起動しているときに、そんな声が、風に乗って聞こえてきた。・・・クロノも気合充分だな。僕も頑張らないと。


っと、それにしても、なのはがダメージを受けすぎだよな。あと、アリシアとフェイトも無傷というわけでも無いし・・・と考えていたら、


「シャマル」

「はい」


はやても同じことに気づいたのか、シャマルに3人の回復を頼んでくれた。シャマルの本領は補助と回復だったよな、そういえば。

しかし、身体の傷だけじゃなくて魔力も回復するとは。しかもなんだか気持ちが良かったし。うん、本当に癒された。なのはたちも感謝の言葉をシャマルに言っていた。これで準備完了だ。


「始まる」


クロノがそう言った時、目の前の防衛プログラムも暴走を開始して、その姿を黒い球体から変容し始めている。


「夜天の魔導書を呪われた闇の書と呼ばせたプログラム、・・・闇の書の闇・・・」


はやてがつぶやいたとき、目の前の黒い球体は弾け、中からでかい化け物が現れた。


さぁ、これがラストバトルだ。覚悟は充分。やってやるぜ・・・!







「チェーンバインド!」

「ストラグルバインド!」

「縛れ! 鋼の軛!」


まず、アルフ、ユーノ、ザフィーラが防衛プログラムを捕縛する。


「ちゃんと合わせろよ、高町なのは!」

「ヴィータちゃんこそね!」


防衛プログラムの動きが止まったところで、なのはとヴィータがそれぞれ自身の全力の攻撃を構えた。



「鉄槌の騎士ヴィータと、鉄の伯爵グラーフアイゼン!」

「高町なのはと、レイジングハートエクセリオン!」

「「いくぜ(いきます)!!」


防衛プログラムに、なのはとヴィータの全力の一撃が加えられる。グラーフアイゼンの一撃と桜色の光の奔流によって、まず障壁1枚目と2枚目が砕ける。残る障壁はあと2枚だ。


「剣が騎士、シグナムが魂、炎の魔剣レヴァンティン。刃と連結刃に続く、もうひとつの姿」

「Bogenform」


シグナムがレヴァンティンを弓形態にして構え、


「フェイト・テスタロッサ、バルディッシュザンバー、いきます!」


フェイトがザンバーフォームのバルデッシュを振りかぶる。


「駆けよ、隼!!」

「Sturmfalken」

「撃ちぬけ、雷刃!!」

「Jet Zamber」


シグナムとフェイトの紫電と金色の一撃が入り、障壁3枚目と4枚目が砕け散る。これで障壁は全部壊した。だが、驚くことに、まだ本体にはダメージが入っていない。本来ならばフェイトの一撃で防衛プログラムにダメージが入るはずなのだが。

これは、僕とアリシアが介入したせいなのか? なら、僕らがなんとかしなくてはな!

次は、僕らの番だ!


『いくよ、お兄ちゃん』

『あぁ、行くぜ』


お互いの意識を集中させ、ひとつに合わせる。ちょっと頭痛が走るが、気にしない。


「アリシア・テスタロッサ」

「御堂時雨」

「「シグザール・フリューゲル、いきます!!」」


僕らが撃つ魔法は、ついさっき構築したあの重力魔法を突き詰めた凶化版、というか、小規模の超新星爆発を再現する魔法だ。


「「吹っ飛べええぇ!!!」」

「Super Nova Explosion」


今まで無傷だった防衛プログラムも、これで身体の多くの部分を吹き飛ばされた。

そこで防衛プログラムも悠長に構えていられないと悟ったのか、叫び声をあげながら砲撃を仕掛けてこようとする。だが、


「盾の守護獣ザフィーラ! 砲撃なんぞ撃たせん!!」


ザフィーラが攻撃しようとしている部分に鋼の軛を打ち込んで阻止し、


「彼方より来たれ、宿り木の枝、銀月の槍となりて、撃ち貫け! 石化の槍、ミストルティン!!」


その隙を逃さず、はやての魔法が防衛プログラムに突き刺さり、そして攻撃を受けた場所から石化していく。

防衛プログラムの大部分は僕とアリシアが吹き飛ばしたし、これでほぼ詰んだと思ったが、ここで奴は脅威の再生を見せた。・・・やっぱり、最後は彼に頑張ってもらうしかないのか。


「いくぞ、デュランダル」

「Ok, boss」

「悠久なる凍土、凍てつく棺の内にて、永遠の眠りを与えよ・・・凍てつけ!!!」

「Eternal Coffin」


クロノの氷結攻撃を受けて、ついに防衛プログラムは動きを止めた。よし、あと一歩でコアを露出させられるな。


「いくよ、フェイトちゃん、アリシアちゃん、はやてちゃん!」

「「「うん!」」」


なのは、フェイト、そしてはやてが最大の魔法を放とうと準備を始めた。僕らもさっさと準備しよう。もうそろそろ「シンクロ」の限界時間だからな。


『さて、もう一発。いくか!』

『うん!』


では、もうひとつの切り札を撃つか。・・・これ撃ったら気絶するかもしれないけど。なにせ、僕とアリシア二人の魔力を同時に行使するからな。さっきみたいにアリシアの魔力のみで構成するのとわけが違う。頭だけじゃなくてリンカーコアにも負担がかかる。でも、やってやる・・・!


「「シグザール・・・」」

「スターライト・・・」

「プラズマランサー・・・」

「ラグナロク・・・」


そして、なのは・フェイト・はやてと同時に




                「「「「「ブレイカーーーーー!!!!!!!!!!」」」」」




全力全開、いや、全身全霊の一撃を放った。

とんでもない光の奔流に目が眩みそうになりながらも、僕とアリシアは目を閉じずに砲撃を続けた。

僕たちの砲撃が終わったあと、防衛プログラムの中からついにコアが現れた。それを、


「つかまえ・・た!!」


シャマルが捕らえ、


「長距離転送!」

「目標、軌道上!」


ユーノとアルフが転移魔法を展開し、


「「「転送!!!」」」


そして、軌道上へと送られた。これで、こちらがやることはすべて終わった。あとは、アースラにいるリンディさんたちが上手くやるだけだ。










あたりに雪が降ってきた時、アースラの方から、コアの消滅が確認された、と伝えられた。


「現場のみんな、お疲れ様でした!」


そのエイミィの言葉を聴いたとき、僕は・・・意識を手放した。一応、アースラから連絡が来るまで回復魔法をアリシアの身体にはかけておいたし、アリシアがいきなり倒れる、なんてことにはならないだろう。


・・・あぁ、なんとか無事に終わっ・・・て、よかっ・・・・・・た・・・・・・・・・。






あとがき

ようやくA's編が終わります。次がA's編ラストになると思います。

原作を見ていたら、どうしてもラストバトルの部分をフルで入れたくなってしまったので、こんな感じになってしまいました。台詞とかほぼ原作通りです。すみません。ここで挿入歌の「BLAVE PHOENIX」を聞くと気分が出る・・・といいなぁ・・・。

オリ主とアリシアが使った魔法については後で質問回答のほうにも書いておきますが、ここで簡単に説明させていただきますと、

超新星爆発→ 準備に時間がめちゃくちゃかかる威力が大きい広範囲魔法
シグザールブレイカー→ 普通の砲撃魔法程度の時間で撃てるし威力も高いけど、身体にかかる負担が大きい。砲撃の色は金と青のらせん状。

という感じです。

次の更新は・・・今週中だと思います。


追伸

オリ主とアリシアがシンクロしたのは、防衛プログラムへの攻撃が始まったあたりです。その後のオリ主とアリシアの発言は、念話の『』の部分以外すべてアリシアの口から出ております。

なので、シンクロ後のオリ主とアリシアの台詞の「「 」」部分は、オリ主とアリシアの両方が同じ言葉を同じタイミングで喋ろうとした、という感じです。紛らわしくてすみません。

それと、シグザールブレイカーの方が身体に負担がかかる理由は、一つのリンカーコアから波長の異なる二つの魔力を放出するため、です。こちらも分かりにくくてすみません。


追伸2

ちょっとだけラストバトルに書き足しました。・・・まだ描写が足りないかもしれません。



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・A's編完結
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/05/23 13:07

防衛プログラムを無事に屠った後僕は気絶してしまったんで、あの後どうなったかはアリシアから聞いた。といっても、僕は半日程度しか気絶していなかったんだけど。

その半日のうちに何が起こったのかをまとめておこう。

まず、一つ目はリインフォースについてだ。どうやら、リインからは改変されたプログラムは全て取り除かれたとのことだ。ただ、プログラムの大半を失うことになったためか、もう融合騎としての機能は残っていないらしい。

結論としては、元の流れのように数日中に消えることにはならないようだ。リインいわく、今後のことを考えて余分にプログラムを切り離した、とのことで、このリインの決断によって二度と夜天の書は暴走しないだろうと管理局側でも確認したんだと。

で、どうしてリインが余分にプログラムを切り離す、という行動に出たのかというと、多少防衛プログラムが強化されることになってもこの戦力なら問題ないと判断したからだそうだ。

・・・つまり、僕とアリシアがいたから、と取れるわけで。この話を聞いたとき、なんか無性に嬉しくなってしまった。居るだけで役に立っていたとは嬉しい限りだ。


二つ目は、ヴォルケンリッターとはやての処遇についてだ。これはアリシアから聞いた限りでは元の流れと同じようだった。うん、なんていうか色々条件がついてるけど、今後管理局に協力するなら事実上の無罪放免、みたいな感じというか・・・。

シグナム達は死人を出してはいないし、その行動の理由もはやてを助ける為だけだったし、最後の方ではこちらに協力的だったのもあって情状酌量の余地有りだということでハラオウン親子は押し通しているようだ。

・・・あまり無茶なことはしないで欲しいものだ。もちろん、八神家の面々が減刑されるのには大いに賛成だけど。


そして三つ目がグレアムさんの処遇についてだ。グレアムさんについても、今は本局で謹慎中だが、結局は自主退職をすることで片がついてしまうようだ。

今回の一件で色々と管理局の規則違反を犯しているし、何より管理局側で決定された作戦に反するような行動に出たわけなんだけど、それ以上に今までの功績が大きいので、自主退職勧告となったそうだ。


以上がこの半日で起きた出来事だ。クロノやリンディさんは今回の事件の報告や八神家の裁判の用意をしないといけないんで、これからが忙しかったりする。そのため、今もアースラ内で頑張っている。

しかし、裁判待ちの八神家やなのは、フェイトはもうやることもないんで今はアースラ内でまったりしている、というか寝ている。ま、当たり前だよな。徹夜で戦っていたんだし。


「あ~、起こしてしまって悪かったな、アリシア」

「ううん、いいよ。わたしはもう少し眠るけど、お兄ちゃんはどうするの?」

「僕はちょっとクロノに用事があるから。アリシアはゆっくり休んでいてくれ」

「うん、わかった。お休み、お兄ちゃん」

「あぁ、お休み、アリシア」


しかし、こういうときにアリシアの中に居るのが申し訳なく思うな。さっきまでアリシアは寝ていたのに、僕の意識が目覚めたのに引っ張られてアリシアも起きてしまったし。おかげで今の状況を知ることができたんだけど。

さて、ではちょっとクロノとお話しをしてきますかな。空飛ぶペンダント、発進するぜ。









「あ、クロノ、ちょっといいか?」

「ん? あぁ、時雨か。少し待ってくれ。もう少しでひと段落するから」

「わかった。」


クロノは直ぐに見つかったんだが、仕事中だった。てか、書類の山がクロノの周りにあった。でも、こちらとしても今話を通しておかないといけないからなぁ。すまない、クロノ。


「それで、何の用なんだ?」

「グレアムさんに伝えておいて欲しいことがあるから、言伝を頼もうかと思って」

「あぁ、それは構わないんだが・・・」


まぁ、僕とグレアムさんの接点なんて無いんだからクロノが不思議そうにするのは当然だよな。むしろ断られる可能性のほうが高いかもと思っていたし。では、クロノに伝言を頼みますか。


「じゃあ、「謝るのならはやてと直接会ってにして下さい」って伝えておいて欲しい」

「?! それは・・・!」

「僕は、今回の件についてグレアムさんに怒っているんだよ。相当ね。大事な妹分を傷つけられたわけだし」


クロノが何か言おうとしたけど、それを遮って僕は言葉を続けた。こればっかりは引くわけにはいかないんだ。


「グレアムさんにも理由があるのはわかるけど、それはそれ、これはこれだ。管理局へのけじめだけじゃなくて、はやてに対してもきちんとけじめをつけて欲しいんだ」

「・・・それが、君がグレアムさんに怒っていることと何が関係するんだ」


ま、これだけじゃ僕の目的はわからないか。言葉だけみれば、単にはやてときちんと向き合えって言ってるだけだし。


「いや、ただ、僕としては大事な妹分を傷つけられたんだから、そっちは最低限のけじめはつけてくれ、って言いたいだけさ」

「・・・そうか、わかった。グレアム提督に伝えておこう」


僕の本当の目的をクロノに伝える気はないから適当にはぐらかしたけどな。クロノもはぐらかされたことに気付いているのかどことなく不服そうだったけど、一応了承してくれたし、これで僕のやりたいことも終わっ・・・


「時雨、僕の方からも聞きたいことがあるんだが、いいか?」


ん、何だろう? クロノが今聞きたいことの見当がつかない。まさかこのタイミングで闇の書の中での体験を聞いてくるわけがないだろうし・・・


「ん、いいけど・・・」

「君の能力は本当に「未来視」なのか?」


・・・え? なにか怪しまれるようなことしたかな? そこまででしゃばった行動はしなかったはずなんだけど・・・


「う~ん、自分でもよくわからないからなんとも言えないんだけど・・・」


でも、「自分でもよくわからない」て伝えていたはずだから、これで追求は免れるはz


「聖堂教会というベルカ式の魔導士の組織に騎士カリムという予知能力を持つ人物がいるのだが、騎士カリムは、君のようなはっきりとした予知は出来ないそうだ」


あ・・・これはちょっとやばいな。まさか、闇の書の事件中にもそっちの調査を進めていたなんて予想外だった。ここは慎重にいかないと。


「それだけなら、レアスキルのバリエーションだと思えば理解できなくも無いが、先ほどの君の「頼み」がどう考えてもおかしいんだ」

「・・・というと?」

「おかしい点は二つある。一つは、君は提督が八神はやてと直接会わないだろうという前提で話を持ちかけたことだ。もっとも、これは君の「未来視」で見た、という可能性も残る。だけど、もう一つの点とあわせると、疑問の方が大きくなる」

「そのもう一つって?」

「君があまりにも提督の性格を知りすぎていることだ」


・・・あ~、これは僕の目的がクロノにばれていたようだな。


「君の頼みは一見すると、ただ提督にけじめをつけろとしか言っていないように聞こえる。だが、君がグレアムさんの性格を知った上で仕返しをしようとしているのなら、これほど効率的なものはない」


うん、どう考えてもばればれですね。本当にありがとうございました。


「八神はやてがどういう性格なのかよくわからないが、あの守護騎士達の過去のデータとの変わりようから考えると、大体の予想はつく。おそらく、彼女は提督のことを許すだろう。しかし、提督にとっては・・・彼女に許されることが最大の罰になる」


クロノは、最後の方の言葉を搾り出すような声で言った。多分、恩師が今後苦しむことになるのを憂いてのことだろうな。


「まぁ、僕の目的はそんな感じだよ。クロノには見事に見抜かれていたか。・・・だけど、そのことをわかっていながらも、僕の言葉をグレアムさんに伝えるんだな」

「・・・・・・あぁ。しかし、今の僕の推測を認めたということは、君の能力は「未来視」ではないんだな?」


これはもう誤魔化せないし、認めるしかないだろう。NTっぽい能力は僕にあるらしいけど、未来視なんてものは僕には無い。これはタダの原作知識だし。だけど、


「うん。だけど、ちょっと本当のことは言えないかな」

「それは何故だ?」

「本当のことの方が到底信じられないような荒唐無稽なものだからね」

「それはこちらが決めることだ」


うぬぬ・・・。これは素直に言うしか無いのか? いや、まて。これは駆け引きだ。ならばまだ勝機はある。


「じゃあ、自分達が生きているこの世界が実は別の世界で物語として書かれてる、なんて言われて素直に信じられるのかい?」

「なっ?! そんなふざけたことを・・・!」

「つまりは、僕の「本当のこと」っていうのはそういった類のものなんだ。管理局にそんな報告書は上げられないだろ?」

「それはそうだが・・・」


クロノが大いに困惑しているのがよくわかる。僕のほうも声だけだが真剣に話しているし、大体の雰囲気は伝わったことだろう。・・・まさか今僕が言った例えが本当だとは思わないだろうしな。


「ま、僕は今の自分の周りの人たちが笑っていられるような環境にあればそれでいいんだ。そのためになら何でもするだろうけど、管理局を害するようなことはしないよ。何せ、身内が管理局の人なんだからね」

「・・・はぁ。わかった、この件に関しては今まで通り「未来視」としておくよ」


何とかクロノを丸め込めたようだな。丸め込む、とか何か悪いことをしているような印象を受けるけど。

しかし、まさかラストバトル後にこんな事になるなんてなぁ。僕はもう疲れたよ、ねぇパトラッシュ・・・。

そうだ、僕ももう一度寝よう。そうと決まれば、早いとこアリシアの元へ戻るとしますか。









まだいくつか問題は残っている。アリサとすずかに魔法のことをどう説明するのかとか、リインフォースの現状とか。

だが、とりあえず今はいろんな人を巻き込んだ事件が無事に終結したことを喜ぼう。


                  明日はきっと、昨日までよりも輝いた日々になるはずだから。










あとがき

一ヶ月ぶりの更新となってしまいました。本当に申し訳ありませんm(_ _)m
日が開いてしまったので、おかしいところがあるかもしれません・・・

これで、A's編もとりあえず完結です。まだ後日談といいますか、その後がありますけれど。リインの話以外はネタといいますかギャクがメインになると思います。やっとシリアスから解放されます・・・!

今後は、夏に入るまでは不定期更新になると思います。妄想が足りません。妄想が完了したときに随時投稿させていただきます。すみません。

最後に、この拙作はここで一区切りがつきました。まだ、この後に後日談とその後の日常を書かせていただきますが、今までこの話を読んでくださいまして本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いしますm(_ _)m



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・戦いは終わったはずなのに・・・
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/05/26 23:21

アインシュタインの言葉のなかに、

「熱いストーブの上に一分間手を載せてみてください。まるで一時間ぐらいに感じられるでしょう。ところが、かわいい女の子と一緒に一時間座っていても、一分間ぐらいにしか感じられない。それが相対性というものです 」

と、相対性理論について説明したものがある。

そして、今僕はアインシュタインに是非聞いてみたいことがある。

もし、ストーブの上に手を乗せつつ可愛い女の子と一緒に一時間座ったとしたら一体どれくらいの時間に感じられるのか、とな。


「ねぇ、シグレ。そろそろもう一度模擬戦しようよ」

「御堂。一度手合わせを願えないだろうか?」


・・・・・・誰か、マジで助けてください・・・。
















事の発端は、管理局から海鳴市に帰ってきた時、はやてに一度家に遊びに来てくれないかと誘われたことだった。ちなみに、帰ってきたのは12月26日だ。

そのときは、僕としてもまったり休むのには丁度いいだろうと思ったし、なのは達も乗り気だったんで、早速翌日、つまり今日、はやての家へ遊びに行くことになったんだ。

そこまでは何の問題も無かったわけなんだが・・・


「へぇ。ほんなら、なのはちゃんやアリシアちゃんや時雨さんは魔法を使うようになってまだ少ししか経って無いんや?」

「うん、そうなの」

「わたしとお兄ちゃんは、なのはよりも少し後からかな」

「あぁ、そうだな。半年くらい必死で訓練を積んできたな」

「何? つまりテスタロッサ以外は半年で我らと対等に戦えるようになったのか?」


シグナムがそう言ってきたあたりから、何かだんだんと雲行きが怪しくなってきて


「うん、そうなんだよ。なのはもアリシアもシグレもみんなすごいんだ。シグレには前に模擬戦で負けちゃったし。・・・あ、そうだ。まだシグレともう一度模擬戦をしていないね」

「いや、次はアリシアと、っていう約束じゃなかったっけ?」


フェイトが余計なことを思い出してから嫌な予感しか感じなくなってきて


「もちろん、アリシアとも模擬戦をするけれど、シグレとももう一度戦いたいな。今度は負けないよ?」

「お兄ちゃん、わたしは構わないよ? フェイトとお兄ちゃんの戦いって参考になるから」

「・・・いや、ちょっと待ってくれ」


もうどうしようも無いみたいだね・・・、とか言われそうな雰囲気になっても、まだそれを認めたくなくてあがこうとしたんだけど


「御堂は一度テスタロッサに勝っている・・・だと? なるほど、それは興味深いな」


このシグナムの発言がとどめとなり、冒頭のような状況になりました。

あぁ、確かに僕の明日は輝くようだな。主に紫と金色にな。

・・・本当に勘弁してくれよ。

だいたい、あの戦闘からそんなに経っていないから身体に疲労は残っているだろうし、それにもう年末なんだからおとなしく休もうぜ・・・。


「戦いたいのは分かる。・・・だが断る」

「なんで?!」

「何故だ?!」


いや、なんでって言われてもなぁ・・・


「年末年始くらい休ませてよ。世間のお父さんたちもそろそろ休暇に入るんだよ?」

「でも、まだクロノやリンディさんたちは働いてるよ?」

「あぁ。それに、ハラオウンに言えば模擬戦をする場所が確保できるのではないか?」


あぁ、もう! このバトルマニア達はどうしたら諦めてくれるんだよ!


「今年は僕はもう閉店です」

「じゃあ、来年のいつなら模擬戦をしてくれるの?」

「そうだな・・・。HUNT〇R×HU〇TERが再開したら、かな」

「それだといつになるかわかんないよ?!」

「何・・・! そういう意味だったのか?!」


くっ・・・フェイトには意味が分かってしまったか。後でジャ〇プを確認させて諦めさせようと思ったんだが。


「時雨さん、フェイトちゃんやシグナムと模擬戦する気は無いん?」


こんなやり取りをしていたら、はやてがこんなことを聞いてきた。だが、そんなのは当たり前だ。


「嫌でござる! 絶対に戦いたく無いでござる!」


だって、フェイトとシグナムの模擬戦に付き合ったら、今後も付き合わされる可能性がでてくるからな。一回模擬戦に付き合うだけじゃ満足してくれないのは確定的に明らかだし。

じゃあ、わざと負ければそういった意味での興味から外れるか、というと、既にある程度僕の実力が知られてしまった現在では無理だろうな。

むしろ、本気を出していなかった、とか言われて再戦を要求されるのが目に見えている。

あぁ、もうどうしよう・・・


「・・・なんかさっきから、シグレがすげージャン〇ネタを連発しているんだけど」

「あれ、ヴィータちゃんは漫画よく読むの?」

「あぁ。あれ、ギガ面白いのがあるからな!」

「そんなことより、ヴィータ、助けてくれ」

「いきなりあたしに振るなよ! あたしは関係ねーだろ」

「そんなつれないこと言うなよ」

「知らねーよ! 自分でなんとかしろ!」


むぅ、なのはと和気藹々と話していたヴィータに助けを求めてみたが、駄目だった。ならば・・・!


「ザフィーラ、とりあえずシグナムをなんとかする方法は無い?」

「・・・諦めろ、シグレ」

「くっ・・・。リインフォース、管制プログラムのデータから何か手は考えられないか?!」

「・・・すまない」

「シャマル・・・!」

「ごめんなさい、シグレさん・・・」


ぜ・・・全滅・・・だと・・・! 僕は、一体どうしたらいいんだ・・・。 

教えてくれ〇飛、ゼロは何も答えてはくれない・・・!



まぁ、大体こんな感じで八神家での時間は過ぎていった。僕の周り以外は非常に平和に過ごしていたのがひどく印象的だった。

結局、僕はなんとか家に帰る時間までバトルマニア達の要求をかわし続けることができた。・・・まぁ、家に帰ってもフェイトからまた迫られる可能性はあるんだけどな。

フェイトに迫られる・・・。言葉だけだとそこはかとなくえろい響きがするが、その意味を考えると喜べないんだよな・・・

正しい意味で迫られる分にはお兄さんは大歓迎なんだが。


ロリコンとかいうな! 僕はただ守備範囲が下方向に広いだけだ! 大人版フェイトさんでも大歓迎だ!


だけど、まぁ、なんていうか、ようやく日常に帰ってきたなっていう実感が得られた一日だったよ。

新学期が始まったら、アリサとすずかに魔法の説明をしなきゃならないけど、なんとかなるだろう。


「ねぇ、シグレ。模擬戦のことなんだけど・・・」

「モウヤメテー」


・・・どうにもならない問題に関しては無かったことにする方向で行かせてもらおう。











あとがき

今回は後日談その1です。話は短めで、早速非シリアスです。そのうち、この話に出てきた模擬戦を書くと思います。また戦闘シーンを書く必要が出てきました。・・・頑張らなくてはなりません。

今後の流れについて、リインが生存したのでPSPの方の流れに・・・と思っていたのですが、ちょっと考え直そうかと思いました。その理由としましては、

1.A's終了からあまり時間が経たないうちにPSPのシナリオが始まってしまうので、シリアスの比率が高くなってしまう。

2.作者のPSPが壊れたため、ゲームのシナリオの確認ができない。

の二つが挙げられます。後者に関しましては、まとめサイト等で確認することができるとは思うのですが、前者に関しましては、基本的にこの作品を重くしすぎないようにするという私の方針に引っかかってきますので、かなり悩んでおります。

現状でPSPのシナリオに進みますと、アリシアとオリ主のマテリアル版を登場させなければならなくなります。そうなると、オリ主の過去のせいでおそらくシリアスになってしまいます。なのは達にオリ主の過去を暴露すると思いますので。

そういうわけで、リインには八神家で半年から一年ほど平和に過ごした後、消滅してもらおうかと考えています。リイン視点の話はその時に書きます。はやてには原作の時よりも心の整理がついた状態でリインと別れてもらい、そしてリインⅡを創ることにしてもらいます。

ただ、まだ時間はありますので、これからどうするのかゆっくり考えることにします。

次回は、正月イベントを予定しております。・・・季節外れも甚だしいですね。



[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・日記形式でお送りし・・・かゆ・・・うま・・・
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2010/07/18 12:45
1月1日

 今日は元日だ。僕がアリシアに憑依して初めての元日を迎えたわけだ。非常に感慨が深い。というか、フェイトとアリシアの晴れ着姿が見れるのかと思うと心が躍る。

しかし、リンディさんよ。確かに僕はおせち料理に「栗金団とか伊達巻などの甘いものがある」とは言った。だが、まさかそれだけで今朝の食卓を埋めてくるとは・・・

甘ったるくて正直胸焼けしそうだ。砂糖の量も絶対にリンディさん仕様だったし。この三日間の朝食が全てアレになるのかと思うと、フェイトとアリシアが糖尿病にならないかがリアルで心配になってくる。



1月2日

今日は高町家にお邪魔している。昨日はお互いに家族だけで初詣に行ったのだが、今日はなのは達と一緒に近くの神社へ初詣に行くのだ。

えっ、昨日の初詣先はどうしたのかって? 昨日は川〇大師だったよ・・・

まったく、リンディさんにも困ったものだ。初詣とはテレビの中継映像でもあるような、とんでもない人ごみの中で行うのが日本の文化だと思ったらしい。

フェイトが人ごみのなかでちょっと涙目になっていたじゃないか。せっかくの着物もちょっと着崩れていたし。・・・ご馳走様でした。

思考が脱線したな。とりあえず、高町一家と一緒に初詣(二回目)に行って、そのあとはなのはと遊ぶのが今日の予定だな。

ちなみに、八神家の人々は参加しない。まだはやては車椅子なんで、人ごみを避ける為に三が日を過ぎてから一緒に初詣に行く約束になっている。

さて、今日はどうやってなのはで遊ぶかな・・・



1月3日

昨日は楽しかったな! 平和な初詣、そして正月名物罰ゲーム付き羽子板! 朝食のことはもう考えないぞ。

しかし、なのはは本当に運動神経が悪いんだなぁ。羽子板では何度もミスしていたし。実に可愛らしいものだ。それが十年後には・・・いや、なのはは絶対に更生させるんだ。この僕がっ!!

文末が某ツンデレ天才剣士の死亡時の台詞っぽいけど気にしない。明らかな死亡フラグだけど気にしない。大事なことなので2回(ry

とりあえず、罰ゲームとしてなのはの額には「殺」と書いてやった。「肉」ではなく「殺」なのがポイントだ。

なのはの涙目と額の「殺」という脅威のコンビネーションに思わず笑ってしまったが、フェイトとアリシアに「なのはをいじめないで!」と言われてしまった。

すまない。ついカッとなってやった。反省はしている。だが、後悔はしていない!

さて、今日は何の予定もないんで、家でまったりする日だ。お正月特番でも見てるかな。



1月4日

今日は八神家の人々と一緒に遅めの初詣に行く日だ。もちろんなのはも来る。

しかし、初詣といいつつも僕らはもう三回目なんだが・・・

ま、仏の顔も三度までって言うし問題ないか!



1月5日

昨日の初詣は特に事件も無く終わった。ヴォルケンズが何かやらかしてくれるのを期待したんだけどなぁ。

三が日は過ぎてたんで、みんな私服だったし。来年こそは八神家の着物姿を見るんだ!

まぁ、ヴィータが屋台の綿飴とかリンゴ飴をほうばる姿が見れたんで今年は良しとしよう。ヴィータには3人娘とはまた違った萌え・・・いや趣があっていいよなぁ。

それはそうと、何故か今日は朝からフェイトがそわそわしている。

・・・あぁ、明日は月曜日か。で、ジャ〇プの発売日か。どうやら、フェイトは年末に僕が言った「富〇が書いたら模擬戦の相手をする」っていう感じの発言を信じているようだな。

こちらとしても、一応自分の発言には責任を持とうと思っている。だがフェイト、君は〇樫を甘く見ている! 年が始まって早々に奴が書くものか!

フェイト・テスタロッサ、破れたり! ふはははは!!



1月6日








・・・・・・かゆ・・・・・・うま・・・・・・・・・








____________________________________________________________________________________



おっと、あまりの衝撃で思わず毎朝の脳内日記が乱れてしまったようだ。

落ち着け僕。まずは素数を数えるんだ。それからカレンダーを見て今日の日付を確認するんだ。

2、3、5、7、11・・・・・・101。で、今日は1月6日の月曜日だな。それでは、もう一度フェイトに問いただそう。さっき僕の精神に拒絶反応を引き起こした発言はきっと僕の幻聴だと信じて。


「・・・フェイト。もう一度言ってくれるかな?」

「うん。だからね、HU〇TER×HUNT〇Rが今週号に掲載されてるんだよ」

「馬鹿なっ!!」

「本当だよ、ほらっ!」

「認めん、断じて認めんぞおぉぉ!!」

「往生際が悪いよ、お兄ちゃん・・・」


あぁ、分かっているさ、アリシア。でもね、どうしても認めたくない現実ってあるんだよ・・・

だいたい、フェイトが思わず見蕩れるくらいの満面の笑みでジャン〇を持ってきた時点で何が起こったのか予想はついていたし。

しかし、これはひどい。僕は富〇を信じていたのに。奴なら少なくともあと一年は休載するって。



〇樫いいぃぃ!! 何をやっている!! ふざけるなああああぁぁぁぁぁ!!!!



ちなみに、奴は次号以降はまた休載だそうだ。・・・本当に勘弁してくれよ。


「・・・しょうがない。で、いつ模擬戦をするんだ、フェイト?」

「もちろん、今すぐにだよ!」


・・・フェイトのテンションはMAXのようだ。しかし、さすがに今すぐには出来ないだろ。場所の問題もあるし。僕の心の準備の問題もある。


「いや、さすがにそれは無理だ。年始早々クロノやリンディさんに朝から無理をさせるな」

「でも・・・」

「それに、いきなり模擬戦って言ったって、アリシアも困るだろう? 僕が戦うにしても、身体はアリシアのものなんだから」

「わたしは大丈夫だよ、お兄ちゃん」


くっ、アリシア、余計なことを・・・!


「とにかく、今日は駄目だ。・・・あぁ~、そんな顔をするな。模擬戦は明日にしよう」

「わかったよ。それじゃあ、シグナムにも連絡しておくねっ!」


・・・今日は駄目だと言ったら涙目&ちょっとかがんで上目遣いでこっちを見てきたんで思わず明日なら良いと言ってしまった。

あれ、天然でやってるんだろうなぁ。天然の男殺しとは・・・フェイト、恐ろしい娘っ!

いや、今はそんなことを考えている場合ではない。現在、僕にとってフェイトは物理的な意味で恐ろしい娘となっているのだからな。

正直、カートリッジシステムの追加によって以前よりもスピードも火力もかなり上がっているしなぁ。技量はそこまで上がっているわけじゃないのがせめての救いか。

それに、僕もカートリッジシステムの恩恵を受けているわけだし。結局のところ、フェイトは自身の長所を伸ばしただけ、つまり弱点を補うようなことはしていないんだから、以前と同じように隙をつければ勝機はあるな。

問題はどうやって隙をつくるか・・・か。さて、どうしたものか・・・

方法は思いつくんだけど、果たしてそれが可能なのかどうか、が肝心なんだよなぁ。以前は魔力量の関係で諦めていたこともカートリッジによって可能になるかもしれないし。

うん、まぁいつまでも考えていても仕方が無い。本番は明日なんだから直ぐにでも色々と試していかないとな。


「いくつか試したいことがあるんだけどいいかい、シグザール?」

「はい、マスター」

「アリシアも、ちょっと身体に負担があるかもだけど良い?」

「うん、大丈夫だよ」


それでは、明日に向けて準備していきますか。恐らく明日はシグナムとも模擬戦をやることになりそうだから、カートリッジも後で多めに作っておかないとな。

一度勝負を受けると決めたからには、負けてはやらないぞ!






-side フェイト-


今週のジャ〇プにHU〇TER×HUNT〇Rがあるのを見たとき、わたしはおもわずその場で喜んで飛び跳ねてしまった。

・・・コンビニの中だったから、周りの人の目が恥ずかしかったよ。

そのあと、シグレにジャン〇を見せたら、最初は否定しようと頑張っていたけれど、最後には諦めてくれたようで、模擬戦を受けると言ってくれた。

このことは早くシグナムにも伝えないと。シグナムもシグレと一度模擬戦をしたいって言っていたし。

明日はシグレと模擬戦だ。今度は負けないよ、シグレ!


-side フェイト end-









あとがき

2ヶ月ぶりの更新になってしまいました。更新が遅れまして本当にすみませんm(_ _)m

今回の話も短めです。夏に冬の行事を想像して書くのは、私の技量ではまだできないようです。もっと妄想・・・いや、瞑想をして精神を鍛えた方がいいのでしょう、きっと。あと、日付と曜日は適当です。少なくとも今年のものではありません。

更新停止中にいろいろとArcadia内の作品を読んでいたのですが、面白いと思う作品が多いわけでして・・・ とらは板に混ざっても恥ずかしくないようなものを目標として、まずは失踪しないで頑張っていきたいと思います。




[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・ある意味ボス戦
Name: かに◆c28e9226 ID:e149788b
Date: 2011/01/06 00:51
さてさて、今日はフェイトとシグナムとの模擬戦だZE☆

・・・はぁ。

僕、生きて明日を迎えられるかなぁ。昨日は対策を練るのに集中していたから何も感じていなかったけど、これってもしかしなくても死亡フラグだよね?

だって、どう考えても僕はフェイトとシグナムの2連戦をしなきゃならない状況だし。

いや、フェイト戦が終わったところで、「今日は体力が持たないからまた後日」ってシグナムに言って連戦を回避することも考えたさ。

でもね、今、模擬戦会場にはなぜかなのはや八神家の人々も全員いるわけで。

うん。全員なんだ。だから、回復役のシャマルさんもいるわけで。

つまり、疲れたから今日は無理、っていうのは通用しないわけで。

これがいわゆる「詰み」というやつか。まさか現実で遭遇することになろうとは・・・!

・・・いつまでも現実逃避してるわけにもいかないな。そろそろ逝くか。


「それじゃ、よろしく」

「今度は負けないからね!」

「フェイトもお兄ちゃんも頑張って」




_______________________________________________________________________________________________



今回の僕の作戦だが、短期決戦に持ち込もうと思っている。

もちろん、後にシグナム戦が控えているというのもある。

だけど、これにはもう一つの理由がある。それは、後のお楽しみということで。


「はぁっ!」

「っ! シグザール!」

「Round Shield」


おっと、早速フェイトが攻撃してきたようだ。では、こちらも仕掛けるとしよう。


「いくぞ、シグザール」

「All right. "Blitz Silhouette"」


まず、こっちから高機動戦をフェイトに仕掛ける。そのために、ブリッツシルエットを発動させる。


「えっ?! ・・・でも、それなら!」


フェイトも僕から高機動戦を仕掛けてくるとは思わなかったのだろう。一瞬戸惑った様子だったが、直ぐに攻撃に移ってきた。


「Plasma Lancer」


バルディッシュの機械的だがダンディな声と共に無数の金色の魔力弾がこっちに飛んでくるが、どれも僕には当たらない。

ただ、いくつか魔力弾はブリッツシルエットによって発生している幻影に当たっていた。

さすがはエース級、か。こっちは幻影も含めて高速で移動しているのに当ててくるとかチートだろ・・・

っと、こちらからも攻撃しないとな。


「Stinger Ray, fire」


僕の方からもフェイトに向かって魔力弾を撃つ。ただ、止まって撃つのとは勝手が違って狙いを定めるのが難しい。

幻影も一緒にフェイクの魔力弾を撃っているんで、こちらはブライトさんも納得してくれるような弾幕を張っている・・・はずだ。だが、フェイトはこっちの魔力弾の間を縫うように移動して避けていて、魔力弾はかすりもしない。

・・・一発くらいかすって欲しいんだけどなぁ。

しばらくの間、僕とフェイトはお互いに弾幕を張り合って避け続けるという、リアルSTGをしていた。向こうは余裕で回避してるのに対し、僕はグレイズしまくりな感じだったけど。スペルカードは無いから食らいボムなんてできないぜ。

このままだとジリ貧だ。そもそもブリッツシルエットは維持するのに大量の魔力を消費するし。

カートリッジを使えば少しは楽になるんだが、そのためだけに使うわけにはいかないんだ。カートリッジは別のことに使う。

ちなみに、フェイト戦で僕が用意したカートリッジは6個だ。

では、そろそろ1個目を使うとしよう。


「シグザール、カートリッジロード」

「All right. Cartridge load.」

「っ! バルディッシュ!」

「Blitz Action」


こっちがカートリッジをロードしたのを見て、フェイトが僕から距離をとる。

・・・実は、カートリッジをロードしたときに、僕の居場所がバレるんじゃないかと心配してたんだが、杞憂に終わったようだ。幻影もちゃんとカートリッジロードのアクションをしてくれた。

しかし、僕のカートリッジロードを見て距離を取るとは。前回の近距離砲撃の強化版が飛んでくると思ったのだろうか?

だがしかし! 僕は


「Blitz Accel」

「?! なんで・・・」


離れていくフェイトとは逆方向に全力で向かった。そして、結構な距離をとったところで


「ブリッツシルエット終了。」

「All right, master」


ブリッツシルエットを切ってその場にとどまり、さらに


「シグザール、例のアレ、頼む」

「Okey. Cartridge reload. "Absolute Barrier"」


カートリッジを2つ消費して周囲に目に見えるシールドを張った。

イメージとしては、ファンネルバリアみたいな感じだ。支点が6つあるからドラグーンバリアの方が近いかもしれない。発想が相変わらずガン〇ムで済まない。

6つの支点によって形成されているこのシールドはなかなかの強度を誇っている・・・はずだ。

何せ、カートリッジを2個も使って形成したんだからな。砲撃の一発や二発には耐えてもらわなくてはな。

まぁ、こうやって的を増やす&守りを固めるといった行動を見せれば、当然フェイトは砲撃魔法を構えるわけでして。

あぁ、カートリッジロードもしてるなぁ。・・・頼むからちゃんと防いでくれよ、シールド。お前は不可能を可能にする男の技(?)を模してるんだからな。


「Plasma Smasher」

「ファイア!」


おぉ・・・。金色の光がこっちに迫ってくるぜ。てかまぶしい。



うおおおおぉぉぉぉ!! 目が、目がああぁ!!!!



金色の光の奔流に僕はシールドごと飲み込まれた。

そして・・・




























・・・・・・ふぅ。なんとか防げたようだ。ただ、シールドの光がかなり弱くなってるな。


「シグザール」

「All right. Cartridge reload. Barrier Charge」


とりあえず、また一つカートリッジを消費してシールドを補強しておいた。

こういうことができるのが"Absolute Barrier"の良い所なんだよなぁ。まだ開発途中なんで、移動しながら展開するのは無理という欠点があるんだが。


ふとフェイトの様子を伺うと、どうやら驚いてるようだった。

ま、カートリッジを使った砲撃を防がれるなんて、フェイトの実力からすれば普通は有り得ないからな。

となれば、当然フェイトは自分の最高の必殺技を撃とうとするはずだ。

案の定、フェイトはバルディッシュをザンバーフォームに変えて構えてきたし。

ということは、撃つ魔法はプラズマザンバーブレイカーだろう。カートリッジリロードをしてるのも見えた。

僕もさらに一つカートリッジをリロードしてシールドの輝きをいっそう強くさせる。

こうすれば、フェイトの攻撃を防ぎきった後に、大技を使った隙をついて攻撃することが出来る・・・と考えているように見えるだろう。

なぜなら、こっちは消耗の多い魔法を長時間展開していた。となれば、長期戦が出来ない僕は逆転の一発を狙うしかないからな。

そして、僕はフェイトの大技を回避するのではなくて、受け止めるような構えを見せた。

なら、ここがお互いの意地を賭けた勝負どころだとフェイトは考えて、そのままプラズマザンバーブレイカーを撃ってくれることだろう。

・・・それこそが僕の狙いだと気付かずに。

さっきの僕が行ったカートリッジリロードは、シールドの内側に別の魔法を展開する為のものだ。

シールドが輝きを増したのは、それをシールドの補強だとミスリードさせるためだ。

そして、展開した魔法は転移魔法。転移先はフェイトの真後ろだ・・・!

フェイトが大技を撃った直後、いや、撃っている最中の隙を僕は突く!

さぁ、ここが正念場だ!



フェイトの周りに雷が落ち、ザンバーに収束する。


「雷光一閃・・・」


そして、ザンバーの輝きが目も眩むほどになって、


「プラズマザンバーブレイカー!!」


フェイトから先ほどのプラズマスマッシャーよりも苛烈な金色の光が僕に迫ってくる。


目測であと100メートル。 まだだ。


あと50メートル。目の前の砲撃のプレッシャーに総毛立つ。 まだだ・・・!


あと10メートル。金色の光に目を開けていられなくなりそうなのを必死に堪える。 まだ早い・・・!


あと5メートル。目の前が金というより、もはや真っ白だ。 もう少し・・・!


砲撃の先端がシールドに触れた。・・・今だ!!


僕は転移魔法を起動させた。

カートリッジを消費して組んだ魔法故、タイムラグなどなく転移魔法は起動し、僕をフェイトの後ろへと転送する。

ぎりぎりまで砲撃を引き付けたせいか、僕の目はまだ機能していない。


だが、目の前にフェイトが居るのは例の能力で感じられる・・・!


「えっ! そんな・・・!!」

「・・・カートリッジリロード。いくぞ、シグザール!」

「Close Buster」


自分の感覚を信じて、渾身の一撃をフェイトに放った。


そして、視界を取り戻した僕が最初に目にしたのは落下していくフェイトだった。

・・・って、気を失ってるっぽいぞ?!

どことなく既視感を感じつつ、フェイトの元に急いでフェイトを抱きかかえ、地上に降りた。

とりあえず、対フェイト戦は僕の勝ちかな。

で、次はシグナム戦か。・・・もう疲れたんで拒否してもいいかな?









無理だよなぁ。・・・・・・・・・はぁ。












あとがき

気合で昨日に引き続き投稿しました。ちょっと気力が切れましたので、次回更新は一週間ほど先になると思います。・・・シグナム戦はどうしましょう、本当に。

オリ主がフェイトに勝っていますが、基本的な能力は本文中でオリ主が言っているように、フェイトの方が上です。

ただ、はったりの利かせ方とかはオリ主の方が上手いんで、結果としてオリ主がフェイトに勝っているのです。

フェイトって素直な娘だから、戦闘技術は上手くても、こういった絡め手といいますか、相手の思考を制限していくような戦いには弱い気がするんですよね。

・・・もっとも、私が書いているのは高度な戦略(笑)ですが。

次回はシグナム戦です。オリ主はシャマルさんに強制的に回復させられての連戦です。しかも、そう簡単には策に引っかかってくれなさそうなシグナムさんが相手です。ニート侍と化していないシグナムさんは強いと思います。オリ主の苦戦は必至です。

ボコられるオリ主に期待して下さいm(_ _)m










[16699] なのは世界のだれかに憑依・・・ボス連戦はつらいよ
Name: かに◆c28e9226 ID:4f67b261
Date: 2011/01/06 01:02
「烈火の将シグナム、参る!」


はい、これからシグナムとの模擬戦が始まります。・・・鬱だ。

体力と魔力はシャマルのおかげで回復しているんだが、精神の方まで回復するわけでもないからなぁ。

だからといって、適当に戦うことは僕には許されない。・・・だって後が怖いからな。気合が入っていなかったことがシグナムにバレたら、きっと恐ろしい目に合うような気がするんだよね。

それに、やっぱり戦うからには勝ちたいし。では、気合を入れて二戦目、行きますか!


「御堂時雨、行きます!」




______________________________________________________






模擬戦が始まると、すぐにシグナムは距離を詰めてきた。まぁ、シグナムはヴィータのような遠距離戦ができるような魔法が使えないんだから当然だな。

こちらもセイバーフォームに切り替えてシグナムに向かっていったが、そこからしばらくは案の定僕の劣勢となった。

シグナムの剣戟は見えている。各行動のスピードはフェイトの方が上だし、そのフェイトの動きも僕はなんとか追えるからな。

でも、


「どうした御堂! この程度かっ!」

「っ・・・ぐぅっ!」

『・・・っ、重い!』


そのレヴァンティンによる一太刀がとにかく重い。シグザールで受け止めるたびに腕が痺れる。

もちろん、まともに正面から受け止めているんじゃなくて、受け流すように剣戟を捌こうとしているんだけど、技量の差が如実にでてきているって感じだ。

それに、剣戟がいくら見えていようとも身体が全てに反応できるわけでもなく、いくつか受け損ねてしまった。

アリシアも今は身体の中に入っているのにもかかわらず、結構痛そうにしているし。・・・正直すまないと思っている。

このままではこっちがジリ貧だし、そろそろ仕掛けるとしますか!


「Blitz Accel」

「距離を取る気か!」


まずは距離をとらないと話にならない。シグナムがクロスレンジを保とうと追って来るが、こっちのセイバーモードの瞬間的なスピードはフェイトのそれよりも上だ。すぐにある程度の距離を引き離すことに成功する。


「シグザール!」

「Cartridge reload.」


しかし、カートリッジロードが終わったとき、既にシグナムが目前まで迫っていた。

確かに、カートリッジロード直後に僕はシグザールを構えられないわけで、つまり僕は致命的な硬直をシグナムにさらしているわけだ。


「まだ判断が甘いな、紫電一閃!」


当然、シグナムはここぞとばかりに必殺の一閃を放ってくる。

だけどさ、攻撃中って大抵防御が疎かになっているものだよね。特に、決まると思っていた一撃を放っている最中は。


「甘いのはそっちの方だ!」

「Armor Burst」

「何っ!」


ここでリバースカードオープン! って感じかな。

僕はセイバーフォームによって追加されたバリアジャケットの装甲をパージして、それを爆発させた。

もちろん、僕自身は「Blitz Accel」によって装甲が爆発する前にミドルレンジまで待避しているし、ついでにシグザールも通常フォームへと戻っている。ここまでワンセットで「Armor Burst」という魔法になっている。・・・魔法というよりもコンボ名といった方が正しいかもだが。

ちなみに、この策を考え付いた時は、追加装甲をパージして爆発させるのを「Armor Burst」として、その直後に「Blitz Accel」を起動しようとしていた。

だが、それでは「Blitz Accel」の起動が間に合わないとシグザールに指摘されたので、二つの魔法を即座に展開・待機状態にすることとなり、ならばいっそのこと一連の流れを魔法として登録した方がいいんじゃないかってことで、今の形の「Armor Burst」が完成した。

もっとも、二つの魔法をラグ無しで展開する必要が出たので、カートリッジを使用する羽目になったが。気軽にフォームチェンジと攻撃を同時に行う魔法がほしかったんだけどなぁ・・・

まぁ、同時に爆発部分の威力を上げることもできたんで、切り札としては申し分の無い性能にはなったから、いいかな。


『やった・・・かな?』


アリシア、そのセリフはアウトだ、とか思っていると、


「なるほど、なかなかやるな」


バリアジャケットに多少の破損が見えるものの、まだまだ元気そうなシグナムが爆風の中から現れました。


「では、改めて行くぞ、御堂!」


そう言うと同時に、シグナムはレヴァンティンをシュランゲフォルムに変えて、連結刃を展開してくる。

こっちが射撃主体のフォームに切り替えたんだから当然の選択だな。実際、フェイトもこれには苦しめられていたし。刃の檻に閉じ込められるようなものだからな。

だけど、僕はこれを待っていた。

シュランゲフォルムになると、シグナムの近接戦闘能力は普段よりも下がる。あんな形状の剣で目の前まで迫った相手をすぐに攻撃するなんてできないはずだし。

問題は刃の檻をどうやって潜り抜けるかだが、幸い、僕にはどこから攻撃が飛んでくるかがNT的なアレでわかる。つまり、この檻の中に道を見つけることができるのだ。

ならば、あとは一気にシグナムに肉薄し、「Close Buster」を叩きこむまで・・・!


「Cartridge reload.」


シグナム戦用にも6つカートリッジを用意していたが、ここで一気に5つ使う。「Blitz Silhouette」起動のために一つ、その移動スピードを上げるために一つ、下がったバリアジャケットの強度を上げるために一つ、「Close Buster」の準備のために一つ、そして全ての魔法を並列処理するために一つだ。

無理やり魔砲の威力を上げるためにカートリッジを使うなのはやフェイトのように、アリシアの身体に負担がかかり過ぎることは無いが、代わりにシグザールが大変なことになっている。宝石の部分の光り方が尋常じゃない。だが、今はこれをやるしかないんだ。


「耐えてくれ、シグザール!」

「No problem, my master. Let's go!」

「あぁ、行くぞ!」


そして僕は突撃を開始した。

シグナムに対して分身を撒き散らしつつ最短距離を突き進む。それを連結刃が分身ごとなぎ払うように全方位から迎撃してくるが、僕はそれを最小限の動きで避けながら進む。


だが、何度も刃に掠ってしまった。もうバリアジャケットはボロボロになっている。最短距離で進む以上、多少の傷は覚悟の上で、それ故にバリアジャケットの強度も突貫で上げたのだが、僕の見込みが甘かったようだ。だが、それを気にしてはいられない。今はただひたすらに前へ向かう。

その様子を見て、まずいと思ったのかシグナムはレヴァンティンをシュベルトフォルムに戻そうとする。だが、


「遅い!」

「くっ!」

「Close Buster」




レヴァンテインが剣の姿に戻ったのと同時に僕の突き出した右手から砲撃が放たれ、目の前のシグナムは吹き飛んだ。




「はぁ・・・、はぁ・・・」

『今のは・・・直撃したよね?』

「あぁ、多分・・・な」


今ので決着がつかなければ僕の負けだ。

だけど、シグナムが吹き飛ばされた方向を見ると、


「・・・・・・」


そこにはボロボロになりつつも、レヴァンティンを構えているシグナムの姿があった。

お互い満身創痍といった風体だが、僕にはもう戦闘を続行できるだけの体力も魔力も残っていない。こっちは、もうふらふらな状態だ。シグザールの宝石部分の光も弱弱しく点滅している。


「これは、僕の負け・・・か」

「いや御堂、今回は私の負けだ」


しかし、シグナムはそう言ってレヴァンティンを降ろした。


ん? どういうことなのシグナムさん?

実はシグナムも動けないってことなのかなぁと思っていると、


「この勝負、シグレの勝ちだ」


というクロノの声が模擬戦会場に響き渡った。

どうやら、審判の判定でも僕の勝ちらしい。なんにせよ、これで模擬戦は全て終了だ。

・・・全部終わったと思ったら、気が抜けて一気に疲れが襲ってきた。アリシアには満身創痍な身体を任せてしまって悪いが、ちょっと休ませてもらおう。


「すまない、アリシ」

「わかってるよ。少し休んでて、お兄ちゃん」


全部言い終わる前に身体の主導権をアリシアに取られてしまった。よっぽど僕が消耗しているんだな、これは。

それでは、アリシアに甘えて少し休ませてもらいますか。

・・・たまには幼女に甘えたっていいじゃないか。なぁ?






______________________________________________________





あとがき


お久しぶりです。更新が半年も停止してすみませんでしたm(_ _)m

更新再開の話が前の話との繋がりのせいで、私が最も描写を苦手とする戦闘シーンになっていまいました。・・・後日修正するかもしれません。

今回の話ですが、なんとオリ主がシグナムに勝ってしまいました。ただ、満身創痍です。ボロボロです。身体はアリシアのものなので、つまりアリシアの露出度が大変なことになっていますが、そんなことにも頭が回らないほどオリ主は疲労しています。A's編ラストバトルよりも彼は精神的に疲れていると思います。

次回の更新は日曜日になると思います。これからの更新は不定期になると思いますが、よろしくお願いしますm(_ _)m


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