2、荷物をパクる、お金はあとで払います。
あまりの惨状に俺は気分が悪くなり胃の中の内容物を全てぶちまけた。
ネットでグロ画像を見ても吐いたことなどなかったからグロ耐性は結構あると思ったのだが、画像と実物では全然違う。とくに俺が命を奪ったとなればなおさらだ。胃の中のものを全部吐き顔を上げると今度は大量の靄に囲まれた。それは全て俺の中に入ってきた。避けようとしたが狭い車内では逃げることもできず窓を閉めても隙間から侵入して俺に吸い込まれるように消えた。
ヤバイこれ本当に呪われてるんじゃないか? 背中がゾクゾクする気持ちを押さえて俺はそのまままっすぐ道を進んだ。取り合えずまっすぐ進むしかない。しかし、人里を探すために進んだとしても俺を受け入れてくれるような人間がいるのか?ハ虫類人とかだったら補食されちゃうよな。
気は進まないが荷物を使うか、未開地の人類に友好的に接するにはプレゼントが効果的だ。あのインドの端にある立ち入り禁止の北センチネル島だってプレゼントだけは友好的に受けとるのだ。
背に腹は代えられない。帰ったらお金を払うと言うことでお店の人には許してもらおう。異世界の写真とかとれば信じてもらえるだろ。信じてくれるかな?
まあ、町があったとしても、こんなトラックで乗り付けたら確実に怪しまれる。と言うか騒ぎになる。近場で乗り捨てるか。
そうと決まれば持っていけるものを取捨選択しないとな。
俺は荷物を選ぶため、その場でトラックを停車させた。
必要なものは戦う武器、服、バッグ、サバイバルグッズか。西敵デパートには軍用品を扱う店やアウトドア洋品店、DIY店がある。それらの荷物から使えるものを拝借しよう。
荷台のドアを開けると、あれだけ無茶な運転をしたにも関わらずほとんど荷崩れはしていなかった。
とは言え荷物がパンパンだ目的のものは手前に無い、全部下ろさないとダメだなこれは。普段からやっていることとは言え、作業場でやるのと地面でやるのとでは大変さが違う。まあ、そうは言ってられない時間は有限だ、さっさとやるか。俺は手前のものから順々に地面に置いていった。
「あれ、軽いぞ?」
荷物に積み込み時の重さはなく、まるで中身が減ったように軽くなっているのだ。俺は念のため最初の箱を開封してなかを確認した。中にはボウガンが5丁入っていた。それを取りだし持ってみたがお店で持たせてもらったときよりはるかに軽い。これは、もしかしてこの世界は重力が地球より軽いのか?
まあ、軽いなら軽いで色々楽になるから良いとして。とりあえずは荷物だ。荷物を下ろすのがバカみたいに簡単になり俺は全部の荷物を大した時間もかからずに出し終えた。その中から登山用バックパックを取りだしその中に必要なもの詰め込んだ。
武器はできるだけ長いサバイバルナイフを二本と武道具屋さんの杖を一本取りだしその先端にサバイバルナイフをくくりつけ槍にした。ボウガンは今回は持っていかないようにする。ボウガンの使いかたが分からないし邪魔になるようなものは極力避けたい。
重力が軽いなら電動ガンは強力な武器になるんじゃないか? 倒せなくても牽制武器になるかもしれない。俺はハンドガンタイプのフルオート電動ガンを選びバッテリーを変圧器でシガーソケットから充電させた。
プレゼント類は100均から何点か選びバックパックに入れた。
荷物は選び終わったけど町までの距離だな。望遠鏡を取りだし道の先を見る。土星の輪っかも見れるほどの高倍率のやつだ。
取り合えずこの先にはまだ町は見えない、道はまっすぐ一本道だ気を付けていかないと先に相手に発見されてしまう。俺は荷台に荷物と望遠鏡を積み込むと再びトラックを出発させた。
これで全てが俺の幻覚だとしたら荷物をちょろまかした罪でクビ待ったなしだな。
距離にして5km程進みながら望遠鏡で先を見るを繰り返し前に進んだ。
「見えた城だ。かなりでかいぞ」
望遠鏡にはまるでドイツにあるような城のてっぺんが見え旗がはためいているのが見えた。その周辺に家が立ち並ぶ中々にでかい街だ。
俺はその場にあるちょうど良いへこみにトラックを突っ込みカモフラージュテントと木や草でトラックを隠すと城のある方に向かい歩き出した。
少し早い気もするが念には念をだ。それに普通なら重い荷物もたいして重くない上に足取りも軽い。そのとき茂みからあの緑色の化け物が現れた。俺はダッシュで逃げた。案の定俺のスピードには追い付けないようであっという間に引き離した。しかしそこで俺はきびすを返しその化け物に向かっていった腰の電動ガンを取りだしセミオートで緑の化け物に撃つBB弾は的確に頭を撃った化け物はひっくり返るように倒れると頭を地面に打って動けなくなった。
念の為に見に行くと死んではいなく頭を打ったために脳震盪を起こしているようだった。殺そうと思えば殺せるがさすがに生き物にナイフを突き刺すのは精神的にきつい。トラックで轢き殺しておいてなにいってるんだ思うが、それとこれとは別だ。
おれは化け物が起き上がる前にさっさと走ってその場をあとにした。