第六階層へと転移した たっち・みー達は互いを見合う。
戦闘が起きた場合のことを考え、
二人がその装備を選んだ理由―モモンガに装備のほとんどを預けてしまっていたのも理由の一つだが、 前提として、NPC達を倒すことは目的に含まれていないからだ。
時間を稼ぐ。それさえ出来ればいい。
たっち・みーとぶくぶく茶釜は
戦って勝つ必要は無い、生き残るだけでいい。
これが勝利条件だ。
一番警戒しなければならないのは転移先で待ち伏せされる事だが、六階層に来なかったNPCが、ナザリックの出口である一階層、もしくはモモンガのいる九階層で待ち構えていると考えていいだろう。
どちらにせよ、この場に来なかった者が待ち構えているのだと予想は出来る。
「皆さん、心の準備はいいですか?」
たっち・みーがそう聞くと、ぶくぶく茶釜がそれぞれの触手に持った盾をゴングのようにぶつけ合わせて答える。
ペロロンチーノは胸に手を当て、深呼吸を繰り返す。「恐いわー、ヤだなー」とボヤいてはいるが、その口調はどこか明るい。
ウルベルトは、ただ頷いただけだが、長い瞳孔からは決意が表れている。
たっち・みーは満足気に頷く。
このメンバーが集まるのは、いつぶりだろうか。
もはや会うことは無いだろうと思っていた友人との再会。
最悪の場合、これからNPC達との命のやり取りが始まろうというのに、表情に影が帯びることはない。
それは、信頼であり、確信。
このメンバーなら、たとえ階層守護者を相手にしようと生き残れる。
そんな絶対的な確信があった。
「では、行きましょうか。」
そう言って歩き始めた たっち・みーだったが、その歩みはたった一歩で止まる。
まさか こんなところで止まるなどと思っていなかったペロロンチーノは、たっち・みーの背中に顔をぶつけ、「うげっ!」と短い悲鳴を上げた。
「すいません、セバスから
涙目で睨みつけてくるペロロンチーノに謝罪し、たっち・みーはセバスへと思考を向ける。
後ろで、ウルベルトが「命令したのは俺だから、普通 俺に連絡するのが筋じゃないか?」と言っているのが見えた。
ぶくぶく茶釜がウルベルト宥めるように触手を振る様子も見え、なんとなく申し訳無く感じた たっち・みーの背が縮こまる。
出鼻を挫かれ、微妙な空気が流れてきた頃、たっち・みーがセバスと幾つか問答をした後、連絡は終わったようだ。
「なんて言ってた?」
「……外は何も無い草原だそうです。」
たっち・みーの言葉はそこで途切れる。
「……確定ってことか。」
ぶくぶく茶釜がポツリと呟き、溜め息を吐いた。
「ナザリックの周囲一kmには、小動物以外の生命体は見られなかったようなので、捜索範囲を広げたらしいです。それで、小さな村を見つけたとも言っていました。」
「村?」
首を傾げるペロロンチーノにたっち・みーは頷きつつ答える。
「はい。人間がいるのも確認出来たようですが、話を聞く限り、見た目はただの農民のようです。プレイヤーでは無いと思いますが…。」
「セバス達はどうする?その村を詳しく調べさせるの?」
「いいえ。」
ぶくぶく茶釜の問いにたっち・みーは首を横に振る。
「危険があるかもしれないので、ナザリックに帰還するように伝えました。」
「……セバスは大丈夫っぽいな。」
ペロロンチーノはウルベルトへと視線を動かした。ウルベルトは先程の件を根に持っているのか肯定の返事が小さい。
「じゃあ、次は守護者達だね。」
「そうですね。行きましょうか。」
ぶくぶく茶釜と共に先頭を歩くたっち・みーに後ろから非難するような声がかかる。
「…たっちさん、今度は止まらないで下さいよ。」
円形劇場の中央へと進んでいると、貴賓席の方から女の子の声が聞こえる。
かなりの高度から飛び降りた少女は見事な着地を見せ、一目散にかけよってくる。
「お帰りなさいませ!そしてようこそ!私達の守護階層まで!!」
左右で色の違う瞳を涙で輝かせたアウラは、深々と頭を垂れる。
なかなか頭を上げないアウラにぶくぶく茶釜が警戒しつつ伺うように声をかける。
「アウラ…久しぶり。」
その言葉にアウラの全身が跳ねた。
顔を伏せているため表情は分からない。
ただ、子供が、泣くまいと必死に我慢しているような―こんな顔を見せたく無い。そんな気持ちが伝わってくる。
ぶくぶく茶釜は、ブルブルと震え始めたアウラの体を触手を伸ばし、小さい肩に触れる。
更に大きくアウラの肩が跳ねた。
顔を上げるように促すと、力が入らないのか緩慢な動きで顔を上げる。
「う、うっ、ぶくぶく茶釜さまぁ~。」
アウラの瞳から大粒の涙が零れ、頬を伝う。
堅く結んでいた口からは、ぶくぶく茶釜への思いが止めどなく溢れ出す。
―寂しかった、会いたかった と。
ビックリしたぶくぶく茶釜が慌てて落ち着かせるように頭を撫でたが、それは逆効果となった。
アウラの瞳からは次々と涙が溢れ、ダークエルフ特有の浅黒い肌がうっすらと赤く染まる。
ぶくぶく茶釜はアウラの体を抱き寄せ、背中を撫でる。
スライムの体なのだ。抱かれ心地はお世辞にも良いとは言えないだろう。ペロロンチーノは気持ち悪いと一蹴したのだから。
だが、それでも。
アウラはぶくぶく茶釜の体に顔を埋める。
震える手でぶくぶく茶釜の体を掴み、体を密着させる。
その様子を見ていたたっち・みー達は、武器へと さりげなく回していた手を放した。
「どう?落ち着いた?」
「…はい。」
アウラは鼻を啜りつつ頷く。
体を汚したと謝罪するアウラを安心させるようにぶくぶく茶釜がもう一度頭を撫でる。
ぶくぶく茶釜は何か言ってあげるべきかと悩んだが、下手に言葉をかけるなら、また泣き出しかねない。そんな予感がする。
「マーレは?」
ペロロンチーノが聞くと、アウラが忘れてたかのように短い声を上げて貴賓席の方を向く。
「マーレ!! 至高の御方をお待たせするなんて!早く来なさいよ!!」
アウラの怒号にピョコンと頭を出したマーレは、ぶくぶく茶釜の姿を見つけると直ぐに飛び降り、駆け出す。
乱れたスカートの裾を直すのも忘れるほど疾走し、マーレはアウラと同じように頭を垂れた。
「お、お帰りなさいませ!み、皆様にもう一度会えて、ぼ、僕 本当に嬉しいです!」
アウラと同じく頬を赤らめたマーレの目にも涙が溜まっている。
ぶくぶく茶釜はマーレを手招きで呼び、アウラと一緒に抱き締める。
マーレの頬に伝う涙を何度も拭ってやる。
頭を撫で、声をかける。
マーレは一言も聞き漏らすまいと、一心にぶくぶく茶釜を見つめる。
不思議だ。
とマーレは思う。
ぶくぶく茶釜の声は、マーレの体を歓喜で震わせる能力を持つ。
優しく、美しい声がマーレの耳朶を打つ度に、例えようの無い喜びに満たされる。
他の至高の御方の声も、もちろん尊い。だが、一番はぶくぶく茶釜だ。
だって、こんなにもマーレを満たしてやまないのだから。
ぶくぶく茶釜は器用に触手を駆使し、頭を撫で、背中をポンポンと叩き、涙を拭ってやる。
アウラやマーレから涙が枯れるまで、まだ時間はかかるようだ。
ぶくぶく茶釜は安心させるように、母が子に愛情を注ぐように二人を抱き締め続けた。
ペロロンチーノはマーレの乱れたスカートの裾をサッと直すと、突如出現した
そこから出てきたのは、美しい少女。種族特有の白い肌をほとんど晒すことの無い服で身を包んだシャルティアだ。
「おや?私が一番乗りであり―」
シャルティアは驚愕で言葉を切る。
目を大きく見開き、赤い瞳に涙の膜を張るシャルティアにペロロンチーノは恥ずかしそうに頬を掻いた。
そして、少し迷った後、照れくさそうに両手を大きく開いてシャルティアを呼ぶ。
「よし!おいで、シャルティア。」
「っ! ペロロンチーノ様~!」
シャルティアは走り、ペロロンチーノの腕に飛び込む。
シャルティアの身長に合わせるように屈んだペロロンチーノの首に腕を巻き付け、体を擦り寄せる。
―何度も何度も。
全ての五感で愛しい創造主を味わう。
凛々しいお姿を、心地よい体温を、安心させる体臭を、肌触りの良い羽を。そしてシャルティアを支配する声を。
不敬な考えだが、シャルティアは侵入者が来るのをずっと待っていた。
愚かな侵入者を殺せば、またペロロンチーノが戻ってきて、褒めてくれるのではないかと。
シャルティアがいくら願おうとも、侵入者が来ることは無かった。
だが、それでも―。
世界で一番強く、美しい君。
戻って来て下さった。信じていた。ずっと、この日が来るのを。
シャルティアは
ペロロンチーノは、片手でシャルティアを抱き、もう片方の手で顔を覆う。
天を仰ぐように、勢い良く体を反らし、叫ぶ。
「我が生涯に一片の悔いなし!!」
全てをつぎ込んだ美少女との熱い抱擁にペロロンチーノは悶える。
「ヤッッバイ、めっちゃ可愛い。さすが俺のシャルティアだ。」
更に強く抱くと、シャルティアの体から良い香りが漂う。
嫌がることなく、むしろ自分から体を密着させてくるシャルティアが可愛くてたまらない。
ペロロンチーノの頭に邪な想像が展開される。
ちょっとぐらい良いのでは と思ったところで、たっち・みーとウルベルトがいることを思い出した。
じっとこちらを見据えているのは、シャルティアを警戒している為なのか、それとも別の意味があるのだろうか。
舌打ちしつつ、頭に浮かぶ数々の嗜好を一旦、隅に押し込む。
クラクラと酔ったように揺れる頭を何とか稼働させ、シャルティアを立たせた。
「あっ…。」
名残惜しそうな声を上げたシャルティアに同じくぶくぶく茶釜から離れたアウラの声がかかる。
「シャルティア!ぶくぶく茶釜様やたっち・みー様、ウルベルト・アレイン・オードル様への御挨拶を忘れてるんじゃないわよ!」
守護者に相応しい挨拶じゃないと、赤く充血した目でシャルティアを睨む。
そこでシャルティアは自分のミスに気付く。
体を強張らせる跪くシャルティアに、ウルベルトが構わないと手を振る。
何度も謝罪し、罰をねだるシャルティアをペロロンチーノが留めるとシャルティアはようやく立ち上がった。
そして、アウラに向かって舌を突き出す。
「泣き虫チビスケ!」
「う、うるさい!シャルティアだって泣いてるじゃん!」
「うぐっ!でも、チビスケみたいに みっともない泣き方はしていんせん!」
「泣けば一緒よ!ニセ乳。」
シャルティアのある一点をアウラは指差す。
その単語にシャルティアが跳ねた。
「だぁーれがニセ乳だぁ!」
「ニセ乳じゃん、ほら、直さなくていいの?走ったからズレてるよ!ぷっ。」
今気付いたのか、あらぬ方へと移動した胸を直すシャルティアとチビスケと言われたアウラの可愛らしいケンカが始まる。
マーレは、二人を止めなければ という思いはあるようだが、間に入るのが恐ろしいのか、おどおど と機会を伺っているだけだ。
二人のケンカを止めたのは、ぶくぶく茶釜でもペロロンチーノでも無い。
地面を凍らせ、ライトブルーの武人が現れる。
「御方ノ前デ遊ビ過ギダ!」
コキュートスは六つの目でアウラとシャルティアを睨みつけ、それを咎めなかったマーレをも睨みつける。
そして、深く頭を垂れ、臣下の礼を取るコキュートスにたっち・みーが声をかけた。
「よく来たな、コキュートス。」
「オ呼ビトアラバ即座二、御方。帰還、御喜ビ申シ上ゲマス。」
コキュートスが一人一人に顔を向け、喜びを示す。
そして、自分の創造主の姿が見れなかったことに小さく肩を落とした。
「調子はどうだ?コキュートス。」
たっち・みーが聞くと、コキュートスの口から冷気が漏れた。
「ハッ。オ陰様デ良クサセテ頂イテオリマス。」
「それは良かった。最近は侵入者などはいたか?」
「イイエ。私ガ知ル限リナザリック ヘト足ヲ踏ミ入レタ 愚カ者ハオリマセン。」
「そうか。変わらずナザリックを守ってくれて感謝する。」
コキュートスの身が喜びで震えた。
「ソノ御言葉一ツデ報ワレマス。」
もう一度深く頭を下げたコキュートスからウルベルトは視線を外し、もう一人の守護者を見る。
感情を表し、突撃するような速度で近づいてきたアウラ達とは違って、優雅に歩を進める。
ウルベルトは警戒しつつ、声をかけた。
「久しぶりだな、デミウルゴス。」
「御帰還、お持ち申しておりました。ウルベルト様。」
臣下の礼をとりつつ、ニコリと悪魔らしい笑みを浮かべるデミウルゴスを見て、ウルベルトは長い瞳孔を更に伸ばし、微笑む。
アウラ、マーレとぶくぶく茶釜は親子のように。
シャルティアとペロロンチーノは恋人のように。
デミウルゴスとウルベルトは、創造主と被造物。明確な上下関係を感じさせた。
デミウルゴスが誰よりもシモベらしい態度をとったからか、それとも、自分が作ったNPCだからだろうか。
ウルベルトはデミウルゴスの絶対的な忠誠心を感じとった。
悪魔らしく、優雅に。
ウルベルトとデミウルゴスは笑顔を交わす。
「アルベドがいませんね。」
ウルベルトの横まで来た たっち・みーが言う。
アルベドを見ていないか と守護者達に問いかけると、皆首を横に振った。
六階層に集まるよう言われた後―アルベドは一人でどこかに行ってしまったらしい。
「危険では?」
「…アルベドがモモンガさんに危害を加えそうな感じは無さそうですが…。一応は警戒しておいた方がいいでしょうね。まあ、何かあればアルベドが俺の主寝室に辿り着く前に追い付けます。」
たっち・みーとウルベルトが会話している間に、守護者達は一列に並び、支配者からの命令を待っている。
たっち・みー、ウルベルト、ぶくぶく茶釜、ペロロンチーノが守護者達の前に立つ。
「では、皆。至高の支配者に忠誠の儀を。」
姿を見せないアルベドの代わりにデミウルゴスが口を開いた。
部屋から出るのは容易だった。
というのは、これでもかと言うほどかけられた魔法はアインズを部屋に閉じ込めるような類いのものでは無かった。
部屋に侵入する者へとかけられた魔法は部屋から出る者に対しては発動しないようだ。
いや、一つだけ違うようだが。
それに構わず悠然と部屋から出たアインズは、玉座の間に向かう。
アルベドのことだ。もう玉座の間に着いていることだろう。
アインズが寝ていた間の出来事。その全てを伝える為に。
玉座の間に入ると、アルベドの姿が目に入る。
アルベドに何かしらのバッドステータス、ダメージは無いようで、アインズはホッと息を吐いた。
跪く、アルベドの横を通り玉座へと腰かけ、立つように促す。
「それで、現在ナザリックに起きている異変を説明しろ。」
「はい。アインズ様。」
アルベドは伝えた。
アインズがモモンガだった時、何を思い名を変えられ、眠りについたか。
その後に現れた裏切り者達―奴等がアインズにとって、どういう人物であったか。
アルベドが見て、聞き、感じた全てを余すところなくアインズに伝える。
「申し訳ありません、アインズ様。裏切り者達の侵入を許したばかりか、その命令まで聞くとは……。どうか、この身に罰を与えて下さい。」
深く頭を垂れるアルベドにアインズは声をかけた。
「アルベド、お前の全てを私は許そう。お前がそうせざるを得なかったのは理解している。とりあえずはナザリックに未知の危険が迫っているのでは無い。まずはそれを喜ぼう。」
アインズは玉座の間に燦然と並ぶ旗を眺める。
「あれが、私の……かつての仲間達か?」
アインズは、アルベドに視線を移すことなく言う。
一つ一つの旗を、ゆっくりと時間をかけて眺めながら。
どう答えるべきだろうか。アルベドは長い一瞬を迷う。
アルベドが問いに答えようとするよりも早く、アインズが笑った。
「――くだらん。」
その言葉にアルベドの背筋が歓喜で震える。
アインズの中には、もう奴等はいない。
アインズは全てを捨て去ったのだと確信して。
「仲間?それがどうした。奴等はこのナザリックを捨てた裏切り者ども。それを仲間だと言えるか?」
「いいえ!」
アルベドは即座に答える。
「ナザリック地下大墳墓の支配者に相応しいのは、アインズ様ただ御一人でございます!」
そして、アルベドはギルドメンバーを表した旗を睨みつける。
「奴等の旗を今すぐに処分致しましょう。この場に相応しいのはアインズ様の、モモンガ様の旗だけ。このアルベドにご命令下さい。」
アピールするように胸に手を当て、跪くアルベドにアインズは高揚に頷く。
「アルベド、お前の忠義。感謝する。」
「感謝など勿体ない。この身はアインズ様だけの物。どうぞアインズ様の望まれるように使って下さい。」
「そうか、では―。」
アインズは旗へと向き、骨の指を伸ばす。
感情も無く、ただ、指を突き付ける。
風など吹いてはいないのに、ばさりと音を立て一つの旗が揺れる。
アインズが何かしたのか―アルベドは伺う。
だが、アインズが魔法を使った様子はなかった。
けれど―確かに揺れたのだ。
裏切り者達の旗ではなく、ただ一つ―モモンガの旗だけが。
そして、アインズは魔法を発動する。
「
床に落ちた旗をアインズは冷たく眺める。
「アルベド、あの旗を処分しておけ。」
「アインズ様!?」
「今は他にやるべき事があるからな…。それが終わり次第処分せよ。」
「し、しかし…。」
困惑の表情を浮かべるアルベドにアインズは笑い、冷たく言い放つ。
「あれこそが、最も愚かな男を象徴する忌むべき旗だ。虚像にすがり、裏切られた哀れな男。そうは思わないか?」
アインズは答えは求めていないようだった。
アルベドに問いかけた今でも、ずっと旗を見つめている。
「いいえ!アインズ様の優しさにつけ込んだ奴等が薄汚いだけです!」
アルベドはそう言ってアインズに詰め寄る。
目の端に涙を浮かべるアルベドにアインズは、微笑みかける。
「だとしても、だ。アルベド、モモンガという男はギルドが崩壊していく様をただ眺めるだけで、行動しなかったのだろう?」
アルベドは首を振る。
裏切り者達が何を思い
だが、それでもモモンガに、アインズに非は無い。
非難されるべくは、モモンガでは無い。憎き裏切り者達だ。
アインズは立ち上がり、ローブの袖でアルベドの涙を拭う。アルベドは畏れ多いと断ろうとしたが、アインズに宥められ、身を任せる。
「泣くな、アルベド。美しい顔が台無しだぞ。」
「う、美しい!?く、くふふ!」
身悶えるアルベドの涙を拭い終わると、アインズは上層を見上げる。
「さて、奴等は六階層にいるのだったな?」
「はい。ガルガンチュア、ヴィクティムを除く各階層守護者を集めております。」
「そうか、では、先に奴等についての情報を集めるとしよう。アルベド、私に付き従え。そして行こうか、我がギルドの証よ。」
アインズは握り締めたスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで床を強く叩いた。