強くてニューゲーム 作:トモちゃん
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「さて、先ずはこの都市の被害をどうするか、だね」
デミウルゴスは張り切っていた。
魔導国の建国。その輝かしい第一歩を計画するという大役を任されたのだ。失敗など決して許されない。
「更地にするべきね。この都市はアインズ様が支配するには相応しくないわ」
「それでは被害が大きすぎないかね?アインズ様の治める国の首都になるのだよ?」
「いえ、私もアルベド殿と同じ意見です。人が生活できてしまえば都市開発は難航致します。いったん更地にしてから作り直すべきかと」
アルベドの意見にパンドラズアクターも同意する。
「なるほど、では、復興の期間をどれ位にするべきかね?」
「そうね、ナザリックの僕たちを動員して一か月というところかしら」
「100万を超える民を一か月も養うとなると相当な出費ではないかね?」
「それについては私にお任せください。既にカッツェ平原にて、十分な食糧を用意してございます」
「流石はパンドラズアクター。準備万端だね」
「全てはアインズ様のご計画の通りですよ」
転移後すぐに今の状況を想定していたとは。至高の主の智謀は流石としか言いようがない。
いや、国を作るならどちらにしても食糧は必要になる。絶対に損をしない方法を取られたということか。
「では、一時的な避難所のようなものがあれば十分だね。石材などの建材はマーレの魔法で作ってもらうとしようか」
「そうね、避難所に関してはアインズ様にお願いしましょう。100万の民でもアインズ様の魔法なら容易いことよ」
「ああ、アインズ様の偉大さを愚鈍な民に分からせるには良い方法だろうね」
「デミウルゴス殿、都市の再建には人間も投入いたしましょう」
「それは構わないが、人間は力も弱い。足手纏いにならないかね?」
「ご安心ください。彼らは新しい労働力の素晴らしさを知ることになるでしょう」
「なるほど、そういうことか。スケルトンが良いかな?どれ位用意できる?」
「当日までに2万程度は」
「良い考えね。都市の再建にアンデッドを利用させることで嫌でも便利さを実感出来るわ」
「一度、これだけの実績を作ってしまえばもう止めることは出来ないだろうね。遠からずアインズ様のアンデッドが居なければ世界が成り立たなくなるだろう」
「征服するのは簡単。でも安定した支配を続けるのは容易なことではないわ。流石はアインズ様ね」
「ああ、第6階層の農場でアンデッドを働かせていたのも、我々なら気付くと思われてのことだろうね」
今のうちに情報を共有しておくべきだろう。計画の手戻りは出来るだけ避けなければ。
「今後、複数の亜人たちをこの都市に入れることになる。亜人地区のようなものを事前に用意しておくべきだろう」
「近隣のリザードマンやゴブリンかしら?」
「いや、アベリオン丘陵の亜人だよ。もうすぐ支配も完了するからね。亜人たちの強者たちにアインズ様の国を見せておきたいのだよ。それと、ナザリックの戦力をね」
「そうね、最初の都市なのだから色々と試していきましょう」
詳細な計画を詰めた後、最も重要な案件についての話し合いが始まった。
「このズーラーノーンの連中が、不幸にも召喚してしまうアンデッドはパンドラズアクター、君に任せてよいかね?」
「お任せください。アインズ様の引き立て役となるに相応しいものを召喚してご覧に入れましょう!」
偉大な創造主を引き立てる為の仕事とあって先ほどまでとはテンションが違う。
「私はアインズ様と一緒にそれを退治すれば良いのね?」
「いいえ!アルベド殿はアインズ様とシャルティア殿が事態を収めたあ「何でよ!私は正妃よ!第一妃よ!」
パンドラズアクターの胸元を締め上げながら般若の貌で詰め寄る。黄色の卵頭が段々青くなっていく。
「落ち着き給えアルベド。放しなさい。ちょ、折れる、折れるから」
デミウルゴスが割って入らなければ、本当に不幸な事故が起きたかもしれない。
「本当に死ぬかと思いましたよ。統括殿はもう少し落ち着きが必要です」
「それで?何故私が後なの?アインズ様の隣にいるべきなのは、正妃たるこの私でしょう?」
アルベドはいつもは非常に優秀だが、アインズのことが絡んだ瞬間、感情の制御が利かなくなる。
「はあ、宜しいですか?アインズ様はエ・ランテルが襲われているのを見て義憤に駆られ助けにこられるのです。偶々お供をしていたシャルティア殿と共に」
「で、私は?私の出番は?」
「ふう。事態を収めた後、アインズ様のお力で復活したとしても、更地となった都市を見て市民たちは絶望に打ちひしがれることでしょう」
「そうね、将来の展望が真っ暗では、死んでいた方がマシでしょうね」
「そうです!そこでアインズ様の正妃たるアルベド様が都市再建のための手勢を引き連れ、エ・ランテルに来られるのです。その美貌と慈悲深き微笑みを見た市民は明日への希望とアインズ様への忠誠を堅くすることでしょう」
「くふふ、そうね。それと、私とアインズ様の仲睦まじい姿をアピールすることも重要ね。ラブラブな理想の夫婦の姿を見せて上げましょう」
「え?それは誰に対して?いえ、そうでは「これはとても重要なことよ!アインズ様のお優しい姿を見せることで親しみやすさを感じさせるのよ!普段完璧な殿方が愛しい人だけに見せるお姿にギャップを感じるのよ!それが萌えるということよ!分かる?分かるわね?分かった?」
「…まあ、アルベドが言うことにも一理あることはある。さあ、この話は置いておいて、アルベドが率いる僕たちを選定しよう。とりあえずパンドラズアクターを放しなさい、折れるから。守護者からはマーレが確定だね。アウラも連れよう」
「マーレは分かるけど何でアウラも?」
「君が言ったとおりだよ。アインズ様が幼い双子に慕われているお姿は市民に親しみを感じさせてくれるだろうからね。アインズ様はあの子供たちには特にお優しい。民たちもアインズ様に親しみを抱くことだろう」
「くっ。(折角のアインズ様とのデートが。糞が。邪魔な連中、全員消した方が良いかしら?)」
ギリギリと歯ぎしりしながらも連れていく僕たちを考える。
「先ず、スケルトンたちは労働力として連れて行くとして、見目麗しいものが欲しいわね」
「ナザリックには余りいないが、天使系の僕を数体召喚してもらうとしようか。パンドラズアクター、コストの算出を頼むよ」
「お任せください。アインズ様から十分な予算を頂いております。ここでケチっては後々まで響きますので、金に糸目は付けません」
「ドラゴン系はどうかしら?ただの魔獣より知能があるものの方が良いわ。それと規律ある行動を取らせたいわね。動きがバラバラだとどれだけ強くても烏合の衆に見えてみっともないわ」
「召喚した僕たちはコキュートスに訓練させるとしよう。リザードマン相手の経験が生かせるだろうから、ちょうど良いだろう」
「そうね、時間がないのだからすぐに行動に移しましょう。」
召喚する僕が決定したのは明け方になってからだった。
この日、夜のお勤めを逃したアルベドは、一日中荒れていた。
デミウルゴス「パンドラズアクター?それ、やっぱり折れてない?」