てんとう虫コミックス第1巻


未来の国からはるばると   15頁 小四70年1月号(ドラえもんあらわれる)
 お正月。のどかに自分の部屋でモチを食べる少年、野比のび太。そこへ突然どこからともなく、「三十分後に首をつる。四十分後には火あぶりになる」と言う声が聞こえてきたが、部屋には誰もいない。その時不意に机の引出しが開き、中から妙な「もの」が出てきた。
 『ぼくだけど。気にさわったかしら。』『ワッ』
 驚くのび太に彼は、自分はのび太を恐ろしい運命から救いに来たと言う。しかし彼はその理由を話す前にいきなり部屋にあったモチを食べ始め、そのまま引き出しに消えていってしまう。夢を見たと納得したのび太の前に今度は引出しから少年が現れ、一人で勝手に話し始める。後から来た例の彼・ドラえもんと共にその少年・セワシは改めて説明を始めた。彼はのび太の孫の孫だという。のび太は憧れの少女・しずかと結婚したのかと期待するが、相手はジャイアンの妹のジャイ子だった。怒ったのび太は二人を追い返すが、丁度30分後、屋根に乗った羽根つきのハネを取ろうとして落っこち、木に引っかかって首吊り状態になってしまう。さらに40分後、風呂場で滑って湯船に落ち、ストーブにあたるという状態になってしまう。ドラえもん達の残したアルバムで自分の未来を知り幻滅するのび太。再び戻ってきたセワシは、その不幸な運命を変えるためにドラえもんを連れてきたのだ。
 用のすんだセワシは20世紀の町を見物しようと言い出し、ドラえもんは「タケコプター」を取り出す。体につけることで自由に空を飛ぶ事が出来るのだ。しかし二人の知らぬ間に、タケコプターをつけられたズボンからずり落ちてしまったのび太はたんこぶを作り、『あいつ、ほんとにたよりになるのかなあ。』と呟くのだった。  
 
 (解説)正に「伝説の始まり」と呼ぶにふさわしい、記念すべき第1話です。この話に余計な解説は必要ないでしょう。現在の視点で見ると設定等に違和感を感じる部分もありますが、それらも含めて全てが「始まり」の第1話です。この二人の出会いから本当に全てが始まったのです。今読むと、さらに感慨深いものがありますね。
ドラえもんの大予言   14頁 小四70年2月号
 いつものように学校から帰ってきて出かけようとするのび太を、ドラえもんが22世紀のマジックハンドを使って止めた。ドラえもんはこれからのび太がしずかの家へ行く途中にダンプカーにはねられ、全治1ヶ月の大怪我を負う事を話した。出かけるのを諦めるのび太だったが、しずかからの催促の電話をドラえもんが受け、すぐ行くと約束してしまったため、出かける羽目になってしまう。ママにお別れを言って出かける二人。「タイムテレビ」で10秒後の二人を映し出して慎重に行動し、事故現場は回避したが、車に関する危険は去らず、おもちゃの車を壊してオヤジに殴られてしまう。
 やむを得ず他人の家の中を通っていくが、それでも庭で運転の練習をしていた車に追いかけられたり、泥棒に間違えられて「運転手」にぶたれたり、その家にダンプカーが突っ込んできたりと散々な目にあう。屋根づたいに移動しても、危うく車の看板に潰されそうになってしまう。そこに現れたセワシはタケコプターを使う事を勧める。やっとしずかの家に着くが、ドアを開けた瞬間、車のおもちゃがのび太の頭を直撃する。近所の子供が遊びに来ていたのだ。結局怪我はしたが、大怪我にならずにすんだと喜ぶドラえもんだった。  
 
 (解説)このタイトルになったのは、初版当時のオカルトブームの影響でしょうか?全治1ヶ月って「大怪我」なのかな…、という事はさておき、いくらか理性的ではあるものの、やはりドタバタギャグの応酬ですね。道中ののびドラの掛け合いが面白いです。個人的な事を言うと、ドタバタのストーリー紹介って、書くのが難しいですね(笑)。
変身ビスケット   9頁 小六74年4月号(動物ビスケット)
 ママからお客にお菓子を買ってくるように頼まれたのび太。ドラえもんに行かせようとするがドラえもんは部屋におらず、部屋には動物のビスケットが置いてあった。ネコのビスケットをつまみ食いし、お客に出すのび太だが、結局お菓子を買いに行く事になる。その買い物の最中、突然のび太の顔がネコに変わってしまう。あのビスケットは「動物変身ビスケット」で、食べると5分ほどその動物に変身してしまうのだ。
 だがすでに客は四つ食べてしまっていた。トイレに誘ってウマ型の効き目を、ウソの電話をかけてニワトリ型の効き目を終わらせた二人だったが、お客も帰ってしまい、ママを怒らせてしまう。そこへ帰ってきたパパがとりなそうと家の中に入るが、ウサギのビスケットをつまみ食いして変身したママの姿を見て、気絶してしまうのだった。  
 
 (解説)初出時期は結構中期にさしかかっている頃なのですが、この話は比較的ドタバタ色が強く、初期作品ばかりの1巻にはあっている内容です。客が変身する前の台詞が変身する動物とかぶっていたりして細かいですね。カエルに変身した時、不必要に登場して驚く通行人がイイ味出してます(笑)。
秘スパイ大作戦   14頁 小四70年5月号
 誤って先生のカビンを割ってしまったのび太。のび太は先生に謝りに行こうとするが、それを見ていたスネ夫はのび太を驚かして怖がらせ、先生やみんなに黙っている代わりに自分の命令をなんでも聞く事をのび太に約束させてしまう。教室の掃除やスネ夫の買い物、果てはドブの中の野球ボールを探したりと大変な目にあうのび太だが、さらにスネ夫から話を聞いた友達が一斉にのび太に用事を言いつけようとするので、さすがにのび太も逃げ出してしまう。
 スネ夫の汚いやり口に憤慨したドラえもんは「復元光線」を使ってカビンを直してやる。さらに復讐とばかりに「スパイセット」を出し、これを使ってスネ夫の弱点を探り始めた。家でママにウソをついたり、鏡に映った自分の顔に見惚れたりと、スネ夫の知られざる一面を暴いていく二人。そして二人はついにスネ夫のおねしょ癖という決定的な秘密を知った。二人は電話をかけてきたスネ夫をからかったので、怒って先生に話してしまおうと学校に来たスネ夫はカビンが直っているのに驚き、今度は逆に自分が壊してしまった。さらにスネ夫の秘密をばらそうとするのび太達を前に、今度は二人の言う事に従うスネ夫。そしてジャイアンがのび太に裸で逆立ちしてワンワンと言わせようとして「カビン」という言葉を言ったため、スネ夫が実行してしまうのだった。  
 
 (解説)始めにお断りしておくと、タイトルの「秘」は本来は「まるひ」なのですが、表現できない文字のため、「秘」と表記させていただきます。
 個人的に1巻中で一番気に入っている話です。スネ夫初登場(てんコミでは)の今話では、とにかくスネ夫が笑えます。カビンを見つけた時の「ギャヒョーン。」とか、秘密をばらされそうになった時の仰天の表情(55ページ4コマ目)はウケまくりです(微妙に曲がった効果線がナイス!)。オチに完結感がないのが難点と言えなくもないですが、いかにも初期らしい楽しいギャグ話です。
コベアベ   9頁 小四72年4月号
 自分の部屋を片付けないでしずかのところへ出かけようとするのび太を叱るママ。その時ドラえもんが取り出した笛を吹くと、ママは急にのび太を誉め始めた。ドラえもんの出した笛は、頭で考えている事と逆の事をさせる「コベアベ」という笛だった。安心して出かけようとするのび太だが、今度はコベアベの力で部屋を片付けさせられてしまう。ドラえもんからコベアベを借りたのび太は笛を吹きまくり、風呂に入ろうとしたドラえもんがドブに落ちたり、スネ夫を殴ろうとしたジャイアンを、逆に殴ってもらうようになってしまう。
 しずかの家に来たのび太だったが、しずかの家には強盗が入っていた。コベアベをのび太が吹いたために中に入れられたのび太は、つばがたまってコベアベがふけなくなってしまうピンチを切り抜け、何とか強盗を捕まえる。家に帰ったのび太は部屋を片付けた事でママに誉められるが、コベアベを取り上げたドラえもんによって逆に怒られ、ビンタされてしまうのだった。  
 
 (解説)典型的な道具中心の話ですが、ドタバタの色彩も色濃く残っており、バランスの取れた作品に仕上がっています。しかしドタバタだからというワケではないのでしょうが、本当に表情が豊かです。個人的にはコベアベでドブに落とされる寸前のコマのドラが面白いですね。今回のジャイアン、「買ったばかりのバットの殴りぐあいをためさせろ。」。バットをそんな目的で購入しちゃいけないよ(笑)。
古道具きょう争   16頁 小三70年7月号(古いものは、もういやだ)、てんコミ初期(古どうぐきょう争)
 スネ夫の家で古道具を自慢されて怒ったのび太はドラえもんに頼み、22世紀のお店・「ちん品堂」から古道具を取り替えてもらい、鉱石ラジオを手に入れる。スネ夫と張り合い始めたのび太はちん品堂に頼んで、なんでも古道具と交換してもらうが、最後には素っ裸にされてしまう。野比家の家具や服も昔のものになり、ママは大混乱。さらにはのび太に触れたお巡りさんの服や車までもが古くなり、パパの服やタバコ、ライター、そしてついには家そのものが石器時代のものになってしまった。元に戻すまでの1週間の間、22世紀のものを借りた野比家だったが、やはり落ち着かないのだった。  
 
 (解説)一口にナンセンスな世界と言っても、これはかなり凄い世界ですね。古道具ではあるけれど、いくらなんでも石器時代までさかのぼる事はないでしょう(笑)。この話で初めて「鉱石ラジオ」という物を知った人も多いでしょう。余談ですがこの話、初出時と現在とでセリフが差し替えられている部分があります。変更後の作品は、作品全体のリズム感が少々失われているような気がしますが。
ペコペコバッタ   14頁 小四70年10月号
 道路でサッカーをしていた友人達にボールをぶつけられてしまうのび太。友達は責任をなすりつけあった挙句、しまいには「ボールをよけられなかったのび太が悪い」と言い出した。この事を聞いて怒ったドラえもんは、自分のした悪い事を反省させ、ペコペコ謝らせる「ペコペコバッタ」を取り出した。最初にスネ夫を謝らせた二人はジャイアンも謝らせようとするが、その時はずみでペコペコバッタを町中にばらまいてしまい、町中の人間が謝り始めてしまう。ペコペコバッタを取り出すためのコショウを買いに行った雑貨屋の主人も反省して店に出てこず、友人のタダシは悪い事をしたとして死のうとする。家へ戻る途中、前科45犯の強盗や自分から牢屋に入った警官やらに会いながらもコショウを見つけ、パパとママにかけるのび太。しかし今度はウソをついていたとして二人はケンカを始めてしまう。それを見てみんなを治すのが心配になってしまうのび太だった。  
 
 (解説)反省するのは確かに良い事だし、悪い事を素直に謝るのもとても良い事です。でもそれも度を過ぎるとどうなるか、とそこまで考えたのかはわかりませんが、とにかく面白い世界になりました。反省してどこからともなく巨大なハンマーを出すジャイアン、183人に謝るというスネ夫(何したの?)、何故か物価の値上がりまで自分のせいにするお巡りさんなど、今回はサブ、及びエキストラキャラも魅力的に描かれています。最後のオチに少し皮肉めいた感覚もあるようですね。
ご先祖さまがんばれ   16頁 小三70年6月号
 スネ夫の先祖が殿様から頂いたという家宝の刀に礼をさせられ、「家柄が違う」とバカにされたのび太はドラえもんとともに、狩人だった先祖を殿様にするために「タイムマシン」で過去に向かう。さっそく先祖ののび作に会うが、やはりさえない性格で、現れたイノシシから逃げる羽目になってしまう。それを救ったのはスネ夫にそっくりのスネ丸だった。だがのび作は怖がって戦に行こうとしない。仕方なく偶然出会ったジャイアンそっくりのそこいらの兵士からビー玉と交換して鎧を借り、のび太が戦に行く事にする。ドラえもんから「タケコプター」「とうめいマント」「スーパー手ぶくろ」を借りて手近の殿様を捕まえるのび太。相手の方ではスネ丸も捕まっていた。二人を殺そうとする相手の殿様に怒ったのび太はスネ丸達を救出する。しかし旗さしを見て算数の宿題を思い出したのび太は、道具一式をのび作に渡し、手柄を取るように言って現代に帰ってきた。しかし結果は変わらず、のび作は道具でイノシシを捕まえ、喜んでいるのだった。  
 
 (解説)拡大解釈すれば、「運命というものは、本人にその意志がなければ決して変わらない」という事を言っているようにも取れますが、まあテーマはさておき、この話も思いっきり笑うのが一番でしょう。最初にイノシシをとれなかったのび作が最後にイノシシを捕まえるという伏線や、いきなり算数の宿題という妙に現実的な事を思い出すのび太など、笑い所は満載です。この時点ですでにドラは「タヌキ」と呼ばれていたようですね。ドラに「どっちも自分が正しいと思ってるよ。戦争なんてそんなもんだよ。」と言わせるあたりは痛烈です。ちなみにラストページでパパが読んでいる新聞には「藤子一家香港珍道中」と書かれています。
かげがり   12頁 小四71年7月号
 パパから庭の草をむしるように言われたのび太。暑いのでそれをいやがるのび太にドラえもんははさみを取り出すと、のび太の影を切り始めた。すると影が動き出し、ドラは草むしりをまかす。ドラえもんはのび太に30分経ったら特別なのりでくっつける事を忠告した。草むしりを終えた影にのび太は色々な命令を出し、さらに影をお使いに出すが、その間に30分たってしまう。影は時間が経つと知恵がつき始め、しまいには影が本物になり、のび太が影にされてしまうという。二人が家を飛び出したスキに影は家に戻り、おやつのスイカを食べてしまう。影を追って再び家に戻ってきた二人だが、ついにのび太が影になり始めてしまう。知恵をつけて話す事も出来るようになった影は家中を逃げ回る。二人は「かげとりもち」を使って捕まえようとするがうまくいかず、ママを怒らせてしまう。その時ある考えを思いついたドラえもんはママにのび太を日当たりのいい所で叱ってもらう。そのスキにママの影を切り離し、のび太の影を捕まえてもらうのだった。  
 
 (解説)22世紀には怖い道具があるもんですね(笑)。ドタバタの世界に隠れてはいますが、影と本物とが入れ替わってしまうという、怪奇SF的なエッセンスが使われている所も忘れてはならないでしょう。しかしドラも最初に30分経った後の事を言っておけばいいのに。でもこういう事は後年何度も出てきますよね。
おせじ口べに   7頁 小二72年10月号
 買ってきた服をママが試着しているところを見てデメ金に似ていると言ったのび太は怒られてしまう。さらにパパの書いた絵を見て感想を言ったらひっぱたかれてしまう。どう誉めたらいいか解らないと言うのび太にドラえもんは「おせじ口べに」をとりだす。これを口に塗って喋ると相手を喜ばせられるのだが、最初は間違えてケンカの時に使う「悪口べに」を使ってしまう。改めておせじ口べにを使って、パパやママ、友達、近所の気難しいおじいさん、凶暴なイヌや果てはドロボウまでおせじで感動させてしまう。家に帰った二人だが、そこでは悪口べにをつけたママがパパと口ゲンカをしているところだった。  
 
 (解説)この話は1巻中では比較的ドラが良識ある人物になっています。しかし一体どんなおせじなんだろう?涙を流して喜ぶほどなのだから、相当なんでしょうね。「ノータリン」という悪口に時代を感じます。今では使われない言葉でしょうから、悪口にも流行り廃りがあるんだなあ、とそんな事まで感じさせてくれる作品です(そうなの?)。
一生に一度は百点を…   9頁 小六73年12月号(コンピューターペンシル)
 テストを返され、いつものように百点だったのび太は、どうしても百点以上取れないと悔しがる。しかしそれは夢だった。学園祭の打ち合わせに行くために宿題をやっていたのだが、ドラえもんに注意されてヤケになったのび太は宿題をやめてしまう。ドラえもんは不思議な鉛筆を取りだし、のび太に宿題をやらせると、突然スラスラ出来るようになった。ドラえもんの出した鉛筆は「コンピューターペンシル」で、どんな難しい問題も簡単に解いてしまうのだ。しずかの家へ打ち合わせに行ったのび太は途中、ジャイアンとスネ夫の宿題も片付け、さらにしずかのパパの仕事も終わらせてしまう。不思議がる三人の前で調子に乗るのび太。さらに明日のテストに使うと言う。秘密を知ったジャイアンはコンピューターペンシルをなんとか手に入れる計画を練る。その夜、通信簿がオール5なら、という話をパパとするのび太。しかしその時にドラえもんが見せた目つきを忘れられなかった。テスト当日、ドラの目つきを思い出し、ついにのび太はペンシルを使わなかった。しかしのび太の持っていたものは偽物で、本物はジャイアンが盗んでいたのだ。しかし答案を見たジャイアンの父親は『不正だけはするなと教えてきたはずだぞ!』とジャイアンをボコボコに殴り、ジャイアンは『百点なんかこりごりだい!!』と言ってのび太達にペンシルを返すのだった。  
 
 (解説)1巻中、唯一教訓色を前面に出したエピソードです。勉強が出来ない事よりも、不正をする事こそが人間として恥ずべき行為。誰よりも仲の良い親友から軽蔑されたのび太は良心の呵責に耐え兼ね道具の使用を断念、そしてそのまま使用したジャイアンは父親によって諭され、さらに愛のムチとも言うべき鉄拳制裁(笑)をもらう。ある意味、理想的な友人・父子関係を描いていると言えるでしょう。偽のペンシルを作ったジャイアンは工作が得意なようです。しかしのび太よ、たとえ勉強が出来てもオール5は取れないよ。世の中には「体育」とか「図工」というものがあるのだから(笑)。
プロポーズ作戦   12頁 小四71年11月号
 その日はのび太のパパとママの結婚記念日だった。のび太は二人が結婚した頃の話を聞くが、ママはパパから結婚を申し込まれたと言い、パパはママから申し込まれたと言う。「うそ発見機」で調べてもどちらも本当だったため、のび太とドラえもんはタイムマシンでプロポーズのあった日へと向かう。そこではママが1時間も遅れているパパを待っている所だった。遅れてきたパパに怒ったママはその場を去ってしまうが、近眼のため、よく似た別の人をパパと勘違いしてしまう。それを見て怒ったパパは結婚の申込みを止めてしまう。勘違いに気付いたママだったが、今度はパパが妹に小遣いをせびられているところを見て誤解してしまう。このままでは運命が変わり、のび太も産まれなくなってしまう。ドラえもんは「ヒトマネロボット」を出し、まずパパに変身させてママと仲直りさせる。次にママに変身させてパパと仲直りさせ、二人の仲を取り持つことに成功する。だが結果的に二人の言い分は本当なので、今日のケンカをどうするか悩むのび太。家に戻ると二人はどの部屋にもいなかった。離婚して家出したのかと心配するが、二人は庭で話をしながら仲直りしていた。それを見て一安心するのび太とドラえもんだった。  
 
 (解説)よく「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と比べられる?今話。ギャグの体裁を取っているものの、未来の息子が若い両親の仲を取り持つという、タイムパラドックス的要素を取り入れた、SFペーソス溢れる佳作です。ヒトマネロボットを使ったドラの演技にも注目。「結婚」とか「離婚」という概念を、この話を読んで初めて知った人もいるのではないでしょうか。
○○が××と△△する   10頁 小六74年5月号(かならず実現予定メモ帳)
 しずかと自分の家で勉強する約束をしたのび太。それを聞いて怒ったジャイアンとスネ夫は強引にしずかを自分達の方に誘う。やる気をなくしたのび太にドラえもんは、書きこむとどんな予定でも実現する「かならず実現する予定メモ帳」を取り出す。試しにドラが「パパが今すぐにお菓子屋でドラやきもらってくる」と書いて、パパが本当にドラやきをもらってきた。のび太もそれに書きこみ、しずかに来てもらう事になった。さらにいたずらして「ドラえもんがママとテーブルの上でゴーゴーをおどる」と書き、ネズミを見たママとドラえもんはゴーゴーを踊っているように慌てふためいてしまう。さらにのび太はジャイアン達に仕返しして、先生にアカンベーをさせてしまう。やってきたしずかにメモ帳を見せ、郷ひろみと話をしたいという望みをかなえてやる。それを見て羨ましがったのび太は「しずちゃんがのび太に今ここでチューをする」と書いてしまう。ペンのインクが出なくなったとキャップをいじるしずか。と突然インクが「チュー」と吹きだし、のび太の顔面を直撃するのだった。  
 
 (解説)「こんなこといいな できたらいいな」の世界ですが、それぞれの予定の実現の仕方がやはり面白いですね。最後にああなるとは少しルール違反のような気がしますが。しかしスネ夫はなんで目をいじる時に舌まで出すのか(笑)。ラストの予定、「キス」と書いてたらどうなったんでしょうか。まあそこらへんを勘ぐるのは野暮ですけど。今回注目の表情は、怒った時に歯茎まで見せて歯ぎしりするジャイアン(笑)。
雪でアッチッチ   9頁 小二72年2月号(あべこべクリーム)
 冬の日、スネ夫達に誘われ思いっきり厚着したうえに湯たんぽまで持って外に出るのび太。バカにされたのび太はドラえもんに泣きつくが、ドラえもんも寒がって布団を被りコタツに入っていた。ドラえもんはみんなをあっといわせようと、熱さを冷たく感じ、寒さを暖かく感じるようになる「あべこべクリーム」を出す。半ズボン1枚になって外に飛び出したのび太たちにジャイアン達は驚く。負けじとジャイアン達もパンツ1枚になるが、やはり我慢しきれない。のび太がみんなに威張っているところに雪が降ってくる。ところが二人には雪はとてつもなく熱く感じられ、さらに冷やしてやろうとジャイアン達が冷水をかけてしまってさらに熱くなってしまう。家の熱いお風呂に入って冷やそうとするが、今度はあまりにも熱すぎたのか、二人は氷づけになってしまい、それを見たママは仰天するのだった。  

 (解説)寒暖の感覚が逆転する。単純ではありますが、絶対にありえない世界を面白おかしく描いています。のび太がズボンだけで外に飛び出す時のママのセリフと顔が面白いです。ちなみにこのあべこべクリーム、11年の時を経て、「魔界大冒険」で再デビューを果たす事になります。
ランプのけむりオバケ   11頁 小二72年1月号(けむりのおばけ)
 正月にのんびりごろ寝するドラえもん。そこへドラえもんを呼ぶのび太の大声が。驚いて駆けつけると、のび太はストーブをつけて欲しいだけだった。ドラえもんは「アラビンのランプ」からけむりロボットを出し、これを使うようにのび太に言う。だがストーブのつけ方を教えろと、けむりロボットに連れてこられる羽目になってしまう。のび太はロボットに冬休みの宿題をやるよう頼むと、ロボットは宿題を持ってどこかへいってしまう。戻ってくると宿題が出来ていた。トランプやお菓子も持ってきてもらって二人で遊ぶのび太。のび太は調子に乗って百万円欲しいと言い出した。ロボットは百万円を手に入れるためパパを襲う。一度受けた命令はかならず守るロボットは町へ飛び出し、通行人を襲い始めた。のび太はドラえもんに頼み、命令取り消しボタンで取り消してもらう。騒ぎも収まり町を歩くのび太の前でジャイアンとスネ夫が先生と話している。三人はそれぞれロボットにお菓子とトランプを取られ、宿題をやらされていたのだった。  

 (解説)これもハッキリとしたオチがありませんね。けむりロボットはよく先生たちの家がわかったものだ。「アラビンのランプ」というネーミングが少し笑えます。
走れ!ウマタケ   9頁 小三74年1月号(ウマタケ)
 タケウマで遊んでいたみんながタケウマ乗りコンテストをやろうと言い出した。タケウマに乗れないのび太だったがバカにされたために出場を約束してしまう。それを聞いたパパはタケウマを作ってくれるが、のび太は最初からドラえもんに頼むつもりだった。仕方なくドラはウマとタケの合の子の「ウマタケ」を連れてくる。さっそく乗ろうとするのび太だが汚い足だったため、ウマタケを怒らせてしまう。何とかご機嫌を取って町中をウマタケにのって飛び跳ねていくのび太。二人は翌日までにウマタケを休ませるが、パパがさおの代わりにしようとしてウマタケは怒り出して家を飛び出し、ジャイアンに連れて行かれてしまう。のび太はドラえもんのコーチの下、タケウマの練習を始め、ついに乗れるようになる。そこへ聞こえてくる悲鳴。ウマタケがジャイアンの家で大暴れしているところだった。  

 (解説)格好は間抜けなのにプライドが高いという設定が、ウマタケの面白さを引き出しています。でも22世紀とはいえ、こんなのを何故作ったのか(笑)。でも今ではすっかりタケウマは消えてしまいましたね。22世紀に竹馬が流行らないというのもわかる気がします。僕も乗れませんが(笑)。失敗する事を恐れてはならないというメッセージも垣間見えます。

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