【ネコ好き必見】 農家を救う!? 野良猫の就職先は「縁側ネコ農法」だった

2018.11.22

【ネコ好き必見】 農家を救う!? 野良猫の就職先は「縁側ネコ農法」だった

全国の農家さんの頭を悩ませる、野生動物の「食害」。この問題に対するひとつの解決案が、野生のネコとの共存です。ネコの住処を確保しつつ、食害を防ぐ。そんな「ネコ農法」を提唱する縁側ネコ研究家の渡部久さんにお話をお伺いしました。

でも、生物を扱うということは、責任も必要なのでは?   

「縁側ネコ農法が、いかに農家さんへのメリットが大きいものかというのは分かったんですけど……。やっぱり気になるのは、生命を扱うことで発生する責任についてです。たとえば、ネコを野放しにすることで子ネコが増えすぎたりしないんでしょうか?」

「もし増えすぎてしまう場合には、避妊手術を人間がしてあげるのも手です。少々お金はかかりますが、ネコの生み出してくれるメリットを考えると、それくらいは必要経費です」

「う〜ん、でも、頭数の問題はクリアできたとしても、生態系は崩れないんですか? 今、奄美大島でノネコが山に入って絶滅危惧種を食べちゃう問題がありましたよね」

「あれは、餌付けをしていないノネコだからですよ! 人間がきちんとエサを与え続ければ、『猟場はこの畑なんだ』と認識してもらえるので、わざわざ山に入って野生動物を食べることはありません。だからこそ人が管理する必要があるんです」

 

「なるほど……。にしても、こんな可愛いネコちゃんたちが、ほんとに大型動物を撃退するんですか? 複数で一気に奇襲攻撃するってことですか?」

「どんなに身体がちっちゃい子でも、イノシシや鹿に真正面からひとりで向かっていきますよ」

「うそ……! そんなの絶対勝てないじゃないですか……」

「ううん、ネコはね、獣たちの鼻を狙うんです。鼻は彼らの急所なので、爪でひっかくと化膿して、死に至ってしまう。そのことを獣たちも自覚してるから、鼻を狙ってくるネコを恐れてるんです。だから、だいたいネコの姿を見たら逃げるし、ネコの足跡があるだけでも、ほとんど畑には寄ってこなくなりますよ」

 

「でも獣たちも、おとなしく攻撃されてくれるもんなんですか? ネコが怪我するんじゃないですか?」

「そりゃあ、時には怪我をするときもあります。彼らも縄張りを守るために命がけで戦うわけですから。ただ、ネコたちは、回復するためのすべを本能的に知ってるんですね。怪我して帰ってきても、1〜2ヶ月後にはケロっとしていることが多いかな」

「甘い意見かもしれないんですけど、ネコをペットとして可愛がってる身からすると、とってもかわいそうな気がしてしまうんですが……」

「もちろん、飼い猫を連れてきて縁側ネコにするのは酷ですよ! 戦い方も知らないだろうし。でも、ここにいるのはもともと野生で生まれ、野生に生きていくはずだったネコたちです。そんな彼らに、ご飯と寝床という場所を提供することで、この農法が成り立っているわけです」

「あ、そっか……。ヒモでつないでる訳じゃないんだから、ネコだって、強制されて撃退しているんじゃないのか。『エサと寝床が提供される良いナワバリ』を利用するために、戦ってるんだ」

「名前をつけて可愛がってるので、怪我して帰ってくるとつらい気持ちになることはありますけどね。でもそういう自然の摂理も含めて、僕は生き物が大好きなんです」

 

新たなネコの可能性が広まることで、幸せなネコよ増えてくれ

「最後に、これからこの農法を始めてみたい人は、まず何からやればいいですか?」

地域にいる、メスの野良猫を餌付けすること。小さい頃から狩りの経験があるネコがいいので、街の野良猫をいきなり連れてきてもダメですよ。雨風しのげる寝床も用意してあげて、決まった時間に満腹にならない程度のごはんを与えてあげてください」

「この地域以外にも、成功例は出てきているんですか?」

「出てきていますよ! 今、別の地域でも3例ほど成功例が出てきました。最近では全国や、山梨県各市町村からもうちの畑に視察が来るようになったんです!ちなみに、縁側ネコたちの暮らしがまとめられた本も、昨年出版されました」

「すごい。画期的な獣害対策として注目されてきてるんですね」

 

もし私が畑を始めるとして、縁側ネコを仲間に迎えることになったなら、やっぱり、彼らが怪我をしたら悲しいし、守ってあげたくなってしまうと思います。

 

でも渡部さんに話を聞いていて思ったのは、その感情はある意味「人工的な」ものだということ。本来、すべての命は未来を繋いでいくためだけにあるもの。

子孫を残すために自分の命を犠牲にすることもある。時にはほかの生き物の食料になることもある。そうやって自然の大きな輪の中で生命が紡がれ続けてきたことを、この社会に生きていると忘れてしまう気がします。

 

だから、もしかしたら邪険にされるだけだったかもしれない彼らの生を、少しでもお互いが幸せになれる形で共有できるなら、それはとても素敵なことだなと感じました。

おまけ 

 

「じゃあ、最後に記念写真的なのを撮りたいんで、ツーショットいいですか?」

「は〜いッ!」

「パシャ」

「あの……渡部さん、本当にこの表情でいいんですか?」

「ウんッ! いーのいーの! こないだテレビの取材がきてね、『好きにやっていい』っていうからこんな感じで大暴れしたんだけど、全部削られてて悲しかったんだよねー!」

「安心してください。この媒体ではおそらく、包み隠さず伝えられると思うので」

わーい!楽しみにしてますねッ!!!

 

ではまた! にゃんこ にゃんこ〜

(渡部さんが使っている別れの挨拶)

 


終始このありさま

 

写真/キリンニジイロ 鈴木智哉

イーアイデム

この記事を書いた人

坂口ナオ
坂口ナオ

東京都在住のフリーライター/編集者。’85年生まれ。2013年より「旅」をメインテーマに据え、webと紙面にて執筆活動を開始。日本各地のユニークな取り組み、人、伝統などの取材を手がける。2015年に編集者として株式会社LIGに入社、2018年には再びライターとして独立。専門ジャンルは「地域・人・文化」。なお、中学生の頃のあだ名は「エスパー」。大学生のときは「あご門天」です。

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