<ざっくり言うと>
  • 「パラオの国旗は日本の真似」というのは藤岡信勝らが広めたデマ

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このブログの広告に、こんなのが出ていました。左上のダイレクト出版のやつです。
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「『月の丸』国旗を知っていますか?」


見た瞬間、「あー、これ有名な右翼デマだなー」と思いましたがやっぱりそうでした。パラオの国旗が、日本の日の丸を元ネタにしている、日本へのリスペクトを表している、というものです。


↓上がパラオ、下が日本。
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この広告先には、こんな風に説明がなされていました。
これは、日本から3,000kmほど南。美しい海に囲まれた数百個の島を持ち、地上の楽園とも呼ばれている「パラオ共和国」の国旗だ。

一見、日の丸にソックリだが… 真ん中の円は黄色に。よーく見ると、その円は中心よりやや左に置かれている。 いったい、なぜパラオはこのような国旗を選んだのか?それは、独立に当たって国旗を決める会議の場で...

「日本が太陽で、私たちが月だ。私たちは日本がいて初めて輝ける。」

「月を中央にすると日本の色違いになっておこがましい。だから、中心から少しずらそう。」


そんな議論がなされ、70以上のデザインが候補にあがっていたにも関わらず、この「月章旗」が国民投票で選ばれたからだ。


 このような事実がメディアで報じられることはないため、多くの日本人はパラオのことを、「スキューバダイビングのできるリゾート地」くらいにしか思っていない。しかし、パラオ語の中には多くの日本語が混じっており、今も島を歩けば、「あぶない」「でんわ」「だいじょうぶ」といった馴染みある言葉が、どこからともなく聞こえてくる… さらに、スギヤマ、ジロー、アオキといった日本風の名前をつけるなど、強烈な親日国だということがよくわかる。(ダイレクト出版のページ
これ、結構よく知られた話で、信じてる人も多いと思いますが、デマです。


藤岡信勝とか名越二荒之助とか右翼界隈が広めた話らしいですが、根拠は全くありません。「似てる」「日本がパラオを統治していた」という事実から推測しているだけです。レベルとしては、「英語 name はローマ字読みすると『ナメー』だから、日本語の『名前』がなまったもの! 日本語が語源!」と言うのと大して変わりません。


2010年に元埼玉県立大学教授の吹浦忠正氏が、国旗をデザインしたスキーボング氏にインタビューを行い、「パラオの国旗が日の丸の模倣である」「日の丸の太陽に遠慮して月にした」「日の丸に遠慮して月を中心よりずらした配置とした」との三点について質問した所、スキーボングは全部違う。私はもちろん日の丸を知っているが、特別にそれを意識してデザインしたわけではない。日本は日本、パラオはパラオだ」とし、更に「パラオの美しい月を表現したもの」と応えています。(吹浦氏のHP参照


そりゃあ、このインタビュー内容が絶対正しいとは限らず、パラオの国旗と日章旗との関係を絶対的に否定する根拠だってありませんが、この2つを結び付ける明確な根拠もありません。少なくとも、ダイレクト出版のHPに載っているような、国旗制定の際に
「日本が太陽で、私たちが月だ。私たちは日本がいて初めて輝ける」
「月を中央にすると日本の色違いになっておこがましい。だから、中心から少しずらそう」
という議論があったなんて根拠は、全くありません。
この箇所は完全に空想です。


大体、「70以上の候補の中から国民投票で選ばれた」って言ってんのに、「国旗を決める会議の場」でこういう議論があったっておかしくない? これ、国旗のデザインを公募したはずなんですが、ダイレクト出版のこの妄想記事だと、デザインは公募じゃなくて会議で決まったことになってる。どういうこっちゃねん。しかも、結局国民投票で決めたんなら、その会議の会話って何だったの? なんか言ってることがわけわからない。


パラオ政府の公式HPに国旗の説明もありますが、「黄金の月と空色の地」という説明しかなく、日本のことは書かれていません。もしも「日本が太陽で私たちが月だ。日本がいて初めて輝ける」とまで日本を尊敬しているのなら、日本のことに言及していてもよさそうなものですけどね。

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他にもいくつか国旗の説明をしている英語のサイトを見ましたが、「日本が太陽で、それを受けて輝く月」などと描かれているものは皆無でした。 どのサイトでも、「月はパラオの文化にとって特別な意味を持つ」とか「平和や愛の象徴」などと書かれており、「太陽を受けて輝く」なんて書かれておりません。『ブリタニカ百科事典』では以下のように書かれていました。

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The golden disk represents the moon, which has special meaning for Palauan culture. The full moon is traditionally considered the best time for fishing, planting, and other activities. It is said to give the local people “a feeling of warmth, tranquillity, peace, love and domestic unity.”

(中心の金色の円は、パラオの文化で特別の意味を持っている月を表している。伝統的に、満月は漁業や作付けなどの活動に最適の時と考えられており、人々に温情、安らぎ、平和、愛、そして国民の統合をもたらすと言われている)
当たり前ですが、どこにも「太陽を受けて輝く」なんて書いてありませんね。


大体、独立を記念して新しい国旗を制定しようって時に、
「私たちは日本がいて初めて輝ける」
とかいう意味の国旗を制定する卑屈な国民がどこにおんねん…。
そんなん、もはや日本への尊敬を通り越して奴隷根性やないか…。


ダイレクト出版は「このような事実がメディアで報じられることはない」などと言っていますが、そりゃあデマだから報じないんじゃねえ?


パラオが比較的日本に好意的な感情を持っており、今も日本語が多く残っていることは事実のようです。もちろん、「日本語が残っている=日本の統治がよかった」とはなりませんが、パラオは日本の国連委任統治領であって、併合したり軍事占領したりしたわけじゃないので、非常に親日的な国であることは事実のようです。


それはいいんですが、このダイレクト出版のデマ広告みたいに、「日本が太陽で、パラオが月。日本がいて初めて輝けるから、月にしよう」なんて言って国旗を決めたなど、こういうデマを吐いてもらっちゃ困りますね。せっかく親日的なパラオ国民に対する侮辱ですよ。


ちなみに、このダイレクト出版のデマ広告が参考文献として挙げているのが、藤岡信勝や井上和彦の本です。そりゃあ、デマ広告になるのは当たり前ですね。


別に何を言ってもいいんですが、事実をもとに話してもらいたいものです。こんなデマ広告が自分のHPに載るとはちょっと驚きです。ダイレクト出版さん、最近極右化してるという噂を聞きますが、さすがに広告でデマを流すのはよくないと思いますよ。

==追記==

コメント欄で言われて初めて気が付いたのですが、ダイレクト出版の広告ページ、Republic of Palau じゃなくて Parau republic って書いてありますね。
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もしかしたら、これは我々が知っているRepublic of Palau(パラオ共和国)のことではなく、別のParau republic の話なのかもしれませんね。


(このダイレクト出版の広告ページ、Japan came... とか America came... とか、いかにも英語が不自由な日本人がカッコつけて書いた感バリバリの小見出しつけてますね。英語がわからないなら普通に日本語で書いておけばいいのに…。テーマである「パラオ」の綴りぐらい間違えるなよ…。しかもrepublicが小文字だし…)
 
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